著者
将積 祝子 高柳 博次 阿南 豊正 池ケ谷 賢次郎
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.60, pp.59-65, 1984-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
11
被引用文献数
5

中国茶の白茶(Bai-cha),黄茶(Huang-cha),青茶(Quing-cha:Ooiong-cha-type)および黒茶(Hei-cha)の化学成分,色およびし好調査を行った。その結果を要約するとつぎのとおりである。1)一般化学成分含量は黄茶(Huang-cha)が煎茶の中級品に近く,白茶(Bai-cha)および青茶(Qing-cha)は煎茶の下級品に相当した。黒茶はバラエティに富み,蒸した後,堆積発酵するので,カテキン類酸化重合物が多く,各種成分が少なくなり,遊離アンモニアが多かった。2)白茶の色は暗オリーブ色,黄茶は淡黄色~オリーブ黄色,青茶はオリーブ黄色~黄褐色,黒茶は灰オリーブ~暗褐色であった。3)し好調査の結果は短大生に青茶が好まれ,消費者婦人団体は青茶は飲み易いとしてもそれほど好まなかった。料理専問家は白茶と青茶をとぎどきなら飲んでもよいと答えた。黒茶は料理専問家がまずいと答えた。終りに本稿を草するに当たり御懇切なる御稿閲を賜った製茶部長,竹尾忠一博士,アミノ酸・アマイド類の分析を担当して下さった天野いね氏に深甚なる謝意を表する。
著者
堀川 知廣
出版者
茶研報
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.65, pp.38-45, 1987
被引用文献数
1

Pestalotia longisetaの各種植物に対する病原性を明らかにする目的で,枝,茎から切り放した葉,および自然条件下で生育している葉に対し分生子懸濁液を有傷接種し,病斑形成の有無を調査した。前者の試験では39科80種(品種系統を含む)の植物に対し接種をした結果,11科19種の植物で病斑が形成され,かつ病斑上にP.longiseta分生子が形成された。この内,ヤポンノキ,ココヤシではすべての接種葉で病斑が形成され,イヌマキ,クロマツ,ヒノキ,クリ(5-6系統),ヒガンザクラ,オウトウ,ナシ(長十郎,新水),モチノキ,トウカエデ,タカオモミジ,カキ(富有,次郎)では接種葉の50%以上で病斑が形成された。イチゴ,ビワ,欧米系ブドウ(紅瑞宝),サザンカにおいても病斑形成が認められた。また,自然条件下で生育している葉を供試した試験では,イヌマキ,ヒガンザクラ,イチゴ,ヤポンノキ,タカオモミジ,カキ,およびチャ(やぶきた)で病斑が形成され,病斑上にP.longiseta分生子層が形成された。以上の結果からP.longisetaは多種の植物に病原性を示すことが明らかとなり,P.longisetaが茶園で突然発生し始めた原因の一つとして,チャ以外の植物からチャへの本菌の移行が考えられた。<BR>なお,一部植物の種の同定にあったては国立科学博物館筑波実験植物園育成研究室の松本定氏にご指導を仰いだ。厚くお礼を申し上げる。また,本報告文をまとめるにあたり,ご懇切なるご指導を賜った農林水産省茶業試験場病害研究室長成澤信吉博士に深甚なる謝意を表する。
著者
鬼木 正臣 浜屋 悦次 安藤 康雄
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.61, pp.7-11, 1985-06-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
3
被引用文献数
2

To investigate occurrence of resistant strains of the tea anthracnose fungus Gloeosporium theaesinensis against benzimidazole fungicides (Topsin M, Benlate), tea laeves affected by the disease were collected from 17 major tea producing prefectures in Japan. An isolate from each diseased leaf was examined on PDA media containing thiophanate-metyl (Topsin M) in concentration of 0, 1 and 100 ppm. The minimum inhibitory concentration (MIC) of several isolates was also examined.In 83 tea fields out of 145 tested the resistant strains were detected, although most of them were intermediate-resistant (1 ppm<inhibition<100 ppm). The highly resistant ones (100<inhibition) were obtained from only 5 fields. Resistant strain ratio of isolates from each prefecture ranged within 3.1-43.9% and the average was 16.2%.
著者
中野 敬之 大石 准
出版者
茶研報
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.77, pp.1-4, 1993
被引用文献数
1

