著者
服部 正典 長 健太 大須賀 昭彦 一色 正男 本位田 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.543-552, 2003-08-01
被引用文献数
5

ユビキタス環境において状況依存型のコンピューティング環境をすることを目的とした「ユビキタスパーソナライズエージェント」について述べる.本技術はユビキタス環境において収集が可能となる様々なユーザ関連データやイベント情報からユーザの状況を自動認識する「状況認識エージェント」とユビキタス環境に存在する各種デバイスとサーバシステム間でパーソナライズに関する処理の適切な分散を実現する「軽量知的モバイルエージェント」によって構成される.本論文では特にモバイルエージェント適用の効果に関して,実証実験を通した評価を実施することでその有効性の確認と考察を行う.
著者
川口 真司 ガーグ パンカジ 松下 誠 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1217-1225, 2005-08-01
被引用文献数
6

近年, ネットワークの発達と分散ソフトウェア開発の普及に伴い, 大規模なソフトウェアリポジトリが一般的なものとなってきている. ソフトウェアリポジトリとはソースコードやドキュメント, バグレポート等の各プロジェクトの成果物を蓄積するためのデータベースである. 通常, ソフトウェアリポジトリは膨大な数のプロジェクトを保持しているため, 例えば, 開発者が現在開発中のものと似ているプロジェクトを捜したり, 管理者が会社内で走っている全プロジェクトを俯瞰するといったことに活用できる. しかし, 保持内容が膨大なためにプロジェクト同士の関連を判定して整理するには非常な労力を必要とする. そこで, 我々はソフトウェアを自動的に分類するMUDABlueシステムを作成した. MUDABlueの特長は以下の四つである. (1)分類にはソースコードのみを使用, (2)分類先となるカテゴリー集合も自動的に決定する, (3)ソフトウェアを二つ以上のカテゴリーに分類することを許す, (4)Webインタフェースで分類結果を表示する. 本論文では既存の分類手法との比較を通じてMUDABlueシステムの有効性を議論する.
著者
高濱 徹行 阪井 節子 磯道 義典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1297-1306, 2001-09-01
被引用文献数
2

本研究では, 変異遺伝子を積極的に利用した遺伝的アルゴリズムであるMGGAを提案する.変異遺伝子を有する個体では, その遺伝子に対応する形質の発現が不完全になったり, 発現しなくなるなどの現象が起きる.MGGAでは, 遺伝子型を表現型に変換する変換関数に変異遺伝子の影響を与えることにより, これらの現象を実現する.更に, 正常な遺伝子から変異遺伝子への不可逆的な変化を導入することにより有効性の低い遺伝子を削減する機能を実現する.この機能をもつMGGAを多項式モデル及び階層型ニューラルネットワークにおけるパラメータ構造決定に用いることにより, MGGAがパラメータ数を削減できる汎用的な方法であることを示す.
著者
高橋 徹 武田 英明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1244-1255, 2001-08-01
参考文献数
9
被引用文献数
12

本論文では, 非同期型コミュニティシステムのインタフェースとしてアニメーションエージェント(avatar-likeエージェント)を用いることの効果を述べるとともに, 我々の実装したシステムTelMeAの説明と, そのテスト運用の結果を述べる. 心理実験の結果, エージェントは単に発話者を代弁するだけではなく, 複数の発話者の識別に対して効果をもつことがわかった. そのためエージェントを用いることでコミュニティ内の人間関係等の状況を会話内容から把握しやすくなり, 会話文脈へのアウェアネスが高まるものと考えられる. 更にエージェントはアニメーションや画面上の移動により, 表情, ジェスチャー, 接近, 指差しといった非言語表現を行うことができる. TelMeAは, Webページ上に表示させた各々のエージェントに, 前記のような表現のマルチモーダルな振舞いを記述するスクリプトを交換することで, 複数人数による非同期会話を行うためのシステムである. TelMeAを9日間試験運用した結果, 全発言の中には17%の非言語表現が見られ, アンケートの結果からは, TelMeAの機能が利用者に高く評価されたことがわかった.
著者
星合 隆成 ツイナニー パトリック 佐藤 規男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.1080-1092, 1999-08-25
参考文献数
17
被引用文献数
6

