著者
升田 隆雄 坂口 啓二 竹内 光治 鈴木 啓仁 山田 博史 黒田 智枝 野口 紀子 小菅 邦義
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.263-268, 1994-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
18

当院の医師92名, 看護婦380名, 看護助手24名, 看護学生30名を対象としてMRSAの鼻腔内保菌の調査を行った. 陽性率は各4.4%, 11.6%, 8.3%, 3.3%であった. 看護婦の保菌は救命センター(37.0%), 脳外科神経内科病棟(30.4%)で高率であり, 病棟でのMRSA検出患者数と平行していた. 除菌処置としてポビドンヨードゲルを1日2回1週間鼻腔内塗布し61%が陰性化した. 除菌困難例にはバシトラシン・フラジオマイシン軟膏を使用し54%が陰性化した. 耐性の誘導を考慮するとこれら抗生剤の局所使用は合理的であると考えられる.同一病棟同一時期での職員由来株と患者由来株のコアグラーゼ型は一致傾向はみられなかった. また除菌処置の励行により職員のMRSA保菌は激減したが, その後もMRSA検出患者は増加している. これらから職員の鼻腔内MRSA保菌に起因する患者への伝播の可能性は低いと推測される.
著者
村上 宝久 熊谷 進
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.1370-1380, 1977-12-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
24

注射による三角筋拘縮症は, 三角筋部(主に中央部)に行われた筋肉内注射の影響によつて筋線維に変性(線維化)が起こり, 筋肉の伸張性が減じて拘縮を発生し, 肩の機能に障害をもたらすものである. そして, 三角筋部の主として肩峰部に線維性索状化を発生することが多いため, 肩の外転位拘縮(内転制限)を主徴候とする. 三角筋部は, その解剖学的特殊構造よりみて, 障害を受ければ容易に拘縮が発生する要素を多分に含んでおり, 大腿四頭筋以上に危険な注射部位といえる.今回, 我々は, 昭和41年より51年にかけて, 当科を訪れた注射による三角筋拘縮症の44例55肢について各方向より検討を加え, いささかの知見を得たので報告する. また本症の治療については, 大腿四頭筋拘縮症と同様にいまだ確立されたものがないのが現状であり, その手術適応, 手術時期, 手術方法などについても, 我々の考えを述べてみる.
著者
佐藤 準一 山村 隆
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.441-455, 2003-07-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
107

近年インターフェロンベータ(interferon-beta; IFN β)が多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)で再発抑制に有効であることが立証されたが, また同時にIFN β高応答群(responder)・低応答群(nonresponder)の存在が明らかになった. 現在までMSにおけるIFN β治療効果の分子細胞生物学的機序は十分解明されていない. IFN βは第一にIFN γによるクラスII主要適合性抗原発現誘導に拮抗して抗原提示能を抑制し, 第二に抗原提示細胞によるIL-12産生を抑制してTh1シフトを是正し, 第三に活性化. 自己反応性T細胞の血液脳関門通過を阻止することにより, 強力な抗炎症作用を呈することが報告されている. 最近われわれは遺伝子アレイを用いてMSにおけるIFN β治療効果発現に重要な役割を果たすと推測されるIFN応答遺伝子群(IFN-responsive genes; IRG)を同定した. IRGにはIFN β産生における正の制御転写因子IRF-7や抗原呈示機構の主要構成要素IFI30, TAP1が含まれている. われわれの研究結果はIRGがMSにおけるIFN β responder, nonresponderを識別するマーカーとなる可能性を示唆する.
著者
松森 邦昭 三井 公彦 田中 千彦 阪本 いづみ
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.45-48, 1992-01-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
5

癌末期の難治性疼痛に対し, 経皮的コルドトミーによる除痛を行った. 癌性疼痛を有する16例に22回施行した. 施行直後, 鎮痛剤を全く必要としない症例は16例中7例(44%), 鎮痛剤を常時は必要としない症例は5例(31%)で, 合わせて75%の良好な除痛がえられた. 無効例は無かつた. 合併症として不全片麻痺2例, 排尿困難2例を認めたがいずれも一過性で回復した. 他に施行1~2ヵ月後に2例でdysesthetic syndromeの発生をみた.難治性の癌末期疼痛に対し経皮的コルドトミーは確実な除痛効果を示した. 手技が簡単で癌末期のhigh risk患者であっても高齢者でも安全に行いえた.
著者
永井 英明
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.595-598, 2004-10-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6
著者
磯部 親則
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.125-126, 1964 (Released:2011-10-19)
参考文献数
8

In 1913, Triturus pyrrhogaster, Trypanosoma tritonis Ogawa, was newly discovered in Kijyo-village of Koyu, Saito-city, Miyazaki-city, Sadohara-and Kiyotake-town of Miyazaki district. The density of inhabitation seems to be depend on the circumstance of the parasitic regions as in case of Kumamoto Prefecture.
著者
小沼 杏坪
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.220-223, 2000-05-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
8

