著者
森 幹彦 山田 誠二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.487-494, 2000-05-25
被引用文献数
21

ブックマークエージェントは, ユーザが興味をもったURLを登録してあるブックマークファイルを参照し, ユーザ間で情報の共有を行うシステムである.このエージェントは, 既存の検索エンジンよりも効果的に情報の検索を行うことができる.ユーザがあるWebページをブラウジングによって探そうとしているとき, このエージェントはユーザの要求していると思われるWebページをブックマークの中から検索して, ユーザのブラウザにハイパリンクとしてのリストを提示することができる.更に, エージェントは他のユーザのエージェントと交信することにより, 他のユーザのブックマークの検索も行うことができる.小規模で興味の似たユーザからなるグループにおいてこのエージェントを用いることで, ブックマークというユーザによってあらかじめフィルタリングされている情報を利用できるため, ブックマークエージェントは既存の検索エンジンよりも適合率の高いWebページの提示が可能である.このことは, ブックマークエージェントの性能評価のため6人のユーザを使った実験により確認された.
著者
竹中 崇 岡野 浩三 東野 輝夫 谷口 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.462-470, 2004-04-01
参考文献数
10

整数変数をもつ有限状態機械(FSM/int)に対する記号モデル検査法を提案する.入力値を保持する変数の値は次に同一遷移で新たな値が読み込まれるまで変更されない,などの制約を満たす,与えられたFSM/intに対し,整数変数をもつCTL式を満たすか否かをこの記号検査アルゴリズムは判定する.この記号モデル検査アルゴリズムを実装し,ブラックジャックディーラ回路とバケット多重化プロトコルに適用した.そして,100状態,10整数変数程度の規模のシステムであれば数秒程度(最悪時で数分程度)で検証できることが確かめられた.
著者
中山 実 實松 北斗 清水 康敬
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.225-233, 2000-01-25
参考文献数
14
被引用文献数
11

教育情報の検索や分類を行うために, 学習指導要領と指導書に出現する用語の頻度を分析し, 教科と用語との関係や用語間の関連を検討した.用語の教科に対する出現の有無から, 用語と教科の特徴ベクトルを特異値分解によって抽出した.これらの性質を調べたところ, これらの特徴ベクトルを用いることによって, 用語の分類や教科内容の推定に利用できることを示した.また, 自己組織化マップを用いて, 教科内容と用語の特徴を示すコードブックベクトルを求めた.これによって, 教科内容と用語を2次元空間内に配置し, それぞれの関係を図示する手法を検討した.更に, 教科内における学年内容と用語の関係を図示したり, 内容の推定に利用できることを示した.
著者
宮寺 庸造 田地 晶 及部 佳代子 横山 節雄 近谷 英昭 夜久 竹夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.398-415, 2004-03-01
被引用文献数
13

本研究は,ユーザ要求に適応的な学術論文視覚化システムの開発を目指し,領域的・時間的に安全な視覚化手法を提案する.視覚化においては,学術論文を頂点,論文間の関係を辺,関連の強さを辺の重みとするグラフを用いて論文関係を表現する.視覚化をシステマチックに扱うため,論文関係図と,視覚化のためのユーザ要求を制約条件として,定式化する.その制約条件の組合せによる視覚化条件とそれを満たす視覚化パターン,視覚化アルゴリズムを提案し,その計算量の考察を行う.これらのアルゴリズムはグラフ描画問題に基づいて考察され,領域的・時間的に安全な視覚化が理論的に保証される.更に,本研究で提案した視覚化手法のアプローチに基づいて開発された論文関係情報視覚化システムを紹介する.
著者
徳田 尚之 黄 亮 陳 亮 日下部 誠 永井 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1089-1101, 2001-07-01
被引用文献数
8

本論文では, 文字列照合アルゴリズムを使うことにより, システムに全く素人な語学教師でもこれまでの教育経験を容易にシステムに組み込むことができ, しかもロバストで効率の良いテンプレートオートマトンによる対話式英作文(語学)学習支援システム(ILTS:Intelligent Language Tutoring System)を開発することに成功した。本システムの一番の特徴は, 学習者による入力英作文とテンプレートパス間で定義される相似度の最も高い最車共通文字列(Heaviest Common Sequence)探索により学習者の英作文の誤り診断を行い, それに沿って学習戦略を立てたことである。このシステムでは外国語教育では定評のあるFries教授法[1]とも共通する基本的英文熟語の繰返し学習法を採用することにより英語学習教育の効率を高めただけでなく, 自然言語に特有な文章パターン数の指数関数的爆発を避けることにも成功した。テンプレート構築の際に用いた200人程度のモニタ群と学習背景が全く違う100人程度のモニタ群で予備的なシステム性能評価試験を行い, 期待どおりの診断結果が得られたので報告する。
著者
林田 尚子 石田 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1459-1466, 2005-09-01
被引用文献数
18

