著者
塩見 昌裕 神田 崇行 ミラレス ニコラス 宮下 敬宏 ファーセル イアン モベラン ハビア 石黒 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-13, 2006-01-01
被引用文献数
2

本論文では, ヒューマノイドロボットが人間と対面コミュニケーションを行うための中心視と周辺視を統合した顔追跡機能の実現について報告する. 我々のアプローチでは中心視と周辺視をパーティクルフィルタを用いて統合することでロバストに顔追跡, 注視を行う機能を実現した. 特にロボットが意図伝達のジェスチャのために人の顔以外の物体を見ている際は周辺視を利用し, 顔を注視する際には中心視と周辺視を統合することで常にロバストな顔注視が可能になった. また, ロバストな顔追跡を行うことで, 対面コミュニケーション時においても従来の表情認識や発話検出の技術を適用可能になった.
著者
辻 裕之 依田 拓郎 徳増 眞司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.7, pp.1686-1689, 2007-07-01
被引用文献数
2

本論文では,ポアソン画像合成による良好な結果を保証するために,ユーザが指定したオブジェクト境界線をChan-Veseの動的輪郭モデルに基づき最適化する手法を提案する.
著者
橋本 和幸 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.1762-1772, 2011-11-01
被引用文献数
1

近年,政策やサービスなどの評判を調査するためにアンケート形式による調査が増加しているが,回収率が低落傾向にあることや,人的コストが増加するなどの問題が生じている.一方,Web上にはユーザの意見を含む評価情報が多数存在している.そこで本研究では,評判傾向予測システムの構築を目的として評判傾向の時間的変化とその原因をマイクロブログから抽出する評判傾向抽出エージェントの実現を目指す.特に本論文では,評判傾向の抽出と評判傾向が変化した原因の抽出に注力する.評価情報の感情を抽出するセンチメント分析に着目し,回帰式から評判傾向の変化点を抽出した後に,変化点におけるトピックをチャンキングにより抽出する手法を提案する.本手法は,従来の評価判定法であるp/n判定にセンチメント分析を組み合わせることで,p/n判定単体よりも人手による調査と相関の高い時系列変化を抽出できる点が特徴であり,政治及びテレビドラマに関するコンテンツを対象に実際の支持率,視聴率に対する評価実験を実施した結果,政治(自由度調整済決定係数R'^2(p/n判定単体:0.22,提案手法:0.60)),テレビドラマ(自由度調整済決定係数R'^2(p/n判定単体:0.26,提案手法:0.56))ともに相関の高い時系列変化を抽出できることが確認できた.
著者
白鳥 貴亮 中澤 篤志 池内 克史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.2242-2252, 2007-08-01
被引用文献数
6

近年コンピュータグラフィックスの分野では,自然なキャラクタのアニメーションを生成する手法が数多く提案されてきている.しかし,人間の振舞いの印象を大きく左右する表現を考慮した手法はほとんど提案されていない.そこで本論文では,表現が重要な要因となる舞踊動作を対象として,入力される音楽信号から舞踊の表現に関係する音楽情景を解析し,その結果に合った舞踊動作を生成する手法を提案する.これにより従来手法では不可能であった,音楽に合った豊かな表現をもつ舞踊動作を生成することを目的とする.動きデータからは動きのリズムと盛り上がりの特徴量を,音楽データからは楽曲構造解析によってセグメント分割し,特徴量としてリズム,盛り上がりを抽出する.舞踊動作生成時は,まず構造解析によって得られる音楽セグメント内のリズム成分と高い相関を示す動きの候補セグメントをすべて抽出する.そして最後に盛り上がり成分の相関を求めることで最適な動きセグメントを選択し,連結することで舞踊動作が生成される.様々な楽曲や動きデータに適用して実験を行い,その有効性を示す.
著者
富永 英之 石北 朋宏 有坂 有紀子 樋口 徹也 織内 昇 遠藤 啓吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.1708-1714, 2008-07-01

