著者
加藤 清 森下 悟 手嶌 孝弥 刈田 陽一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.495-501, 1988-09-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
5

高温空気雰囲気中における放射性核種の挙動を調べるために, 各放射性核種の水溶液を乾燥したものを電気炉で加熱し, 加熱温度に対する核種の揮発率の測定を行った。その結果, 塩化物の54Mn, 57Co, 59Feおよび95Zrについては, 400-1200℃では揮発しなかった。また, 塩化物の65Zn, 106Ru, 124Sb, 134CsおよびNa275SeO3では, 500℃, 400℃, 800℃, 400℃および200℃あたりから揮発し始めることが確認された。
著者
田上 恵子 内田 滋夫
出版者
日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes
巻号頁・発行日
vol.66, pp.277-287, 2017-08 (Released:2017-08-15)
被引用文献数
6

キノコは放射性セシウム(Cs)を濃縮しやすいが,すべてのキノコが同じようにCsを吸収するわけではない。生態の違いにより濃度が低くなる種類があると考えられる。しかし,東電福島第一原発事故後,放射性Cs濃度の汚染レベルが著しく異なるため,キノコ中の濃度だけで比較的濃度が低い種類を同定することができない。そこで,グローバル・フォールアウトに起因する137Cs濃度に着目して、自然環境下において43種類の野生キノコについてランク付けを行い,濃度が低い種類を推定した。
著者
二瓶 直登 杉山 暁史 伊藤 嘉昭 陰地 威史 喜多 幸司 広瀬 農 田野井 慶太朗 中西 友子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.235-242, 2017-07-15 (Released:2017-07-15)
参考文献数
22
被引用文献数
4

他の作物よりもダイズ子実中の放射性Cs濃度は高いがその理由は明らかにされていない。本論文では子実内のCs分布に着目し,133Csを用いたX線蛍光顕微鏡と,137Csを用いたオートラジオグラフィで観察するとともに,成熟期のダイズ体内のCs分布も検討した。CsはKと同様に均一に分布し,吸収したCsの約4割が子実に蓄積した。ダイズ子実は他の作物よりCsを蓄積する割合が大きく,吸収したCsを子実に多く蓄えることが,放射性Cs濃度が高くなる要因の一つと考えられた。

2 0 0 0 OA 陽子線治療

著者
稲田 哲雄
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.28-39, 1989-01-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
11
著者
田上 恵子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.267-279, 2012 (Released:2012-05-29)
参考文献数
59
被引用文献数
4 5

環境中に放出された放射性核種による被ばく線量評価モデルの中で,人への経路として重要なものの一つに農作物を介する経路がある。大気放出されたものは植物に直接沈着したり,また水や地下水に含まれた場合には灌漑水として土壌に一度接触・移行し,その後,土壌から植物根に吸収される。本稿では,直接沈着後の植物への移行,また,経根吸収の場合には土壌中における放射性核種の物理化学的形態と植物生理の及ぼす影響について考察を加えた。
著者
三宅 定明 吉田 栄充 野本 かほる 浦辺 研一 柴田 穣 髙野 真理子 杉山 英男
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.563-569, 2015-09-15 (Released:2015-09-29)
参考文献数
15

埼玉県住民の食品からの放射性物質の摂取量及び内部被ばく線量を推定するため,日常食(陰膳食)の放射能調査を実施した。134Cs及び137Csの平均値は,2011年度は0.43及び0.48Bq/人・日,2012年度は0.065及び0.15Bq/人・日であった。成人の預託実効線量は,2011年度は5.5μSv,2012年度は1.1μSvであった。2011年度の値は,福島第一原子力発電所事故以前の値と比べると,約80倍高い値であったが,一般公衆の線量限度1mSv/年の1%以下であった。
著者
藤井 忠重 平山 二郎 金井 久容 半田 健次郎 草間 昌三 矢野 今朝人 高本 信治 丸山 喜代次 滝沢 正臣
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.179-184, 1982