覚せい剤とは, 昭和26年に制定された覚せい剤取締法によって規定されており, フェニルアミノプロパン(一般名アンフェタミン)とフェニルメチルアミノプロパン(一般名メタンフェタミン)およびその塩類をいう. 我が国では現在, 乱用されているのはほとんどすべてメタンフェタミンである. 覚せい剤は経口, 静脈内注射, 煙霧の吸入などにより乱用される. 覚せい剤の使用を重ねていくうちに, 自力ではなかなか止められない薬物依存に陥る. 覚せい剤依存症の典型的な例では, 覚せい剤を周期的に使用することがみられ, 時期的に変化する三相構造が認められる. 周期的使用を繰り返すうちに, いわゆる幻覚妄想状態となる. このような覚せい剤による中毒性精神病は発病しても早期に治療に結びつけば, 薬物療法によって比較的容易に治療することができる. しかし, 治療しても, 覚せい剤の乱用をやめない例では, 使用の度毎に幻覚妄想などの精神病状態が繰り返し再燃することになる
著者
木村 琢磨 伊藤 澄信
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.138-143, 2001-03-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
21

近年, 総合診療部門の臨床教育における役割は増大している. 初期研修では将来の専門領域が何であっても, すべての臨床医に求められる基本的臨床能力の教育が求められている. common problemsやcommon diseasesの問題解決能力の修得には外来研修が有用で, 当科ローテート中の研修医には指導医のチェックのもとで入門的な初診外来研修が実施されている. また, 当科では一般臨床医, 臨床研修指導医の養成を目標とした後期研修も行われている. 研修の場として外来を重視し, commonにみられる内科系疾患についての二次レベルから安定期フォローアップまでの診療能力の修得を目標にした初診外来, 継続外来, 救急外来での研修に加え, 内科系以外の一次レベルの診療能力の修得を目標にした内科系以外の専門外来における研修も行っている. また当科では52床の病棟を有し, 侵襲的な検査・治療を必要としない頻度の高い内科系疾患の病棟研修もなされている.
著者
飛田 宗重 高田 博仁 土肥 守 千田 圭二 小林 顕 関 晴朗 亀谷 剛 宮澤 幸仁 小野寺 淳一 鈴木 博義 今野 秀彦 吉岡 勝 會田 隆志 野村 宏
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.503-507, 2003-08-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)は, いまだ病因不明で治療法未確立の難治性疾患であるが, 疫学調査を行うにも共通の登録基準さえ整備されていない状況にあった. 近年, 「神経疾患の予防・診断・治療に関する臨床研究班」(湯浅班)において, 疫学調査のための登録基準が提唱されたことを契機に, 東北ブロック政策医療神経筋疾患ネットワーク参加施設にてPSPの療養環境整備にむけた共同研究を施行した. 最初に剖検例を対象に登録基準の有用性について検討した. 病理学的に診断確定したPSP7例全例が登録基準を充たしていたが, PSPと鑑別を要する疾患群(MSA4例, PD8例, DLB4例, CBD1例)はいずれも登録基準を充たさず, 登録基準の有用性が示された. 次いで登録基準を用いて患者登録を行い, 療養環境について調査した. 今回の調査では, 入院療養への依存度が高く, 介護保険の利用が少ない実態が認められた. 重症化してから長期入院療養目的で国立医療機関へ紹介される症例が多い傾向を反映しており, 療養上の諸問題について検討した.
著者
西宮 仁
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.477-481, 2005-09-20 (Released:2011-10-07)

進行性核上性麻痺(PSP)の診断上, 画像所見は有力な補助診断手段として用いられてきた. 主な所見としては, 頭部MRIにおいて認められる, 脳幹の中脳・橋被蓋部, ことに中脳吻側部の萎縮によって示されるハミングバードサイン, PVH等の大脳白質の異常信号, 頭部MRIおよびCTにて認められる第3脳室拡大, 四丘体槽拡大, シルビウス裂拡大, 前頭葉萎縮, 側脳室拡大, SPECTおよびPETにおける前頭葉の血流低下等が知られている.
著者
有田 和徳 山田 謙慈 藤田 浩史 鎌田 達 吉田 康洋 池尻 公二
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.634-638, 1990-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
14

CT, MRI, SPECTで検索し得た典型的な進行性核上性麻痺の1例を報告する.症例: 68才女性, 約2年前より動作や言語が緩徐となり, 転倒しやすくなつた. その後症状は安定していたが約20ヵ月後より痴呆が認められ, 歩行が不安定となり, 自発的な発語や動作が乏しく臥床状態が多くなつた. 1987年1月の入院時, 神経学的には核上性眼球運動障害, 皮質下痴呆, 頭部を後方に反り返らせる特異なdystonia, 病的反射を伴わない四肢の腱反射亢進, 四肢の著明なrigidity, 後方への転倒傾向が認められた.1)CTでは中脳の萎縮とともに大脳のびまん性の萎縮が認められた. 大脳の萎縮は約2年間の経過で進行が認められた. 2)MRI矢状断像によつて中脳, 橋被蓋の萎縮が明瞭に描出され, 画像診断上きわめて有用であつた. 3)SPECTでは脳幹, 大脳基底核ならびに前頭葉の血流低下が認められた.
著者
鈴木 幹也 川井 充
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.482-485, 2005-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
8

