著者
砂山 渡 井山 晃洋 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.1089-1097, 2004-12-01
被引用文献数
4

検索エンジンにおいて検索結果として表示される情報は,目的の情報を素早く獲得する上で重要なものである.特に,検索結果の各Webページの要約文は,各Webページの内容を知る上で重要であるとともに,ユーザが入力した検索語が各Webページ内でどのように使われているか,すなわち検索語と各Webページとのかかわりを知るために有効である.しかし,従来の検索エンジンにおける検索結果の要約文は,Webページの冒頭部分のテキストが抜き出されて検索語が含まれていなかったり,検索語を含んでいても文の途中で切れていて文として不完全で,文脈やWebページの内容を把握できないという問題点がある.そのため文を単位とした要約の出力が望まれるが,HTMLテキストにおいては,句点を含まない,文以外の記述が数多く含まれているため,そのまま文を単位とした重要文抽出システムによって要約文を提供することは困難である.そこで本論文では,各Webページのソースを文に相当する意味の切れ目において分割するHTMLテキスト分割システムを提案する.また,本システムにより生成されるテキストが,Webページの要約生成に有効に働くことを実験により検証した.
著者
柳浦 睦憲 茨木 俊秀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.3-25, 2000-01-25
被引用文献数
35

組合せ最適化問題に対する効率的な近似解法の一般的枠組みとして, 近年, 遺伝アルゴリズム, アニーリング法, タブー探索法やそれらの変形版など, 様々なアルゴリズムが提案されてきた.これらを総称してメタ戦略あるいはメタヒューリスティクスと呼んでいる.本論文では, これらメタ戦略に現れる様々なアイデアを, 近似解法の基本戦略である局所探索法の一般化ととらえることで, 体系的にまとめる.メタ戦略の一つの魅力は, その手軽さとロバスト性にある.この観点から, 次に, メタ戦略の基本的なアイデアのみで構成したシンプルなアルゴリズムを, 計算実験により比較した結果を述べる.これをもとに, 手軽なツールとしてのメタ戦略の設計指針を与える.そのあと, より多くの手間をかけても, 更に性能の高いアルゴリズムを構成したい場合に有効となる, やや複雑なアイデアについても簡単に紹介する.最後に, メタ戦略の理論的解析の話題にも言及する.
著者
浅井 達哉 有村 博紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.79-96, 2004-02-01
被引用文献数
15

最近,ウェブページやXMLデータなどの半構造データに対するデークマイニングが注目を集めている.本論文では,半構造データマイニングにおける主要な技術の一つである,グラフ構造データからの部分構造パターン発見技法について,主に木パターンマイニングとグラフマイニングの観点から,近年の研究動向を紹介する.はじめに,半構造データマイニングの萌芽期の研究として,Subdue及び,GBI,Nestrovらのスキーマ発見,DehaspeらのWarmrを紹介する.次に,木パターンとグラフパターンのマイニングに関する現在の研究動向を概観する.木パターンの発見アルゴリズムとして,浅井らのFREQTとUNOT,ZakiのTreeMiner.安部らのOPTTなどを説明し,一般のグラフマイニングアルゴリズムとして,猪口らのAGMとYanらのgSpanなどを説明する.最後に,新しいデークマイニングの方向性を示すものとして,半構造データストリームからのマイニングアルゴリズムStreamTについて述べる.
著者
酒井 隆道 寺田 賢二 櫟 粛之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.958-968, 2005-05-01

近年, オンライン評判メカニズムが着目されている.既にそれは広く適用が進んでおり, その有効性も確認されつつある.しかし, その信頼性に関してはいまだ確固たる保証は得られていない.オンライン評判メカニズムは評価のエラーやノイズ, あるいは不正な嘘の評価申告という外乱に対して頑強である必要がある.更に, 人間が介在しないマルチエージェント環境においては悪意のあるエージェント, あるいはその集団による不正な評価申告による外乱(攻撃)の影響はより甚大なものとなり得る.既存のオンライン評判メカニズムは必ずしもそのような外乱を十分に考慮しているわけではない.そこで, 本論文では確率的近似法を用いた頑強なオンライン評判メカニズムを提案する.本メカニズムはエージェントの大域的な信用性を表す信用度を各エージェントごとに割り当て, その推定値をエージェント間の相互評価の申告に基づいて動的に更新する.シミュレーション実験により, 本メカニズムは外乱のある状況下においても良いエージェントと悪いエージェントを効果的に特定できること, 更に真の信用度の変化に対しても適応的に対応できることが確認できた.
著者
杉山 一成 波多野 賢治 吉川 正俊 植村 俊亮
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.975-990, 2004-11-01
被引用文献数
10