本論文は, ストリームデータの取扱いが可能なストリームインタフェースと, その実装方法を提案する. 更に, ストリームインタフェースを用いた広告配送システムを構築し, その性能評価モデルを示す. 性能評価モデルに基づいた性能実測により, ストリームインタフェースの性能を定量的に評価し, その結果から, 十分な処理能力を達成できることを示す.
著者
桑原 恒夫 玉城 幹介 山田 光一 中村 喜宏 満永 豊 小西 納子 天野 和哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.9, pp.1013-1024, 2000-09-25
被引用文献数
22

我々が提案しているCAIと教師がリアルタイムで協調しながら教育を行う個人進度別教育支援システム(MESIA)では, CAIと教師が行き詰まった生徒に対して様々な方法で支援を行っている.本論文では専門学校におけるMESIAを用いた教育実験において, これらの機能の有効性を生徒の主観評価, 利用率, テストの解答の正解化(誤答から正解への変化)への寄与で評価した結果を述べる.その結果, MESIAに実装した機能のうち, CAIから与えられた小テスト, 正解に近い誤答に対するヒント(以後, ヒントという), 解答の作成指針を与えるヒント(以後, HELP/MOREという), 教師から与えられるメッセージが特に有効であることを示す.また教師によるメッセージは同一テスト中に与えられる一連の支援の後半に利用率が高く, その正解化への寄与率が他の支援と比較して最も高いことと相まって, 行き詰まった生徒に対する切り札的な支援になっていることを示す.ただし正解化に寄与した支援数自体は, CAIによる支援数の合計がこの教師によるメッセージの支援数よりはるかに多く, CAIの支援機能によって教師の稼動が大幅に減少していることを述べる.
著者
岩下 志乃 鬼沢 武久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.891-900, 2000-08-25
被引用文献数
10

従来の似顔絵描写に関する研究では, 顔画像の処理を行い, 特徴点を抽出し似顔絵を描写するものが多かった.しかし, 顔から受ける個人的なイメージをもとにして似顔絵を描写するという観点から研究は少ない.そこで本論文では, 顔の印象や特徴を言葉で表現し, その言語表現をもとに似顔絵を描写するプロセスについて検討する.入力される印象として, 快活度, 優しさなど五つのグループに関して言葉を入力する.描かれた似顔絵は言葉を用いて修正することができる.また, 似顔絵を描く上で重要とされる誇張の概念を, パラメータ値と線種の修正という2種類の誇張法を用いて実現する.最後に, 何人かの被験者に似顔絵を作成してもらい, 本手法の評価を行う.
著者
荒川 文男 山田 哲也 岡田 崇 石川 誠 近藤 雄樹 小沢 基一 兒玉 征之 西井 修 服部 俊洋 亀井 達也 西本 順一 吉岡 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.125-133, 2005-02-01

近年, 携帯電話, ディジタルカメラ(DSC/DVC), カーナビ等のディジタル家電向けの組込みプロセッサ市場が急成長している.組込みプロセッサはコストと消費電力の厳しい制約の中で高い性能を達成しなければならない.また, 様々な機器の様々な要求にこたえる柔軟性をもたせることも重要である.本論文では, こうした背景のもとで開発したSuperHアーキテクチャの最新プロセッサコアSH-Xを紹介する.SH-Xは低電力版では360MIPS, 80mW, 4500MIPS/Wという高い電力性能比を達成し, 標準版では400MHz, 720MIPS, 2.8GFLOPS, 36Mポリゴン/秒を達成している.更に, 待機時リーク電流は, スタンバイ前の状態に3msで高速復帰できるリジュームスタンバイモードで100mA, リセットから再起動するUスタンバイモードで10mAと低く抑えている.
著者
久保田 秀和 黒橋 禎夫 西田 豊明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.600-607, 2003-08-01
被引用文献数
4

本論文では,知識カードを用いた分身エージェントの実現手法を提案し,EgoChatシステムとして実装した.分身エージェントとは作成者本人の代理として任意のユーザと会話可能なエージェントである.提案手法では分身エージェントの会話コンテンツを知識カードと呼ばれる意味的なまとまりをもつ文章断片を用いて構築し,分身エージェントの発話とユーザの発話とを同様の扱いが可能な知識カードとして扱う.知識カードを用いた会話生成は文章断片の組合せによって行われるため,分身エージェント作成者にとってエージェントとユーザとの間で行われる会話内容を予測することはたやすく,会話生成のためのコンテンツ作成作業が容易である.また,会話型エージェントが実社会で利用されるためには利用者からの反応や状況の変化に応じた会話コンテンツの継続的な改訂作業が必要となるが,提案手法では分身エージェントがユーザとの間に行った会話を会話ログとして記録し作成者本人ヘフィードバックすることによって,会話コンテンツの改訂作業を支援する.
著者
金子 孝夫 大室 仲 間野 一則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1196-1208, 2000-11-25