進行性核上性麻痺は, 核上性眼球運動障害, 左右差のないパーキンソニズム, 高次機能障害などを呈する変性疾患である. 特徴的症状や, 頭部MRIで, 第3脳室の拡大, 中脳・橋被蓋の萎縮があれば診断に苦慮しないが, 発症早期では目立たない例があり, 他のパーキンソニズムを来たす疾患との鑑別が問題になる. パーキンソン病は, 一側優位の静止時振戦・筋強剛で発症し, 進行すると無動・易転倒性がみられる. MIBG心筋シンチの後期相での取り込みの低下が診断に有用である. 多系統萎縮症は, パーキンソニズム, 小脳失調, 自律神経症状が特徴的だが, パーキンソニズムが主体の線条体黒質変性症は, 自律神経症状が目立たないと診断が困難なことがある. 頭部MRI T2強調画像での被殻外縁のスリット状高信号領域が特徴である. 大脳皮質基底核変性症は, 失行などの皮質症状をともなう. どの疾患も特徴的な症状・画像変化を示さない例では診断に苦慮することがある.
著者
近藤 清彦 木村 百合香
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.376-382, 2005-07-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
13

人工呼吸療法中のALS患者に対し, 病院と自宅訪問での音楽療法を行い, その効果とALS患者の緩和ケアにおける音楽療法の意義について述べた. 言葉でのコミュニケーションが困難となったALS患者では, ノンヴァーバルコミュニケーションが可能な音楽療法は身体的苦痛の軽減に加え, 精神・心理的側面とスピリチュアルな側面のQOL向上に有用であり, ALS患者に対する緩和ケアの一手段として重要な方法となりうる. ALS患者に対する音楽療法は, 人工呼吸器を装着し長期療養者の多いわが国でこそ, すすめていくべきテーマであり, そのためには音楽療法士の参加と協力が必須である.
著者
小見 亘 中村 由紀夫 吉澤 尚 千代 満 能登 裕 木田 寛
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.338-341, 2001-07-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

症例は73歳の女性. 陳旧性心筋梗塞後の心室頻拍に対しアミオダロン200mg/日が投与されていた. 外来にてジゴキシン0.125mg/日を追加投与したところ, めまい, 食欲低下が出現し2週間後に再診した. 心電図所見などよりジギタリス中毒と診断され入院した. 入院時血中ジゴキシン濃度は2.56ng/mlと高値を示し, ジゴキシンの内服を中止した18日後でも0.60ng/mlであった. この間の半減期(167時間)は, 入院後のクレアチニン値, 体重, 年齢および性別から治療薬剤モニタリングシステムを用いて推測された半減期(95時間)より延長しておりジゴキシンとアミオダロンの相互作用によるものと考えられた. この値より計算した適正投与量は0.07mg/dayであった. 両薬剤を併用する場合にはジギタリス中毒の出現に細心の注意を払うべきであり, 投与量の設定には治療薬剤モニタリングシステムの活用が一助となる。
著者
小山 雄三 飯ケ谷 知彦 斉藤 史郎
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.954-957, 1986-10-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
24

われわれは陰茎折症の1例を経験したのでその症例を報告する. 患者は41才男性であり, 風呂場で転倒し陰茎を強打した. その直後より陰茎の腫膨冬痛を認めるようになつたため来院した. 陰茎は浮腫状で, 皮下出血, 屈曲変形を認めた. 陰茎折症の疑いのもとに手術を施行したところ, 右陰茎海綿体根部に白膜断裂部を認めこれを縫合した. 以上の症例を報告するとともに, 本邦で報告された陰茎折症283症例(自験例も含む)の年令分布, 陰茎折症の原因, 白膜断裂部位, 治療法について統計学的検討を加えた.
著者
湯浅 龍彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.402-406, 1996-05-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
8
著者
寺畑 喜朔
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.264-265, 1972 (Released:2011-10-19)
参考文献数
1
著者
石垣 一彦 矢加部 茂 竹尾 貞徳 前川 宗一郎 吉田 康洋 池尻 公二
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.325-328, 1986-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
10

精神障害者同士の結婚例12組について, 主として社会適応面から調査し報告した.1) 病名は夫婦とも精神分裂病である組合せが7組で, 12組のうち11組の両方あるいは片方の患者は分裂病者であつた.2) 結婚の様式は恋愛結婚6組, 見合結婚5組で, 見合結婚の経過が良好であった.3) 結婚の動機として, 男性では長子, 祭 主宰者としての役割を期待され, 女性では親の老令化, 同胞の世話になりたくないため結婚している者が多かつた.4) 社会適応状況は男性より女性の方が良好であつた.5) 結婚から現在までの経過は安定型, 不安定維持型, 挫折型の3つに分類出来た.