Web検索エンジンは,WWW(World Wide Web)上の情報を検索するための有用な手段である.しかし,同じ検索語が異なるユーザによって入力されたとしても,だれが検索語を入力したかにかかわらず,同じ結果を提示するという問題点を抱えている.一般に,各ユーザは自分の検索語に対して,異なる検索要求をもつと考えられる.したがって,その異なる検索要求をもつユーザに検索結果を適応させるべきであると考えられる.そこで本論文では,ユーザに負担をかけることなく各ユーザの検索要求に応じて検索結果を適応させる手法を提案し,その有効性について確かめる.実験の結果,修正した協調フィルタリングに基づいてユーザプロファイルを構築することによって,ユーザの嗜好に適応するきめの細かい検索システムを実現することができた.
著者
大野 華子 楠村 幸貴 土方 嘉徳 西田 正吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.668-683, 2005-03-01
被引用文献数
3

ネットオークションには落札者が記述した出品者に対する評価コメントがあり, ユーザはこれを参考にしてどの出品者から商品を購入するかを選択する.しかし, これらの評価コメントは大量に存在する上に儀礼的な文を多く含むため, ユーザが複数の出品者を比較するのは大変な作業である.本研究ではこの問題に対し, ネットオークション上の社会的関係を用いて, 出品者評価コメントを要約する手法(Social Summarization法)を提案する.本手法では, 出品者の本質を表すのに適当ではない儀礼的な文を削除するために, 出品者に対して評価コメントを記述した落札者一人ずつに注目し, その落札者が他の出品者に対して記述した評価コメントと, 対象の出品者に対して記述した評価コメントを比較する.提案する手法と落札者に注目しないで要約する一般的な手法で, 要約した文にどれだけ違いがあるかを, 実際のネットオークションの評価コメントに適用することで検証する.
著者
市瀬 龍太郎 シャピロ ダニエル ラングリー パット
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.730-740, 2004-06-01

本論文では,エージェントが他のエージェントの行動を観察することによって,行動制御プログラムを学習する問題について取り扱う.特に,他のエージェントの観察から行動を説明し,そのエージェントの行動を再現できるような,階層的でリアクティブなプログラムをどのように学習するかについて述べる.本論文で観察する行動とは,複数のエージェント間で共有されている複数の選択肢をもつ行動である.本論文で提案する学習手法は,三つの段階を経てプログラムを構成する.最初に,順序性のないプロダクション規則を学習する.次に,それらの規則を分類階層として結合する.最後に,この分類階層を階層的でリアクティブなプログラムに変換する.この手法を使うと,結果として簡潔で分かりやすいプログラムを学習できる.
著者
松本 雅行 森 欣司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.14-22, 2003-01-01
参考文献数
17
被引用文献数
5

高密度運転線区の列車制御システムにおいては,高輸送力,高安全性,高信頼性が求められる.従来は,固定した区間ごとに列車の存在を検知し,そこに列車を進入させるかどうかの判断により,各列車の速度を地上の集中制御装置で求め,それを各列車の自動列車制御装置 (ATC) に指示していた.このため,高密度輸送は難しかった.本論文は,各列車が,自らの位置検知を行い,地上からは停止する位置のみを列車に伝送し,それに基づく列車速度の決定と制御を自律的に行う自律分散型 ATC システム (D-ATC) を提案した.更に,システム全体の運行を妨げず,D-ATC をもつ列車の段階的投入と,既存の ATC をもつ列車とを共存させながらのオンライン稼動中のテストを保証するアシュアランス技術を提案した.段階的投入に対する二つの方式として,車上統合/車上分離技術を示し,これらをアシュアランス性の面から評価した.この結果をもとに,JR 東日本の山手・京浜東北線用の列車制御システムで実用化した.
著者
都木 徹 服部 有希子 小宮 恵 今井 篤 岸 憲史 伊藤 崇之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.478-487, 2005-02-01
被引用文献数
2

