著者
種村 剛
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.69-81, 2018-12-27

本稿は,主に『科学技術基本計画』(『基本計画』)を対象として,科学技術コミュニケーション(SC)とリスクコミュニケーション(RC)の位置づけについて,概念分析を用いて整理することで,次のことを明らかにした.第一に1990 年代に実施されていた参加型テクノロジーアセスメントが『基本計画(第3期)』でSCに組み込まれた(6章).第二に,RC概念が登場した『基本計画(第4期)』では「社会と科学技術イノベーションの関係の深化」を背景に「RCも含めたSC」が文言として示された(7章).第三に『基本計画(第5期)』ではRCは「共創的科学技術イノベーション」の推進に資するものとされた(8章).SCとRCの関係を整理したことで『基本計画(第3期)』におけるRCと『基本計画(第5期)』に示されたRCは,その内容を大きく変えていることを示した.
著者
有賀 雅奈 梅本 勝博
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.3-12, 2013-12

This article is intended to analyze how and on what a scientist “reflected” (defined in Adult Learning) in a science communication process. The method is a case study. The author participated in a project of a science cafe by a students’ group in JAIST, observed their planning, preparing, practice and evaluation processes, and analyzed when and on what the presenter reflected. As a result, the presenter reflected about the relationship among his study and the local area, his premises about the audience, problems of his presentation, research contents and organizational problems of the project. He reflected more in preliminary stages than after the practice, and most of his reflections were, sometimes unintentionally, for the success of his presentation and project. It is thought that a motivation to success science communication promotes reflections of a presenter. The results indicate that immense preparation for communication or continual communication is necessary for a scientist’s reflection.
著者
秋谷 直矩 水町 衣里 高梨 克也 加納 圭
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.17-30, 2013-06

This article study how interviewees accomplish “showing their state of knowledge” and “participating” in group interview settings. Group interview’s topic was“ science and technology”, especially “regenerative medicine”. Interviewees were non-expert person of regenerative medicine, and were not acquainted with each other. In this situation, interviewee’s interactional problem is how describe own state of knowledge. Interviewee’s descriptions are conducted by co-participants to see what he/she is doing by talking in that way. In this article, we describe interviewee’s action over their state of knowledge of regenerative medicine, and based on the results of the description, elucidate their “method” of participation in interaction. In light of the above, we discuss the contribution of this article’s description for science communication colleagues.
著者
吉澤 剛
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.31-37, 2020-04

ノルウェーにおける新型コロナウイルスの感染拡大は4 月上旬にコントロール下に入ったとされ,社会的機能を少しずつ再開していく方針が発表された.政府の危機対策管理は分散的な構造となっており,省庁間の調整支援機関が機能を発揮している.ノルウェー公衆衛生研究所(NIPH)では,多様な市民に対するわかりやすい情報やアドバイスのほか,最新の学術研究の見取り図も提供するなど,俯瞰的で包括的な活動を展開する.ノルウェーの専門機関は,過去の危機において市民とのコミュニケーションにたびたび失敗しているものの,政府や専門家に対する市民の信頼は篤く,情報を通じて伝えられる専門家の知的謙虚さや個人的感情をもとに冷静に判断を下しているとみられる.この冷静さはコロナ以後における新たな日常の「奇妙さ」と対峙し,それを保持していく鍵でもある.
著者
菊池 結貴子 江崎 和音 中島 悠 石川 遼子 伊與木 健太 正田 亜八香 音野 瑛俊
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.3-13, 2017-01

近年,科学者と非科学者がテーブルを囲んで気軽に語り合う「サイエンスカフェ」が日本で広がりつつあり,開催回数・開催場所ともに急激に増加している.それに伴って,サイエンスカフェの形式も多様化してきており,現在では実に様々な形式のサイエンスカフェが開催・報告されている.本稿では,こうしたサイエンスカフェの多様性の一端として,著者らの運営するイベント「BAPcafe」を取り上げ,その運営方法と実施実績を詳述するとともに,実施記録や参加者へのアンケートをもとに,BAP cafeの特徴と効果および今後の課題について考察を行った.BAP cafeではサイエンスカフェの要素の一つである「わかりやすく説明すること」よりも,「専門的な内容について濃密な議論を展開すること」に重点を置いており,サイエンスカフェの新たな一形式として著者らは位置づけている.スピーカーと参加者の間のみならず,参加者同士,スタッフと参加者の間での対話が自然に起こり,議論が盛り上がる点が特徴であり,参加者からは,スピーカーとの距離が近く,“マニアック”な話題を共に楽しみながら深く議論を交わせるといった評価を得ている.専門性の高い内容はサイエンスカフェでは避けられがちであるが,BAP cafeではそれが長所となり,参加 者を獲得して継続的な開催につながっている.
著者
秋本 祐希 横山 広美
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.47-57, 2015-12