新聞や広報誌などの最新情報や地域情報を朗読した音声を, 音声符号化技術により情報圧縮してPCサーバのディスクに蓄積し, ISDN回線を使って視覚障害者の家庭の受信装置に配信する朗読配信システムを開発した.朗読音声の圧縮には, 低ビットレート音声符号化技術DualSpeechを開発して導入し, 朗読音声の品質をほとんど劣化させることなく, 情報量を約1/18に削減して高速に配信できるようにした.また, 受信装置に内蔵した1メガバイトのメモリに, 約90分間の朗読音声をコンパクトに蓄積でき, しかも蓄積した情報内容は, インデックス検索機能によって瞬時に検索できる.これらの特長によって, 配信に要する時間と通信料を削減するとともに, 視覚障害者の知りたい情報をいつでも繰り返し聴ける魅力ある朗読配信サービスを実現した.この朗読配信システムの性能を評価した結果, 朗読音声データは再生時間の約1/8の短時間で受信でき, 再生音声はパーソナルハンディホンシステム(PHS)と同等の高い品質が得られた.また, 約50名の視覚障害者を対象に, 音声圧縮による朗読配信システムを使ったサービス実験を行った.その結果, 視覚障害者が自ら選択できる身近な情報を充実すること, 情報内容の更新頻度を高くすること, 受信装置の操作性をいっそう向上することなどの課題が, アンケート結果から明らかとなった.
著者
児玉 充晴 梅崎 太造 佐藤 幸男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.278-286, 2004-02-01
被引用文献数
1

オープン系ネットワークの進展や労働人口の流動化など,企業をとりまく環境の変化とともに,近年「社内からの情報漏えい対策」の重要性がクローズアップされている.この中で,一般の企業において,既存の業務システムヘのコストパフォーマンスの良いセキュリティ機能の強化は大きな課題となっている.本論文では実際に発生した情報漏えい事件をモデルとして,司直の見解に基づきセキュリティ機能に必要な要件を整理している.また,実際に導入した指紋認証を用いたセキュリティシステムに対する検証を行った結果,実用的なセキュリティ対策が可能であることが判明したので報告する.更に,セキュリティシステムの一部をデータセンタに設置して,複数の企業で共同利用する形態への発展について提案する.
著者
横田 雅也 築地 立家 藤井 愼二 伊藤 大雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.58-61, 2001-01-01
被引用文献数
1

縦横Nますに王将を除く各駒がO(N)枚ずつ配置されている盤面が与えられたとき, 詰み手順があるかどうかを判定する問題を一般化つめ将棋問題と呼ぶ.伊藤らはその計算複雑さがNP困難であることを証明した.本論文では盤面とともに手数の上限を単進数で与えたときの一般化詰め将棋問題がPSPACE完全であることを証明する.
著者
吉瀬 謙二 片桐 孝洋 本多 弘樹 弓場 敏嗣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.143-154, 2005-02-01
参考文献数
16
被引用文献数
9

本論文では, 機能レベルのプロセッサシミュレータであるSimCore/Alpha Functional Simulator Version 2.0 (SimCore Version 2.0)の設計と実装について述べる.SimCore Version 2.0の主な特徴は次のとおり.(1)機能レベルシミュレータとして豊富な機能を提供する.(2)C++で記述して, 2, 800行というコンパクトな実装により実現する.(3)プログラムローダの機能を分離する.(4)グローバル変数を排除して可読性と機能の向上を図る.(5)動作検証機能を提供する.(6)多くのプラットホームに対応する.(7)同様の機能を提供するSimpleScalarツールセットのsim-fastと比較して19%の高速化を達成する.
著者
横森 励士 近藤 和弘 大畑 文明 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.150-158, 2003-03-01

