著者
飯尾 美沙 竹中 晃二 成田 雅美 二村 昌樹 濱口 真奈 福島 加奈子 山野 織江 原口 純 阪井 裕一 石黒 精 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.187-203, 2014-03-01 (Released:2017-02-10)

【背景・目的】小児喘息患者の行動変容を促す患者教育を提供するために,行動科学の理論・モデルに基づくテイラー化教育プログラムを開発した.本研究は,乳幼児喘息患児の保護者を対象に,開発したプログラムの有効性を検証した.【方法】2012年9月〜12月に外来を受診した乳幼児喘息患児を養育する保護者のうち,児の喘息コントロール状態が完全コントロールでない者をリクルートし,介入群および対照群に無作為に割り付けた.初回調査実施後において,割付けた患者教育(介入群:プログラム+個別面談,対照群:喘息パンフレットの配布)を1回実施した.そして,教育介入約1カ月後において,教育後調査を実施した.【結果】保護者47名(介入群22名,対照群25名)を分析対象とし,割付群を独立変数,教育前後の各評価得点を従属変数とした分散分析を実施した.その結果,教育後における介入群の喘息コントロール状態および知識得点は,対照群と比較して有意に改善・増加した.【結語】乳幼児喘息患児の保護者に対するテイラー化教育プログラムの効果が示唆された.
著者
宇佐神 篤 降矢 和夫 遠藤 久子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.780-785, 1980
被引用文献数
11

スギ花粉飛散期におけるスギ花粉の空中飛散総数を, 飛散開始の数カ月前に知ることができれば, スギ花粉症の治療対策をたてるのに役立つ.その目的のため, 相模原市消防本部資料による同市の気象条件(4-12月と1-3月の各月の平均気温, 平均相対湿度, 雲量, 降水量)とスギ花粉年間飛散総数(空中花粉調査における1cm^2あたりのスギ花粉検出数の年間総和で表した)の関係を毎年過去15年間検討し, 次の結論を得た.1. 7月の平均湿度が翌年のスギ花粉飛散総数と最も相関が高かつた.7月の平均気温が23.9℃以上の場合は, 7月の平均湿度と翌年のスギ花粉年間飛散総数間に高い負の相関が認められた.2. 相模原市におけるスギ花粉年間飛散総数の予測式は次のとおりである.Y=-330X+28336(ただし, Yは翌年のスギ花粉年間飛散総数, Xは7月の平均気温が23.9℃以上の場合の7月の平均湿度である).3. 7月の平均気温が23.6℃以下の場合は, 翌年のスギ花粉年間飛散総数が, 平年値より減少した.4. スギ花粉飛散期の気象と同年のスギ花粉年間飛散総数との間の相関は低かつた.
著者
吉田 博一 清水 宏明 深美 悟
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.49-61, 1996
参考文献数
18
被引用文献数
8

花粉観測をもとに, 花粉飛散状況と症状の出現時期との関係, 症状経過との関係について詳細に検討した. 症状出現日と花粉数との関係を見ると, 累積発症率と累積花粉数の平方根との間には高い正の相関関係が認められた. また, 初観測日から飛散開始日までの期間が長いほど, 飛散開始日までの発症率が高いことがわかった. 症状経過と花粉数との関係では, 症状スコアと累積花粉数の平方根との間に正の相関関係が認められた. また, 症状の高度化に伴って, 鼻洗浄液中のECP・トリプターゼ値は上昇した. 連続鼻粘膜誘発試験では, 即時性反応は高度化し,それに伴って鼻洗浄液中のECP・トリプターゼ値は上昇した. また, 遅発性反応は, 陽性群と陰性群に2分されたが, 誘発の繰り返しによる反応の高度化は認められなかった. 以上より, ごく少量の花粉でも繰り返し暴露することにより症状が誘発され,花粉数の蓄積によって症状が増悪していくことが観察された.
著者
中田 安成 多田 慎也 有森 茂
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.742-752,777-77, 1974-11-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

