著者
長野 伸一 上野 晃嗣 長 健太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2262-2273, 2013-10-01
被引用文献数
1

近年,エネルギーの効率的利用という観点から注目を浴びているスマートコミュニティを構成するモジュールの一つに,センサから取得した情報を利用してリアルタイムに交通情報を把握する次世代交通システムがある.本論文では,ソーシャルセンサとしてのTwitterから交通情報,特に鉄道の運転見合わせや遅延などの運行情報をどの程度正確,且つ,迅速に検出できるのか検証した.ツイートがもつ情報の不確実性についてはヒューリスティックスなルールによるテキスト処理,路線による情報量の違いについては統計処理におけるパラメータ値最適化により,検出結果のF値が0.85,検出までに掛かる時間が3分台となることを確認した.また,鉄道事業者が発表する公式情報よりも早く,また,鉄道事業者が発表しない小規模な事象も検出できる場合があることを確認した.
著者
坂本 一憲 大橋 昭 鷲崎 弘宜 深澤 良彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.412-424, 2012-03-01

近年,プロブラミングコンテスト,特にゲームソフトウェア上で自律的に動作するプレイヤーのプログラムを作成して競い合う形式のコンテストが,教育向けの枠組みとして注目を浴びている.一方,コンテストで利用されるゲームプラットホームは,一般的なゲームソフトウェアやエンタープライズシステムと異なり,開発手法や技術的な知見が体系化されていない.本論文では,過去の開発経験からゲームプラットホームの要求を分析した結果をもとに,開発における知見を設計原則としてまとめる.更に,ゲームプラットホームの品質を保証して,開発コストを低減させるため,設計原則を踏まえたアーキテクチャと汎用的な共通処理を提供するフレームワークを提案する.その上で,提案フレームワークを利用するゲームプラットホームとコンテストの事例報告をもとに,提案フレームワークを利用するゲームプラットホームが分析した要求を満たすかどうかという定性的評価と,ソフトウェアメトリックスや参加者のアンケートによる定量的評価の両方から提案フレームワークの有用性を示す.
著者
湯浅 将英 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.124-137, 2011-01-01
被引用文献数
1

本研究では,人にとって分かりやすい,受け入れやすい擬人化エージェントを開発するため,表情,視線などの非言語表現と印象,行動履歴に基づいたエージェント行動モデルを提案する.新しいモデルでは,喜びや悲しみといった擬人化エージェントの表情やその利用履歴が,人の誠実性,友好性や有能性という印象を形成し,エージェントと協力行動をとるかとらないかの人の意思決定に影響を与えるとする.本研究では,現実のコミュニケーション場面の一部を切り出した交渉ゲームを設計し,擬人化エージェントの非言語情報を制御し,ゲーム中の人の行動を分析することでモデルを確かめる.実験の結果,非言語表現やその行動履歴が印象を形成し,意思決定に強く影響を与えることが分かり,提案するモデルが部分的に人の意思決定行動を説明することが分かった.本手法は擬人化エージェントにどのような状況でどの非言語表現をすべきかの設計することに役立つ.
著者
高橋 翔 今 宏史 長谷山 美紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.501-510, 2009-04-01
被引用文献数
11

本論文では,チームスポーツ映像からアクティブネットを用いてパス可能領域を推定する手法を提案する.チームスポーツ映像の一つであるサッカー映像の意味内容解析を行うために重要なサッカーの戦術は,選手の移動とボール運びによって表現されるため,ボール運びを実現するパスを分析することは重要である.一般にパスコースはボール保持者と味方チームの選手へとつながる緩やかな曲線で表される.提案手法では,新たなエネルギーの定義とパス可能領域を推定するための画像生成により,アクティブネットを用いて前述の曲線が存在する領域を抽出する.また,パス可能領域は守備の選手から離れるほど,パスが成功する可能性が高いという特徴をもつ.提案手法では,格子点の密度に着眼することで,パスが成功する可能性をパス可能領域の推定と同時に得る.更に,アクティブネットの収束結果は多少の選手位置の誤差を許容するため,選手の動きを用いた従来手法における,選手位置の誤差の影響を受けやすいという問題点を解決することが可能である.したがって,提案手法はカメラワークが存在し,高精度な選手位置の推定が困難であるテレビ映像に対しても,高精度にパス可能領域の推定が可能である.
著者
渡辺 哲矢 西尾 修一 小川 浩平 石黒 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.86-93, 2011-01-01
被引用文献数
2