分子イメージングとは,生体内で起こる様々な生命現象を外部から分子レベルでとらえて画像化することであり,様々な画像装置が開発されている.最近,分子イメージングに最も適した手技として,社会的にも注目を集めているのはPETといえよう.PETとは放射性物質で標識した薬剤(トレーサー)を投与し,細胞及び組織の機能をイメージングする方法である.日本では2002年に[^<18>F]FDG(2-deoxy-2-[^<18>F]fluoro-D-glucose)というトレーサーが腫瘍に対して保険適用ができるようになり,これまでごく一部の施設で使われていたものが,多くの病院で利用されるようになった.またPETは[^<18>F]FDG注射液を静注することだけで検査ができる低侵襲な(患者の痛みなどの負担の少ない)方法であり,ほぼ全身を診断できるということでがん検診にも利用されるなど急速に普及している.PETはFDGという薬剤を注射することでほぼ全身の腫瘍が分かり,苦痛の少ない方法と注目されている.PETは生体内の機能をイメージングすることができるため,腫瘍に対して様々な角度から研究されている.
著者
鳴海 真里子 梅澤 猛 今井 倫太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.37-50, 2008-01-01

本研究では,環境中に存在する物体に付加したセンサデバイスからの情報に基づき,人間・ロボット間のインタラクションの演出を選択する演出選択システムi-Director+を提案する.人間同士のインタラクションでは「今日は暖かいですね」といった実世界の情報に基づく対話により話者間の親密度が増し,会話がはずむ.しかし,多くの人間はロボットが感覚や感情をもつと想定していないので,実世界情報に基づくインタラクションを人間・ロボット間で実現することは困難である.i-Director+は人間とロボットのインタラクションを積極的に演出するために,演出と呼ばれる行動ルールをもつ.演出はセンサ情報に基づき選択される.また,i-Director+はShynessという概念を用いて演出を分類しており,演出に対する人間の応対のしやすさも考慮して演出選択を行う.更にロボットの存在する環境が人間の介入やロボットの移動により動的に変化するので,センサ情報の変化に迅速に応じて演出を選択し,人間の注目度の高い事象に対する演出を行う.本論文では,i-Director+をコミュニケーションロボットRobovie上に実装した.センサにはCrossbow社のMOTEを用いた.実際にi-Director+を動作させた結果,環境の動的な変化に基づいた演出の変更や適切な難易度の演出を選択できることが確認できた.
著者
小野口 一則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.1998-2008, 2007-08-01

本論文では,雪や霧による視界不良時においても有効な移動体検出手法を提案する.降雪時や霧が濃い場合,視界は短時間で大きく変動する.また,吹雪など降雪量が多い場合には,各画素の輝度値がフレームごとに激しく変化するため,画素単位で輝度の変化を比較する手法では誤検出が多発する.これらの問題点を解決するため,画像を一定サイズの格子ブロックに分け,各ブロック内で蓄積フレーム数が異なる二つの輝度ヒストグラムを求め,その間の相関を算出することで移動体を検出する手法を提案する.雪が激しく降っている状況において実験を行った結果,本手法が視界不良時においても有効であることが確認できた.
著者
野口 和人 黄瀬 浩一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1135-1143, 2009-08-01
被引用文献数
5

局所特徴量を用いた特定物体認識において,認識率,処理時間,メモリ量について良いバランスを実現することは重要な問題である.局所特徴量は高い識別性をもつことから,高い認識率を実現することは困難ではないものの,その前提として長い処理時間や大きなメモリ量が要求されるため,大規模化の障害となっている.本論文では,認識率にあまり影響を及ぼすことなく,処理時間やメモリ量を削減する手法について述べる.処理時間の削減については,近似最近傍探索が有効であることを述べるとともに,従来法であるANNと比べて,ハッシュを用いた,より認識に有効な手法を提案する.メモリ量については,局所特徴量を表す特徴ベクトルに対してスカラ量子化を適用することにより,簡単に削減可能であることを示す.10万画像を用いた認識実験の結果,各次元の表現に用いるビット数を16ビットから2ビットに減少させても認識率に影響をほとんど及ぼさないこと,提案手法によって,認識率98.1%,処理時間119.7msを実現可能であることが分かった.また,1万画像を用いたANNとの比較では,同程度の認識率を実現するための処理時間,メモリ量が,それぞれ1/4,1/3であることも確認した.
著者
武富 貴史 佐藤 智和 横矢 直和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1440-1451, 2009-08-01
被引用文献数
15