秋整枝から翌春一番茶萌芽期前にかけて'おおいわ・せ,さやまかおり,やまかい,やぶきた,かなやみどり,おくひかり'における冬芽の芽長と幼葉数の推移を調査した。<BR>全ての品種において,芽長と幼葉数は秋整枝直後から増加したが,12月上旬頃には停止した。幼葉数の増加停止期は,芽長の停止期よりも早い傾向であった。<BR>翌年2月下旬以降の増加については,品種間差が認められた。即ち,芽長が増加したのは,'おおいわせ,やまかい,やぶきた'で,幼葉数が増加したのは,`やぶきた,かなやみどり,おくひかり'の中~晩生品種であった。また,この時期の芽長や幼葉数の増加量は,前年秋整枝直後から12月上旬までの増加量よりも少なかった。
著者
物部 真奈美
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.113, pp.113_1-113_9, 2012-06-30 (Released:2015-10-30)
参考文献数
34

放射能汚染による生体影響で危惧される影響の1つに「がん」がある。遺伝子異常の蓄積の結果,発がんに至ると考えられており,できる限りがんリスク要因を減らすことが重要である。また,生体は障害を防ぐ機構を備えており,その機能低下を防ぐことも重要であると考えられる。 報告されている放射線を用いた研究結果からは,緑茶の飲用による放射能汚染からの明確な防護効果を見出すことは難しい。しかし,これまでに報告されている緑茶の飲用による生体内抗酸化能の増加や免疫系への作用を考えると,緑茶の飲用が,個々が持っている障害への抵抗力を増加し,ひいては発がん抑制機構の一部を補助する可能性のあることが期待できる。期待できるといっても,緑茶を飲めば「がん」やその他病気にかからないということではなく,数あるリスクのうちのいくつかを減らす可能性があるとまでしかいえないのが現状である。
著者
野中 邦彦 廣野 祐平
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
no.112, pp.55-59, 2011-12
被引用文献数
1

東京電力福島第一原発事故発生後の2011年産一番茶において,平常値より高い濃度の放射性セシウム(以下,RCs) が検出された。当初,生葉に対して食品衛生法の観点からRCsの暫定規制値500Bq/kgが適用され,その後,荒茶および仕上げ茶に対しでも同じ500Bq/kgが適用されることになり,出荷停止となった地域が相次いだ。試験研究機関は,茶のRCs低減に向けた一刻も早い技術開発が求められている。 その技術開発の基礎となるのは, RCsがと守のような経路で新芽に取り込まれたかを明らかにすることである。これまで,多くの農作物においてRCsの移行係数が示されてはいるが,茶についての報告は見当たらない。RCsは土壌に固定されやすいため,農作物への移行は少ないとされているとはいえ,酸性土壌で栽培された作物への移行係数が1を超える例も報告されており,強酸性土壌の多い茶屈では移行係数を確認しておく必要がある。そこで,ニ番茶生育期において,土壌や成葉からのセシウムの吸収と新芽への移行を解明する自的で,セシウムを施用するトレーサー実験を行った。なお, RCsがすでに茶樹に取り込まれた状態では新たに土壌から吸収されたものを見分けることができないので,実験には安定セシウムを用いた。
著者
三ッ井 稔
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告
巻号頁・発行日
vol.1954, no.3, pp.5-10, 1954

