著者
渡辺 祐子 早川 潔 植野 洋志
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.107, pp.107_61-107_69, 2009-06-30 (Released:2011-12-09)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

乳酸菌による茶葉中でのγ-アミノ酪酸(GABA)の生産を目的に,新たにGABA生産性の高い菌を検索すると共に,乳酸菌の茶葉中での生育条件とGABA生産及び緑茶カテキンの変化について検討した。その結果,GABA生産性の高い乳酸菌L.brevis L12を得ることができた。さらに,L. brevis L12を10%茶懸濁液中で25°C,4日間培養することにより,ギャバロン茶とほぼ同量のGABAを含む新しい茶を作ることが可能になった。しかし,乳酸菌の生育向上の為グルコースを添加した場合,GABAは生成しなかった。GABAの豊富な茶葉生産時,茶葉中のグルタミン酸から理論変換量以上のGABAが得られた。原因として,茶葉中のグルタミン酸のアミド誘導体がグルタミン酸を経てGABAとなっている可能性が示唆された。
著者
袴田 勝弘 中田 典男 向井 俊博 福島 裕和 山口 良 仲田 智史
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.68, pp.8-13, 1988-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

嫌気処理緑茶(ギャバロン)の香味改善を図るため,嫌気処理条件(温度:10,20,30℃;時間:0~40時間)について検討した。(1)GABA含量はいずれの温度でも嫌気処理初期(1~5時間)に急増したが,その傾向は高温区ほど顕著で,30℃区で2時間,20℃区で5時間,10℃区で10時間で,それぞれの最高値の75%に達した。(2)嫌気処理時間が長くなるほど,高温区ほど品質が低下した。嫌気処理によるいやみ臭は,10℃区で30時間,20℃区では15時間,30℃区では5時間以上で特に強くなった。(3)品質をできるだけそこなわずGABA含量を高める嫌気処理条件は,10℃で15~20時間,20℃で5~10時間,30℃で2時間と推定された。(4)品質低下を防ぐため,嫌気処理後できるだけ早く殺青することが必要と考えられた。
著者
岡井 仁志 岩崎 長 吉田 輝久 平野 正史
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.62, pp.9-13, 1985-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4

京都府下の多くの玉露,てん茶園では,施肥の際に元出し,元寄せと呼ばれる伝統的な作業が行われている。しかし,この作業の実施時期は秋の根の生長期にあたっており,根系を傷めるおそれがあると考えられるため,元出し,元寄せが枝条の生育に及ぼす影響について検討した。(1)慣行の深さ(約10cm)で元出しが実施された場合,元出し時期が早いほど,その年の枝条の生長,および翌年の枝条発生数が強く抑制される傾向があった。従って,伝統的な元出しの実施時期は,枝条の生育を抑制することの少ない時期であると考えられた。(2)深層(約30cm)まで元出しを行うと,その実施時期に関係なく,個々の枝条の生長,および枝条の発生数が強く抑制された。(3)総括的にみると,元出し,元寄せが連年実施されると,「少数大枝条型」の生育となる傾向があった。また,枝条数の方が一枝新芽重よりも,生葉収量を大きく左右する要因であったために,元出し,元寄せを連年実施した区の生葉収量は,対照区に比べて少なかったものと考えられた。一方,荒茶品質は,元出し,元寄せを行うとやや向上する傾向が認められた。以上のことから,伝統的な元出し,元寄せは,枝条数の確保よりも個々の枝条の生長を重視した施肥慣行であり,この作業によって,生葉収量は減少するが,荒茶品質は向上すると考えられた。なお,本論文のとりまとめにあたっては,農林水産省茶業試験場茶樹第3研究室長青野英也博士から懇切なる助言と指導を賜った。ここに深謝の意を表したい。
著者
土井 芳憲
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.57, pp.13-17, 1983-06-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
5
被引用文献数
3

