著者
中道 静郎 秋元 義巳 五十嵐 勝朗 黒沼忠 由樹 小出 信雄 大竹 進 成田 俊介
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.751-754, 1988-08-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
3

DMDの3症例を紹介する. 発病年令は2~3才, 入院時年令は4~9才, ステージV到達年令は9~10才, ステージVよりVIIまでの到達期間は平均8年であり, 身長, 体重とも健常男子に比すると著しく低下していた. 肺活量(VC)は末期に610±25ccまで低下し, 2例が気管切開を受けた. CPK, LDH, アルドラーゼ, GOT, GPTなどの血清酵素は入院時非常に高く, 病勢の進行とともに漸減していつた. PaO2の低下とPaCO2の上昇が末期に顕著で, 血液は呼吸性アシドーシスとなり, 意識混濁, 頭重, 失見当識の状態になつた. 頻回の喀痰喀出困難のため体位ドレナージ, バイブレーター, タツピングなどにより排痰を図つた. 3例はそれぞれ呼吸不全, 肺炎, 気管無名動脈瘻よりの大出血で死亡した.
著者
湯浅 龍彦 根本 英明 木村 暁夫 吉野 英 山田 滋雄 西宮 仁
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.601-605, 2001-12-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
16

慢性硬膜下血腫除去術の直後に発症したCreutzfeldt-Jakob病(CJD)を経験した. これはきわめて特殊な経過であり, 術前にはもちろん, 術後においてもCJDの診断を下すことは困難であった. そのなかで, 進行性に悪化する臨床症状に加えて拡張強調MRIがCJDの診断の糸口になった. つまり, 脳波に未だ周期性同期性放電(PSD)の出現していない発病初期の脳MRIにおいて, T1強調画像やT2強調画像にほとんど変化がみられないのに対し, 拡張強調MR画像に明瞭な病変がみられたことは特異なことであった.また, 本例においてはCJDの初期の臨床症状は明らかな左右差をもって発症しており, かつ, 同時期の脳MRIの病変分布にもまた著しい左右差が見られた. これは先行した慢性硬膜下血腫がCJDの脳病変の発現経過に影響を与えたものと推論され興味深いことであった.さらに本例は, CJD患者が外科手術を受ける事態が現実に起こりうることを示すものであり, CJDの診療に当る施設においては, 感染防御対策の面からだけでなく, 手術を受け入れるために必要な整備と具体的な手順書を早急に整えるべきであろう.
著者
山内 豊明 吉川 博子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.677-681, 2002-11-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
12

Creutzfeldt-Jakob病は比較的まれな神経疾患であり, 亜急性の経過で痴呆, 精神症状, 錘体路・錘体外路症状, 小脳症状などさまざまな中枢神経症状を呈する. 症状が進行するにしたがいミオクローヌス, 高度痴呆, 無動性無言の状態となり, 通常発症後2年以内に死に至る. 孤発性, 遺伝性, 感染性に大別され, 感染性の場合は, ほとんどが医原性の感染であり, 患者に常時接している家族にCJDが発症したという報告はない. しかしながら感染性の疾患である本疾患に対しての, 病室, 手洗い, 器具の扱い, 身体清潔, 食事, 汚染物の扱い, などに関する正しい感染防止の知識は不可欠である. その一方で, 過剰な感染対策にならないよう, 感染性そのものについて十分に理解して対応することも重要である. 本疾患については, 疾患概念ならびに患者やその家族などの立場を理解し, かつ医療従事者や他の患者に感染させないことが鍵となる事項であろう.

1 0 0 0 OA 性的倒錯の1例

著者
橋口 茂
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.5, no.7, pp.365-367, 1951 (Released:2011-10-19)
著者
中村 伴子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.318-323, 2007-05-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
8

国立病院機構, ハンセン療養所, ナショナルセンターに勤務する作業療法部門の業務実態とチーム医療の実態についてアンケート調査を行った. その結果, チーム医療に関してはチームアプローチに困難さを感じている施設がきわめて多く, 問題なしという回答施設は少なかった. チームアプローチの困難な理由は人員配置の少なさや専門性の理解不足, 必要な専門職種の配置の不足が指摘された.また, 作業療法士がチーム医療を実施している主な疾患は神経・筋疾患, 脳血管疾患, 骨・運動器疾患が多く, その専門的役割としては日常生活活動, 上肢機能回復訓練, 遂行障害評価訓練などが多くみられた. さらに, チーム医療に問題を感じながらもカンファレンスの実施や患者主体の工夫が考えられ, 困難事例についての症例検討会も多くの施設でチーム全体にて取り組まれていた.今後はチームの成員一人ひとりがチーム医療の実施者として独自の専門領域を持った上で, 自律的に協働して, 患者のニーズと願望に即した患者中心の医療が望まれる. それを実現するためにはまずチーム医療体制における必要な職種や人員の配置, まとめ役や調整役を据えた民主的な運営のもとでカンファレンスや症例検討会, 勉強会を重ね複数職種の相互理解が必要と考えられる.
著者
小沢 隆昭 宮崎 久義 外山 あつ子 江崎 公明 垣内 康之
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.235-239, 1989-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
12