1.昭和26年9月から約1年間にわたり,25種の雑草種子を用い,室内で2,4-Dの1,000,10,000,50,000,100,000及び200,000倍液で処理した発芽床により発芽試験を行うとともに,植木鉱に種子を播き,反当50,100,150,200及び300gの割合で撒布して発芽及びその後の生育状態を調査じた。<BR>2.雑草種子の2,4-Dに対する抵坑力は種類により異なり,ホモノ科,タデ科が強く,カヤツリグサ科が次に強く,キク科は弱かつた。<BR>3.2,4-Dを吸収した芽生は一般に畸形化して生育が停止し,特に根の伸びが悪く,甚しいものは枯れた。<BR>4.室内試験では1,000~5,000倍液が幼根の発育を,10,000~200,000借液が子葉(第1本葉)の展開を阻害した。なお覆土区では被害が増大した。<BR>5.植木鉢試験では,播種後3~4日目に2,4-Dを撒布した場合,センダングサ,ヤハズソウ,カヤツリグサメヒシバ,アキメヒシバは反当50gで発芽が抑制されたが,播種後1ヵ月目に撒布した第2次試験では影響が認められなかつた。<BR>終りに,この試験を行うにあたり,御指導を賜わつた志村喬博土,中山仰技官に深く謝意を表する。
著者
中野 敬之
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.105, pp.1-11, 2008

三番茶を8月1日に421kg/10aで摘採した早期摘採区,8月8日に812kg/10aで摘採した晩期摘採区および不摘採区において,10月19日に樹冠を層別に刈り取って,秋季での樹冠の群落構造を調査した。その結果,三番茶摘採区は不摘採区に比較して,二番茶摘採位置の+4cmより上の樹冠上位の葉重,枝数,芽数が少なかったが,二番茶摘採位置の+2cmより下の樹冠下位での葉重が多かった。この調査結果より秋整枝後の樹冠の構成について推計した結果,樹冠面の芽数は,秋整枝位置の僅かな上下で大きく変動する特性があり,高めの秋整枝では三番茶不摘採区の方が多かったが,低めの秋整枝では三番茶摘採区の方が多かった。秋整枝後の樹冠について,三番茶の摘採の有無で比較すると,枝重と比葉重は摘採区が大きく,蕾数は不摘採区が多かった。秋整枝後の樹冠について,三番茶の摘採時期の違いを比較すると,早期摘採区の方が樹冠の枝重が大きかった。葉重は三番茶摘採の早晩による差がなかったが,LAIは晩期摘採区の方が大きく,比葉重は早期摘採区の方が大きかった。秋整枝後の樹冠表層の芽数は早期摘採区の方が多く,特に側芽数が多かった。
著者
内村 浩二 勝田 雅人 三浦 伸之
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.103, pp.51-60, 2007

(1) 茶葉中無機元素含量は,一心三葉の分析ではMg,BaおよびCu含量に,荒茶の分析ではBaに品種間差が認められた。<BR>(2)荒茶中の12元素(K,Ca,Mg,Al,B,Ba,Cu,Fe,Mn,Ni,Sr,Zn)を用いた主成分分析結果から,第1主成分で因子負荷量が高い値を示したBa,Ca,Srはシラスとそれ以外の土壌を,第2主成分で因子負荷量が高い値を示したAlとMnは火山灰と安山岩あるいは花崗岩を概ね分類する傾向にあった。<BR>(3) 判別分析の結果,土壌の母材ごとの4群の産地判別には,Ba,Mn,K,B,Sr,Znの6元素が有効であった。得られた判別式の信頼性をモデルに用いなかった26点の荒茶試料で検定した結果,73%の判別適中率であった。<BR>(4) 火山灰とその他の土壌の2群の産地判別には,Mn,Ba,K,Ni,Znの5元素が有効で,その判別適中率は80%であった。
著者
太田 勇夫 鳥井 秀一
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1960, no.15, pp.77-80, 1960-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4

