著者
北村 幸彦
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.45-47, 2005-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
15
被引用文献数
3

肥満細胞の研究は大部分は即時型アレルギーのエフェクターとしての機能についてのものである. 少し目先を変えてこの総説では(1)肥満細胞の分化に関与する転写因子, (2)肥満細胞の腫瘍, (3)肥満細胞が関与する自然免疫について書く. 1. 肥満細胞の分化に関与する転写因子 肥満細胞は多分化能血液幹細胞の子孫である. 多分化能血液幹細胞の子孫のうち, 赤血球と血小板の分化にはGATA-1とGATA-2が関与し, マクロファージ, B細胞, 好中球の分化にはPU. 1が関与する. GATA転写因子とPU. 1は上記の細胞の分化に対しては拮抗的に働くが, 肥満細胞の分化にはGATA転写因子とPU. 1が協調的に働く点に特色がある. GATA転写因子とPU. 1が肥満細胞の分化に関与するのは比較的に初期の段階であるが, 我々が調べたmicrophthalmia転写因子(MITF)は肥満細胞の分化の後期に関与している. 我々はMITF遺伝子自身が転写されないためにMITFを欠損するマウスを, 肥満細胞を欠損するWBB6F_1-Kit^W/Kit^W-νマウスと同じ遺伝的背景で作成した.
著者
藤澤 隆夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.787-794, 2015 (Released:2015-10-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1

小児は成人よりも免疫学的可塑性が高いと想定されるため,アレルゲン免疫療法が成人よりも高い有効性を示すだけでなく,かつ真に疾患を治癒に導くポテンシャルも高いと期待される.しかし,現在までの報告では,システマティックレビューにおいてもその臨床効果は成人と同等で,報告数が少ないためにかえって低めの効果とされることもある.しかし,アレルギー性鼻炎患者における喘息発症の予防,新規アレルゲン感作の予防についての有効性は報告が増えている.これらは小児期におけるアレルギーマーチの進展阻止の可能性を示すものであるが,研究対象は主に学童期以上であり,真にアレルギーマーチの予防またはより高い効果をもたらすためには,さらに早期,すなわち乳幼児期で介入する必要があるが,現行の方法では安全性と侵襲性の点から困難と言わざるを得ない.新しい「アレルギーワクチン」の開発が望まれる.
著者
櫻本 美輪子 姫野 友美 美濃口 健治 渡邉 直人 小林 秀子 小関 隆 木原 令夫 藤原 美千代
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1123-1131, 1997-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
25

起立性調節障害 (以下, OD) は, 小児喘息に高率に合併することが指摘されている。我々は, 成人発症の気管支喘息 (以下喘息) 患者42例 (男性14名, 女性28名) について, ODの合併頻度及び各種パラメーターの有意差について検討した。【方法】ODの診断は, OD症状についてのアンケート調査と, 起立試験の結果を総合して行った。【結果】 (1) 対象者の64.3%にODの合併を認めた。(2) OD(+)群とOD(-)群の2群間において, 喘息の罹病期間, FEV_<1.0>, %FEV_<1.0>, 血清IgE値, 血中テオフィリン濃度, 及び喘息の重症度に有意差はなかった。(3) 同2群間において, 起立試験陽性率及びその測定値に有意差がなかった。(4) 起立試験陽性者は陰性者に比べて血中テオフィリン濃度が有意に高かった。また喘息の重症度が増すほど起立試験陽性率が高い傾向があった。【結論】成人発症の喘息患者には, ODが高頻度に合併していることが明らかとなった。従って, 喘息の診断と治療を進める際には, OD様の自覚症状についても, 検討する必要があると思われた。
著者
新垣 智也 末廣 豊 平口 雪子 玄 茉梨 吉野 翔子 熊谷 雄介 海老島 優子 大和 謙二 尾辻 健太 近藤 康人
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.1240-1243, 2017

<p>症例は10歳女児で既往に鶏卵アレルギーがあった.4歳時,鍋料理のエノキタケを摂取後に口腔内の痒みを訴え,以降はエノキタケを摂取していなかった.10歳時に学校給食でエノキタケの入ったすまし汁の汁のみを飲んだところ,口腔内の違和感と痒みが出現し20分間程度持続した.精査のために当科で実施したprick to prick testではエノキタケの生,加熱,茹で汁がいずれも陽性であった.</p><p>患者血清を用いてアレルゲンの同定を試みた.western blottingを行ったところ,75kDaで特異的な反応がみられ,本症例のアレルゲンと考えられた.</p><p>過去に報告のあったエノキタケアレルギーとは症状の程度,他のキノコ類への感作,抗原のタンパク質分子量などで違いがあり,新規のアレルゲンが関与しているものと推定された.</p>
著者
出原 賢治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-11, 2005-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
27