12品種を用い,植物ホルモン条件を3水準設けて試験した結果,葯からのカルス誘導率および根の分化率は,10-5MNAA+10-5Mカイネチンの場合に最高であった。この植物ホルモン条件下で,カルス誘導率および根の分化率に顕著な品種間差異が認められた。中国種の猫耳はカルス誘導率および根の分化率ともに高かった。ゆたかみどりはカルス誘導率が最高であったが,根は分化しなかった。F1ACC1,C4,べにほまれは,カルス誘導率は高いが,根の分化率が低かった。べにかおりはカルスが形成されなかった。本報のとりまとめに当たり,種々の御指摘をいただいた農林水産省茶業試験場茶樹第1研究室長鳥屋尾忠之博士に感謝致します。
著者
鳥屋 尾忠之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1964, no.21, pp.1-6, 1964-01-25 (Released:2009-12-03)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
岡野 邦夫 松尾 喜義 近藤 貞昭
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.95, pp.16-23, 2003-06-30 (Released:2009-12-03)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

チャ新芽に蓄積するテアニンの生理的意義を明らかにする目的で,9種類のツバキ属植物から真空吸引法で木部樹液を採取し,遊離アミノ酸組成をHPLC法で分析・比較した。チャ節植物ではグルタミン,テアニン及びアルギニンの3種が主要なアミノ酸であった。一方,ツバキ節,カワリツバキ節及びサザンカ節植物の木部樹液中の主要なアミノ酸はグルタミンとアルギニンの2種であり,有意な量のテアニンは検出できなかった。木部樹液と新芽の遊離アミノ酸組成の比較から,木部樹液中に存在するグルタミンはアミノ酸代謝の前駆物質として働き,テアニンやアルギニンは窒素の移行や貯蔵あるいはアンモニアの解毒形態として機能しているものと考えられた。
著者
米元 孝一 井上 繁 鮫島 斉 黒木 史郎 讃井 元 安間 舜 長田 寅之助 中田 典男
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1965, no.24, pp.1-10, 1965-11-20 (Released:2009-07-31)
被引用文献数
1

A new tea variety for Kamairitya was registred in 1965, and it was named "Yamanami, " This variety was develeped by the Tea Breeding Laboratory, Kawaminami Branch, Miyazaki-Pref. Agr. Exp. Sta., financially supported by M. A. F. "Yamanami" is a progeny of Chinese variety introduced from Hupeh Province, China, and was selected from the natural crossing seeds.This variety shows vigrous growing, high yield from young age, strong cold-resistane, and superior qualities of tea. It is a middle season variety, whose plucking time is 3 to 4 days later than that of "Takatiho."This variety is available in the Kyushu distict, and is recommended to cultivate in Kagosima, Kumamoto, Miyazaki prefectures.
著者
桑原 穆夫 竹尾 忠一 佐藤 哲哉 古畑 哲
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1959, no.13, pp.69-73, 1959-04-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4

紅茶の製造上欠くことのできない萎凋操作の条件中,空気の温湿度を取り上げ,その高低に基づく影響を,恒温恒湿器を使つて試験した。その結果,予備的試験ではあるが,温湿度の変化に対応する萎凋の速度・所要時間・茶葉温ならびに品質的に許される範囲,傾向などについて一端をうがうことはできた。終りに,測定に協力していただいた当室の渡辺,川上両氏に感謝する。
著者
竹尾 忠一
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.60, pp.50-53, 1984-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

中国,福建省,台湾省産の鳥龍茶の香気成分組成をしらべた。福建省産の色種,水仙,鉄観音,黄金桂および台湾省産木柵と,台湾省産文山,北埔との間には,香気成分組成に特異的な差が認められた。即ち前者は発酵度の軽度の包種茶系の茶でこれにはジャスミンラクトン,インドールが検出されたが,後者の発酵度の進んだ鳥龍茶系の茶には両成分が検出されなかった。また発酵度の進んだ茶は発酵度の進んでない茶よりも,高沸点部の芳香成分量が多かった。次に半発酵茶は焙焼香気成分である。1-エチルピロールー2-アルデヒドが香気中に検出され,火香の強い茶ほどその量は多かった。産地別の茶香気中のテルペンアルコール組成をみると色種,水仙,鉄観音はリナロールの組成比が高く,台湾省の文山,北埔はゲラニオールが多く含まれていて,それぞれ種間特性を示していた。最後に本試験に用いた茶は,三井農林株式会社,株式会社伊藤園より恵賜されたことを記して謝意に代える。
著者
水上 裕造 澤井 祐典 山口 優一
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.105, pp.105_43-105_46, 2008-06-30 (Released:2011-10-07)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