以上の実験の結果から,この方法がカフエインの微量定量法として実施できることがわかつたので,その操作法を次に述べる。茶葉粉末0.5gを小型蒸発皿にとり,5%炭酸ナトリウム溶液0.5mlを加えて潤し,1時間放置後,前報の抽出器に移し,クロロホルムを加えて2~3時間抽出する。この抽出液を25mlに定容して試料液液とする。泳動口紙はあらかじめホウ酸ナトリウム溶液でしめし,600Vで5~10分間電流を通しておく,一たん電流を止めてから,前記試料溶液の0.05~0.1mlを原点からあまり広がらないように付けて3時間泳動を行なう。泳動を終つた口紙は乾燥(あまり高温にしない)し,暗所で紫外線を照射して暗点を検出し,その位置に鉛筆で印をつけておく,その前後約3cm幅の口紙を図4のような形に切り,脱脂綿を詰めたガラス管のサイフォンに連結し,温水で毎分1滴の速度で抽出して5mlに定容する。この溶液の272.5mμと305mμの吸光度を光電分光光度計で測つて,305mμの吸光度から口紙の不純物による272,5mμの吸光度を(2)式で算出して可検液の272.5mμの吸光度から差し引く。この値はカフェインに基づく吸光度になるから,これを(2)式に代入すれば可検液のカフェイン濃度がppmとして求められ,これを茶葉の乾物%に換算する。この方法はカフェイン量で10~40μg,試料溶液で0.05~0,1mlという微量で定量でき,操作時間も現行法とほほ同じくらいで,労力はずつと少なくてすむから,カフェインの微量定量法として推獎できる。ただ口紙に滴下する可検液量が0.05~0.1mlという小量であるため,精密なミクロピペットと正確な技術が要望される。現行法に比べ,ときに変異係数の大きくでるのはおもにこの点GC原因するのではないかと思われる。なお今後クロロホルムによる茶葉からの抽出液を5~10mlに定容できるようにすれば,茶葉1枚程度の試料で定量も可能と思われる。終わりに,紫外線フィルターを分与下さつた,理化学研究所,岩瀬研究室に厚くお礼を申し上げる。
著者
吉田 勝二 今西 実
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告
巻号頁・発行日
vol.1976, no.44, pp.32-38, 1976

奈良県における昭和48年度の品評会茶150点のうち,上位50点,下位50点からそれぞれ任意に抽出し,計32点を対象として,官能審査評点と茶無機成分含有率との関係について調べた。その結果を要約すると次のとおりである。<BR>1) 上位グループの全窒素含有率と滋味との間に5%水準で負の相関が認められた。<BR>2) カルシウム含有率と滋味,香気および内質全体との間に5%水準で負の相関が認められた。また下位グループにおいて5%水準で水色との間に正の相関が認められた。<BR>3) 下位グループにおいてマンガン含有率と香気との間に5%水準で負の相関が認められた。2000ppm以上を含有する場合には明らかに劣った。<BR>4) 鉄含有率と水色および内質全体との間に5%水準で負の相関が認められた。また上位グループにおいて滋味との間に5%水準で負の相関が認められた。<BR>5) 鉄とマンガン含有率との間に5%水準で正の相関が認められた。
著者
松本 五十生 落合 勝義 船越 昭治 中村 公一 真野 光雄 森田 貞夫
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.74, pp.1-9, 1991

緑茶の消費向上と嗜好の多様化に対応するため,緑茶にない芳香をもち,苦渋味の少ない新香味茶の製造方法について検討し,図2に示す技術を確立した。<BR>(1)萎凋と発酵は煎茶用自動乾燥機を用い,温風温度35~40℃で30分が適当であった(重量減7~10%)。<BR>(2)攪拌は中揉機に金網胴をとりつけ,60分処理で好結果が得られた(重量減15%)。<BR>(3)静置は生葉コンテナーを用い,室温(27℃)に60分放置した。これにより強い芳香が発揚した。<BR>(4)マイクロ波加熱による殺青(ブランチング)は出力4KW,照射時間50秒,重量減45~50%が良好であった。<BR>(5)整形及び乾燥は揉捻機,再乾機,乾燥機を用い,揉捻15分,再乾と乾燥はともに60℃の排気温で,それぞれ40分が好適であった。<BR>(6)仕上げは火入れを行って青臭みを除き,9号で切断し,10号の篩目で仕分け,整形した(平均粒度1.27mm)。<BR>(7)一般消費者に対して,代表的試製茶の嗜好調査を実施したところ,46%の人が好き,やや好きと答えており,市販された場合購買嗜好も高く明るい見通しを得た。
著者
足立 東平
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1956, no.7, pp.81-85, 1956-04-30 (Released:2009-07-31)
著者
後藤 哲久 長嶋 等 吉田 優子 木曽 雅昭
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.83, pp.21-28, 1996-07-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
23
被引用文献数
6 17