遠隔操作型アンドロイドロボットを操作する際,触覚フィードバックがないにもかかわらず,ロボットの身体に触られると自分に触られたように感じることがある.類似の現象として,身体への触覚刺激に同期して身体以外への物体に触覚刺激を与えている様子を観察させると,身体感覚の転移が生ずる「Rubber Hand Illusion」が知られているが,触覚刺激を伴わない身体感覚の転移についての研究事例は少なく,特に対象物を遠隔操作する際の転移に関する報告はこれまでない.本論文ではアンドロイドの遠隔操作時に身体感覚の転移が実際に生じているのかを検証した.その結果,アンドロイドと操作者の動きが同期した場合に,触覚刺激を与えなくても,身体感覚の転移が生ずることが分かった.
著者
三井 相和 藤吉 弘亘 秋田 時彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.7, pp.1135-1144, 2011-07-01

本論文では,textonに用いられるフィルタをボックスフィルタ(平均化フィルタ)の組合せで近似した,近似texton特徴量による高速な人検出法を提案する.textonによる特徴抽出は処理が容易であることから,テクスチャ解析やパターン認識,一般物体認識など多岐の分野で多く用いられる.しかし,単純なフィルタリング処理では,フィルタ内の1ピクセルごとにアクセスし演算しなければならないため,特徴抽出の処理コストが非常に高い.そこで,本論文では特徴抽出の処理コストを削減するために,textonに用いられるフィルタを近似することで高速な人検出を実現する.textonの近似には処理が簡易なボックスフィルタを用いる.このボックスフィルタをピラミッド上に組み合わせることで,擬似的にtextonのフィルタの形状を構築する.また,ボックスフィルタの応答値の算出には,方形領域の画素値の合計を一括算出することが可能なIntegral Imageを用いる.これらを組み合わせることで,近似フィルタの応答値を高速に求めることが可能となる.評価実験より,提案手法は人検出の特徴量として有効であるHistograms of Oriented Gradients(HOG特徴量)と同精度であり,2.3倍高速な識別が可能であることを確認した.
著者
大野 健彦 中谷 桃子 中根 愛 セン ユージン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.94-106, 2011-01-01

情報家電の利用時,ユーザが「作業にうんざりする」と感じる場面がしばしば登場する.このような状態を検出し,その発生原因を特定,解消することは情報家電の使いやすさを向上させる上で重要な役割を果たす.特に利用開始前に必要な接続・設定作業には,うんざりしやすい様々な要因が含まれる.本研究では情報家電の接続作業におけるうんざり状態の要因を明らかにすることを目的として,ビー玉評価法と呼ぶ「うんざり」状態を検出する簡易な方法を考案し,情報家電の配線作業に適用した実験について述べる.実験の結果,うんざりする程度は人によって大きく異なること,またユーザがマニュアル読解時,特に適切なページにたどりつけない場合にうんざりする場合が多いことが示された.またビー玉評価法がこのような作業の評価に適切であることが示された.
著者
川久保 秀敏 柳井 啓司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1417-1428, 2010-08-01

本研究の目的は,単語概念と画像特徴量の関係性をWeb上の大量の画像データを用いて定量的に分析することである.具体的には, (1)Bag-of-Features表現を用いた画像領域エントロピーによる単語の視覚性の分析, (2)位置情報付きの画像の分布を表すジオエントロピーによる単語概念の地理的分布の分析, (3)画像領域エントロピーとジオエントロピーによる単語の視覚性と地理的分布の関連性の分析,を行った.単語の視覚性と地理的分布の両方を分析した研究は,本研究が初めてである.本研究では,230語の名詞と,100語の形容詞について,Webからそれぞれ対応する画像を500枚ずつ収集し,これらの分析を行った.分析の結果, "sun" や "rainbow" など空に関する名詞は,他の単語に比べて画像領域エントロピーが小さく,ジオエントロピーが大きい傾向が分かった.一方,地名・地域名や偉人名に関する単語は,ジオエントロピーが小さく,画像領域エントロピーが大きい傾向にあった.
著者
松田 友輔 大町 真一郎 阿曽 弘具
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.336-344, 2010-03-01
被引用文献数
3

本論文ではNAT(Noise Attribute Thresholding)法と色情報を用いた2値化及びエッジ情報を利用した情景画像からの高精度な文字列検出手法を提案する.NAT法はノイズの特性を利用した文書画像の2値化手法である.NAT法と色情報を用いて文字列検出を行う従来手法は照明変化等による色の変化に脆弱で誤検出が多いという問題があった.それに対して提案手法では,色コントラストを考慮した濃淡画像にNAT法を適用して2値化することにより従来手法よりも高い精度の2値化を実現し,高精度な文字列の検出を可能としている.また照明変化などにより文字の単色性が損なわれている場合を考慮して色情報を処理することにより照明変化に対応し,誤検出数を抑制している.更にエッジ情報を利用した手法を導入することにより,従来手法では不可能であった接触文字の検出を可能としている.実験により提案手法の有効性を示す.
著者
山田 一郎 佐野 雅規 住吉 英樹 柴田 正啓 八木 伸行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.2328-2337, 2006-10-01
被引用文献数
2

