著者
水田 孝信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回全国大会(2021)
巻号頁・発行日
pp.3I2GS5e04, 2021 (Released:2021-06-14)

主に商品先物を取引するファンドであるCTA(Commodity Trading Advisor) は,かつては多くのファンドが高いリターンを得ていたが,2010年ごろからリターンを得るのが難しくなっている.その原因はいくつか指摘されているが,CTAを餌食にして利益を得る短期的な逆張り戦略が増えたという指摘がある.しかし,これらの指摘は根拠が薄い.そこで本研究では,CTAと短期逆張りを行う投資家を実装した人工市場モデルを構築し,短期逆張り戦略の出現がCTAのリターン減少につながったのかどうかを分析した.その結果,CTA・短期順張りともに,お互いがいたほうが戦略を実行するチャンスが多くなり利益を獲得していることが分かった.このため,短期的な逆張り戦略がCTAを餌食にして利益を得ているというのは誤りである可能性を指摘できただけでなく,むしろ共存共栄である可能性を示した.
著者
塩田 智也 寺田 和憲 栗原 一貴
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第29回全国大会(2015)
巻号頁・発行日
pp.2K5OS14b4, 2015 (Released:2018-07-30)

マナー違反者を直接咎責することは対人関係の悪化を嫌悪した結果ためらわれる.我々は,対面状況において過剰な情動反応を抑制するためにコミュニケーションチャネルからエージェンシーを削減する「脱エージェンシー」という概念を提案している.本研究では,「インタラクション対象が機械である」というトップダウン認知を利用した脱エージェンシーによって咎責嫌悪感を低減させられることを心理実験で示した.
著者
佐藤 優太郎 齋藤 五大 小鷹 研理
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回全国大会(2021)
巻号頁・発行日
pp.1E2OS201, 2021 (Released:2021-06-14)

自他の指の腹同士が隣接する状態で, 両者の指の背面を自ら同時にストロークすると麻痺感覚(numbness)が生じることが知られている. また, 本研究室は昨年, 自分の指の延長線上に他人の指を配置し, 自他の指の近傍二点を同期的にタップすることで, 他人の指への接触をもセルフタッチに感じられる自己誘導型の錯覚を考案し, その一般性を確認している. 以上の二つの錯覚を統一的な視点で捉えるとき, ダブルタッチの状況で, 自他の指を張り合わせている状態から180度開くことで, numbnessからセルフタッチ錯覚に転じている. すなわち, numbnessとセルフタッチ錯覚の間にトレードオフ性が存在すると推察される. 本研究は, 上記の仮説を検証するべく, 自他の指のなす角度を要因として, numbnessとセルフタッチ錯覚への影響を調べる被験者実験を実施した. 結果は予想に反し, トレードオフ性は確認されなかった. 一方で, 双方の感覚は, 自他の指の角度が90度の際に極小化し, 0度および180度のときに極大化するU字型の特性を持つこと, さらに相互に強力な正の相関がみられることがわかった.
著者
前川 佳幹 上野 史 北島 瑛貴 高玉 圭樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.3P4J703, 2019

<p>人間社会において,各個人が合意形成するため数値的・心理的ギャップ補填に基づく思いやりに焦点を当て,その効果を異文化体験ゲームバルンガ上で検証する.バルンガでは,プレイヤーどうしで密なコミュニケーションをとることは困難でありながら,全員で勝者を決定しない限りゲームが進行しない.本研究では,このバルンガに喜怒哀驚の4種類の感情表現を可能にするジェスチャー札を導入し,ギャップの認知によるギャップ補填,思いやりを促す.ジェスチャー札があるバルンガとないバルンガを用いた被験者実験の結果から,(1) ジェスチャー札の使用によって各プレイヤーがギャップを認知したこと,(2) ギャップの認知が,プレイヤーが集団に適応し,合意の形成に効果的であることが明らかになった.</p>
著者
森 有紗美 市川 嘉裕 髙玉 圭樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.1B34, 2013