拡張現実感において,現実環境と仮想環境の幾何学的な位置合せを実現するためには,カメラの位置・姿勢を推定する必要があり,現在までに様々なカメラ位置・姿勢推定手法が提案されている.中でも,ランドマークデータベースを用いたカメラ位置・姿勢推定手法は,屋内外を問わず利用でき,広域な環境を対象とした場合にもカメラ位置・姿勢推定の誤差が累積しないという特長をもつ.しかし,従来手法ではデータベース中のランドマークと入力画像上の自然特徴点との対応付け処理に多くの計算コストを必要とするため,実時間でのカメラ位置・姿勢の推定が困難であるという問題がある.そこで,本論文では連続フレーム間でのランドマークの追跡とランドマークへの優先度情報の付加により,対応付け処理において用いられる対応点候補数を削減することで,実時間でのカメラ位置・姿勢推定処理を実現する手法を提案する.実験では,従来手法との比較によって計算コストの削減効果を検証する.また,実時間処理可能な試作システムを用いた複数のアプリケーションへの応用例を紹介し,提案手法の有効性を示す.
著者
嶺 竜治 亀山 達也 高橋 寿一 古賀 昌史 緒方 日佐男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.868-875, 2009-06-01
被引用文献数
1

文字認識と単語レイアウト解析技術を用いて,紙文書の文字情報とサイバー空間のディジタル情報のリンクを張る手法を提案する.これまでに,WebサイトのURLが埋め込まれた二次元コードをカメラ付き携帯電話で認識し,そのWebサイトへ接続する技術が実用化されている.しかしながら,二次元コードを印刷するために文書レイアウトが制約を受けたり,印刷する二次元コードの数に制限があるという問題があった.提案する手法は,文書やページごとに紙面上の単語の並びが異なることに着目し,認識した複数の単語の相対位置関係を解析し,文書の種別や読取り位置を特定する手法である.そして,読取り位置とURLを対応づけたデータベースを作成しておけば,二次元コード等を文書に印刷することなくハイパリンクが実現できる.文書数4種,総単語数約9400の文書テキストデータを用いた原理実験で,97%の精度で文書種の特定を,また文書種が特定できれば約98%の精度で正しい単語位置を特定できることが分かった.また,カメラ付き携帯電話とPCを用いたプロトタイプを開発し,実際の携帯電話通信網での動作を確認した.今後は実験の規模を拡大するとともに,本方式を用いた様々なサービスの検討を行う予定である.
著者
堤 怜介 加藤 正治 小坂 哲夫 好田 正紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.305-313, 2006-02-01
被引用文献数
4

本研究では話し言葉の音声認識で問題となる各種変動要因のうち,不明りょうな発音などを中心とした発音変形の問題について検討する.一般に発音変形への村処として,一つの表記に対し想定される読みを複数登録する方法がとられる.しかし単純に読みを増加させるとマッチングの対象が増加し,逆に認識時に悪影響を及ぼす.そこで本研究では発音変形の言語的な偏りを利用するため,発音変形を考慮した形態素解析データに基づく言語モデルを提案する.以上を実現するため,「日本語話し言葉コーパス」(CSJ)の書き起こしテキストを利用して,約95万語からなる発音変形のエントリを含む学習テキストを作成,それに基づき言語モデルを学習する.CSJに含まれる講演音声の認識実験を行い,4講演の平均で単語誤り率(WER)の改善率は26.5%を達成し,話し言葉の認識においては,発音変形への対処が重要であることを示した.また言語モデルや音響モデルの教師なし適応法を導入することにより,更なる性能向上を目指した結果,WERが適応なしの場合の21.8%から,言語モデル及び音響モデルの教師なし適応を行った場合で17.6%に減少した.
著者
宇都 雅輝 植野 真臣 Masaki UTO Maomi UENO
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18810225)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.5, pp.459-470, 2020-05-01

