著者
田辺 靖貴 塙 敏博 天野 英晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.1428-1444, 2007-06-01
参考文献数
9

詳細な性能解析,事前性能予測などを目的に,マルチプロセッサシステムを含めたコンピュータシステムのシミュレータを構築する際に利用可能なスーパスカラプロセッサのシミュレーションモデルとしてISIS-SimpleScalarを開発した.ISIS-SimpleScalarは,シミュレータ構築をサポートするライブラリとして利用可能で,マルチプロセッサシステムでの利用に対応し,スーパスカラプロセッサの動作を詳細にシミュレーション可能なプロセッサモデルである.ISIS-SimpleScalarは,SimpleScalarのsim-outorderモデルを元に開発を行ったが,命令のシミュレーション方法や,共有メモリアクセス要求を外部へ発行するようにしたりといったような変更が必要であった.評価,検証を通し,実装されたプロセッサモデルは,動作速度が低速ではあるものの,スーパスカラプロセッサの動作を反映しつつマルチプロセッサシステムをシミュレーションすることが可能で,シミュレータ構築時の実装コストを低減させられることも示す.
著者
児玉 祐悦 工藤 知宏 清水 敏行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1695-1704, 2006-08-01

ミッションクリティカルな分散コンピューティングでは,パケットロス率が小さく,障害に強い通信が要求される.そのような高信頼通信を実現するために,マルチパスを用いた通信手法が研究されてきた.これは,通信パケットを複製し,それらを異なるパス経由で転送させ,目的ノードでそれらをマージする手法である.マルチパス手法では,あるパスでパケットロスが起きても,他のパスからそのデータがやってくれば,再送を行うことなく,パケットロスを回復することができる.高バンド幅高遅延ネットワーク間でデータ通信を行う場合には,パケットロスによる通信性能の低下が著しいため,このような遅延に影響されない高信頼化通信は有効である.ギガビットクラスのネットワーク上で高信頼通信を実現するために,我々の開発したネットワークテストベッドGtrcNET-1上に,マルチパス手法を実装した.本実装によりパケットロス率の比較的高い高速ネットワークであっても,マルチパス手法を適用することにより高い通信性能を維持できることを確認した.更に,利用しているパスの転送性能などを受信側から送信側にフィードバックする改良手法を適用することにより,途中のパスで転送性能の低下が起きた場合でも高信頼通信を維持できることを確認した.
著者
山本 瑞秋 米倉 達広 岡本 秀輔 鎌田 賢 荒木 俊郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.2246-2250, 2006-10-01
被引用文献数
2

本論文では,状態遷移図の編集とその自動変換によるWebブラウザ自動生成ツールを提案する.具体的には,カスタマイズ可能なWebブラウザ「Mozilla Firefox」の拡張機能を利用した上記プロトタイプシステムを試作したので報告する.
著者
武 小萌 瀧本 政雄 佐藤 真一 安達 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1153-1165, 2009-08-01
被引用文献数
4

本研究では,放送映像における同一場面映像のアーカイブからの発見・検索を目標とする.本研究において解決すべき最大の問題は,同一場面映像間の視点の違いによる視覚的な差異にかかわらず照合を行うことである.本研究は,撮影対象の動きに着目し,特徴点軌跡が時間的に変化するInconsistencyシーケンスに基づいた照合手法を提案する.このInconsistencyシーケンスから派生される,特徴的な事象の発生を示すDiscontinuityシーケンスに基づき,同一場面映像検出における計算量を激減させる高速化アルゴリズムも提案した.また,ローカル特徴量を用いた既存の映像照合手法との精度比較,並びにそれを用いた速度・精度の向上の評価を新たに加えた.更に,提案手法を実際の映像アーカイブに適用し,提案手法の有効性を実証した.
著者
秋谷 直矩 丹羽 仁史 坪田 寿夫 鶴田 幸恵 葛岡 英明 久野 義徳 山崎 敬一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.798-807, 2007-03-01
被引用文献数
7

筆者らはこれまで,依頼行為を理解するロボットを開発してきた.しかし,介護ロボットの実用化を目指すのであれば,どのような依頼行為が実際の介護場面でなされているかを分析する必要がある.そこで,介護ロボット開発のために,実際の介護場面におけるコミュニケーションを高齢者介護施設で観察した.そこでは,単に介護者が高齢者の依頼を受けて行動しているだけではなく,介護者と高齢者が同時に協同して作業している場面が多く見られた.この同時的協同的作業の達成のために,介護者と高齢者双方の予期的な調整行動が大きな役割を果たしていることが分かった.高齢者支援の開発のためには,この予期を支援するシステムの開発が必要である.
著者
渡辺 晃一郎 竹内 達史 井上 智雄 岡田 謙一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.2755-2764, 2008-12-01
被引用文献数
3

近年,協調作業・協調学習支援の分野において,対面環境における支援に関する研究が行われてきている.また一方で,テーブルトップインタフェースやタンジブルインタフェースといった実世界指向のインタフェースに関する研究も行われている.そこで我々は,テーブルトップ環境においてディジタルデータや実物体を効率良く扱えるようにするため,電子情報と実物体の両方の操作者を識別できる環境を構築した.複数のユーザが参加するような対面環境において,電子情報だけでなく,それぞれの実物体がもつ情報に関しても操作しているユーザに合わせた表示ができるようになり,情報の共有がしやすくなる.また,各ユーザの作業を区別することができるので,それぞれのユーザの操作履歴を取得・活用することができ,ユーザ同士が作業・意識の共有をしながら協調作業を進めることができる.本論文においては岩石学を学習するアプリケーションを実装するとともにいくつかの機能を実現し,評価実験を行うことで本システムの有用性を確認した.
著者
河野 英昭 末竹 規哲 車 炳キ 麻生 隆史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.1983-1985, 2008-08-01

本論文では,補間法による拡大画像の失われた高周波成分を推定し,それを用いて高精細に画像を拡大する手法を提案する.推定は,自己分解コードブックと,マハラノビス距離に基づく照合により行う.提案法を種々の画像へ適用し,その有効性を示した.
著者
鈴木 貢 藤波 順久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.967-970, 2007-03-01
被引用文献数
1

メディアデータ処理向けSIMD型拡張命令セット対応のコンパイラ最適化系の開発を行っている.最適化系はSIMD命令向けベクタ化とSIMD並列化からなるが,本論文では,SIMD並列化の仕組みを説明し,基本例題による実験結果を報告する.
著者
近江谷 康人 天野 英晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.413-434, 2008-02-01
被引用文献数
1

市販の高性能マイクロプロセッサを用いてバイナリー互換を実現するアーキテクチャエミュレーションは,コンピュータシステムの開発効率の向上に有効な手法である.中でもC言語実装によるインタプリタ方式は,動作原理が単純で,ホストアーキテクチャ依存度が低いなどの特徴をもち,開発費,設計品質,保守性の点で有利である。本論文は,C言語実装によるインタプリタの速度性能を,5種類のレガシー命令セット(Simplescalar PISAとその変形版, PowerPC, M32R, SH4),2種類のRISCホスト,3〜5種類の実装方式による計45種類のエミュレータ試作により評価した.この結果,高性能なマイクロプロセッサを用いC言語でインタプリタを実装すると,(1)インタプリタの共通処理部(コアループ)の処理時間の比率が70〜80%と高くコアループの試作で速度性能の目安が付くこと,(2)C言語に適合したコアループの実装(改良function方式)によりエミュレーション性能が1.3〜2.2倍までに性能向上し,アセンブリ言語記述の80%程度の性能が実現できること,が明らかになった.