著者
酒井 智弥 井宮 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1256-1266, 2010-08-01

本論文では,スペクトラルクラスタリングの計算量を削減するランダム算法を提案する.スペクトラルクラスタリングは核関数法と固有値分解を利用して非線形多様体上のデータを分類できるが,類似度行列の作成と固有ベクトル計算のコストが高い.提案する算法はランダム射影とランダムサブサンプリングを利用し,データの次元数とサンプル数に起因する計算コストをそれぞれ低減する.計算時間はサンプル数に準線形,次元数に線形であり,Nystrom近似に基づく既存の高速算法より高速かつ安定である.特に,アピアランスベースの画像解析では少数の画素のランダムサンプリングによって計算時間が次元数に無関係となり得ることを考察する.また,この特長と提案算法を活かした応用として,画像分割と動画像のショット分割を示す.
著者
近藤 一晃 西谷 英之 中村 裕一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.8, pp.1206-1215, 2011-08-01
被引用文献数
2

人間とシステムが協調することで画像認識の適用範囲や精度を高める「協調的認識」の考えが提案されている.本研究では協調的物体認識を効果的に形成して認識を改善するインタラクションの設計について提案する.具体的には,認識結果やシーンの状況といった項目をシステムが評価し,認識を行う上で悪状況であった場合には,その説明とともに協力してほしい内容を人間に提示する.これにより,どうすれば認識が良い方向に向かうのかを簡単に知ることができるため,小さな負担で認識が改善されるとともに,人間にとって分かりやすい道具となることが期待される.協調的認識を行うための状況評価,提示インタフェースの設計・構築,及び実験を行い,認識困難な状況の検出が行えること,また人間の協力により認識が改善されることを確かめた.
著者
森本 泰貴 藤本 典幸 長屋 務 出原 博 萩原 兼一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.245-256, 2007-02-01
参考文献数
20
被引用文献数
2

近年,インターネットの普及とともに,飲食店などの様々な施設をWeb上で検索する機会が多くなつた.しかし現在の施設検索サイトは,事前に登録されている施設の情報を返すもの(登録型サイト)であり,登録されていない情報は得られないという問題点がある.特に,探したい種別の施設を扱う登録型サイトが全く存在しない場合,既存の登録型サイトでは探したい施設はそもそも検索不可能である.そこで我々は,ロボット型施設検索システムを開発した.本システムは施設の種別などのと地名の一部を入力とし,Webをクロールして,指定された地域内にあり(地名の指定がない場合は日本全国を対象とする),かつに適合する住所とその関連情報を自動抽出する.そしてユーザに,検索した住所の位置と抽出した情報を記載した地図を提示する.本システムを用いれば,既存の施設検索サイトが扱わない情報も含めて,様々な住所関連情報をその地理的分布とともに提示することが可能である.
著者
藤村 一行 内田 誠一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1279-1288, 2009-08-01
被引用文献数
4 4

映像中の物体のトラッキングは,その物体のフレーム間の移動量の最適推定問題として定式化される.本論文では,その大局的最適解を得るために,動的計画法(DP)を用いたトラッキング手法を提案する.従来,幅優先探索の一種として扱われていたDP最適化では,画像のサイズやパラメータの増加により,探索幅が非常に大きくなり計算量が増加するという問題がある.これに対し本論文ではDPの解析的解法をトラッキング問題に適用する.これは,最適化の評価に用いられる局所的な誤差関数を二次関数近似することで,DPによる最適化過程に微分による最適化を導入した手法である.幅優先探索なしに解析的にかつ高速に最適解を得ることができ,トラッキング問題には特に有効といえる.本論文では,本手法の定式化と実験結果を示す.
著者
高柳 侑華 竹内 勇剛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.37-47, 2011-01-01
被引用文献数
1

対話は言語的または非言語的メッセージを相互にやり取りすることで成立する.科学技術の進歩により,近年ではコミュニケーション対象は人だけでなく,ロボットやCGキャラクタ等の人工物にまで拡大しつつある.しかし,現状ではこのような対話は人同士のように円滑ではない.これは,言語・非言語情報の欠落により,発言の意図やだれに向けての発話かを判断することが困難であるということが大きな理由の一つとして考えられる.しかし,これまでの対話研究は人同士の2者間対話が中心であり,発言のアドレス(発言が誰に向けられているのか)に注意する必要性は低かった.そこで,本研究では『人と人工物が非言語のみで多人数対話をする際には,顔の向きと発話タイミングを組み合わせて用いることによって発言が誰に向けられているかが判断される』という仮説のもとで認知実験を行い,顔の向き要因と発話タイミング要因の発言のアドレッシングへの効果を検証した.その結果,人と人工物が非言語のみで行う多人数対話において,顔の向きと発話タイミングは発話のアドレスを示す効果があるということが示唆された.
著者
大池 洋史 呉 海元 和田 俊和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.9, pp.2418-2421, 2008-09-01

