著者
島津 伸一郎 榎本 雅夫 白川 太郎
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.85-88, 2000-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
9

Th1反応とTh2反応は相拮抗して成り立っていて, アレルギー疾患ではTh2優位になっており. アトピー疾患のより根本的な治療法としてTh1反応を誘導しTh2反応を抑制することが考えられている. 我々は一般小児集団においてツ反とアトピーに関する疫学調査を行い, ツ反陽性者ではTh1優位となっていてアトピー疾患の罹患率は有意に低く, またッ反陽転することによってアトピー疾患が有意に高い寛解率を示すことを証明した. またHopkinらは花粉症患者にSRL172を投与して喘息症状の改善を得ている. またほかの動物実験研究ではBCGの投与によってTh2反応が抑制されることが証明されている. これらの結果は結核菌などの細菌菌体成分がアトピー疾患の治療と予防に有効な手段となりうることを示している.
著者
小畑 伸一郎 木村 圭志 前田 和弘 真田 功 佐藤 昌彦 松村 克己 河野 文夫 東 輝一朗 紫藤 忠博
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.174-176, 1991-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
12

40歳男性, 粘血便, 下痢を主訴とし注腸, 大腸内視鏡, 生検所見より左半結腸型の潰瘍性大腸炎と診断された. プレドニゾロン30mg/日及び, salicylazosulfa pyridine4.0g/日の約1年にわたる投与でも, 緩解に導入できず症状持続. 当科入院後経管栄養を併用により一時的に緩解となるも3ヵ月後粘血便出現, 大腸内視鏡, 組織学上活動性であった. プレドニゾロン60mg/日に増量し, 柴苓湯を併用した. 症状は消失し, プレドニゾロン減量が可能となり, 10週後には外来通院となり, プレドニゾロン中止するも緩解を保っている. 柴苓湯にはステロイド効果の増強作用が知られており, ステロイド減量に成功し良好な経過を得た.
著者
木村 武実 吉田 浩之 和田 吉晴 上田 啓司 弟子丸 元紀
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.459-462, 1994-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
12

Trimebutine maleateの投与により構音障害をきたした老年期うつ状態の1症例を経験した. 症例は67歳, 女性. 65歳時, 誘因なくうつ状態となり, 抗うつ薬により中枢神経系の副作用をきたし難治であった. 66歳時, 過敏性腸症候群に対するtrimebutine maleateの投与1時間後から強度の眠気とふらつきを前駆症状として構音障害, 手指振戦を呈し, trimebutine maleate中止により数日で消失した. 頭部CTでは透明中隔腔・ヴェルガ腔や大脳基底核の石灰化, 大脳皮質の軽度萎縮などが観察された. tributineme maleate投与と構音障害出現との時間的関連, 脳血管障害や他の薬物関与の否定などから, 構音障害はtrimebutine maleateの副作用として発現したと考えられた. その機序としては, trimebutine maleateによる中枢神経系のドーパミン系とコリン系の不均衡が推測され, 背景には中枢神経系における先天的および後天的脆弱性が存在するものと推察された.
著者
野崎 園子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.99-103, 2007-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

パーキンソン病の摂食・嚥下障害の特徴は, 患者の約半数に嚥下障害が存在し, 病初期から存在することもあり, 身体機能の重症度とは必ずしも関連しないこと, 摂食・嚥下障害の自覚に乏しく, むせのない誤嚥が多いこと, 摂食・嚥下の各相にわたる多様な障害があることである. 抗パーキンソン病薬の副作用としてのジスキネジア, 口腔乾燥, off症状が摂食・嚥下機能を悪化させることがあり, また, 自律神経障害による食事性低血圧では, 時に失神するため, 食物を窒息するリスクがあることなどがある.その対処法としては, 患者の訴えがなくても, 疑いがあれば嚥下機能を評価し, “On”時間を延長させ, “On”時間帯に摂食させるように抗パーキンソン病薬(とくにL-ドーパ)を調整する. また積極的に嚥下訓練を行うとともに, 必要に応じて, 補助栄養や経管栄養, 外科的介入を行う必要がある.
著者
田中 昭吉 古川 哲也 石本 三洋
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1045-1048, 1989-10-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
5