素粒子は顕微鏡等を用いても目にすることができず,波と粒子の両方の性質を持つという性質上,イメージすることが難しい.素粒子を扱う素粒子物理学は,それゆえ直感的にわかりにくい分野である.そこで我々は,素粒子物理学を直感的にわかりやすく説明し,また同時に関心を持ってもらうため,わかりやすいコミュニケーションのツールとして,イラストとマンガに着目した. 本稿では,最初に「わかる」という概念を整理し,その上でイラストが,想像することが困難な事柄を「想像できるものに例えて」その概念を大枠で説明することに役立つことを主張する.例えばイラストでは,素粒子を目に見える特徴を持ったキャラクターにすることで,これが可能になった.さらにマンガでは,素粒子や素粒子実験をキャラクターとして用い,素粒子物理学のエッセンスを組み込んだストーリーにすることで,文章だけでは興味を持ちづらい事項を,親しみやすく提示することができた.また特徴的な活動のひとつは,科学技術に関する審議会の議事録をイラストで説明したことだ. こうした取り組みは,これまで単に「わかる」ためのみに用いられていたイラストを,双方向のコミュニケーションの土台として活用できる.
著者
杉山 滋郎
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.44-60, 2012-12

In this paper, we analyze the participants' process of understanding and discussion in a deliberative poll that requires them to acquire a certain amount of scientific knowledge. Changes in the understanding and opinions of individuals are traced through transcripts of actual discussions and responses to questionnaires. This reveals, on the one hand, that people gain information not only through written documents, movies, and professional comments that answer their questions, but also through small-group discussions. It also shows that a small-group discussion helps participants, even those who do not talk much, to form their own opinions. On the other hand, our analysis shows that some parts of the small-group discussion proceeded with the participants having an improper or insufficient understanding of scientific contents involved in the discussion topics. This led us to believe that deliberation is not possible based on a single deliberative poll but rather on a series of deliberative polls, or other events that aim to induce deliberation.
著者
児玉 耕太 竹本 寛秋
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.16-32, 2011-12

This article shows that communication in the free zone of the Science Cafe is improved if visitors are able to experience the actual research object, an abstract entity referred to as knowledge. This Science Cafe was designed to promote the use of "slime mold" in a petri dish as a communication tool. By using a survey analysis, we showed that there was a correlation between the visitors' behavior toward the petri dish and satisfaction from the cafe. Further, by using statistical methods including text mining, we analyzed the correlation among visitors' prior knowledge, the changes they experienced, and so on. Through their steps, we could demonstrate the novel method to minutely design and evaluate Science Cafe. Accordingly, it was clear that real experience is very effective in scientific communication, and we suggest an original methodology covering scientific communication.
著者
高橋 徹 高橋 徹 高橋 徹
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.51-60, 2022-09

広島大学のYouTube チャンネルに掲載された素粒子物理学の講義動画が,公開からおよそ17 カ月(2022年7月時点)で180 万回以上視聴されている.同チャンネルには約100 の講義が掲載されているが,この動画の視聴回数は他の講義に比べて格段に多くなっている.また,同チャンネル外の類似分野の動画と比較しても視聴回数は多い.この動画を制作するにあたっては,聴衆を想定しメッセージを明確する,構成を検討する,スライドデザインを考えるなど,プレゼンテーションデザインの手法に従って作成することに特に留意した.本稿ではこのことが視聴回数の増加に寄与したと考え,動画を作成した際の留意点について述べる.また視聴者の特徴,動画視聴への誘導径路など,視聴状況の分析結果について考察する.プレゼンテーションデザインについてはいろいろな論考がなされているが,基礎物理学という一般には難解と考えられている分野において多くの聴衆にリーチした例として,本動画の作成例を共有することは,プレゼンテーションデザインと科学コミュニケーション双方の事例として意義があると考えている.
著者
西浦 博
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.101-105, 2021-08