気管支喘息は遺伝要因と環境要因が組み合わさって生じる複雑な疾患であるとともに, 多くの細胞並びにメディエーターがその発症に関与していることが知られている. そのようなメディエーターの中でTh2サイトカインが重要な役割を果たしていることがマウスを用いた解析や喘息患者におけるサイトカイン発現の解析より明らかになっている. しかし, いくつかのTh2型サイトカインの中でそれぞれのサイトカインがどのような役割を果たしているのか, あるいはどのサイトカインがより重要なのかについては議論の分かれるところであった. 本稿ではこのTh2型サイトカインの中でIL-4とIL-13に焦点を絞って気管支喘息との関連について述べてみたい. IL-4, IL-13の受容体とシグナル伝達経路 IL-4とIL-13は他のサイトカインと同様に細胞表面に存在する受容体を介して刺激を細胞内に伝達する. IL-4受容体は2種類存在し, IL-4受容体α鎖(IL-4Rα)と共通γ鎖より成るtypeI IL-4受容体と, IL-4RαとIL-13受容体α1鎖(IL-13Rα1)より成るtypeII IL-4受容体が存在する.
著者
田中 裕 杉原 麻理恵 津曲 俊太郎 高松 伸枝 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1011-1015, 2017 (Released:2017-09-14)
参考文献数
26

症例は12歳の女児.食物摂取後の運動負荷によるアナフィラキシー症状を繰り返したため, 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIAn)を疑い原因食物の精査を行った.症状誘発時に摂取頻度の高かった卵・乳・大豆と, FDEIAnの原因食物として頻度の高い小麦について, それぞれの食物摂取後の運動負荷試験を施行したが全て陰性であった.詳細な問診から4回のエピソードで温州みかんを摂取していたことや, 同じ柑橘類であるオレンジ・グレープフルーツの特異的IgEが陽性であったこと, スキンプリックテスト(skin prick test, SPT)が陽性であったことから温州みかんを原因食物として疑い, アスピリンを併用した温州みかん摂取後の運動負荷試験を行ったところアナフィラキシー症状が誘発されたため, 温州みかんによるFDEIAnと診断した.多数の柑橘類でSPT陽性を示したため柑橘類の完全除去を指示したところ, それ以後アナフィラキシー症状は認めていない.FDEIAnの原因食物として柑橘類も認識しておく必要がある.
著者
田中 裕士 本間 伸一 今田 彰浩 菅谷 文子 阿部 庄作 西 基
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.64-69, 1995
参考文献数
25
被引用文献数
1

霧の発生が気管支喘息患者に及ぼす影響について検討する目的で, 45歳, 女性の喘息患者のピークフロー値と, 霧などの気象条件との関係について検討した. 患者は以前より, 香水, 野焼き, 工場からの煤煙などの臭気で発作が誘発されていたが, 2年前に転居してから発作が頻発するようになり, 霧との関係が疑われた. 平成6年6月から71日間のピークフロー値 (n=251) の中で, 霧と臭気のない時間帯 (n=195) の値は403±40L/分 (平均±標準偏差) であった. 霧の発生時間帯 (n=40) では347±60L/分, 臭気のあった時間帯 (n=5) では333±60L/分, 霧および臭気が同時に発生した時間帯 (n=11) では340±53L/分であり, いずれも有意(p<0.01)に低下していた. また, 1日の平均気温, 最低気温, 平均相対湿度, 気圧, 風向きとは有意な関連性はなかった. 気管支喘息患者において, 霧の吸入によりピークフロー値は低下し, 発作誘因の一つとなりうることが示唆された.
著者
藤井 まゆみ 岡崎 健二 牧山 清 久松 建一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.51-62, 2012-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21

【背景・目的】静岡県伊東市におけるスギ・ヒノキ科花粉飛散数を10年間計測した.花粉症の予防・治療に役立てたい.【方法】ダーラム型花粉捕集器を伊東市内3階建ビル屋上に設置し,花粉飛散数を測定した.その結果と気象情報を表計算ソフトMicrosoft Excelを用いて統計処理・解析を行った.【結果】春季の初観測日,飛散開始日,飛散終了日の平均値はそれぞれ1月3日,2月6日,5月12日であった.総花粉飛散数は平均5683個/cm^2であった.前年初冬の花粉飛散数と翌年春季の花粉飛散数は相関がある.春季の花粉飛散数は日々の気象に左右される(大雨や季節外れの大雪で,花粉飛散数は減少する).【結語】地域におけるスギ・ヒノキ科花粉飛散数計測と気象観測から花粉症の予防と治療に役立つ情報を提供できる.