心肺疾患6例に<SUP>201</SUP>Tlシンチグラフィを実施し, 血液および体外計測により経時的放射能量変化を観察するとともに<SUP>99m</SUP>TC-ヒト血清アルブミン (<SUP>99m</SUP>TC-HSA) を併用し, 肺血管内スペースに存在する<SUP>201</SUP>Tlの画像を求め, これを<SUP>201</SUP>Tl像からサブトラクトし, 肺血管外スペースの<SUP>201</SUP>Tlの画像を算出した。血中消失曲線では急速に減少し, 15分後では静注1分後の値の10~15%となり, 体外計測で肺の放射能量は100~150秒後にほぼ一定となった。肺血管外および肺血管内スペースにおける<SUP>201</SUP>Tl量は, 症例により若干の差異を認めるが肺集積量のおのおの94.9~99.7%, 0.6~7.2%を占め, また, 前者の画像は通常の<SUP>201</SUP>Tl像とほぼ同様であり, <SUP>201</SUP>Tlの肺集積はほぼ肺血管外スペースへの集積とみなせる。
著者
伊永 隆史
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.219-233, 2013 (Released:2013-04-26)
参考文献数
60
被引用文献数
1

多元素安定同位体分析法が食物起源問題を解決するため利用されるようになった。食品試料(例えば,コメ,牛肉,ウナギ)のH,C,NとOのような軽元素の安定同位体比が元素分析/同位体比質量分析法によって正確に分析された。試料は主に4か国で採取された;日本と比較としてのアメリカ合衆国,オーストラリア,中国。全てのコメ試料は,有機肥料あるいは人工肥料の施肥により成長した。牛肉試料は,日本,アメリカ合衆国とオーストラリア3か国から採取された。輸入牛肉試料は農林水産省(日本)から提供され,判別関数式により比較された。ウナギ試料は,オーストラリア,中国,台湾の3国・地域から採取された。全ての国産食品試料は,δX値がなんらかの違いを示し,アメリカ合衆国,オーストラリア,中国の試料から明らかに特徴的であった。これらの結果は生育した国の気候,利用された栄養や潅漑水質の同位体に特有の地域的な違いによって説明できるであろう。統計的には,日本で育った食品(米,肉,魚など)を他の国で成長した食品から抽出するのに役に立つ測定基準の一つとなる。ヒトの代謝にかかる安定同位体の動態(すなわち,アイソトポミクスisotopomics)の解析研究は,近い将来,新しいサイエンスの樹立が期待されている。
著者
藤井 忠重 金井 久容 草間 昌三 滝沢 正臣
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.115-120, 1975

腫瘍の陽性描画として, <SUP>197</SUP>HgCl<SUB>2</SUB>と<SUP>197</SUP>I-RISAを用いてホールボディスキャナまたはシンチカメラーミニコンピュータによりサブトラクション・シンチグラフィを施行した。画像の質の向上の点でサブトラクション・シンチグラムは従来の<SUP>197</SUP>HgCl<SUB>2</SUB>のシンチグラムに比し有用であった。本法により, 非特異的な<SUP>197</SUP>Hgの集積が除去され, 縦隔の転移巣における集積がより明瞭となった。両装置によるサブトラクション・シンチグラフィはおのおのの特徴を有し, 前者では位置分解能が良好で, 後者ではデータ収録時間が短く, 減算がより正確かつ容易でコントラスが良好なサブトラクション・シンチグラムが得られた。
著者
滝澤 行雄 山下 順助 石郷岡 清基
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.115-115, 2014 (Released:2014-02-28)
参考文献数
30

