著者
内野 博司 田中 江里 岡野 信雄 船越 昭治 京極 英雄 中島 健太 本多 勇介 淵之上 康元 田中 萬吉 米丸 忠 北田 嘉一
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.89, pp.45-58, 2000-08-31 (Released:2009-12-03)
被引用文献数
1 1

煎茶用品種'むさしかおり'が埼玉県茶業試験場 (農林水産省茶育種指定試験地) によって育成された。'むさしかおり'は1967年に種子親'やぶきた'と花粉親27F1-73'の交配によって得られた実生群から選抜された。1990年から1996年に埼玉33号の系統名で16場所で栄養系適応性検定試験,裂傷型凍害及びもち病の特性検定試験が実施された。その結果,優良と認められ1997年に茶農林46号'むさしかおり'として命名登録された。樹姿は開張型で樹勢は強い。成葉の大きさは'やぶきた'よりも小さい。一・二番茶の収量は'やぶきた'と同等か多い。幼葉はやや軟らかく光沢のやや多い緑色である。挿し木発根性及び本圃での活着は良好である。一番茶の摘採期は,寒冷地では'やぶきた'より2~3日,温暖地及び暖地では3~6日遅い中晩生である。耐寒性は青枯れ抵抗性,裂傷型凍害抵抗性とも'やぶきた'より優れる。製品の色沢は濃緑であり細くよれ,すっきり爽やかな香気,濃厚な水色・旨味に特徴があり優秀である。炭疽病の被害は'やぶきた'より少なく中程度である。耐寒性が強いので,関東茶産地及びこれと気象条件の類似する東海・近畿・四国・九州の山間冷涼地で,寒害発生の常習地帯に適する。
著者
吉留 浩 佐藤 健一郎 長友 博文 水田 隆史 佐藤 邦彦 古野 鶴吉 上野 貞一 平川 今夫 安部 二生
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
no.111, pp.1-13, 2011-06

'はるのなごり'は,1986年に宮崎県総合農業試験場茶業支場において埼玉1号'を種子親,'宮崎8号'を花粉親として交配した中から選抜し,2008年に品種登録出願し,公表されたやや晩生の煎茶用品種である。1998年から2006年まで'宮崎25号'の系統名で16場所で系適試験.2場所で特性検定試験(もち病,裂傷型凍害)が実施された。その結果,炭疽病及び輪斑病に抵抗性を有し,晩生で収量及び品質が優れることから普及に移し得ると判断され,2008年10月20日に種苗法に基づく品種登録出願を行い,同年12月19日に公表された。'はるのなごり'の特性の概要は次のとおりである。1)一番茶の萌芽期は,'やぶきた'より4日程度,摘採期は3日程度遅いやや晩生品種である。2)樹姿はやや開張型,樹勢はやや強,株張りは'やぶきた'より大きい。3)耐病性は,炭疽病には強,輸斑病にはやや強,もち病には中である。4)クワシロカイガラムシに対する抵抗性は中で,'やぶきた,かなやみどり'より優れる。5)耐寒性は,赤枯れにはやや強,裂傷型凍害にはやや弱~中である。6)収量は'やぶきた'より多い。7)煎茶品質は,'やぶきた'と同程度で,'かなやみどり'より色沢,香気が優れている。
著者
伊藤 陽子 成澤 信吉
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.80, pp.9-12, 1994-12-28 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7

チャもち病菌(Exobasidium vexans)の自然状態での侵入,感染は,若い葉の裏面に付着した担子胞子が発芽して,主に細胞縫合部で付着器と侵入菌糸を形成して行われた。付着器からの侵入菌糸の形成は,低率であった。
著者
堀江 秀樹 氏原 ともみ 木幡 勝則
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.91, pp.29-33, 2001
被引用文献数
1 4

キャピラリー電気泳動法を用いて,茶葉中の主要カテキン類,テアニン,カフェインの茶浸出液への溶出特性について解析した。主要カテキン類の中でも,エステル型カテキン類は遊離型カテキン類に比べて溶出されがたいこと,カフェインは低温では時間をかければ溶出され,また高温では極めて溶出されやすいことが明らかになった。
著者
大場 正明
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.50, pp.6-11, 1979
被引用文献数
2

チャノコカクモンハマキ合成性フェロモンの茶園における誘殺について誘蛾灯と比較検討した。<BR>1) 第1回成虫では初飛来日は誘蛾灯と同時期で終息日はフェロモントラップの方が早めであった。その他の世代は年によって変動がみられた。誘殺最盛日は第1,4回成虫はほぼ同じ時期であったが,第293回はフェロモントラップの方がやや早めであった。誘殺数についてはフェロモントラップは第2,3回成虫数が少なかった。図1,2のように2年間の発生消長グラフからフェロモントラップは誘蛾灯と高い類似性がみられた。<BR>2) プラスチックカプセル担体のフェロモンの誘殺力の持続日数は約30日間であったが,発生消長をは握するだけなら40日間くらいは十分使用できるものと考えられた。<BR>3) 野外におけるフェロモントラップの誘殺時刻調査では,22~23時の誘殺数がもっとも多かった。<BR>終りに本試験の遂行にあたり調査の御援助を頂いた稲木浩之技師(現東部農業事務所)に感謝の意を表します。
著者
田中 敏弘 山中 浩文 岩倉 勉 松山 康甫 嶽崎 亮
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.69, pp.1-11, 1989
被引用文献数
2