近年, コンピュータを用いて語学教育を支援するCALL (Computer Assisted Language Learning)システムの開発が盛んに行われている.本論文では, CALLシステムの一つとして, NHK教育テレビの語学番組「中国語会話」で利用することを目的に開発された声調学習ツール"声調弐号"及び"声調参号"を取り上げ, そのシステムの利用効果について述べる.これらのCALLシステムは, 模範音声と学習者音声の両者のピッチ軌跡を画面に比較表示するとともに, 学習者音声の韻律を模範音声の韻律に矯正した変換音声を聴取することができ, 視覚的にも聴覚的にも韻律に関する発音習得を支援することを目的としている.視聴者からは, 従来の模範音声と学習者音声を聞き比べるだけの場合より分かりやすいと好評であった.本システムで用いている視覚的・聴覚的学習支援の効果を明らかにするため, 番組とは独立に日本人に対して行った韻律に関する発音習得実験では, 特に学習者自身の音声とその韻律を矯正した音声を聞き比べる効果が高いことが示された.
著者
上田 祐彰 大内 大輔 高橋 健一 宮原 哲浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.691-701, 2003-09-01
被引用文献数
4

大学を対象とした時間割作成問題への遺伝的アルゴリズム(GA)の適用について考察する.本論文で対象とする問題は,授業の時間割表への配置と各授業で使用する教室の割当ての双方を扱い,実施可能かつ教員の要望を充足した時間割表の導出が目的である.実施可能な時間割表を効率的に探索する手法として,授業の時間割表への配置を扱う遺伝子操作と教室の割当てに関する遺伝子操作を分割して実施する手法(分割GA)が提案されているが,様々な規模,複雑さをもった問題に対して分割GAが有効であるか否かは検証されていない.本論文では,分割GA,単純GAを応用した手法(SGA),授業の時間割表への配置を決定した後に教室の割当てを行う手法(逐次GA),教室の割当てを行う代わりに授業配置に対して適切な教室の割当てが行えるか否かを検査する手法(SGA2),焼なまし法を応用した手法(SA),及びタブサーチを応用した手法(TS)の6手法を実装し,比較実験を行った.時間割作成問題生成プログラムによって生成された問題と現実の時間割作成問題とを用いた実験の結果,ほとんどの問題に対してSGA2が良好な結果を導出できることが示された.また,授業の開講率が高い問題に対しては分割GA,問題の規模が大きく複雑性の高くない問題に対しては逐次GA,規模が小さく制約条件の多い問題に対してはSAが適していることも示された.
著者
坂本 博和 永本 太一 柴田 裕一郎 小栗 清
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.155-162, 2005-02-01
被引用文献数
2 1

PCA (Plastic Cell Architecture)は動的再構成可能な非同期式論理回路アーキテクチャである.また, 我々は非同期ビットシリアル処理を前提とする新しいPCAアーキテクチャを検討しており, 情報の記憶・加工・移動をシフトレジスタとステートマシンで行うことにより, より効果的に回路を構成できると考えている.しかし非同期ビットシリアル処理回路の設計を信号伝搬を追尾しながら行うのは困難であるので, 本研究では, 非同期ビットシリアル処理回路の設計と, シミュレーションによる動作検証を効率良く行うためのペトリネットモデルをビットシリアルペトリネットとして定義し, これをGUIによる設計・検証ツールとして実装した.更に, 遅延情報なども含めた詳細な検証を行うために, ビットシリアルペトリネットをVerilog-HDLへ変換する機能を追加し, 非同期ビットシリアル処理回路の設計, 検証時間の大幅な短縮を実現した.
著者
大西 正輝 泉 正夫 福永 邦雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1187-1195, 2000-11-25
被引用文献数
27