This research aims to identify key odorants in roasted green tea. The aroma extract dilution analysis revealed 25 odor-active peaks with the flavor dilution factors of ≥ 16. We identified 2-ethyl-3,5-dimethylpyrazine as the most important odorant in roasted green tea with the highest flavor dilution factor of 4096. In addition, tetramethylpyrazine, 2,3-diethyl-5- methylpyrazine were also detected as potent odorants with the high flavor dilution factors. These three alkylpyrazines would be key contributors to aroma of roasted green tea.
著者
坂本 孝義
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.124, pp.23-27, 2017-12-31 (Released:2020-01-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

傾斜釜を用いる釜炒り茶の起源には不明な部分があり,製法は記録に乏しいことから,製茶工程が機械化される以前の,佐賀県嬉野市における釜炒り茶の製法の聞き取り調査を行った。その工程は炒り葉→揉捻→第一水乾→揉捻→第二水乾→バラに広げて静置→締め炒りである。炒り葉の釜の温度は300℃以上で,茶葉がしんなりとなると扇風機を使って一気に蒸気を逃がすところは『茶箋』の製法に酷似している。揉捻後は乾くまで炒ると完成であるが,これは17世紀末の『農業全書』の製法と同じである。資料によると,嬉野製は生葉の炒りが重量減で30~35%とされ,茶の品質は形状が丸形で珠状となり,色沢は黄緑色,水色は金色濃厚とされる。現在では佐賀県や長崎県に傾斜釜が存在することからすると,中世に伝来したのは傾斜釜であったと推察するのが妥当であろう。傾斜釜を用いる釜炒り茶の製法は中国茶のイギリスへの輸出増加に伴う,つまり「輸出用のため量産能率本位」と説明する史料もあるが,輸出が増加する以前の『農業全書』に既に傾斜釜の製法があること,また製造時間を要することから「労力軽減」と考えた方が妥当である。乾燥道具を用いる製法もあった。焙炉を使用する製法は実演会等でも見ることができるが,茶焙炉を用いる製法については嬉野で聞くことができないのは,その後の機械製茶で消滅したと推察する。また,傾斜釜の嬉野製は熊本県内や宮崎県内でも導入された痕跡もみられるが,その後に訪れた機械製茶によって傾斜釜は直ちに姿を消し,今日では両県には傾斜釜を用いる釜炒り茶は無かったものと認識されていると考える。
著者
安間 舜
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.45, pp.13-16, 1977-03-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
2

煎茶用品種の早期選抜に資するため,本ぽ定植前の交配実生の新芽に出現するアントシアンと,その個体が成木になった時の新芽に出現するアントシアンの程度との関係を検討した。その結果11の煎茶用交配組合せの幼成木間の表現型相関はすべて有意であった。11組合せの相関係数の算術平均は0.409であった。これらの相関係数は当初期待していたほど高くはなかった。しかし今後調査法を改良し各個体の笛1葉が現わすアントシアンの発現程度を正確に評価すればこの相関関係はかなり高めることができると思われるので,そうなれば新葉の色による煎茶用品種の初期選抜は極めて有効な選抜法となり得る。なお幼木期の新芽のほうがアントシアンが濃く発現するとか,逆に成木期の新芽のほうが濃く出現するというような傾向があるかどうかを検討したがそのような傾向は認められなかった。
著者
坂本 孝義 中村 羊一郎
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.118, pp.118_43-118_47, 2014-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
16