自己免疫性疾患, とくに重症筋無力症を中心として, 患者末梢血および摘出胸腺内リンパ球 lymphocyte subpopulation について検討した.T-cell marker として sheep red blood cell rosette formation を, B-cell marker としては surface immunoglobulin を使用した.重症筋無力症非胸腺腫例の T-cell は60.4±12.3%, B-cell は24.5±7.2%, 胸腺腫合併例では T-cell 53.5±14.0%, B-cell 23.9±8.1%で, 健康人のT-cell 55.4±10.4%, B-cell 29.1±7.6%と比較すると, T-cell は非胸腺腫例で高率, 胸腺腫合併症では差はなく, B-cell はいずれも低率の傾向がみられた.胸腺摘出後, 経時的に比較すると T-cell は手術直後にも変化なく, 以後の経過においても健康人の標準偏差内での変動をつづけた.B-cell は術直後に上昇し, 以後は正常範囲内の変動をつづけた.摘出胸腺内の T-cell は68.2±13.5%, B-cell は7.9±12.7%であり, 健康人末梢血あるいは同一症例末梢血リンパ球に比して T-cell は高率, B-cell は低率であった.このうち胸腺腫および germinal center をともなった症例では, T-cell は低率, B-cell は高率をしめした.末梢リンパ球の摘出胸腺内リンパ球における T-cell は比較的よい相関を認めた.その他自己免疫性疾患においては, 健康人に比して Sjogren 症候群において T-cell が高率を, B-cell が低率を, Behcet病において B-cell の低率がそれぞれ有意に認められた.各種自己免疫性疾患におけるこれら lymphocyte subpopulation の意義についても論じた.
著者
五味 二郎 光井 庄太郎 工藤 康之 赤坂 喜三郎 小野 康夫 木村 武 川上 保雄 野口 英世 宮本 昭正 牧野 荘平 可部 順三郎 石崎 達 中島 重徳 熊谷 朗 野崎 忠信 富岡 玖夫 伊藤 和彦 斧田 太公望
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.599-612,614-61, 1973

気管支拡張剤ST1512(S群)の成人気管支喘息に対する薬効につき, metaproterenol(A群)およびinactive placebo(P群)を対照として, 頓用, 連用効果につき, 9施設による2重盲検試験を行った.open trialの結果から, Fisherの直接確率計算法により, 1群につき36例となり, 並列3群にあてはめれば3倍の108例前後の症例数でよいと考えられたため, 105例に達した時点で中間点検を行った.全例104例であり, S群34例, A群36例, P群34例で, 3群間にはback groundにおいて有意差はなかった.試験方法は, S群1錠(1mg), A群1錠(10mg), placebo1錠を投与し, 前および1時間後の自他覚症状, 肺機能を検した.医師の総合判定につき, H-test, U-testを行い, S群とP群間に危険率0.5%以下の高度の薬物差を認めたが, 危険率5%でS群とA群とP群間には有意差は検出されなかった.ついで薬効差につき, 詳細な3群判別分析を行い検討も行った.
著者
小野 倫太郎 本村 知華子 高松 伸枝 近藤 康人 赤峰 裕子 松崎 寛司 村上 洋子 網本 裕子 田場 直彦 本荘 哲 柴田 瑠美子 小田 嶋博
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.149-155, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は10歳女児.柑橘類を摂取後の運動負荷でアナフィラキシーを起したエピソードを3回認めた.柑橘類による食物依存性運動誘発アナフィラキシー(Food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)を疑い,負荷試験を行った.オレンジ摂取と運動負荷の組み合わせは陰性であったが,アスピリン内服とオレンジ摂取の組み合わせで眼瞼腫脹,喘鳴を認め,オレンジによるFDEIAと診断した.フルーツアレルギーではOral allergy syndrome(OAS)の症例が多く,FDEIAは稀である.本症例ではイムノブロット法にて9kDa,39kDa,53kDaの抗原を認め,オレンジによるインヒビションにて39kDa,53kDaの抗原が特異抗原アレルゲンと考えた.本症例はスギ特異的IgE抗体強陽性であったが,スギ抗原とは共通抗原性は認めなかった.オレンジ抗原として知られるCit s群とは異なる39kDa,53kDa蛋白が原因となるFDEIAは報告がない.