市販録茶試料7茶種85点の8種のカテキン類とカフェインの含有量を測定した。玉露,抹茶は煎茶,玉緑茶と比較してやや多くのカフェインを含む一方総カテキン量は少なかった。同じ茶種の中では,上級茶は一般に下級茶より多くのカフェインを含み総カテキン量は低かった。個々のカテキン類の中では,エピガロカテキンガレート(EGCg)の含有量が最も多く,総カテキン量の50~60%を占め,エピガロカテキン(EGC)と合わせた量は総量の約80%であった。遊離型カテキン(EC,EGC)の含有量は,エステル型カテキン(ECg,EGCg)の,煎茶,玉緑茶では半分以下,玉露,抹茶では1/3以下であった。玉露,抹茶では多くの試料からカテキン(C)が検出されたが,それ以外の微量カテキン類はほとんど検出されなかった。ほうじ茶のカテキン類は,加熱による変化を受けるためか量的にも少なく,その組成も他の茶種と大きく異なっていた。
著者
和田 光正 中田 典男 本荘 吉男
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.54, pp.47-58, 1981
被引用文献数
1

寒冷地,温暖地,暖地の3産地から茶期別に初期・中期・末期に分けてそれぞれ摘採したやぶきた無覆茶園の原料について,茶芽の形態と化学成分を調査検討した。<BR>1.茶芽の形態については,寒冷地と暖地のものが全般的に大きく,温暖地の茶芽が小さい傾向がみられた。第3葉の葉長,葉厚は葉幅の大きさによって左右される傾向がみられた。<BR>2.茶葉の水分含量は,一番茶では暖地のものが多い傾向を示したが,二番茶では産地間の差がみられなかった。また,全窒素含有量は産地の差が少なく,タンニン含有量では,一番茶は寒冷地のものがやや多い傾向がみられたが,二番茶になると暖地のものが若干多くなる傾向がみられた。全ペクチン,粗せんい,粗でんぷん,可溶分は産地間の差がなく,可溶性窒素,カフェン態窒素は全般的にみて暖地のものが高い傾向であった。また,アミノ酸含有量は,一番茶では暖地の原料が多いが,とくに主要アミノ酸の多いのが注目された。<BR>最後に,この試験のために試料の収集,調査に御協力頂いた埼玉県茶業試験場,静岡県茶業試験場,鹿児島県茶業試験場の方々,ならびアミノ酸の分析に御協力頂いた茶業試験場前化学研究室長・中川致之博士,また,とりまとめにおいて御助言頂いた枕崎支場製茶研究室・岡田室長に深甚なる謝意を表します。
著者
谷口 知博 槐島 芳徳 松尾 啓史 藤田 進 龍野 利宏
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
no.113, pp.81-91, 2012-06

釜炒り茶と煎茶の荒茶カテキンおよびカフェイン含有量に差がなかったが,浸出液では総じて釜炒り茶が煎茶より低く,例えば1~3煎の合計でみた場合カテキンは約30%,カフェインは約20%煎茶に比べ少なかった。煎茶は,浸出条件が異なった場合でも実験区間のカテキンおよびカフェイン含有量に差がみられなかったが,釜炒り茶は浸出時間や60℃~100℃の浸出温度,浸出回数でカテキンおよびカフェイン含有量に差がみられ,粗揉,中揉を加えずに製造された釜炒り茶が最も少ない結果となった。これは,釜炒り茶の内容成分は煎茶よりも溶出しにくく,その理由は茶葉に対し釜炒り茶の製茶工程では煎茶ほど揉圧が加わらないからであり,釜炒り茶の中でも揉圧を加える工程が最も少ない粗揉,中揉を加えずに製造された釜炒り茶でカテキンおよびカフェイン含有量が少ない結果になったことから,茶葉へ揉圧を加える時間の長さがカテキン類およびカフェインの溶出割合へ影響していると考えられる。
著者
沢村 信一 加藤 一郎 伊藤 恵利
出版者
[出版者不明]
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
no.96, pp.57-62, 2003-12 (Released:2011-03-05)