ネットワーク技術の発展は, 従来の講義形態からネットワークを介して距離的に離れた複数の講義室で同時に講義を行う遠隔講義形態へ移行する可能性を示唆している.遠隔講義では, 講義に使用する資料等はネットワークを介して配布する形になる.しかし, あらかじめ電子教材を作成するのは手間がかかることなどから, すぐに普及する傾向にはない.一方, 黒板を用いる講義はOHPやビデオが普及した現在でも講義内容を強く印象づけたり, 受講者が順次理解していく過程にマッチしている手法として根強い支持を得ており, 大学・予備校などでも広く行われている.本論文では板書主体の講義を撮影するときや, ネットワークで利用するための電子教材を作成するときに必要となる板書をブロック分割する手法を提案する.板書のブロックは小さな矩形の集合であると考え, 一定時間書き込みのない場合に板書文字領域を囲う小さな矩形を生成する.次に講義のレイアウトから生成したファジールールに従い, これらの矩形を統合・分割することでブロック分割を行う.また, 本手法の応用例として, 抽出したブロックを順につなぎ合わせてHTML形式のファイルを作成し, WWW配信するシステムを構築した.
著者
小山 聡 石田 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1266-1274, 2001-08-01
被引用文献数
5

本論文では, モバイル環境におけるWeb情報の活用に適した新しいインタフェースとして, 情報ナビゲーションエージェントを提案する. これまでの情報検索システムは, 検索結果のユーザへの表示とそれに基づくクエリの変更を通して多くの情報をいかに絞り込んでいくかが中心的課題であり, デスクトップ環境での利用に適した方法であった. それに対して我々のエージェントは, 検索対象の属性の制約条件を用いて近似解を生成し, ユーザとの対話を通して情報を得ることにより, 漸近的により良い情報へとナビゲートしていくことができる. その際に, エージェントがキーワード間の連想ルールを用いて検索条件の解決と新たな検索条件の追加を行う手法を提案した. また, 連想ルールを不用意に用いるとナビゲーションの失敗を導くため, 統計的検定とグラフ構造の解析を用いた連想ルールの精錬を行うことを提案し, その有効性を確認した.
著者
大東 誠 田中 譲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.829-839, 2005-04-01

大規模なデータベースの全体の概観を把握しながら目的の情報にアクセスするためには, 様々に解析視点を変更して動的に情報を組織化しながら情報探索を行う必要がある.本研究では, このようなデータベース探索を実現するため, 任意の解析視点に基づいて動的にハイパリンクを構成する情報アクセス空間を実現する.筆者らは, まず, 新たな解析視点の概念と機構を提案し, これら解析視点の宣言的定義に基づき自動生成される複数の情報アクセス空間を, 個々のDBレコードに動的にリンクする仕組みを実現する.また, これらのリンクをたどる空間ナビゲーションや解析視点を編集するための三次元インタフェースを提供する.これらの操作は, 対象テーブルの絞込みや複数テーブルの結合といった検索質問処理に対応しており, ユーザは, 動的に解析視点を変更して空間移動を繰り返すことで, 焦点を次第に絞って目的の情報に到達することができる.本論文では, 三次元インタフェースの実装とそれを用いたデータベース探索の評価実験を行い, 本手法を用いて目的の情報に迅速にアクセス可能であることを示す.
著者
渡辺 哲也 渡辺 文治 藤沼 輝好 大杉 成喜 澤田 真弓 鎌田 一雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.891-899, 2005-04-01
被引用文献数
15