糖尿病は一般に膵内分泌機能の異常をきたす疾患である. インスリンやグルカゴンなどのホルモン分泌を調節し, 血糖を一定に保つ機構における中枢モノアミンの役割について薬理学的に検討し以下の結果を得た. ラツトの血糖は約65mg/dlで, インスリン値は45μU/mlであつた. ストレプトゾトシン処置により血糖値は1.6倍に上昇し, インスリン値は約30%低下した. カテコールアミンの投与は血糖値を上昇させた. セロトニンの投与は血糖値を低下させた. 脳内ノルアドレナリン含量を低下させる処置により血糖値は有意に低下した. また脳内セロトニン含量を増加させる処置により血糖値は低下し, 低下させる処置により上昇した. 以上, 血糖調節作用においてノルアドレナリン作動神経は血糖を上げる方向に働き, セロトニン作動神経は血糖を下げる方向に働く可能性を示唆した.
著者
田中 栄一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.173-179, 2006-03-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

進行したステージの筋ジストロフィーでは, 運動機能障害が重度なために, 身の回りのことや, 趣味活動への参加が少なくなっていく.作業療法では, 患者が求める活動に必要な運動と環境要素を分析し, 活動に挑戦し易い環境調整を支援する. また, 作業療法士は, 環境への適応を促す過程を通して, 患者の興味を掘りおこし, 患者自身の問題解決能力を育む.
著者
石倉 彰 池田 正人 田口 博基 高畠 靖志 泉 祥子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.307-311, 1996-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
14

SCCFの治療には沢山の報告があるが, いまだ議論のあるところである. 3例について報告する. 第1例は57歳女性, 右脳血管写で低還流CCF(BarrowのType B)をみた. Matas手技のみで消失した. 第2例は62歳女性, 両側血管写で低還流CCFをみ(Type D), Matas手技, 左外頸動脈の塞栓, 結紮にて軽快した. 第3例は66歳女性, 両側血管写にて高還流CCF(Type D)をみた. Matas手技と経静脈的塞栓術を行った. 塞栓は白金コイルを内頸静脈, 下錐体静脈を経て海綿静脈洞に充填した. まとあると, SCCFの治療は, 最初Matas手技を2から4週間行い, 効果がみられない場合, 経静脈的塞栓術を施行する. カテーテルと塞栓物質の技術的進歩によって, 経静脈的塞栓術はSCCFにとって最も効果的, 安全な方法の1つと考えられる.
著者
恒元 博 奥原 政雄
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.273-274, 1955 (Released:2011-10-19)
参考文献数
1

血管腫が放射線療法により消退することから, 痔結節が照射によつて縮小することは容易に想像できることである. なお, 療法が非観血的であることと, 瘢痕性狭窄などの障害をきたすことのないのもその特長とされる.私達は痔結節に対してラジウム療法を試み, 二, 三の知見を得たので, ここに症例を挙げて報告する.
著者
朝野 晃 鈴木 則嗣 佐藤 由美 丹野 治郎 大井 嗣和 明城 光三 和田 裕一 吉川 和行 金藤 博行
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.676-678, 1998-11-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
8

妊娠子宮の尿管の圧迫による急性腎不全はまれである. また, 単腎症例の尿管閉塞は致命的な危険をともなう. 我々は, 先天性単腎症の妊娠経過中に尿管の閉塞による無尿をきたし, 腎痩造設術を行った後に妊娠36週で経膣分娩した1例を経験したので報告する.
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.23-54, 1948-02-05 (Released:2011-10-19)
著者
鈴木 裕太郎
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.1191-1198, 1979-12-20 (Released:2011-12-02)
参考文献数
30