従来の機械翻訳システムは, トランスペアレント(透明)であるべきだという考えに基づいて, 翻訳精度を尺度として技術開発が行われてきた. しかしながら, 翻訳誤りは今日に至っても無視できないほど大きく, 機械翻訳システムをトランスペアレントな伝送路とみなすことはできない. 本研究では, 機械翻訳システムをエージェントとして陽に意識し, インタラクティビティ(相互作用性)という新たな評価尺度を提案する. また, その第一歩として利用者のリペア(翻訳に適した文章への修正)支援機能を取り上げ, 実現された場合の性能予測を行った. 具体的には, 折返し翻訳, 強調表示, 修正教示機能を提案し, 各機能の効果の上限を調べるための実験を行い, 以下を明らかにした. (1)折返し翻訳結果と英語翻訳結果と同時に提示することが有効である. (2)強調表示機能は, ユーザが修正個所を特定するのに有効である. (3)修正教示は強調表示と同時に与えることで, リペアに大きな効果をもたらす. また, 現状の自然言語処理技術を適用し上記機能を実現するための方向性を示した.
著者
安永 守利 吉原 郁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.915-929, 2005-05-01
被引用文献数
17

VLSI実装基板において, 配線上を伝搬する超高速信号の信号品質を向上することが重要な課題となっている.特に, クロック信号はディジタル電子機器の基本同期信号であり, 高い信号品質が望まれる.本論文では, 信号品質を向上させるための新たな伝送線構造である「セグメント分割伝送線」を提案する.セグメント分割伝送線は, 独立した特性インピーダンスをもつ複数のセグメントからなる伝送線である.複数セグメントの特性インピーダンスの不整合により発生する反射ノイズを重畳することにより, 伝送線上の注目点における信号を整形し, 信号品質を向上することが特徴である.セグメント分割伝送線の設計では, 複数セグメントの特性インピーダンスの最適な組合せを求める必要がある.この設計のために, 遺伝的アルゴリズムを適用する.また, その効率的な進化を実現するための新たな交差方法である「部分空間交差法」を提案する.更に, この新たな交差法に基づく遺伝操作を用いたセグメント分割伝送線の設計支援システムを開発する.開発した設計支援システムを用いて実際の実装基板上のメモリモジュール配線を設計し, 従来手法との比較評価を行い, その有効性を示す.
著者
杉本 雅則 楠 房子 稲垣 成哲 高時 邦宜 吉川 厚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.1152-1163, 2002-12-01
被引用文献数
8

筆者らはこれまで,RFID技術を用いたセンシングボードを用い,物理世界と仮想世界とを融合することによるface-to-faceでのグループ学習支援システムを構築してきた.このシステムを用いた実践から,コンピュータの使用が苦手な学習者でも容易に学習に参加できる,教科書等を通して得た知識を物理世界で試せる,などの点で有効であることを示せた.しかし,発言の場においてリーダーへの依存が強くなる点や,より本物性の高い設定での学習支援ができないか,などの点も指摘されていた.そこで,本論文で提案するシステムでは,学習者のグループが互いにface-to-faceで話し合えないよう,複数のセンシングボードを別の場所に配置した.そして,各ボード上での操作が互いに影響を及ぼし合うよう,それらをネットワークでつないだ.グループ内の学習者はボードを囲みながらface-to-faceで問題を解決するとともに,別のグループの学習者とは,チャットシステムを介して交渉を行う.小学校の授業の中で,都市設計と環境問題の学習を学習者に行ってもらい,提案システムの有効性を検証した.
著者
渡辺 哲也 渡辺 文治 藤沼 輝好 大杉 成喜 澤田 真弓 鎌田 一雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.891-899, 2005-04-01
被引用文献数
15

重度視覚障害者のコンピュータ利用を支援するスクリーンリーダには「詳細読み」という読み方が装備されている.これは, コンピュータで取り扱う文字を音声で一意に特定させるため, 各文字にそれぞれ異なる説明的な表現を割り当てたもので, 特に同音の漢字の区別に必須である.この詳細読みの一部にもとの漢字を想起しづらいものがあるという問題が提起されてきた.そこで, まず既存のスクリーンリーダ4種類から教育漢字1006字の詳細読みをテキストに書き起こし, その構成と語彙の観点から, もとの漢字の想起を困難にする要因を考察した.次に, スクリーンリーダを児童が利用した場合の問題を探るため, 詳細読みを聞いて想起した漢字を書き起こさせる実験を小学校で行った.その結果, 8割以上の詳細読みは50%以上の正答率を得た.他方で50%未満の正答率となった詳細読みを, 同じ漢字で正答率の高かった読みと比較・検討したところ, 児童の語彙範ちゅうにない説明語の使用が最も大きな要因であることが分かった.誤答の要因として次に多かったのは, 同音異字のある説明語の使用であった.
著者
高橋 大志 寺野 隆雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.618-628, 2003-08-01
被引用文献数
10