影響波及解析とは,プログラム変更の影響を受ける部分を識別する手法で,回帰テストでのテストケース選択に利用されてきた.我々はプログラム理解,保守といったより広い範囲でも影響波及解析が利用できると考えているが,既存の手法は被影響部分の探索ルールがテストケース選択用に特化されているため,利用目的に応じて探索ルールを定義できる仕組みが必要となっている.また近年のソフトウェア開発環境では,オブジェクト指向言語が多く利用されており,それらに対応した解析手法及びその実装が求められている.本論文では,ユーザの利用目的に応じて様々な影響波及ルールが定義できる影響波及解析手法を提案する,提案手法では,オブジェクト指向言語JAVAを対象に,クラスメンバ間の関係を表す二つのグラフに基づき解析を行う.また,提案手法をJAVA影響波及解析システムとして実装し,その有効性を検証する.
著者
渡邊 洋 梅村 浩之 吉田 千里 松岡 克典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.491-500, 2001-05-01
被引用文献数
4

没入型VR装置(CAVE)を用いて広域視野(前面、床面、両側面)に、エンドレスループ状のトンネル内部を進行するヴェクションを生じさせるオプティカルフローを模擬した視覚環境下で、中心視野における奥行順序判断の感度としきい値を調べた。実験の結果広域視野にオプティカルフローが与えられた場合、奥行判断の感度が高くなり回転方向に依存してしきい値がシステマティックに変化することが示された。この結果を説明するものとして被験者のimplicitな基準面の参照と周辺視野情報からの体性感覚の変化が考えられた。
著者
伊藤 孝行 横尾 真 松原 繁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.920-930, 2004-10-01
被引用文献数
2

インターネット上のオークションでは,不特定多数の人間が商品(財)を販売しており,商品の質を正確に見極めるのは困難である.例えば,骨董品が売られていたとしても,その骨董品が本物であるか偽物であるかを見極めることは難しい.商品の質が正確に見極められないことによって,商品の質に関する素人が,商品の質に見合わない価格で商品を購入してしまうという問題がある.そこで筆者らは過去に,買い手が財の質(例えば本物か偽物か)について正確に判断ができない場合に,条件付きの入札が可能なオークションプロトコルを提案した.ここでは,専門家に,自然の選択に関する情報を正しく申告させることによって,合理的なプレイヤが損害を被らないようなオークションプロトコルの設計した.本論文では,上記のような状況において,複数財の組合せに対して入札が可能なオークションを設計する.ここで,専門家が単一の財に関して専門知識をもつ場合と複数の財に専門知識をもつ場合が考えられる.前者の場合でも複雑な問題であるが,後者はより複雑な問題になっている.そこで,本論文では,まず単一の財に関して,専門知識と興味をもつ専門家に商品の質に関する情報を正しく申告させ,素人にとって,真の申告をすることが最適反応戦略になるプロトコルを設計する.本オークションプロトコルの特長は,以下の四つである.(1)専門家にとって,真の申告をすることが支配戦略である.(2)素人にとって,他の素人がどのような申告をするかにかかわらず,専門家が支配戦略をとると仮定した上で真の申告をすることが最良の戦略となる.(3)パレート効率的な割当を実現する.(4)非合理的なプレイヤが存在したとしても,その数が1人ならば,合理的なプレイヤの効用が負になることはない.
著者
高濱 徹行 阪井 節子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.198-207, 2003-04-01
被引用文献数
1

与えられた制約のもとで目的関数を最小にするような解を求める制約付き最適化問題は,実問題に頻繁に出現する重要な最適化問題である.近年,遺伝的アルゴリズム(GA)を利用した制約付き最適化に関する研究も盛んに行われるようになってきており,既存の方法と比較しても遜(そん)色のない結果が得られるようになってきている.本研究では,α制約法をGAと組み合わせたα制約遺伝的アルゴリズム(αGA)を提案する.α制約法は,制約を満足する度合を表現する制約満足度を導入し,通常の大小関係の代わりに制約満足度を優先した大小関係であるαレベル比較を定義し,通常の比較の代わりにαレベル比較を用いて探索することにより,制約付きの問題を制約のない問題に変換する方法である.α制約法を適用したαGAでは,制約を満足しない個体は制約を満足するように,制約を満足した個体は目的関数値を最適化するように自然に進化する.本論文では,線形計画問題,非線形計画問題,非凸非線形制約など様々な種類のテスト問題について,GAによる制約付き最適化手法の中で有効性がよく知られているGENOCOP5.0などと比較することにより,αGAの有効性を示す.
著者
泉 裕 中井 智也 山口 英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.1463-1473, 2001-10-01
被引用文献数
1