因尾や宇目における釜炒り茶は傾斜釜を用いる嬉野製法の釜炒り茶であった。因尾においては大正以降の比較的新しい時代に傾斜釜が導入されて普及したと考えられる。また,昭和初期には玉緑茶の共同工場がつくられるが,静岡で生産されているグリ茶とは異なり,蒸気で蒸して釜で乾燥させる玉緑茶であった。 木浦鉱山では印度焙炉という特殊な道具を用いた印度製法による釜炒り茶がつくられていた。また,近隣の西山集落では釜で炒って揉むが,乾燥不十分のまま保管に移し,カマドからの熱と煙を利用して乾かしながら保管するという自家用の釜炒り茶があった。
著者
斎藤 嘉 落合 勝義 松本 五十生
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.47, pp.56-61, 1978-03-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
2

狭山茶の火入れによる香味の改善策として,和紙利用による火入れ機を開発したので,その使用方法について検討を加た。1) 試作した火入れ機では,毎分胴1回転×扇風機70回転(茶温97℃)と,胴3回転×扇風機70回転(茶温95℃)の火入れ処理が最も火入れ香が良好であり,茶温の推移から良い火入れ香味の発揚を促すためには,茶温で95℃前後が最も適切で,90℃以下では火入れ不足の傾向を認めた。品質の総合的な見知から,攪拌型(胴あぶり式)火入れに比べ試作機による火入れ香味が優れており,焙炉火入れに似た特徴のある香気が得られ,火入れ香の強い中にも柔らかい深みのある香気で,味は甘味を増すことが認められた。2) 試作火入れ機による火入れの目的は,上級茶に応用するため開発したもので,従来の胴あぶり式と比べ,締り度の強い茶ほど外観で色沢をそこなわずに火入れを行い,香味の発揚も容易である。また,茶が大型になるほど白ずれし,色沢を損なう傾向が認められた。おわりに,本試験遂行にあたり,火入れ機の試作については伊達機販株式会社,ならびに同社元埼玉出張所長成岡武司氏に深く感謝の意を表します。また,本試験中の火入れ香など分析および助言をいただいた農林省茶業試験場原利男室長ならびに久保田悦郎技官に深じんなる謝意を表します。
著者
岩堀 源五郎 原 利男
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.43, pp.39-43, 1975-08-15 (Released:2009-07-31)
参考文献数
2
被引用文献数
3

下級煎茶の最適火入れ条件を究明するため,回転型火入れ機を用い,茶火入れ中の茶温と品質との関係を調査し,凍のような結果を得た。(1) 下級煎茶の火入れ条件としては,取り出し時の茶温が110~120℃が良好な火入れで,温度範囲が狭いことが認められた。(2) 火入れ茶のHead space Vaporの香気成分の分析結果から,火入れによってジメチルサノレファイドが増加し,取り出し時の茶温約120℃くらいの時にジメチルサルファイド含量が最高となるような傾向が認められた。(3) 取り出し時の茶温と茶の表面色の関係を調べた結果,110℃以下ではほ:とんど変化はないが,それ以上に温度が上がると変化が激しく,とくに,120℃を越えると著しく褐変した。なお,この実験に際し,茶温測定の御指導をいただいた申野不二雄機械研究室長ならびにHead space Vaporのガスクロマトグラフによる分析に御助力いただいた土壌肥料研究室の池ヶ谷賢次郎技官ならびに製茶第3研究室の久保田悦郎技官に深く感謝いたします。
著者
武田 善行 和田 光正 根角 厚司 武弓 利雄
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.78, pp.11-21, 1993-12-15 (Released:2009-07-31)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

野菜・茶業試験場久留米支場で保存している茶遺伝資源について,新葉裏面の毛茸特性を調査した。中国種の系統はアッサム種の系統に比べて調査した毛茸4形質(太さ,長さ,密度,分布)において変異が小さかった。中国種は,毛茸が長く,密度が高く,しかも全面に分布する系統が多かったが,インドのダージリンから導入した中国種はいくぶんアッサム種の影響が認められた。アッサム種は毛茸が短く,毛茸密度は中~低い系統が多かった。また,毛茸の分布は全面ではなく,葉の内側に分布する系統が多く,中国種とは異なった。アッサム種に属するタイワンヤマチャの系統は葉面に毛茸を欠き,顕著な特徴を持っていた。毛茸の長さ,密度,分布パターンから23の毛茸の分類型を作成した。日本在来種および中国本土から収集した中国種は少数の分類型に集中したが,アッサム種では多くの分類型が認められた。
著者
田中 敏弘 松山 康甫 神嵜 保成 嶽崎 亮
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.63, pp.1-10, 1986-06-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7