<p>本研究では,個人の利益が他人や集団全体の利益と競合する社会的問題において,集団を適応状態に導くために効果的な外的要因を探ることを目的とする.その目的に向け,Cialdini の提唱した交渉相手の承認を引き起こす要因となる人間の行動パターンの中から他者からの「好意」に着目し,それが集団内の人間の考え方を変え集団適応状態をもたらすかを異文化体験ゲーム「バルンガ」の被験者実験を通して検証する.</p>
著者
牧 良樹 白鳥 裕士 佐藤 剣太 中村 聡史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.2K105, 2018

<p>ストーリーコンテンツにおいて,未知であるストーリー部分を明らかにすることはネタバレと呼ばれ,多くの研究で防止する手法が提案されてきた.しかし、そのネタバレがコンテンツを楽しんでいるひとに対しどのような影響を与えるのか,またコンテンツの進度によりネタバレの影響は変化するのかについては調査されていなかった.我々は以前の研究で,コミックを対象としたネタバレ影響調査を行ない,作品によってネタバレの影響が変化することを明らかにしてきたが,ネタバレの本質的な影響については調査できていなかった.そこで,本研究ではネタバレ直後の影響を調べることによってネタバレの本質的な影響について明らかにした.また,ネタバレページの特徴を分析することによって,ネタバレページ推定実験の手法についての検討を行なった.</p>
著者
藤堂 健世 安田 翔也 山村 雅幸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.3Rin469, 2020 (Released:2020-06-19)

機械学習における敵対的攻撃が注目を集めている。ブラックボックスなニューラルネットに対する普遍的かつ標的型の敵対的攻撃は困難と言われており、これを利用したニューラルネットの構造解析の知見は未だ十分とは言えない。本稿では,ブラックボックス・普遍的・標的型攻撃のための画像ノイズを遺伝的アルゴリズムによって作成し、これを適用した他クラスサンプルの圧縮空間上での遷移挙動から,ニューラルネットワークの特徴量構造の特性を調査した.その結果、あるクラスに対する標的型ノイズが、他クラスのサンプルに特徴的な遷移を誘導する「巻き込み」現象が観察された。巻き込みの発生度合いはクラスごとに異なったため、クラスごとに敵対的攻撃に対する耐性が異なることが示唆された。これらはクラスの距離に対応する何らかの指標と解釈することができ,ひいては特徴量空間の解析の糸口になると考えられる.
著者
佐藤 遼次 佐藤 一郎 金子 雅彦 水野 貴之
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.2E6GS504, 2020 (Released:2020-06-19)

企業が事故や災害で被災し操業が中断した際に,その経済的ショックがサプライチェーンを介して取引先に波及するかどうかを明らかにするために,本研究では,サプライヤーの売上情報とその顧客企業の売上情報との関係を表現する回帰モデルを構築した.具体的には,主に上場企業に関する財務情報を収録したデータベースから,事故や災害による被災の有無に関わらず,2012年から2016年までの製造企業の売上情報(約7,500件)を整理した.これを企業の取引関係を収録したデータベースと突合することで,各決算年度におけるサプライヤーおよび顧客企業の売上成長率を紐づけたデータセットを作成した.これに,各企業の国籍や業種等の情報を加え,機械学習(LightGBM)を用いることで,サプライヤーの売上前年比を含む情報から,その顧客企業の売上前年比を回帰するモデルを構築した.そのモデルにおける特徴量の重要度を評価することで,企業の売上成長が,サプライチェーンを介した取引先のパフォーマンスによる影響を受けていることを明らかにした.
著者
荒井 研介 高橋 由雅
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第26回全国大会(2012)
巻号頁・発行日
pp.3D2R133, 2012 (Released:2018-07-30)