番組内容を詳細に説明するセグメントメタデータは,視聴者による番組選択やダイジェスト視聴,更には放送局における番組管理に重要な役割を果たす.しかし,生放送のスポーツ番組などに対してこのようなセグメントメタデータを付与する作業には大変な労力を要する.そこで本論文では,アナウンサーや解説者がサッカー中継番組で発した言葉であるコメントを利用して,サッカー中継番組に対して,イベントなどの内容を時間ごとに説明するセグメントメタデータを自動付与する手法を提案する.アナウンサーや解説者が発したコメントには,ボールタッチしている選手を中心に試合の流れを実況する試合記述文と,試合の流れとは直接関係しない補足的な解説文が存在する.本手法では,各コメントがどちらの種類に属するかを統計的に判定することにより,サッカーの試合からイベントが発生した区間を抽出し,更に抽出された区間で起きたイベントやそのイベントの主関与者(以後,イベント動作主)を抽出する.実験により,コメントを高精度に分類できることを確認し,イベント抽出においてもキーワードマッチングを利用した従来手法に比べて有効であることを確認した.
著者
嶌田 聡 宮川 和 東 正造 森本 正志 奥 雅博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.1231-1242, 2008-05-01
被引用文献数
17

本論文では,興味や関心の高い映像シーンの検索・ナビゲーション機能を実現するために,視聴者発信情報から映像シーンの内容を表す特徴ワードや概要などの高次のメタデータを自動抽出する方法を提案する.一般に,視聴者発信情報からメタデータを抽出する場合にはノイズが含まれることが問題となる.そこで,映像シーンを視聴しながらコメントを付与していく視聴連動型のコミュニケーション機能をファンコミュニティに提供することにより視聴者コミュニティの協調行動を誘導させることで視聴者発信情報の品質を向上させる方法を提案する.まず,視聴連動型の掲示板コミュニケーション機能を実在するファンコミュニティに導入し,視聴者コミュニティの協調行動が誘導されたことを検証した.次に,得られた視聴者コメントからTF-IDF法でシーンを代表する特徴ワードを求め,更に,映像シーンに対して視聴者が付与したコメントの中で特徴ワードを含む"文"を集約したシーン代表コメントを生成し,これらを映像シーンのメタデータとして抽出した.被験者16人による評価実験を行い,抽出したメタデータが,未視聴映像の検索については約半数のシーン,再視聴映像についてはほぼ全部のシーンに対して重要な手掛りになることを確認した.
著者
石川 彰夫 パナヒプル テヘラニ メヒルダド 内藤 整 酒澤 茂之 小池 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.854-867, 2009-06-01
被引用文献数
16

仮想視点が空間の中に入り物体群の間を通り抜ける(ウォークスルー),新たな画像ベースレンダリング方式を研究している.はじめに,筆者らは,被写体空間を取り囲み撮影した多視点映像を用いて"ウォークスルー"を実現するための技術的な要件を示す.従来の画像ベースレンダリング方式には,カメラ配置の制約と視点位置の制限があった.筆者らは,それらの課題を解決するために,空間を多数の小領域に分割し各々に局所的な光線空間を設定するという,新しいフレームワークを提案する.また,新フレームワークにおけるウォークスルーの中で必然的に生じるオクルージョンの新たな処理方法も提案する.計算機シミュレーションにより,提案手法がウォークスルーを実現しているとともに,正確な視差を生成し,オクルージョン問題も適切に解決していることが分かった.
著者
熊本 忠彦 河合 由起子 田中 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.540-548, 2011-03-01
被引用文献数
6