荒茶の微生物数を低減化させるために、4つの観点に注目して調査を実施したところ、以下の点が明らかとなった。1)生葉の洗浄によって、約50%の一般生菌数の減少が認められたが、効果的な除菌方法とは言えなかった。2)蒸熱時間を長くすることによって、荒茶の一般生菌数は減少したが、茶の品質に与える影響が大きく、適切な処理方法とは言えなかった。3)乾燥機における茶温の積算温度あるいは、最高温度と一般生菌数に比較的良い負の相関が得られたことから、乾燥機の適切な温度管理が重要であることが明らかとなった。4)製造日毎の二次汚染状況の調査において、一番茶・二番茶では、一般生菌数の多い工場があった。これは、製茶機械内部に茶葉が付着・蓄積し、そこで微生物が増殖するためと思われる。よって、日々の清掃を重視することによって、荒茶の一般生菌数が低減化することが明らかとなった。
著者
鳥山 光昭 松元 順 藤嶋 哲男
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.58, pp.20-27, 1983-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

有機物施用茶園における,土壌中の可給態窒素含量と収量,品質との関係を明らかにするために,堆肥を6年間毎年0,1,2,4t/10a施用した茶園を供試し,各堆肥施用区のうね間土壌中の無機態窒素濃度を12,24mg/乾土100g(堆肥2t区は24mgのみ)の2段階とし,処理期間における可給態窒素および無機態窒素の含量と収量,品質との相関を求めて比較検討した。その結果は次のように要約される。1) 土壌中の可給態窒素含量は,堆肥施用量を増すほど増加し,4t区では20~22mg/乾土100gで,無施用区の3.6倍に増加した。なお,可給態窒素含量の時期別変動をよ割合に小さかった。2) 一,二番茶期における新芽中の総窒素量は,可給態窒素+春・夏季の無機態窒素の含量との相関が最も高く,可給態窒素と無機態窒素は茶樹の窒素吸収に対する窒素供給源としては,互いに補完的な役割を果しているものと推察された。3) 一番茶の収量は春季の無機態窒素濃度と,二番茶の収量は可給態窒素含量との相関が高かった。一番茶の煎茶品質では各窒素形態の含量との相関関係に有意性は認められなかったが,二番茶の煎茶品質は春・夏季の無機態窒素濃度との相関が高かった。可給態窒素の生産能率は品質よりも収量に対して,また一番茶期よりも二,三番茶期において高いものと推察された。
著者
古賀 亮太 井手 勉 中島 征志郎 永尾 嘉孝 石井 研至
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.75, pp.1-11, 1992-06-10 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4

茶園における有機物資材の長期連用が,土壌の理化学性ならびに茶の収量,品質に及ぼす影響を検討した。(1) 有機物の施用によって14年間に,全炭素含量が1.5~3倍,全窒素含量が1.3~2倍,陽イオン交換容量が1.2~1.6倍に増加した。しかし,土壌pHならびに有効態リン酸には有機物施用の効果は明らかでなかった。(2) 有機物資材の中では,稲ワラは速効的で早期に効果を発現し,収量,品質が向上した。(3) 野草(ススキ)は分解が遅いために非常に遅効的で,投入後10年以上を経て稲ワラと同等の効果を現し,その後は効果が増大する傾向が見られた。(4) 牛糞厩肥は速効的であり,土壌理化学性の改善,茶品質の向上には最も効果が高かった。しかし,本試験では収量の増加は少なかった。(5) 肥料の種類では,有機配合肥料の方が収量,品質ともにやや優れた。