本研究室では、分子構造情報の表現手段の一つとして、分子グラフを符号化し、符号列から楽譜を生成し、MIDI音源を利用して演奏する「分子ミュージック」の研究を進めている。従来手法では、構造が類似しているにもかかわらず、生成される楽譜に大きな違いが生じる場合があり、音楽的にも不安定なものとなっていた。そこで、分子グラフの骨格毎に明確な違いを表現し、音楽理論を反映した楽譜生成アルゴリズムを提案する。
著者
斯波 廣大 Chih-Chieh CHEN 曽我部 完 坂本 克好 山口 浩一 曽我部 東馬
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.4B3GS102, 2020 (Released:2020-06-19)

ゲート方式の量子コンピュータを用いた最適化問題の解法は、VQEアルゴリズムを用いたものやQAOAアルゴリズムを用いたものが存在し、実社会の最適化問題に対する解法の1つとして、現在注目を集めている。ゲート方式の量子コンピュータを用いた最適化問題の計算手法は、量子アニーリングによる計算手法よりも拡張性が高く、様々な種類の最適化問題に対応できる可能性がある。しかしながら、複数の制約条件を考慮した複雑な最適化問題において、正しい最適解を計算する手法は未だ確立されていない。そこで今回は、制約条件を考慮した、より実問題に近い最適化問題に対する計算手法の1つであるハミルトニアン混合型手法を応用するとともにその有効性を検証する。
著者
郡司 隆男 橋田 浩一 徳永 健伸 丸山 宏 長尾 眞
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.673-683, 1994-09-01 (Released:2020-09-29)

前号 (Vol.9, No.4, pp.530-536) のAIマップは,我が国の自然言語処理分野のリーダシップを長年取ってこられた長尾 眞氏によるものでした.広い視野から現在の自然言語処理技術における問題点を論じる一方,これまでのアプローチに対しても厳しい批判を投じた provocative なものでした.ここではさまざまな観点から議論を沸騰させるために,自然言語研究においてそれぞれの立場の異なる4氏(大阪大学 郡司 隆男氏,電子技術総合研究所 橋田 浩一氏,東京工業大学 徳永 健伸氏,日本アイ・ビー・エム(株) 丸山 宏氏)にコメントをいただきました.また,コメントに対する長尾 眞氏の返答も同時に掲載することにいたしました. (編集委員会AIマップワーキンググループ)
著者
江島 昇太 小杉 太一 岡 瑞起 三宅 雅矩 池上 高志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1B301, 2018 (Released:2018-07-30)

SNS などのウェブ上の人々の活動においては, 特定の話題に対する言及が急激に増えるバースト現象が見られる. このバースト現象を解析する手法として, 確率的点過程モデルである Hawkes Process が用いられる. Hawkes Process の内部のダイナミクスを表す指標として branching ratio というものがあり, この値がある特定の閾値を超えるとイベント時系列が静的な定常状態から, バースト現象が起こりやすい非定常状態へと相転移することが知られている. 本研究では, SNS から得られるデータの中でも特に Social Tagging System に着目し, サービスの成長に伴って branching ratio がどのように時間的に変化していくのかを分析する.
著者
豊澤 修平 村井 源
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.3L3OS22a03, 2019 (Released:2019-06-01)

本論文では星新一のショートショートにおけるSFジャンルのオチに至る物語構造の分析をするために,古典的なプロット分析を利用しオチパターンの抽出を行った.物語自動生成にはまずプロットを作製しこれを文章化する過程を必要とする.オチに至る物語構造を分析することにより,より自然な物語の自動生成を実現できる可能性がある.星新一の代表的なジャンルであるSFから「宇宙」,「薬」,「自動装置・発明・コンピュータ」,「ロボット」に作品を限定しオチのパターン化と必要条件,前提条件の抽出を行った.結果として各テーマにおける特徴的なパターンの抽出を行うことができた.テーマのパターン化及び必要条件と前提条件の記述の統一化と抽象化の結果を用いることで,今後より星新一らしい自然な物語の自動生成が可能になると考えられる.