本研究は,リスクマネジメントが市場全体にもたらす影響をエージェントベースアプローチにより分析したものである.はじめに金融工学の分野において報告されているリスクマネジメント手法の有効性を確認した後,過度のリスク管理が実施される場合や周りの投資家動向を考慮する投資家が多数存在する場合などの特殊な条件下においてはリスクマネジメントが市場価格を適切な水準から乖(かい)離させる可能性のあることを確認した.
著者
下川 俊彦 吉田 紀彦 牛島 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1396-1403, 2001-09-01
参考文献数
12
被引用文献数
15

インターネット上の多くのサービス提供者は, サービスの混雑を避けるために複数のサーバを用いてサービスを提供している.このような環境で, クライアントがどのサーバを選ぶかという問題が生じてきている.そこで, 最適なサーバを自動的に選択するサーバ選択機構が必要となった.本論文では, まずサーバ選択機構への要求事項をまとめ, それらを満たす新たなサーバ選択機構を提案する.本機構はDNS(Domain Name System)を基盤とすることで幅広い適用性をもちつつ, 多様なサーバ選択ポリシーを組込み可能としたものである.これらのサーバ選択ポリシーは, ラウンドトリップタイムなどのネットワーク状態を用いた判断を行うことも可能である.動的に選択ポリシーの切換を可能とすることで, 様々な状況に対応可能となる.我々は, プロトタイプシステムを用いて, 広域に分散配置したサーバ群を対象に評価実験を行い, 本サーバ選択機構の有効性を示した.
著者
加藤 直樹 田中 宏 中川 正樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.203-212, 2001-02-01
参考文献数
9
被引用文献数
7

本論文は, 手書きメッセージの読み書き, 送受信, 重ね書き, 筆記者・筆記時刻確認, 筆記再生などの機能を有する手書き電子メール環境について述べる. 我々は, 初心者にも自然な手書きをUIに採用し, 簡単に表現豊かなメッセージをインターネット上で送受信できるシステムを実現した.本システムは手書きメッセージが送受信できる点で, 近年急成長している携帯型情報通信端末に先行するものである.更に, 手書きの筆跡や図形, コード文字を表現できるように提案したフォーマットHandsDrawに従い, 手書きのメッセージを読み書き, 送受信する機能はもちろん, 受信メールへの上書き, 筆記者・筆記時刻確認機能, そして, 筆記再生機能を提供する.対話技法としては, ペン入力の良さを生かした囲み選択と, ペン入力の弱点を解決したボタンインタフェースを採用した.本システムを実際に使用してもらった上でアンケート調査を行い, また, 2年半にわたるインターネットでの公開や研究室内での使用によって多くの意見を収集した.その結果, 提供するすべてに機能に対して総じて肯定的な意見が得られた.その一方で, 手書きの文字をそのまま送りたくないとの意見も得られ, 文字認識機能の必要性が示された.
著者
谷口 秀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.193-201, 2002-02-01
参考文献数
7
被引用文献数
2

計算機のソフトウェアは,その走行環境から大きく二つに分類できる.カーネルモードで走行するOSカーネル内のカーネルのプログラムと,ユーザモードで走行するOSカーネル外のプロセスのプログラムである.この二つのプログラムは,連携して処理を行うために,効率的な連携が必要である.従来のOSにおいて,両者の連携機構としては,システムコール(system-call)や上位呼出し(up-call)が用いられている.しかし,この二つの方法は,走行モードの変更とコンテクストの切換を伴うため,処理オーバヘッドが大きい欠点をもつ.本論文では,新しいOSカーネル内外連携機構として要求・データの表示(DRD:Display Request and Data)機構を提案している.DRD機構は,走行モードの変更やコンテクストの切換を伴わないため,処理オーバヘッドが少ないOSカーネル内外連携機構である.また,DRD機構を実現する際の課題を示し,対処法を述べている.実装評価により,DRD機構の処理命令数は1要求当り59命令と少なく,システムコールに比べ約0.71μ秒だけ処理時間が短いことを示している.
著者
白戸 仁博 佐々木 整 竹谷 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.619-626, 2000-06-25
被引用文献数
15