筆者は理論疫学の専門家として,新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の傘下であるクラスター対策班で,新型コロナウイルス感染症の分析および対策に関する提言を2020年2月から7月まで行った.会見発表だけではなく,Twitter での発信も行うなかで,コミュニケーションの専門家の支援も受けた.現在の日本では,科学と政治の関係性が幼弱であり,専門家による政治への踏み越えや,政治による専門家への責任転嫁など課題が多い.このような状況を経た今,科学技術コミュニケーターが果たす役割は非常に大きなものになると思われる.科学技術コミュニケーターには,科学が発すべきメッセージの中枢のデザインにまで大きく影響を与えるような専門家になっていただきたいと希望する.
著者
一方井 祐子 マッカイ ユアン 横山 広美
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.55-67, 2018-12

近年,インターネットで不特定多数の公衆から資金支援を募るクラウドファンディングが注目され,研究者も研究資金の獲得にクラウドファンディングを利用するようになった.予算の多元化が推奨される中,クラウドファンディングが新たな科学技術のパトロネッジ(第4のファンディング)として利用されていく可能性は高い.科学コミュニティにおけるクラウドファンディングを議論する上では,参加者の動機づけや問題意識の整理が欠かせない.しかし,これまで,研究者がどのような意識でクラウドファンディングに参加してきたかを調べた調査は少なかった.そこで本稿では,学術系クラウドファンディングに参加した日本の研究者を対象に意識調査を行った.その結果,研究者の主な参加動機は,第一に研究資金の獲得であり,ファンディングの側面が強かった.また,自身の研究のアピール,研究の面白さを伝えることが重視されていた.学術系クラウドファンディングには双方向コミュニケーションを促進させる場がいくつかあるが,現状としては,学術系クラウドファンディングは主に一方向的な情報伝達のコミュニケーションツールとして活用されている.
著者
佐藤 (佐久間) りか 和田 恵美子
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.89-100, 2008

The DIPEx webpage created by researchers at Oxford University contains over 1,500 narratives of users of health services in the UK, which are presented in the form of text, audio and video files. Although the webpage gives only fragments of the original narratives given during the interview, it has become a quite powerful and highly-evaluated information tool for patients’ decision-making. Authors argue that segmented patient narratives can be useful in assisting patients to cope with the uncertainty in medicine and health care. Authors also report on the development of the Japanese version of DIPEx modules on breast cancer and prostate cancer.
著者
春日 匠
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.36-46, 2007-03

"Science Shop" is defined as a system which provides independent, participatory research support in response to concerns experienced by civil society. In the Netherlands, science shops have been operated in almost every university since 1970s. The same types of science shops have been conducted in some other countries such as United Kingdom, Germany and Denmark since 1980s. The European Commission is now supporting to disseminate this concept to other European countries, especially to Eastern Europe. In this paper, we will discuss the possibility of the transferring the effectiveness of science shops to the Japanese society. For this purpose, we will review the character, the history and the actual process of science shops. The necessity of "the participatory research" such as science shops are gradually increasing in various parts of the world. Additionally, some cases in third world countries shall clarify the importance of learning from their experience.
著者
秋谷 直矩 水町 衣里 高梨 克也 加納 圭
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.13, pp.17-30, 2013-06

This article study how interviewees accomplish "showing their state of knowledge" and "participating" in group interview settings. Group interview's topic was" science and technology", especially "regenerative medicine". Interviewees were non-expert person of regenerative medicine, and were not acquainted with each other. In this situation, interviewee's interactional problem is how describe own state of knowledge. Interviewee's descriptions are conducted by co-participants to see what he/she is doing by talking in that way. In this article, we describe interviewee's action over their state of knowledge of regenerative medicine, and based on the results of the description, elucidate their "method" of participation in interaction. In light of the above, we discuss the contribution of this article's description for science communication colleagues.
著者
隈本 邦彦 上口 義雄 郡 伸子 櫻井 祐太 定池 祐季 佐藤 秀美 田中 徹 三宅 武寿 山﨑 学 山本 俊介 西村 裕一
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.3-18, 2008-09-15

We tried to fill the communication gap between experts and ordinary citizens regarding the method of preventing a tsunami disaster by organizing two events. The events involved discussions between a tsunami researcher and the inhabitants of two places of the Pacific coast of East Hokkaido where the damage that could be caused by a possible future tsunami was estimated. Contents in the event were deliberately designed to be useful for interactive communications. As a result of the evaluation by the participant questionnaire following the events, a interactive communication between the tsunami researcher and the inhabitants was arranged, and we were able to provide the inhabitants with information that they wished to know about the prevention of tsunami disaster.