著者
関 良明 爰川 知宏 清水 明宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1202-1209, 1999-09-25
被引用文献数
6

組織における知的生産性の向上と知的触発の拡大を図るため,コンピュータと通信ネットワークを利用した情報共有システムの研究開発を進めている.その一環として,個人が保有している断片的な情報をグループ内で共有するノウハウ蓄積システムFISH及び,その分散環境対応版であるGoldFISH,更にWebブラウザからの操作が可能なKINGFISHERを開発し,実験と分析を重ねてきた.その結果,実際の導入では障壁となる細かなユーザ登録や複雑なバッチ処理の設定などの改良すべき機能や,設計当初想定していなかったカスタマイズの要求などが明らかになった.これらの課題に対して本論文では,実運用システムとしての設計の基本方針を設定して,新たな情報連携モジュールFly-fishingを開発した結果を論述する.Fly-fishingは,情報間のリンクをあらかじめ生成するのではなく,情報参照時に動的なリンクを自動生成している.この方式の採用により,モジュール独立性が高まり,導入容易性とカスタマイズ容易性を確保している.本論文では更に,Fly-fishingの検索/表示/登録時間を用いて性能測定した結果を分析する.
著者
渡辺 陽介 北川 博之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.873-886, 2004-10-01
被引用文献数
15

今日,情報配信の形態としてデータ放送やプッシュ型情報サービスなどのデータストリームが注目されており,その数と種類が増加している.そのため,ストリーム型情報源の高度利用の重要性が高まっている.データストリームから必要なデータを抽出したり加工するための手段として,連続的問合せがある.多数のストリーム型情報源に対する多数の連続的問合せが与えられた際,その効率的実行が要求される.本論文では,そのためのアプローチとして,連続的問合せに対する複数問合せ最適化方式を提案する.本研究が想定する複数のデータストリームの処理環境では,連続的問合せ中の演算においてウィンドウなどの時間条件を用い,かつ利用者がその情報を必要とするタイミングで提供することが必要である.このような連続的問合せは,同一の演算であっても実行タイミングによって全く異なる結果を生成し得るため,従来のバッチ処理などを想定した複数問合せ最適化手法をそのまま適用することは困難である.本提案手法は,実行タイミングの違いによる問合せの参照範囲の違いを考慮し,参照範囲が近い同士の問合せをグループ化することにより効率的な実行処理プランを導出する.
著者
上田 芳弘 成田 仁志 加藤 直孝 林 克明 南保 英孝 木村 春彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.887-898, 2004-10-01
被引用文献数
3

電子メールやWebを利用した問合せメールを,適切な担当者に自動分配するシステムを構築した.提案手法は,まず各担当者が作成した文書ファイルを収集して,この中の出現単語のtf・idf値とidf/conf値を算出し,この2種類の辞書を担当者ごとに作成する.更に,従来の帰納的学習に代えてProfit Sharingを応用し,これらのウェイトを強化学習することが特徴である.システムは,問合せメールとこれらの辞書を照合して,単語のウェイトと一致率から担当者ごとにスコアを算出し,このスコアが高い担当者を回答者として推定する.提案方法の有効性を評価するために実際の問合せメールを用いて評価実験を行い,以下のような考察をした.(1)問合せメールを分配している専門家の分配精度から実用上必要な精度を明らかにした.(2)tf・idf値とidf/conf値を用いただけの分配では,実用的な分配精度が得られなかった.(3)(2)の単語のウェイトを強化学習することにより分配の専門家と同等な精度で実用的な分配ができた.最後に(3)の実用的な精度を得るための文書ファイル数とノイズに関する評価を行い,更に従来のテキスト分類手法との精度比較を行った.
著者
林田 尚子 八槇 博史 喜田 弘司 山口 智治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.575-582, 2003-08-01

本研究で想定する街中における情報共有環境では,情報そのものが断片的でかつ有効期限も短いため,その瞬間に欲しい情報が見つけにくい.生成した情報をグローバルネットワークからアクセス可能としておきさえすれば,いつかだれかが見てくれるという環境とは異なり,より積極的に情報を配信し,また発信を促すような,情報の流通を促進する枠組みを考える必要がある.この枠組みを実現するために,情報流通を支援するエージェントを考える.本研究では特に,情報提供の促進に視点をとらえた.情報保持者の不安が情報提供にマイナスの影響を与えるものと考え,これらの影響をリスク要因と呼び,街中からの情報提供行動に対するリスク要因の影響をフィールド実験を行い検証した.本実験により,金銭的報酬の導入や入力コストの削減などの手法とは別に,リスク要因を減じるサポートを与えることで情報提供行動を促進できることが明らかとなった.また,単独では有効なサポートであっても組み合わせたときには,むしろ,単独のサポートよりも情報提供を促進する効果が低い現象も見られた.本論文では,実験における被験者の行動・アンケート結果をもとに,情報提供促進のためのエージェントの機能を考察する.
著者
馬 〓 飯田 一弘 謝 孟春 西野 順二 小高 知宏 小倉 久和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.21-30, 2002-01-01