病弱児童生徒などの学習機会や学習情報の提供, 学校間連携による多様な選択科目の導入や単位の取得の支援, 生涯教育への利用など, 様々な分野での遠隔教育の必要性は非常に高く, これまでに様々な遠隔教育システムが提案, 実用化されている.しかし, これら既存の遠隔教育システムには, 設備や運用面などで様々な問題点が指摘されている.本論文では, 遠隔学習の新たな可能性の一つとして遠隔教育にバーチャルリアリティ技術を用いたバーチャルスクールの提案を行う.また, これまでに開発したバーチャルスクールのプロトタイプをもとにバーチャルスクールによる遠隔教育の可能性を考察する.更に, プロトタイプシステムを用いて行った, 実験授業について報告する.
著者
若原 俊彦 薗 都雄 中辻 裕一 清水 隆雄 松本 充司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.626-634, 2002-07-01

本論文は,60GHz帯のミリ波無線伝送システムを用いて,キャンパスネットワークを構成するため,早稲田キャンパス内の各ビルにおけるケーブル配線方式の検討結果を報告するものである.この60GHzの周波数帯は2000年の8月に郵政省から省令改正により日本では初めて無免許で使用を認可されたものであり,これを用いて100Mbit/s高速キャンパスネットワークを構築する際のビル屋上及び屋内配線方式として2芯光ファイバを用いる場合と多芯光ファイバケーブルを用いる場合のコスト比較を行い,多芯ケーブルを用いる方が経済的であり,また工事の作業性なども容易であることが明らかとなった.
著者
古市 昌一 尾崎 敦夫 松川 仁 岩瀬 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.1610-1622, 2001-12-01
被引用文献数
4

本論文では, 異機種分散シュミュレーッション統合アーキテクチャーHLAをベースとした, 並列分散シュミュレーションシステム構築実行モデルPDS/HLAを提案する.PDL/HLAモデルは, プログラマは実行する計算機のアーキテクチャーを意識することなく, シュミュレーションの対象とする実行主体の振舞いを定義することによりプログラミングを行う.並列分散計算機環境へのマッピングは, 実行主体の生成や消滅及びイベントの発生を定義するファイルの中で, PDS/HLAで定める負荷分散プログラマを指定することにより静的に行う.標準仕様HLAをベースとしているため, 既存のHLA準拠シュミュレータを組み合わせた効率の良いシステム開発を行うことができるともに, 対象とする問題規模が増加した際には, プログラムを変更することなく, 実行計算機の台数を増やすことにより対処できることが特徴である.本論文では, 提案するPDS/HLAモデルの有効性を示すため, 本モデルをベースとした開発実行支援環境MARINEを実装し, 教育・訓練用のウォーゲームシュミュレーションシステムに適用して性能評価を行い, プログラムの記述性の高さと, 分散計算機環境上での並列処理の効果について議論している.
著者
伊藤 和幸 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.527-535, 2005-02-01
被引用文献数
18

本研究では, 重度肢体不自由者向けに視線を利用した意思伝達システム(視線入力式文字入力装置・環境制御装置)を安価に提供できるようなシステムを開発する.視線の検出には, 画像処理ボードを利用した高精度・高機能なものが市販されているが, それらを使用するとコストダウンが困難であり実用に結び付かないという欠点があるため, 本研究ではビデオキャプチャした画像をソフトウェア的に処理することで視線検出を行い, システムにかかるコストの削減を図った.近年のパソコン性能の向上により, ノートパソコンの使用も可能でありシステムのコンパクト化も実現できた.
著者
伊藤 暁 井上 克司 王 躍 岡崎 世雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.452-457, 2003-07-01
被引用文献数
3

N人がジャンケンをして全員を順位づけるために必要なジャンケン総数の期待値は[○!-]((3/2)^N)であり,また最終的に1位の人だけを決めればよい場合に必要なジャンケン回数の期待値も[○!-]((3/2)^N)であることを示す.一方,各自が2種類の手しか出せないジャンケンでは,上述の期待値がそれぞれ[○!-](N),O(logN)となることを示す.
著者
大川 正人 室田 真男 中山 実 清水 康敬
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.651-657, 2000-06-25
被引用文献数
17

インターネットに提供した学習教材は, 学習者にとって有効である.しかし, 学習者がどのような学習履歴をとったかについては, 学習教材提供側ではわからない.そこで, 本論文では, インターネットでアクセスしてきた学習者の学習履歴を収集し, 学習者がたどったとおりに提示画面を時系列的に再現するシステムを開発した.そして, このシステムを, アニメーション表示, 数値計算シミュレーションなどの機能を有する学習教材に適用し, その動作を確認した.本研究で開発したシステムを用いることで, 多数の遠隔サイトにいる学習者の学習行動を再現できる.そのため, Web教材の改善を図ることなどに応用することが可能である.