凍霜害の程度とその後の整枝処理が茶芽の生育,品質に及ぼす影響を検討した。凍霜害の被害程度は,被害区分0 (被害率0%),I (同15~40%),II (同41~49%),III (推定50~75%),IV (推定76~99%),V (同100%)に分けられた。被害区分の異なる2.2~2.3期のやぶぎたと3,3葉期のゆたかみどりで,整枝区と無整枝区を設け,試験を行った。さらに,くりたわせで凍霜害を受けた新葉の葉傷み臭味を経日的に調査し,被害後15日目に品質,市場評価を行った。1) 被害区分I~IVにおいては,やぶきた,ゆたかみどりとも無整枝区が整枝区に比べ,新芽数,枠内新芽重収量が明らかに多く,製茶品質でもすぐれ,粗収益も多かった。2) 被害区分Vにおいては,やぶぎたの整枝区が無整枝区に比べ収量,製茶品質,粗収益でややすぐれたが,新芽の生育で は差異が認められず,ゆたかみどりでは両区ともほとんど差は認められなかった。3) 摘採期は整枝することにより概して遅れ,この程度は被害が弱いほど大ぎく,被害区分Vでは差異がなかった。また,粗収益も整枝処理により概して少なくなり,この減収割合も被害が弱いほど大きく,Vでは差異はなかった。4) 凍霜害後の葉傷み臭味は,2日目以降では経日的に軽くなるようであるが,枯死芽の混入割合が80%程度であると19日目において葉傷み臭味がやや残った。しかし,摘採時に20%程度の枯死芽を含んでいた製品は,凍霜害後15日を経過すると無被害の約70%の市場評価額であった。5) 以上の結果から2.2~3.3葉期において,凍霜害が新芽の全てについて上部より1~2節目で褐変した程度であれば,その後の対応としては整枝するより放任の方が適当と考えられる。なお,摘採時には,枯死芽をなるべく混入させないで収穫することも品質上効果があると考えられる。本試験に関して,農林水産省茶業試験場茶樹第3研究室長青野英也氏,当時当場栽培研究室長(現大隅支場長)の岡本信義氏の助言をいただき,官能審査に当っては加工研究室の松久保哲矢,花田十矢,大城光高,佐藤昭一の各氏のご協力をいただいた。ここにお礼申し上げる。
著者
鳥屋尾 忠之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1967, no.28, pp.25-31, 1967-12-22 (Released:2009-07-31)
参考文献数
16

やぶきた(k/+)×こうろ(k/k)のF1と,比較のために,他のこうろ種とアッサム種を用いて28形質を調べた。その結果,こうろ型と普通型との間には,葉の大きさと形,着花の多少,さし木発根性およびタンニン含量に有意な差がみられ,この両型の差異は,k遺伝子の多面的発現で説明されることがわかった。こうろ型の成葉は大きく,波曲が大で,花はほとんど着かず,タンニン含量は普通型よりも多かった。また,耐凍性・早晩性・クロロホルムテストによる発酵性は差異が認められなかった。こうろ型は葉の側脈数ときょ歯数が決定された後に,葉の形態形成の制御機構に異常が生じて,非常に大きく,かつ波曲の多い成葉が形成され,それに伴って二次的に,他の一連のこうろ型の特徴形質が発現するものと推定した。k遺伝子の多面的発現による遺伝子型相関について論じ,また,アッサム種とタンニン含量の多いことが,成葉の大きいことに関係があることを,こうろ種とアッサム種の相似形質との関連から推察した。