コンピュータネットワークの急速な普及で, ネットワーク通信基盤の主流となったインターネットに, ネットワーク管理の重要性が高まっている.現在ネットワーク管理は, SNMP(Simple Network Management Protocol)による手法が一般的で, 管理者がネットワーク機器を監視するために用いられている.しかし, SNMPによるネットワーク管理は, 管理対象へのポーリング(問合せ)主導型が主流であり, 管理者へのトラップ(通知)主導型の管理に関しては, 制限された機能しか提供できない.このため, 障害発見の遅延や, ネットワークアプリケーションの管理が困難なことなど, 様々な問題点が存在し、拡大するネットワークの規模に対応できなくなっている.本研究では, ネットワーク管理者の代理として, ネットワーク機器やアプリケーションなどの管理対象の監視・制御を行うための管理者支援システムを設計し, 実装を行うことで本システムを評価する.本システムは, 管理者によって設定された, 管理対象の管理スケジュール, 及び管理対象に発生する障害の発見や対応を含む例外処理を, 自動的に制御管理するエージェントシステムとして実現している.更に, 管理対象がアプリケーションの場合, アプリケーションにSNMP等の管理機構を組み込むことは困難であった.しかし, 本システムはアプリケーションへのアクセスを中継する.すなわちアプリケーションを包み込む形態をもつために, アプリケーションへの組込みが容易である.したがってアプリケーションサーバ等が提供するサービス管理に本システムの機構を組み込むことで, サービス管理を容易に実現している.本論文では, トラップ主導型のネットワーク管理モデルの提案と, アプリケーションサーバの提供するサービス管理への適用として, ファイアウォールとWWW(World Wide Web)へのアクセス制御に用いるサービス管理システム(SMS:Service Management System)及びそのアプリケーションの管理情報となるMIB(Management Information Base)の実装評価を行う。
著者
渡邊 晃 井手口 哲夫 笹瀬 巌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.269-284, 2001-03-01
被引用文献数
11

イントラネットにおいては, 部門単位あるいは個人単位の機密保護を実現するため, 様々な形態の閉域通信グループを実現したいという要求がある.システムの運用が容易であるとともに, ユーザが一時的に場所を移動しても同様のネットワーク環境を常に提供できることが望まれる.この要求を満たすには, 閉域通信グループを実現する暗号処理機能が, 通信パケットの処理を記述した閉域通信グループ処理情報を, 常に矛盾なく保持している必要がある.従来, このような情報は管理装置が一括して生成し, 暗号処理機能にダウンロードしていた.しかしこの方法では, システム構成が変化して暗号処理機能と通信端末の位置関係が変わると, そのつど情報の再生成と再設定が必要となる.そこで, 本論文では閉域通信グループ処理情報の生成機能を管理装置から分離し, 論理的なネットワーク構成を与える閉域通信グループ構成定義情報をもとに, 暗号処理機能が通信端末との位置関係を検出しながら動的に処理情報を生成する動的処理解決プロトコルを提案する.この方式によれば, システムの物理的構成に変化があっても, 暗号処理機能の保持する閉域通信グループ処理情報が動的に再生成されるため管理装置での作業負荷が発生しない.このため, 提案する機能を実行する暗号処理機能を保持するユーザは, イントラネット内を自由に移動することが可能になり, 閉域通信グループにおけるユーザの物理的位置透過性を実現することができる.
著者
木下 俊之 高橋 幸雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.701-710, 1999-06-25
被引用文献数
6

計算機システムでは, ジョブは排他使用資源へのアクセス時に衝突が起こる. その典型的な例に, 更新可能なファイル群へのアクセスがある. あるジョブがこのファイル資源を使用している間は, ファイルデータの一致性を保つために他のジョブはこれへのアクセスを禁止され, 資源が解放されるまで待たされる. この資源へのアクセスの衝突は, システムの性能に大きな影響を及ぼす. そしてこの衝突によってシステムの性能が著しく低下するときは, 資源をいくつかに分割してこの性能低下を防止する方法がとられることが多い. 本論文では, この資源へのアクセスの衝突がシステム性能にどう影響するかを解析するための, 一つの待ち行列網モデルを導入する. そしてこのモデルを用いて, 資源がシステム性能に及ぼす影響や, 資源を分割することによるシステム性能の改善効果を解析する一つの評価法を提案する. この待ち行列網モデルは, 通常のセントラルサーバモデルに資源と資源待ち行列を付け加えることによって構成され, その性能指標をマルコフ連鎖の平衡方程式を解くことにより数値的に計算する.