甲状腺機能低下症では呼吸困難, 動悸, 全身の浮腫, 腹水, 心陰影の拡大, 心電図の異常所見など心臓病を疑わせる症状や臨床所見を主徴として発症することがある. このような場合, 甲状腺機能低下症が根底にあることが解るまでに年月を要することが多い. ここに6症例を報告し考察を行つた. 心不全との鑑別は最も困難なものの一つであり重要である. 心陰影の拡大は多くの場合心嚢水腫によるものであるが, 心筋の異常による心拡大もあるようである. 心嚢液が高蛋白, リバルタ反応陽性であることは炎症または悪性腫瘍転移によるものと誤られやすいので注意を要する. 6例のうちの1例はSick Sinus Syndromeを主徴として発症したもので今までに報告例を見ない. このような心臓循環器系の症状を主徴とした甲状腺機能低下症の診断にはまずその存在を疑うことが重要である. 病気がカモフラージされているのでmasked hypothyroidismとも呼ばれるが, 臨床医にとつて日常の診療に際し注意すべきことと考える.
著者
波多野 和夫 大塚 俊男 濱中 淑彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.69-72, 1996-01-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

著しい語間代(Logoklonie)の言語症状を呈した初老期発症のAlzheimer病の1例の症例報告を行った. 語間代はKraepelin(1910)の教科書に記載された有名な現象であるが, これまでほとんど取り上げられることなく, 議論の対象としては等閑視されて来たといってよい. 我々は, 自験例との臨床的経験を通じて, この語間代という言語症状の輪郭を明らかにし, その現象と発生に関わる要因として, (1)音節レベルの水平性反復, (2)脳器質性言語障害, (3)発話発動性の保存, (4)精神運動性解体としての固執性症状, (5)前頭葉損傷との関係, (6)経過の問題という特徴を取り上げ, その意味を考察した. 併わせて類似の病的言語現象として, (a)吃音, (b)子音・母音再帰性発話, (c)部分型反響言語を挙げ, これらとの鑑別診断についても考察した
著者
折橋 洋一郎 垣田 康秀 立石 香織 西脇 俊二 石田 元男
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1009-1015, 1994-12-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
19

炭酸リチウム5~15年長期投与の男性23例, 女性25例, 計48例の脳波所見を調べ, 脳波異常は55歳未満で33.3%, 55歳以上で53.3%と55歳を境に脳波異常が増し, 炭酸リチウムの長期投与が脳波上の加齢現象を促進するのではないかと考えられた. また, 55歳未満群33例で脳波異常は男性30.4%, 女性48.0%と明らかに女性の方が多く, 異常所見の内容は, α波の周波数が遅い汎α活動, θ波の混入など軽度の脳機能低下を示すものが多く, 他の抗精神病薬の脳波への影響と大差はないようであった. リチウムresponderが女性に多いことを合わせ考え, 脳波異常をきたすメカニズムそのものが, 抗躁ないし予防効果と関係があるのではないかとの想定を述べた.血清リチウム濃度, 内服期間, 甲状腺腫の有無, 予防効果など他の因子と脳波異常の間にははっきりした関係がみとめられなかった.
著者
有馬 靖子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.501-505, 2005-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
2

本稿では, 患者家族の立場からPSP患者の闘病生活の大変なこと, 米国のPSP協会の活動, わが国におけるPSP支援プロジェクトの3つについて述べる. 闘病生活で大変なことについては, 他の患者家族の体験と提言も盛り込んだ. 問題として挙がったのは, 全般的な情報不足に加えて医師・病院からの情報不足, 診断確定までの時間が長いこと, 転倒による怪我, 相談する場所め欠如, 胃ろうや気管切開の選択にまつわる問題, 頻回の吸痰の大変さ, 長期療養型施設・在宅支援システム・ホスピスの不足(QOLの確保の困難, 医療行為が増えると受け入れ施設が減る), チーム医療の欠如, 医療チームと患者家族間のコミュニケーションの欠如である. PSP支援プロジェクトは, 米国PSP協会の資料の翻訳を手がける翻訳プロジェクトと患者家族のための日本語のメーリングリストの運営を合わせたものを指す. 翻訳プロジェクトに関しては厚生労働省精神・神経疾患研究委託費(15指-3)「政策医療ネットワークを基盤にした神経疾患の総合的研究」(主任研究者湯浅龍彦)研究班PSP小委員会のメンバーから多大なご協力をいただいている.