本論文では,K-means trackerにて,より安定かつ高速に対象を追跡するために,背景に応じた非ターゲットクラスタ中心の数とそれらの配置を適応的に求める方法について述べる.提案手法では,K-means trackerにより求められたサーチエリア楕円の輪郭上の画素を走査し,ターゲット,非ターゲットクラスタ中心までの距離をもとに,追跡に都合のよい非ターゲットクラスタ中心の個数,配置を決定する.これにより,従来のK-means trackerの非ターゲットクラスタ中心の配置方法における問題である,似た特徴をもつ画素の多重選択問題と,ターゲットに近い特徴をもつ背景画素の選択もれの問題を同時に解決できる.従来のK-means trackerとの比較実験により,本手法は追跡を安定かつ,効率的に処理できることを確認した.
著者
後藤田 中 松浦 健二 大塚 真二 鍋島 豊晶 金西 計英 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.1144-1153, 2010-07-01

近年,予防的な健康への取組みが重視され,人の日常的な運動の役割は増している.本研究では,そうした運動の代表といえるジョギングに注目する.個人での日常的な実世界トレーニングに対して,オンラインのコミュニティ空間での集団訓練環境を提案する.本システムは,GPSを用いて個々のトレーニング活動ログを蓄積し,同じコースを非同期に共有するジョガー間での競争的なシミュレーション機能を提供する.具体的には,複数のジョガーをアバタとして表現し,それらのペース変化を地図上の移動アニメーションを用いて視覚化する.また,移動アニメーションを見た際の気づきを地図上にアノテーションとして蓄積できる機能を提供する.これにより,ジョガーのパフォーマンス向上を促進させる目的をもつ.これらの提案機能をもつジョギング支援システムを構築し,実験を行った.実験の結果から,オンラインコミュニティ空間での競争的な訓練環境が,実世界におけるトレーニングにおけるタイム短縮につながった.特にアノテーションの登録箇所を中心に局所的なペース改善の効果も確認された.
著者
川前 徳章 坂野 鋭 山田 武士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.949-959, 2010-06-01

本論文では文書間,それらの著者間及び両者の意味的な関係を明らかにするために,著者の興味と文書の内容の潜在変数及びそれら変数間の依存関係を導入したモデルを提案する.提案モデルの特徴は,文書及び著者各々に潜在変数を導入し,通常のトピックモデルを拡張している点にある.文書ごとに導入する変数(文書クラス)は,文書のトピックを選択するための確率分布をもち,類似した内容の文書群は共通の文書クラスをもつ.同様に著者ごとに導入する変数(著者クラス)は,文書クラス選択の確率分布をもち,類似した興味をもつ著者群は共通の著者クラスをもつ.このモデルにより,文書生成を著者クラス,文書クラス及びトピックとそれら変数の依存関係を用いて表現し,その依存関係を用いて著者間及び文書間の意味的な関係を説明できる.各種データを用いた実験で,提案手法により著者クラス及び文書クラスを推定し,その結果,文書と著者の関係データを内容と興味に相当する低次元の空間に射影できること,及びテキスト生成モデルとして有効であることを確認できた.また,提案モデルは潜在変数の興味を抽出し,協調フィルタリングにも適用できることを実験で確認できた.
著者
関 直臣 ジャオ レイ 小島 悠 池淵 大輔 長谷川 揚平 大久保 直昭 武田 晴大 香嶋 俊裕 白井 利明 宇佐美 公良 砂田 徹也 金井 遵 並木 美太郎 近藤 正章 中村 宏 天野 英晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.920-930, 2010-06-01

本論文はパワーゲーティング(PG)を使った演算器レベルでの動的スリープ制御による消費電力削減機構の実装及び評価を行う.MIPS R3000のALUからシフタ,乗算器,除算器を分離し,それぞれを動的にパワーゲーティングを行う.省電力化を施したR3000コアと16kByteのL1キャッシュ,TLBを合わせて,ASPLA 90nmで試作チップGeyser-0としてテープアウトした.Geyser-0の性能,電力と面積をポストレイアウト後のシミュレーションにより評価した.この結果,4種類のアプリケーションについてリーク電力は平均約47%減らすことができた.一方,スリープ制御の実装によって生じたエリアオーバヘッドは41%であった.
著者
吉岡 泰智 渡辺 俊典 古賀 久志 横山 貴紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.83-93, 2007-01-01
被引用文献数
1