日本酒のX線照射マウスに対する放射線防護効果を検討した。供試の日本酒は米と米麹のみで醸造した純米酒(アルコール濃度10.5%)で,9週齢雄性C57BL/6JJms系マウスに純米酒0.6mL/匹を経口投与し,その約30分後にX線7.8Gy(照射線量率1.078Gy/分)を照射した。また,純米酒0.2mL/匹を7日間反復経口投与後30分後にX線を7.8Gy照射し,引き続き同様に7日反復経口投与を行った。対照マウスには普通酒(アルコール濃度15.0%),純エタノール(10.5%)及び生理的食塩水を経口投与した。なお,普通酒は米と米麹に,醸造アルコールを加えている。X線照射マウスに対する放射線防護効果は30日間の生存率で評価した。その結果,大量1回投与(0.6mL)において,純米酒投与群の生存率は80%でエタノール投与群よりも高かった。生理食塩水投与群では26日目に全頭死亡した.純米酒投与群と生理食塩水投与群との間に有意差(p<0.01)が認められた。少量連続投与(0.2mL)においては,純米酒投与群の生存率は普通酒投与群より高かった。純米酒投与群の生存率は生理的食塩水投与群より有意に高かった(p<0.05)。日本酒はアルコ-ル飲料の中でもアミノ酸が多く,特にアミノ酸総量では純米酒(1771mg/L)が普通酒(932mg/L)の約2倍高であり,放射線防護効果にアミノ酸の寄与が思考される。純エタノ-ルにも防護効果はみられるが,日本酒に比べ低かった。以上,唯一日本酒のみの特徴といえるアミノ酸類に放射線防護効果があることが示唆された。
著者
福田 一義
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.433-438, 2000-09-15
被引用文献数
2

ゲルマニウム (Ge) γ線スペクトロメータシステムを用いて, 北海道内で消費される輸入食品の放射能調査を実施した。<BR>1989年から1999年までに採取した480試料の放射性セシウム濃度 (<SUP>137</SUP>Cs+<SUP>134</SUP>Cs) において, 暫定限度 (370Bq/kg) を超えるものはまったく認められず, 441試料 (92%) では1Bq/kg未満のきわあて低いレベルであった。また, 最大値は, 紅茶 (中国産) について, <SUP>137</SUP>Csが62.4Bq/kg, <SUP>134</SUP>Csが3.8Bq/kgであった。<BR><SUP>137</SUP>Cs濃度とセシウム単位の関係から, セシウム単位の値が0.40Bq/g-Kを上回った24試料については, チェルノブイリ原子力発電所事故に由来する寄与を定性的に評価した。また, <SUP>137</SUP>Csとともに<SUP>134</SUP>Csが検出された16試料については, この事故に由来する<SUP>137</SUP>Csの寄与率を算出した。
著者
河野 孝央 安藤 佳明 泉 雄一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.737-744, 2015-12-15 (Released:2015-12-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1

インスタントコーヒーは天然起源の放射性核種:40Kを含んでいるため,自然放射能と自然放射線を説明するためのわかりやすい教材といえる。本研究ではインスタントコーヒー10種に圧縮成形法を適用してコーヒーブロック線源を製作し,形状,重量,40K含有量を調べた。その結果,形状と重量は10種ともほぼ同じで,40K含有量にも大差はなく,10種の平均で16.6Bq(レギュラーコーヒーの約1.7倍)であった。
著者
荒川 悦雄 岩見 隆太郎 本久 靖子 亀沢 知夏 鴨川 仁 フォグリ ヴォルフガング
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.119-128, 2016-03-15 (Released:2016-03-15)
参考文献数
18

放射線教育用の3次元X線CT装置を開発した。X線源,被写体搭載用回転ステージ,及び二次元検出器などの主要部品がよく見える構造とした。被写体にピーマンの果実を選び,CT像とこれを得るまでの代表的な解析過程を図示した。その過程とはレントゲン写真,ラドン変換を施したサイノグラム,及び逆ラドン変換の際に現れるフーリエ成分の実部と虚部である。学生が当装置の原理と構造を視覚的に理解する教育への利用を提案する。
著者
新山 大樹 太田 千香子 小泉 篤 桑野 真由美 中川 太
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.57-68, 2014 (Released:2014-01-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1