多数本のケーブルを最適に配線する最適配線経路選定問題に対する遺伝的アルゴリズム(GA)の構成法を提案する.配線経路に制約のない場合は, 個々のケーブルの最適経路を有限離散グラフにおけるダイクストラ法により得ればよい.しかし配線経路に容量の制約をもつ場合はダイクストラ法では最適化できない.提案するGAは, 2階層からなる染色体コーディングを採用した2階層GAである.各ケーブルの経路とケーブル経路の組合せとをそれぞれの階層とし, それぞれの階層における遺伝的操作によって全体として配線経路選定の最適化を図る.前者の階層における遺伝的操作として, ブロック交叉とブロック突然変異を導入した.また, 後者の階層で生成される制約条件を満たさない致死遺伝子を利用する手法も工夫した.コンピュータシミュレーションにより, これらの遺伝的操作をもつ2階層GAが, 経路探索問題に対して有効に働くことを確認した.
著者
竹内 郁雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.513-522, 2001-06-01

記号処理言語Lispの本質を現代の視点で見直し, コンピュータシステムに携わる人々が今後どのような技術課題に取り組むべきかについてLispにからめた形で論ずる.プログラミング言語の取捨選択は未来永劫(ごう)固定的なものではない.これまで長い間雌伏してきたLispに今大きな跳躍の機会がきていることを, やや楽観的な技術的観点で主張する.
著者
上嶋 宏 三浦 孝夫 塩谷 勇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.137-144, 2004-02-01
被引用文献数
2

本論文では,同義語,多義語を用い,単語のもつ意味のあいまい性を考慮した文書分類を提案する.本論文での文書分類は,シソーラスと単語がもつ複数の意味の使用頻度を用いる.これらを考慮することにより単語のもつ意味のあいまい性を排除し,分類精度を向上させる.本論文ではワードネットを用いて実験を行い,82%を超える高い分類正解率を得たことを示す.
著者
砂山 渡 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.146-154, 2001-02-01
被引用文献数
12

近年, インターネットの普及に伴って文書の電子化が進んでいる.しかし, 我々がそれら文書のすべてに目を通すことは, 肉体的にも時間的にも困難である.それゆえ各文書の内容を端的に表する要約が, 必要な文書の取捨のために有効となる.そこで本論文では独自の方法によって重要文抽出を行う展望台システムを提案する.このシステムは, 文章の全体を見通した上で文章を特徴づけるキーワードを発見する.特徴キーワードは文章の主題と密接にかかわりのある単語として抽出されるため, 有効な重要文抽出に役立てられる.
著者
永見 健一 松嶋 聡 菊池 豊 中川 郁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.572-579, 2004-05-01
被引用文献数
4

インターネットやインターネット技術を用いた企業網が多数使われるようになり,ネットワークの信頼性の向上が望まれている.インターネットを提供するISP(Internet Service Provider),企業網等に使われるVPN事業者などは,ユーザヘの提供ネットワークの監視を行うことにより,機器や回線故障などを迅速に検出し,ネットワークの信頼性を向上させている.従来の典型的なネットワーク監視は,SNMPやICMPを用いて,ネットワーク監視端末から機器への到達性を見ている.しかし,ネットワーク内で転送されるユーザのパケットは,機器や回線の故障だけではなく,経路情報の誤りによっても目的地に到達できない.そこで,ネットワーク監視は,機器や回線故障だけではなく,経路情報も監視する必要がある.本論文では,単一組織が管理するAS内部の経路情報であるOSPFに着目し,経路情報監視システムを提案・実装した.この実装を複数のネットワークに接続し,そのネットワークの経路情報の安定度を測定し,経路情報の監視が重要であることが分かった.更に,典型的なネットワーク監視では観測されない経路情報の問題点を検出し,その問題点を解決することで,ネットワークの安定性を向上した例を述べる.
著者
小西 達裕 鈴木 浩之 伊東 幸宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.682-692, 2000-06-25
被引用文献数
8