ビデオの内容を自動認識する技術は,監視,圧縮,要約など応用範囲が広い.認識対象を想定してそのモデルを人手や学習によって事前準備しておくというのが伝統的画像認識手法であるが,事前に想定できない多様な内容を含み,かつデータ量も膨大なビデオには十分対応できない.対策として,事前のモデル設定なしにビデオを観測しながらモデルの獲得と認識とを行う機構が望まれる.更にリプレイ時間や記憶のコストを削減するためにはワンパスで実時間性を備えたオンラインリアルタイム処理が理想である.本論文では,このような機能を備えたビデオ内動作オブジェクト自動認識システムを提案する.人の行動を撮影したビデオのみを与えて,歩く,座る,などの基本動作の獲得と認識とが完全自動で行えることを示す.
著者
飯島 裕一 石川 佳治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.781-794, 2010-06-01

移動ロボットやモバイルセンサネットワークなどの位置情報を利用したアプリケーションでは,最近傍問合せは重要な問合せとして位置づけられている.しかし,制御ノイズや測定誤差などの理由により問合せを行うオブジェクトの位置があいまいな位置情報としてしか得ることができない場合が存在する.そのため,位置のあいまい性を考慮した問合せ処理手法が必要とされている.そこで本論文では,問合せを行うオブジェクトの位置が正規分布の確率密度関数によってあいまいな位置情報として表現されている状況における最近傍問合せの処理手法を提案する.まず通常の最近傍問合せを拡張した確率的最近傍問合せを定義し,この問合せを効率的に処理するための戦略として二つの問合せ戦略を提案する.どちらの戦略も,問合せの対象となるオブジェクトの集合から明らかに問合せを満たさないといえるものを求めることで計算コストの削減を図るが,その方法が異なっている.これら二つの戦略にそれらのハイブリッド方式の戦略を加えた三つの戦略に対して,実験によって性能の比較を行った結果についても報告する.
著者
塩川 浩昭 北川 博之 川島 英之 渡辺 陽介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.767-780, 2010-06-01
被引用文献数
2

近年,実世界から得られるストリームデータに対する問合せ要求が増大し,それらを実現するストリーム処理システムが研究開発されてきた.そして,地理的に離れた情報源の統合や負荷分散を実現させるために,ストリーム処理システムを分散配置させて利用する分散ストリーム処理システムが注目されている.分散ストリーム処理システムでは,複数のストリーム処理システムの入力と出力をつなぎ合わせることにより分散環境を構築するため,分散配置されたノートが一つでも停止してしまうと,システム全体が停止してしまうという問題がある.この問題を解決するため,本論文では,分散環境において高信頼化を実現するSemi-Active Standby方式を提案する.本方式は,既存方式であるActive Standby方式,Upstream Backup方式を統一化した方式であり,高信頼化におけるリカバリ時間とバンド幅使用率の調整を可能にする.本論文では,Semi-Active Standby方式の動作特性の詳細について述べる.また,我々が開発したプロトタイプシステムで行った評価実験について述べる.
著者
高橋 和哉 中村 勝一 山崎 克之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.1065-1066, 2010-06-01

超音波測距センサを用いた人群観測ネットワークを設計・実装した.人検出時間率の考え方により人群観測を実現し,計算時間も実用上問題ないことを実証することで,コストやプライバシーの課題を解決した人群観測の実用性を示した.
著者
石田 亨 村上 陽平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.675-682, 2010-06-01
被引用文献数
1

Wikipediaなどの集合知を形成する取組みが,Web上での知識の集積に大きく寄与し始めている.現在進んでいる集合知の形成が,文章,写真,動画などを組み上げていくコンテンツ指向の集合知であるのに対し,本論文で扱うのはサービスを組み上げるサービス指向の集合知である.サービス指向の集合知は,これまでもいくつか試みられているが,Wikipediaのような典型的な成功例はまだ現れていない.本論文ではWebサービスを要素として集合知を形成する枠組みをサービスグリッドと呼び,大学や研究機関などの非営利組織を中心とする公共的なサービスグリッドの制度設計を試みる.特に,サービス提供者,サービス利用者,サービスグリッド運営者という3種のステークホルダーの立場から,それぞれ(1)知的財産権,(2)応用システム,(3)連邦制運営について議論を深める.
著者
市岡 健一 福本 文代
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.428-438, 2009-03-01
被引用文献数
1

本論文では,意味的に類似したオノマトペを自動的に分類する手法を提案する.本手法は「Web上からのオノマトペ間の共起頻度取得」,「オノマトペ間の類似度算出」,「音象徴の適用」,「オノマトペのクラスタリング」という四つの処理からなる.各々の処理において,「AND検索とPhrase検索」,「χ^2値と相互情報量」,「音象徴の適用の有無」,「Newman法とSpectral Clustering」を導入し,どのような手法の組合せがオノマトペの自動分類に有効かを検証した. 10種類のクラスに分類される292語のオノマトペに対して分類を行った結果,「Phrase検索,相互情報量,音象徴の適用有, Newman法」という手法の組合せで,最も良い結果(F値で0.421)が得られた.また, Spectral ClusteringはAND検索やχ^2値によるノイズに弱い,ということが明らかになった.
著者
伊藤 暁 井上 克司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.399-400, 2006-02-01
被引用文献数
1