筆者らは,コンテンツを見たり聞いたりしたときに人々が感じる印象をコンテンツそのものから抽出する手法の研究開発を行っている.本論文では,新聞記事を例として取り上げ,記事を読んだ人々が感じる印象を記事そのものから抽出するテキスト印象マイニング手法を提案する.具体的には,新聞記事データベースを解析し,記事に現れる各単語が記事の印象に及ぼす影響を数値化した印象辞書を構築するとともに,この印象辞書を用いて記事の印象値を算出する手法(算出法)を開発する.更に,この算出法が記事から算出する印象値と人々がその記事を読んだときに感じる印象値との対応関係を回帰分析により調べ,その結果得られる回帰式を用いて算出した印象値を補正するという方法で高精度なテキスト印象マイニングを実現する.ただし,提案手法により抽出される印象は,「楽しい⇔悲しい」,「うれしい⇔怒り」,「のどか⇔緊迫」の3種類であり,それぞれの印象に対し7段階の評価尺度(印象尺度)を設定している.提案手法の有効性を検証するために行った被験者実験では,それぞれの印象尺度における平均誤差が0.69, 0.49, 0.64となり,特に「うれしい⇔怒り」に対しては高い精度を得ている.
著者
八木 嵩大 宇都 雅輝 Shudai YAGI Masaki UTO
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18810225)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.10, pp.708-720, 2019-10-01

近年,受験者の実践的かつ高次な能力を測定する手法の一つとしてパフォーマンス評価が注目されている.しかし,パフォーマンス評価では,得られる能力測定値が評価者の特性に依存する問題が指摘されてきた.この問題を解決する手法の一つとして,評価者特性を考慮して受験者の能力を推定できる項目反応モデルが多数提案され,その有効性が示されている.他方で,これらのモデルは測定対象の能力に一次元性を仮定する.しかし,高次な能力の測定を目指すパフォーマンス評価では,複数の能力尺度で構成されるルーブリックを用いて採点を行うことが一般的であり,この場合には能力の一次元性は必ずしも満たされない.そこで,本論文では,評価者特性を考慮した多次元性項目反応モデルを提案する.提案モデルは,データから推定した最適な次元数の能力尺度上で,評価者特性を考慮した高精度な能力測定を実現できる.本論文では,提案モデルのパラメータ推定手法としてマルコフ連鎖モンテカルロ法に基づく手法を提案し,シミュレーション実験と実データ適用を通して提案モデルの有効性を示す
著者
小泉 昂也 折原 良平 清 雄一 田原 康之 大須賀 昭彦 Takaya KOIZUMI Ryohei ORIHARA Yuichi SEI Yasuyuki TAHARA Akihiko OHSUGA
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18810225)
巻号頁・発行日
vol.101, no.9, pp.1363-1371, 2018-09-01

人や企業は様々な条件下で最適な行動を取るのだろうか.取らないのであればそれはなぜか.その原因を求めることは,実際の個人・企業等の理解を大きく助ける.また,ゲーム理論はスポーツや経済学そしてその他の社会科学の理解に大きく関わってきた.本研究は比較的データが集めやすく混合戦略を適用できるサッカーのPK戦に注目し,独自の確率を考慮した利得表を作成した.その利得表を用いてPK戦におけるキッカーの最適戦略を求め,最適戦略と実際の戦略とのズレを明らかにした.そのズレの原因を求める為にデータセット内の各データ項目についての確率分布を比較するというアプローチをした.データはインターネット動画サイトより収集した,プロ選手による2001年〜2017年の間の世界各国のPK戦150試合(計1539人分)を使用した.実験結果として,最適戦略と実際の戦略との間にズレが存在することが分かった.またそのズレには国籍・スコア差の関与が示唆された.その結果から,サッカーPK戦における最適戦略と実際の戦略との間におけるズレの原因を推定した.本手法はスポーツ分野以外への応用も期待できる.
著者
西川 嘉人 辻 俊明 金子 裕良 阿部 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.1-11, 2009-01-01

GPS等の位置情報取得技術と移動体通信技術の進歩に伴い,車や電車,人といった時々刻々位置の変化する物体(以下,移動オブジェクトと呼ぶ)の位置情報の継続的な入手が容易となってきた.これに伴い移動オブジェクトの運行効率の向上,セキュリティ管理,位置に基づく情報提供などの応用が検討され,移動オブジェクトに適したデータ管理構造の研究が行われている.研究は目的により大きく,(1)最新位置管理,(2)未来位置予測,(3)軌跡管理,の三つに分けられる.本論文では(1)の最新位置管理を扱う.最新位置管理では,一般に1万以上の移動オブジェクトの最新位置を,秒や分単位で更新する必要があり,この頻繁な更新による処理コストがデータ管理構造の大きな問題となる.筆者らはこの解決のためには,(1)領域分割形の多次元データ管理構造が適している,(2)データの削除と挿入が同時に起こるためデータ削除の負荷が小さい構造が必要である,と考えた.本論文ではこれらを備えたバランスM分木kdm-tree (k-d tree for moving objects)を提案する.本文ではkdm-treeのアルゴリズムと特徴を述べ,他の木構造との性能比較実験を行い, kdm-treeが更新性能に優れ,メモリコストや検索性能も同等以上であることを示す.
著者
福田 直樹 伊藤 孝行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.2324-2335, 2007-09-01
被引用文献数
5