近年,学習者の実践的かつ高次な能力を測定する手法の一つとしてルーブリック評価が注目されている.ルーブリックは評価者の主観による評価基準をより客観的にするためのツールであるが,それでも評価がパフォーマンス課題や評価者,ルーブリックの評価観点の特性に依存してしまうことが指摘されてきた.この問題を解決する手法の一つとして,これらの特性を考慮して学習者の能力を測定できる項目反応モデルが近年多数提案されている.しかし,既存モデルは学習者・課題・評価者・評価観点で構成される4相の評価データに直接には適用できず,課題・評価者・評価観点の特性を同時に考慮した能力測定は実現できない.また,ルーブリック評価の評点は一般に段階カテゴリーとして与えられ,各カテゴリーに対する評価基準は評価者と評価観点の特性に依存する.しかし,既存モデルでは評価基準は評価者と評価観点のいずれか一方にのみ依存すると仮定している.以上の問題を解決するために,本論文では,評価観点と評価者の評価基準を考慮して,ルーブリック評価の4相データから学習者の能力を測定できる新たな項目反応モデルを提案する.また,シミュレーション実験と実データ実験を通して提案モデルの有効性を示す.
著者
縄手 雅彦 佐藤 基次 森本 大資 藤川 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.763-770, 2007-03-01
被引用文献数
5 3

上肢の機能に障害がありキーボードを使用して文字入力できない人のためのソフトウエアキーボードに必要な機能を検討した.アテトーゼなどにより机上のマウスを操作できない場合には文字入力はハンディマウスやトラックボールマウスを用いてソフトウェアキーボードにより行われることになるが,標準のスクリーンキーボードはキーサイズが小さく使いづらいことが問題になる.そこで,日本語入力として効率の良い50音順配列をもち,カーソル移動を移動平均法により平滑化する機能を実装したキーボードを開発した.上肢の機能障害をもつ被験者2名にハンディマウス及びトラックボールマウスを用いて文字入力実験を行ってもらったところ,移動平均を用いると文字入力が改善されることが確認された.文字入力にかかる時間には大きな変化はないものの,カーソル移動において行き過ぎることが減少し,ねらったキー上でクリックしやすくなることにより文字入力が楽になったと推測される.
著者
清水 俊幸 安島 雄一郎 吉田 利雄 安里 彰 志田 直之 三浦 健一 住元 真司 長屋 忠男 三吉 郁夫 青木 正樹 原口 正寿 山中 栄次 宮崎 博行 草野 義博 新庄 直樹 追永 勇次 宇野 篤也 黒川 原佳 塚本 俊之 村井 均 庄司 文由 井上 俊介 黒田 明義 寺井 優晃 長谷川 幸弘 南 一生 横川 三津夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2118-2129, 2013-10

スーパーコンピュータ「京」の構成と評価について述べる.「京」はスパコンの広範な分野での利活用を目指した10PFLOPS級のスパコンである.我々は,デザインコンセプトとして,(1)汎用的なCPUアーキテクチャの採用と高いCPU単体性能の実現,(2)高いスケーラビリティのインターコネクトの専用開発,(3)並列度の爆発に抗する技術の導入,(4)高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性の実現を掲げ,2011年にそのシステムを完成させた.HPC向けCPU,SPARC64 VIIIfxと,スケーラビリティの高いTofuインターコネクトを専用に開発し,並列度の爆発に抗する技術としてVISIMPACTを実装した.冷却やジョブマネージャ等により,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性を実現した.「京」は2011年6月と11月にTOP500で世界一となった.また,複数のアプリケーションで高い実行効率と性能を確認し,スパコンとしての高い実用性を示した.
著者
浜口 斉周 道家 守 林 正樹 八木 伸行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.2194-2205, 2006-10-01
参考文献数
14
被引用文献数
7

我々は,ブログを書くような感覚で,だれでも簡単にテレビ番組を制作し,公開できる,インターネットテレビシステムを開発した.これを実現するためにテレビ番組型コンテンツを台本と演出,素材という三つの部品に分割し,別々に制作・流通させる手法を考案した.制作ユーザはワープロ型ツールで台本を書き,用意されている演出を選び,素材をリンクするだけで,簡単にテレビ番組を作り,サーバにアップロードして公開することができる.視聴ユーザが公開されている番組を選択すると,その番組を構成する台本,演出,素材がダウンロードされ,視聴クライアント側で台本・演出・素材が組み合わされ,コンピュータグラフィックスや音声合成により番組として合成・再生され,番組を視聴することができる.システムの試作及び評価実験により,一般ユーザでもテレビ番組を容易に制作し,公開できることが確認された.
著者
田中 譲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.663-674, 2010-06-01
参考文献数
32