チャの潮風害回避のため,蒸散抑制剤と洗浄,間作作物の利用について検討した。<BR>1) 1985年8月31日に台風13号が通過した。それより9日前に,蒸散抑制剤(グリンナー:ワックス水和剤)の10%液を200l/10a散布しても,無散布に比べ,潮風害の発生程度に差がみられなかった。<BR>2) 海水散布(200l/10a)後洗浄までの時間が,4時間以上経過すると1000l/10aの水で洗浄しても無洗浄と差がなく,0.5時間後の洗浄では無洗浄の61~71%の被害発生が認められた。<BR>3) 間作作物としてソルガムを用いた幼木園は,台風通過時にソルガムの草丈が128~142cmで,幹数が27~40本/mに達していれば,防風垣の効果のない所では,枯死株率が59~82%に達し,改植が必要と思われたのに対し,2番目のソルガムの防風垣の背後にある5,6畦目からは,枯死株率は2~9%で実害はなかった。<BR>4) 以上の結果から,潮風害の回避のためには小量の水による洗浄より,防風対策が有効と考えられ,幼木園では,間作も有効な手法であり,間作作物としては,ソルガムのように耐倒伏性の強い作物が適するであろう。
著者
原田 重雄 中山 仰
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告
巻号頁・発行日
vol.1958, no.12, pp.1-4, 1958

茶のさし穂の側芽および葉の有無がさし木の根の発生ならびに生長に及ぼす影響を知るため,2葉2芽を有する標準のさし穂から側芽0~2個,葉0~1枚の除去を組み合せた7種類の区をつくり,それに3葉3芽区と標準区の2区を加えて試験した。さし木は7月15日,調査は110日,150日目に行つた。<BR>発根数は3芽,2芽を有する区が多く,0芽区は最も少かつたが,葉の数との関係はみられなかつた。一方,側芽を一つ着けた4区について,茎の着芽側と無着芽側との発根数を比較したところ,着芽側の発根数が明らかに多かつた。<BR>次に根重について調べた結果は,発根数への側芽の影響があつたため,根重と側芽数との間にも若干の関係がみられたが,概して3葉区,2葉区,1葉区の順に根重が重い傾向が認められ,さらに110日目よりも150日目においてこの傾向は一層顕著であつた。<BR>以上の結果から,さし穂の側芽は主として根の発生に影響し,着葉数は根の生長に影響が大きいと考えられる。
著者
関谷 直正 山下 正隆 田中 勝夫
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.66, pp.41-59, 1987
被引用文献数
4

年間の摘採回数,整枝時期および整枝強度が次年度収量に及ぼす影響を明らかにするため,やぶきた8年生園を用い,これらを組合せて処理を行い,以後5年間毎年同一処理を行って,これらの影響について検討を加えた。<BR>1.一番茶収量に及ぼす影響については,刈番を含めた合計収量では処理間にかなり大きな差異がみられたが,本茶収量では差異は比較的小さかった。<BR>2.摘採回数が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,1cmの高さで整枝した場合は差異はみられないが,3cmの高さで整枝した場合は,三茶区は四茶区に比べてやや多い傾向がみられた。二,三番茶収量は,秋整枝を行った場合は摘採回数の影響はみられないが,春整枝を行った場合は,三茶区は四茶区に比べてわずかに多い傾向を示した。<BR>3.整枝時期が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,春整枝区は秋整枝区に比べていずれの場合においても劣る傾向がみられたが,刈番を含めた収量で比べるとほぼ同等であった。二,三番茶収量は,春整枝区は秋整枝区に比べてわずかに多い傾向がみられた。<BR>4.整枝強度が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,三番茶まで摘採を行い秋整枝を行った場合は中間整枝の3cm整枝区が最も多かったが,春整枝を行った場合は浅整枝ほど多かった。<BR>四番茶まで摘採を行った場合は1cm整枝区が3cm整枝区に比べて多かった。刈番を含めた収量で比べると,いずれの場合も浅整枝ほど多い傾向がみられた。二,三番茶収量については,いずれの場合も浅整枝ほど多い傾向がみられた。<BR>5.新芽数に及ぼす影響については,一番茶期においては摘採回数の多いほど多く,秋整枝は春整枝に比べて多く,整枝強度では,深整枝は浅整枝に比べて多い傾向がみられ,二番茶期においては,これらの差異は小さくなったが一番茶期とほぼ同傾向であった。三番茶期では,摘採回数および整枝時期による差異はなくなり,整枝強度では,一番茶期とは逆に深整枝区は最も少なくなる傾向がみられた。<BR>6.百芽重に及ぼす影響については,一番茶期においては摘採回数の多いほど軽く,秋整枝は春整枝に比べて軽く,深整枝は浅整枝に比べて軽い傾向がみられ,二番茶期もほぼ同傾向であったが,摘採回数については一定の傾向はみられなくなった。三番茶期では差異は小さくなり,整枝強度では,一番茶期とは逆に深整枝区は最も重くなる傾向がみられた。<BR>7.一番茶の摘採期に及ぼす影響については,処理間にかなりの早晩がみられ,摘採期の最も早い処理区と最もおそい処理区の間には6日~10日間の幅がみられた。<BR>8.一番茶期の摘採期の早晩に対しては,整枝強度の影響は大きく,秋整枝を行った場合は深整枝ほど早く,かつ処理間の早晩の幅は毎年3~4日とほぼ一定であったが,春整枝を行った場合は一定の傾向はみられず,また年次変動も大きかった。