本論文では, プログラミング演習における教師支援を目的として, プログラム理解技術の応用により学習者のプログラムを自動的に評価する手法を提案する.学習者プログラムの評価はプログラムの正誤だけではなく, 教師が演習問題を出題する際の教育目標を満たすか否かに基づいて行う必要がある.そのためにまず, 教育目標は演習問題の解答プログラムの標準アルゴリズムとして表現可能であることを示し, その具体的表現手法として拡張PADを提案する.拡張PADは処理順序の任意性やある機能の実装方法の任意性を陽に表現できるため, 教師が記述の詳細度を教育目標に応じて調整できるという特徴がある.次に学習者プログラムと拡張PAD形式で記述されたアルゴリズムの照合手法を提案する.最後に提案した手法に基づいて試作システムを構築し, 初等プログラミング演習のモデルコースを想定してシステムの実用性に関する評価実験を行った結果を報告する.
著者
星合 隆成 柴田 弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.9, pp.1001-1012, 2000-09-25
被引用文献数
18

本論文は, 御用聞き型情報提案が可能な自律分散照合環境(Autonomous Decentralized Comparison Environment: ADCE)アーキテクチャを提案する.御用聞き型情報提案とは, コンテンツプロバイダが自身のコンテンツにふさわしいエンドユーザに対してのみ, 直接, コンテンツの提案を行うことが可能な提案方式のことをいう.一方, 自律分散照合環境は, 自律分散型の照合ネットワーク(コンテンツ紹介情報流通網)であり, エンドユーザとコンテンツプロバイダが, 互いの存在を知らない状況において, コンテンツ紹介情報を取得したり, 告知できるネットワーク環境を提供する.なお, 自律分散照合環境は, 御用聞き型情報提案ばかりでなく, 従来型の問合せ型情報提案にも有効である.また, 本論文では, 御用聞き型情報提案と自律分散照合環境の効果を定性的に示す.更に, 自律分散照合環境の性能評価モデルと性能解析式を示し, これにより, 自律分散照合環境が高いスケラビリティを有することを明らかにする.
著者
土肥 拓生 吉岡 信和 田原 康之 本位田 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1299-1311, 2005-09-01

近年, ネットワークの拡大に伴い情報の流通速度の高速化が進んでいる. それに伴いソフトウェアが扱うべきデータも大量・複雑になり, 環境の変化に対する変更も頻繁に生じるようになってきている. そのため, すべてを人間が把握した上で処理することは難しくなり, それを補うために自律性・協調性などの人間的な要素がソフトウェアにも求められるようになる. そして, マルチエージェントシステムはこのようなソフトウェアに対する解決策の一つとなる. マルチエージェントシステムにおいて重要な要素の一つは協調性, すなわち, インタラクションである. しかしながら, 既存の実装言語では表現力が不足しており, インタラクションの設計と実装の隔たりが大きい. そこで, 本論文では, インタラクションを実装するために必要な要素を検証するとともに, その理念に基づいて設計したインタラクション記述言語IOM/Tを提案する. IOM/Tを用いることにより, 設計をもとにインタラクションを開発することが容易になる.
著者
土本 康生 三川 荘子 大川 恵子 村井 純
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.855-863, 2004-09-01

社会基盤として定着したインターネットは,広帯域化を進め,新しいアプリケーションが登場し,常に発展を続けている.このような状況においてディジタルデバイドが存在する地域がある.その地域に対して政府開発援助や民間資金により支援が行われているが,それらの援助は一時的なものであり,常に進化し続けるインターネットに対して,ディジタルデバイドを根本的に解決していない.そこで,ディジタルデバイドを解決する手法として情報通信基盤構築と人材育成を密接に連携させて行うブリッジインセンティブモデルを提案した.ブリッジインセンティブモデルは,(1)利用する技術に注目しディジタルデバイドが存在する環境を明確化し,(2)ディジタルデバイドが存在する環境間を先端インターネット技術を用いて相互接続し,(3)最先端のアプリケーションを利用できることをインセンティブとして情報通信基盤構築と人材育成を行う.また,ディジタルデバイドの解消に向けてブリッジインセンティブモデルに従ってSOIASIAプロジェクトを実施した.活動は,A)ディジタルデバイドが存在する日本と東南アジアの間で人工衛星回線を用いて情報通信基盤を構築し,それらを管理する人材の育成として,B)基礎知識獲得支援,C)実戦訓練プログラム,D)先端インターネット技術プログラムを実施した.その結果,上記,A)〜D)の活動を通じ,7か国11組織を相互接続する情報通信基盤が構築され,育成された29名のネットワーク管理者が現在に至るまで継続的にプロジェクト推進業務に活躍している.これらのことから,ブリッジインセンティブモデルが継続的に先端技術を用いることで継続的な発展を促し,解消したディジタルデバイドが新たに拡大しないことを実現し,ディジタルデバイド解消に大きく貢献できることを明らかにした.