本論文では知識連携のタクソノミ,必要性,実現技術に関して述べる.知識連携には,意味的連携,サービス連携,ビュー連携の三つの側面がある.それぞれの知識連携はこれらの一つ以上の側面をもつ.論文の後半では,ウェブアプリケーションを含むウェブリソースのアドホック知識連携に関して述べる.この論文は,筆者のミームメディアに関する研究と,これに基づいたアドホック知識連携に関する研究を概観し,ウェブ自体をミームメディアへと拡張したミメティックウェブのアーキテクチャを提案する.ミメティックウェブでは,すべてのユーザが拡張ウェブリソースの再編集と再流通を行うことによって,拡張ウェブリソースの進化が加速される.最後に,ミメティックウェブの実現基盤技術として,新しいミームメディアシステムであるWebble Worldを提案する.Webble WorldはSilverlightプラグインを用いて開発されたウェブトップで動作可能なミームメディアシステムで,クライアント側にミームメディアシステムのカーネルをインストールすることなく利用可能なシステムである.
著者
武田 真人 矢田 紀子 長尾 智晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.1631-1639, 2011-10-01
被引用文献数
1

人は不審物に関する情報がなくても,普段見かけない物に注目し意識を向けることによって結果的に不審物を見つけることができる.このような検知が可能なのは,環境を繰り返し観測することによって次第に反応しなくなるように刺激が記憶されたり,反応しなくなるような領域が形成されたりすることで環境の通常状態といえるものが記憶されているためと我々は考えている.そこで本論文では,監視カメラに代表される固定カメラからの映像を用い,環境に応じてそのような通常状態を表現するネットワークモデルを提案する.実験では,車両や歩行者を検知対象の異常として定義した侵入物体検知問題を扱い,異常とされる領域への提案モデルの出力を評価することでその有効性を検証した.
著者
土屋 達弘 菊野 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.2663-2674, 2007-10-01
被引用文献数
3 2

本論文は,ペアワイズテストと呼ばれるソフトウェアテスト手法に関するサーベイである.ペアワイズテストとは,ソフトウェアの入力パラメータの相互作用に注目し,フォールトを効率良く顕在化する手法である.具体的には,入力パラメータのペアのすべてに対して,それらがとり得る値の組合せすべてを網羅するようにテストを行う.ここでは,ペアワイズテストの定義と,この手法の背後にある根拠について述べた後,ペアワイズテストの条件を満たすテスト集合の構成問題について論じる.更に,ペアワイズテストの有効性について,知られている研究成果を紹介する.
著者
土屋 達弘 菊野 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, 2008-08-01

本論文誌2007年10月号掲載のペアワイズテストに関するサーベイ論文において,ペアワイズテストの起源を米国の研究とする,事実と異なる記述があった.本論文では,ペアワイズテストの発明が日本において(少なくとも同時期に独立して)なされたことを,初期の関連文献とともに説明する.
著者
石塚 宏紀 木實 新一 戸辺 義人 瀬崎 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.178-190, 2011-01-01

現在,Google Street Viewに代表される,写真を用いて仮想的に街を散策できるサービスが利用されている.しかしながら,ある定められた時間にのみ撮影された画像を用いる従来のサービスでは,季節,時間帯,個人の嗜好等,条件を考慮して多様な風景を画像を連続提示することができない.本論文では,条件に応じて適切な風景を再構成するサービスを実現するために,カメラ付きの携帯電話等を用いて集めた街の写真をデータベースに蓄積し,道路に沿って画像列を高速に検索できる動的ストリート画像フロー生成機構を提案する.一般に,多次元空間索引を用いれば,場所とそれ以外の属性値を指定して対応する写真を高速に検索することができる.しかし,従来のように幾何学的な分割に基づいてアクセスの効率化を行う索引手法を用いた場合,道路ネットワークのような実世界の構造に沿った問合せ要求を円滑に処理することが難しい.そこで我々は,道路ネットワークを考慮した索引手法であるKDRN-Tree(KD-Tree with Road Network)を提案する.KDRN-Treeは,道路ネットワークに対して形状正規化処理を施す一方で,KD-Treeの分割位置を道路境界にできるだけ近づけることで,道路に沿った問合せ要求を効率良く処理することができる.我々は,街中にて撮影した写真を実験データとし,問合せ処理の評価を行った.その結果,KDRN-Treeの有効性と実用的なシステムへの適応可能性を確認した.