PETとMRI双方を利用した複合的な画像診断は,PETによる機能画像及びMRIによる形態画像それぞれ単独の評価に比べて,統合的な情報により正確で迅速な疾患の検出やステージング評価,治療モニタリング及び経過観察の向上という利点が考えられる。PETとMRIはどちらも臨床的な手段としてすでに確立されており互いに相補的な情報を提供するものであるが,さらにそれぞれの装置を統合化させたPET/MRI装置ではそれ以上の広範囲な臨床応用が期待される。特に統合型PET/MRI装置のメリットとして,一回の検査で両方の撮影を行うことにより,高精度の位置情報を持つ画像が得られるだけでなく従来撮影された単独のPET検査とMRI検査をソフトウェア上で重ね合わせた画像では実現できなかった情報を得られる可能性がある。本稿ではこれらの期待を実現可能にするべく発表された臨床用PET/MRI装置の総論として主な特長及び課題を報告する。
著者
滝澤 行雄 山下 順助 石郷岡 清基
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-12, 2014 (Released:2014-01-28)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

日本酒のX線照射マウスに対する放射線防護効果を検討した。供試の日本酒は米と米麹のみで醸造した純米酒(アルコール濃度10.5%)で,9週齢雄性C57BL/6JJms系マウスに純米酒0.6mL/匹を経口投与し,その約30分後にX線7.8Gy(照射線量率1.078Gy/分)を照射した。また,純米酒0.2mL/匹を7日間反復経口投与後30分後にX線を7.8Gy照射し,引き続き同様に7日反復経口投与を行った。対照マウスには普通酒(アルコール濃度15.0%),純エタノール(10.5%)及び生理的食塩水を経口投与した。なお,普通酒は米と米麹に,醸造アルコールを加えている。X線照射マウスに対する放射線防護効果は30日間の生存率で評価した。その結果,大量1回投与(0.6mL)において,純米酒投与群の生存率は80%でエタノール投与群よりも高かった。生理食塩水投与群では26日目に全頭死亡した.純米酒投与群と生理食塩水投与群との間に有意差(p<0.01)が認められた。少量連続投与(0.2mL)においては,純米酒投与群の生存率は普通酒投与群より高かった。純米酒投与群の生存率は生理的食塩水投与群より有意に高かった(p<0.05)。日本酒はアルコ-ル飲料の中でもアミノ酸が多く,特にアミノ酸総量では純米酒(1771mg/L)が普通酒(932mg/L)の約2倍高であり,放射線防護効果にアミノ酸の寄与が思考される。純エタノ-ルにも防護効果はみられるが,日本酒に比べ低かった。以上,唯一日本酒のみの特徴といえるアミノ酸類に放射線防護効果があることが示唆された。
著者
Ying WANG Noriaki KATAOKA Naoyuki KANDA Ryuta YAMADA Minami WATANABE Shogo MORITA Hiroshi IMAIZUMI Naoki KANO
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.553-561, 2015-09-15 (Released:2015-09-29)
参考文献数
19
被引用文献数
1 5

Hydrogen explosion occurred at Fukushima Dai-ichi nuclear power plants in Japan on 12―15th March, 2011. At the same time, lots of radioactive materials have been released including tritium(T), and caused serious environmental impacts. In order to investigate the effect of the accident of Fukushima Dai-ichi nuclear power plant on environment, we collected the short precipitation(hourly collected precipitation) and spring water for several years after the accident. As to the precipitation collected, T and radiocaesium were measured by using liquid scintillation counter and high-purity germanium detector, respectively. Furthermore, we also measured the concentration of ions(Na+, Cl-, Ca2+, and SO42-) in spring water. From the above-mentioned matters, the following points have been obtained:(1)The variation of T concentration in recent three years(2012, 2013 and 2014) can be clarified. (2)The effect of the accident on spring water in mountains around the Fukushima prefecture is so small. (3)As to the short precipitation on 15th March, 2011, the activity of radiocaesium was not detected, but the activity of T was detected significantly.