ドント方式がO(n)時間で計算できることを示す.ここに,nは選挙に参加する政党数であり,一様コスト基準のもとで入力データサイズに比例する.
著者
安田 浩志 齋藤 豪 中嶋 正之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.255-261, 2009-02-01

工業製品の評価及び映画を含むエンターテイメント分野において,実際の人間による実現が困難な場面でのシミュレーションを行うため,計算機上で人体機構を再現する手法への需要が高まっている.本論文では特に人体のもつ機構特性の一つである関節可動域に注目し,簡略化された球関節人体モデルにおいて関節可動域のもつ解剖学的特性を再現する手法を提案する.多関節筋による影響から,一部の関節可動域は完全に独立ではなく隣接する関節の状態に大きく影響を受ける.しかし,関節ごとを独立に扱う従来の可動域表現ではこの変化を再現することができない.提案手法では,モーションキャプチャ装置を用いて混合正規分布による確率密度関数として関節可動域を決定する.まず,自己組織化マップにより非均一である計測データからの安定した関節可動域推定を実現し,次に正規分布間の共起関係により,複雑な筋骨格モデルを用いることなく多関節筋による影響の近似を可能にした.
著者
相良 毅 喜連川 優
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.531-537, 2008-03-01
被引用文献数
1

Webからの店舗情報収集を行う際には,収集したWebページがある店舗に関連することを確認するため,店舗名称を識別語として利用する必要がある.しかし,店舗データベースに登録されている店舗名称には,支店名などWebページには記載されていない可能性のある語(不要語)が含まれているため,収集したページを正しく関連づけられないという問題がある.不要語にはビル名を用いた支店名など多くのバリエーションがあり,不要語辞書を整備して除去することは難しい,そこで,店舗データベースに含まれる住所の情報や,周辺の駅名,同じ住所に存在する複数の店舗名称を用いることにより,店舗名称をクリーニングする手法を開発した.実験によると,提案手法のクリーニング正解率は95.3%と実用的な性能を示した.
著者
数原 良彦 戸田 浩之 櫻井 彰人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.619-627, 2008-03-01
被引用文献数
2

本研究では,関連する二つの話題語を手掛りとして,動作主,動作対象,動作を記述する動作関係を抽出する手法を提案する.ここでいう話題語とは,最新のブログ記事中で特徴的に出現する固有名詞のことで,アルゴリズムによって自動的に抽出される.我々は,関連する話題語間の関係を提示すれば,ユーザがより的確に話題の内容を理解できると考える.提案手法では,二つの話題語のAND検索によって取得したブログ記事から,係り受け解析を用いてキーワードに付属する格助詞とそれに伴う述語を取得し,それらを用いて関係を記述する.しかし,日本語ではしばしば格要素の省略が行われるため,一文に対してのみにこの方法を適用することでは適切な動作関係を抽出できないことが予想される.提案手法では,ブログ記事から選択された大量の文を対象に係り受け解析を行い,〈格要素,格助詞,述語〉の組を抽出する.これらの抽出された組の中から,同じ述語をもつものを重ね合わせることで省略語の補完を行い,動作関係の抽出を試みる.評価実験により,一文における解析に比べ,高い精度でより多くの適切な関係を抽出することが確認できた.
著者
倉島 健 藤村 考 奥田 英範
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.301-310, 2009-03-01
被引用文献数
4

大規模ブログデータから,人間の経験に関する興味深い知識を発見する経験マイニング手法を提案する.経験とは,状況(時間,空間),行動(動作,対象),主観(評価,感情)とから成る情報であると定義する.一般に,人間の行動や,その行動を起こした結果として人間が抱く感情は,時間的・空間的要因によって規定されるため,状況,行動,主観との間には一定のルールが存在する.このルールの中でも特に,状況(時間,空間)に特有な行動と感情を表現するものを人間の経験に関する興味深い知識として発見する.本論文では,5属性(時間,空間,動作,対象,感情)を大規模ブログデータから抽出し,更に,得られた経験情報の中から,データマイニング分野で提案されているルールの"興味深さ"指標を用いた相関ルール抽出を行うことで,このような知識を発見する手法を述べる.また,感情属性に基づき,経験が動作主にとって成功だったのか,それとも失敗だったのかを導き出す手法も述べる.提案手法を実装したシステムにより約4,800万件のブログから知識発見を試みた結果,状況に特有な行動と感情を表現するルールの発見に至った.