本論文では,10,000〜100,000を超えるような多数の入札がある組合せオークションに対して,勝者決定の近似解法を提案し,その特性を評価する.提案アルゴリズムでは,従来手法のLehmannアルゴリズムにおける入札ソート順位の決定因子に着目し,更に山登り法及びシミュレーテッドアニーリング(SA)による解の洗練を行うことで,安定して高い最適性を持った解を得る.入札数が1000程度の場合に,本提案手法では最適解に対して平均して0.997程度の総落札額が得られる解を見つけられることを示す.更に,従来の最適解探索手法と比較して十分に高速に動作し,10,000を超える入札数をもつオークションに対して数秒(入札数10,000)から数分程度(入札数100,000)の実用的な時間で計算が行えることを示す.本近似解法の限界点の一つとして,本近似解法を用いた組合せオークションが一般には真実申告最良とはならないことを,Monotonicityという条件が成り立たないことから示す.一方で,真実申告最良とはならないものの,本近似解法の一部では,解探索の過程におけるランダム性を排除し順序性を保存することで,近似解に対して特定の好ましい性質を満たすことを示す.
著者
東田 正信 奥 雅博 村上 仁一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2249-2261, 2013-10-01

PB(プッシュボタン)電話機から利用者が検索条件を入力して電話番号を検索できる自動電話番号案内システムを開発した.検索キーワード入力には,情報機器に不慣れな利用者でも,簡単に操作方法を学習でき,短時間で入力できる文字情報縮退入力方式を採用した.本方式では,ひらがな5文字を一つの数字キーに縮退させて割り付けたPB電話機の数字キーを使い,検索キーワードをその「よみがな」に従って逐次数字キーを押下することで入力する.同様の文字割付に従い数字列化された情報を付加した電話帳DBを数字列化されたキーワードで検索する.本論文では,文字情報の縮退度情報を用いて利用者からの入力回数を最少化するための入力情報数最少化技術,採用した入力方式に起因する曖昧性を複数の曖昧さを含む情報の相互接続可能性を用いて解消する相乗的曖昧性解消技術などの知的対話誘導技術,及びこれらの技術を実装した自動電話番号案内システムの構築と評価について述べる.このシステムは「あんないジョーズ」という名称で公衆サービスとして提供された.1998年から2007年までのサービス期間中に,約1300万呼に対して検索処理を実行し,正しく電話番号を案内できた呼は約1000万呼であった.表示機能がないことによる入力内容のミスやキータッチのミスなどに起因して,番号が案内できなかった呼を除いて,「あんないジョーズ」が利用者に対してオペレータと同等の応対を提供できた呼の数は呼全体の約85%であった.
著者
角野 皓平 向川 康博 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.1930-1937, 2007-08-01
被引用文献数
4

物体表面の反射特性を表す双方向反射率分布関数を密に計測するためには,様々な角度から照明した場合の反射光を様々な角度から計測する必要があるため,膨大な時間が必要であった.本研究では,楕円鏡とプロジェクタを組み合わせることで,高速に反射率を計測する手法を提案する.楕円鏡の一方の焦点に試料を配置し,もう一方の焦点にカメラとプロジェクタをハーフミラーを用いて配置する.これにより,投影画像を変えるだけで光源方向を自由に制御できる.また,試料のあらゆる角度への反射光は,カメラで一度に計測できるため,高速な反射率計測が可能となる.実際に計測装置を試作し,異方性反射特性をもつベルベットとサテンの反射率を計測したところ,光源のサンプリング間隔をそれぞれ1度とした場合でも,約50分で計測できた.
著者
藤田 和之 高嶋 和毅 伊藤 雄一 大崎 博之 小野 直亮 香川 景一郎 津川 翔 中島 康祐 林 勇介 岸野 文郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.120-132, 2013-01-01
被引用文献数
1

我々は多人数でのコミュニケーションを支援するための情報環境Ambient Suiteを提案し,検討を進めている.Ambient Suiteは部屋全体が入出力機能をもったシステムであり,様々なセンサにより会話の状態を推定し,また,この状態に応じて,床や壁に配置されたディスプレイ群を連携させて様々な情報を表示することで会話の活性化を目指す.本研究では,Ambient Suiteを立食パーティの場面に適用したAmbient Party Roomを実装し,これを用いた初対面の男女6人による会話実験を行った.この結果,本システムが会話の状況を十分に推定可能な性能を有し,情報提示により会話を活性化させられることが分かった.