経尿道的前立腺切除術(TUR)中に損傷された前立腺静脈洞からの灌流液吸収によると思われる重症の低ナトリウム血症を経験した. 患者は89才の男性で脊麻下にTURを開始した. 手術開始後1時間ころより血圧下降, 意識レベルの低下がみられた. 瞼結膜は蒼白で, この時点でのヘモグラムはHb 5.6g/dl, RBC 184×104, Ht 17.4%であり, 血清ナトリウム値は109mEq/lであつた. 聴診上胸部全肺野にラ音を聞きPaO2 57.4mmHg, PaCO2 39.6mmHg, pH7.270 BE-8.2であつた.ただちに酸素吸入, 昇圧薬, 高張ナトリウム液を静脈注射し, 出血に対する輸血を開始した. 血圧は回復したが胸部ラ音は次第に強くなり, 胸部X線写真で肺水腫像を呈した. 計測された血清ナトリウム値の最低値は93mEq/lであつた.病棟帰室後も酸素吸入, 血圧, 腎血流維持のためのドパミン持続注入, 利尿薬, ナトリウムの負荷, 輸血を継続した. 術後1日目には各種検査値は正常化し, 2日目には胸部X線写真も術前の状態まで回復した.TUR中の低ナトリウム血症は, その発生の予防とともに早期発見が大切である.
著者
倉田 さつき 金谷 誠久 水内 秀次 永禮 旬
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.121-125, 1993-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
3

重症心身障害児者(以下重心)病棟において一括して施行するハブラシの洗浄消毒方法について検討した. 入院患者歯磨き後のハブラシを水道水流水, 0.5%グルタルアルデヒド, 0.1%次亜塩素酸ナトリウム, 85℃高温乾燥機, 70℃流水でそれぞれ洗浄, 消毒し, 好気性菌について残存菌数を比較した. また種々の細菌をハブラシに付着させ, 同様の洗浄, 消毒後の残存生菌数を比較した. さらにハブラシに残存した細菌群をより短時間で除菌する目的で, 電子レンジによるマイクロ波照射を湿潤状態, 乾燥状態の歯磨き後のハブラシに対して行い, 残存菌数の測定を行った. ハブラシに付着した細菌の除菌についてはグルタルアルデヒドと70℃の流水がそれぞれ充分な除菌効果が得られたが, 前者は毒性が残留するため, 湯を用いての洗浄が重心病棟で日常行いうる有効な方法と考えられた. 電子レンジでは, ハブラシの湿潤, 乾燥にかわからず, 5分の照射で充分な殺菌効果が認められた.
著者
堀 秀史 中倉 滋夫 酒井 喜久雄 宇佐 利隆 矢野 裕 井上 健 野元 域弘
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.431-437, 1998-07-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
8

携帯型自動血圧計(ABPM)を用いた24時間血圧の測定が可能となり, 従来の随時血圧の測定ではわからなかった白衣高血圧, 早朝の急激な血圧上昇(morning surge)や夜間血圧におけるdipper型およびnon-dipPer型の存在が明らかになった. また, 24時間血圧は心血管系疾患や臓器障害の発症・進展と密接な関係にあることがわかってきた.今回, 本態性高血圧症患者21例(平均年齢63.6歳)を対象とし, αβ遮断薬塩酸アロチノロールの血圧日内変動におよぼす影響をABPMを用い検討した. 本剤の服用により, 24時間を通じ日内変動リズムのパターンに影響をおよぼすことなく良好な降圧効果が認められた. また, dipper型とnon-dipPer型に分けた検討において, non-dipper型でより良好な降圧効果が確認された. これより, 本剤は血圧日内変動に悪影響をおよぼさず安定した降圧効果を示す降圧薬であると考えられた.