重度視覚障害者のコンピュータ利用を支援するスクリーンリーダには「詳細読み」という読み方が装備されている.これは, コンピュータで取り扱う文字を音声で一意に特定させるため, 各文字にそれぞれ異なる説明的な表現を割り当てたもので, 特に同音の漢字の区別に必須である.この詳細読みの一部にもとの漢字を想起しづらいものがあるという問題が提起されてきた.そこで, まず既存のスクリーンリーダ4種類から教育漢字1006字の詳細読みをテキストに書き起こし, その構成と語彙の観点から, もとの漢字の想起を困難にする要因を考察した.次に, スクリーンリーダを児童が利用した場合の問題を探るため, 詳細読みを聞いて想起した漢字を書き起こさせる実験を小学校で行った.その結果, 8割以上の詳細読みは50%以上の正答率を得た.他方で50%未満の正答率となった詳細読みを, 同じ漢字で正答率の高かった読みと比較・検討したところ, 児童の語彙範ちゅうにない説明語の使用が最も大きな要因であることが分かった.誤答の要因として次に多かったのは, 同音異字のある説明語の使用であった.
著者
矢谷 浩司 大沼 真弓 杉本 雅則 楠 房子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.773-782, 2003-10-01
被引用文献数
24

近年,ハンドヘルドデバイスが子供たちの学習において重要な役割を果たすことが期待されている.また,ハンドヘルドデバイスのようなモバイル性の高いデバイスを利用して協調学習をいかに支援するかは,CSCL(Computer Support for Collaborative Learning)の重要な研究テーマになりつつある.一方,日本においては,学習指導要領の改訂により始まる「総合学習」に対応した教育システムの構築が求められている.そこで,我々は「総合学習」の場として注目されている博物館において,2台のPDA (Personal Digital Assistant)を連携させ,展示物に関連するクイズを協力しながら解くことによって子供たちの学習を支援する,Musexと呼ばれるシステムを構築した.実際の博物館においてMusexの実験を行い,その効果について考察した.
著者
北田 夕子 荒川 豊 竹森 敬祐 渡邊 晃 笹瀬 巌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1571-1583, 2005-10-01
被引用文献数
8

インターネットに接続点をもたない独立した無線アドホックネットワークでは信頼できる既存の認証局(CA : Certificate Authority)を利用できないため, 各ノードが独自に証明書を発行・管理する公開鍵証明書分散管理方式が提案されている. しかし, この方式は, 各ノードが全証明書を収集するため, メモリ消費量の増加や失効証明書リストの管理などの問題がある. そこで本論文では, 従来方式の課題を解決するために, 各ノードは自身に対して発行された証明書のみをもっておき, 認証要求が発生した時点で, 認証したいノードまでの証明書を収集して信頼の輪を構築するオンデマンド公開鍵証明書分散管理方式を提案する. 証明書の収集には, 被認証ノードにかかわるルーチングテーブル情報を付加してブロードキャストすることで, ブロードキャストが直接届かない被認証ノードも一括して探索することができるアドホック一括ノード探索プロトコル(ASNS : Adhoc Simultaneous Nodes Search)を提案する. 提案プロトコルにより, 提案方式は, 認証に必要な証明書のみを収集するため, ノードのメモリ消費量を削減でき, かつ失効証明書リストの確認処理が不要になる. 計算機シミュレーションにより, 信頼の輪の構築成功率, 信頼の輪を構築するために必要なノード数, 及び信頼の輪の構築に必要な通信量について評価を行い, ノード密度の低いアドホックネットワーク環境に有利であることを示す.
著者
磯本 征雄 宮原 一弘 中野 宇宙 伊藤 敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.599-609, 2000-06-25
被引用文献数
7

本論文では, ニュートン力学の学習を支援する宇宙旅行シミュレーション教材の構成と教授方略について議論する.ニュートン力学は, 物理学の中でも最も形式の整った理論の一つである.そして, 宇宙旅行は, 物理的概念の定義が明確であり, ストーリーが論理的な上に成功の是非も簡単に判断できる.こうした理由で, 宇宙旅行シミュレーションは, ニュートン力学演習のための個別学習用教材として適切である.本論文のシミュレーションは, 運動方程式, エネルギー保存則, 角運動量保存則など, ニュートン力学の基礎知識を学んだ学生のために, 更に発展した学習のための演習用教材として設計されている.学習者は, 的当てゲーム, 人工衛星の打ち上げ, 人工衛星のドッキング, 月旅行, 火星旅行といったシナリオの中で, ニュートン力学の応用場面を体験できる.この宇宙旅行シミュレーションを使って, 学習者は, 抽象的なニュートン力学と具体的な宇宙旅行の関係を学ぶことができる.