1 0 0 0 OA 病院の再構築

著者
阿部 憲男 清水 博
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.98-101, 2006-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
5

国立療養所岩手病院は, 医師の名義を借りて診療報酬を不正受給したことにより平成12年6月1日に保険医療機関取消処分を受け, 3ヵ月後に再度保険医療機関として指定されたものの, 5年間にわたって, 標榜科と病床数の制限を受けた. 病院の存亡の危機に直面した時期に院長として務めたわれわれは, 職員の士気の昂揚を図り, 各人の意識改革を行うことに主眼をおいた. 岩手病院の存在の意義を明確にするために職員として何をなすべきかを明快で具体的な内容からなる「病院の目標と基本方針」を策定した. 一連の不祥事に学び, 「情報の共有」の重要性を認識し, 情報の共有の場として「診療支援委員会」を毎週1回開催した. また, 広大な敷地の環境美化を図り, その作業を通じて職員間の意思疎通を図ることを目的とした各職場の代表からなる環境整備の日を毎週1回1時間設けた. さらに, 従来の公務員像から脱却し職員の意識改革を行うために, 情報の共有, プラスα, 現場主義等のキーワードを盛り込んだ職員の行動指針として「十訓」を定めた. 以上の4つを, すべてに優先して病院運営の基本的な4本柱とした. その結果, 重症児(者)病棟では, 全国の国立療養所に先駆けて1週間の入浴回数を2回から3回に増やすことを実現し, 夕食の喫食時間の繰り下げ, 病棟配膳から中央配膳への変更, 在宅重症児(者)の短期入所の著明な増加, 食形態の見直し等へと繋がっていった. 病院全体としては, 独法移行後に労務系職員が本来業務を超えて職種横断的な機能的単位である「サービス班」を形成して, 班全体として院内清掃, 洗濯物の整理, 環境整備, 建物設備の補修等に当たる業務へのスムースな移行が可能になった. 看護業務を軽減するために, 看護課への各職場の協力体制が出てきた. 今後は, 国立病院機構の掲げる質の高い医療を遂行するためには, 病院を変えるリーダーとなりうる医師の確保こそが最大の課題である.

1 0 0 0 OA 集談会記事

出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.994-999, 1995-11-20 (Released:2011-10-19)
著者
青木 昭子 瀬沼 昭子 中村 満行 泉二 恭輔 服部 英行 長岡 章平
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.128-131, 1998-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

経口抗アレルギー薬オキサトミドを内服中に肝障害を発症した57歳男性を報告する. 内服35日目に嘔気と黄疸が出現し, 入院となった. 血液生化学で胆汁うっ滞型肝障害を認めた(総ビリルビン7.44mg/dl, 直接ビリルビン6.71mg/dl, GOT163, GPT232, ALP1502). 腹部エコー, CTにて肝腫大を認めるも肝内胆管の拡張は認められなかった. 各種肝炎ウイルスマーカー(HB抗体, HCV抗体, IgM-HA抗体, HB抗原)は陰性であった. 白血球増多, 好酸球増多がみとめられたことから, オキサトミドによる薬物性肝障害を疑った. オキサトミドはケミカルメディエーターの放出と効果を抑制し, 抗ヒスタミン作用を有する抗アレルギー薬で, 各種アレルギー疾患において安全性と効果が証明されている.しかしその投与期間中には肝障害の可能性を考慮する必要があると考え報告した.
著者
石松 春代
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.436-443, 2001-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
5

看護学生3年次の卒業期に事例研究を課し, その前後での学生の認識の変化を検討した. 事例研究の直前・直後・論文作成後に62名の学生について, 思考力・自己教育力についての同一の質問紙に回答してもらった.思考力は, 研究直前・直後よりも論文作成後に有意に上昇した. 自己教育力の平均値は, 全体平均得点では研究の時期による差がなく, 項目別で[看護の工夫]が上昇した. また, 学生の[向上・成長状況]の記述から「文献検索と活用ができるようになった」「多くの文献から多様な考えを知り, 知識を深めた」と述べており自己教育力への動機づけができたと推察された. 一方, 教員による論文評価は, 70%以上を到達点と考えると61.3%の学生が該当したことから, 3年生に事例研究を実施することは, 有効であったと考える.今後さらに学生の入学の初期から文献検討や文章表現力の強化に努めたい.
著者
木村 哲
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.637-640, 2005-12-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
4

日本ではいまだにHIV感染者とエイズ発症者が年毎に増え続けている. とくに後者の増加は先進国としては異例のことであり, 対策の遅れが目立っている. その最大の原因は, HIV感染症に対する社会の無関心と, 抗体検査の普及の遅れである. マスコミを含めたさまざまな啓発活動の促進, 学校等における性感染症教育の充実, 保健所での自発的抗体検査体制の見直しなど課題が多いが, 医療機関の果たすべき役割も大きい. それはHIV感染症やエイズの見落としと誤診を少なくし, 患者教育を充実させる点である. 患者の予後改善・救命と感染拡大を防ぐには早期診断が重要である.