著者
木原 令夫 足立 哲也 小林 秀子 小関 隆 姫野 友美 牧野 荘平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1114-1122, 1997
参考文献数
17

八丈島住民のうち坂下地区 (三根, 大賀郷) および坂上地区 (樫立, 末吉, 中之郷) における15歳以上の7946名を対象としてスギ花粉症のアンケート調査を行ったところ回収率は21.3%であり, 春先 (2月末から3月下旬) に鼻症状3項目以上と眼症状2項目とを同時に有する例は坂下地区で1.8%, 坂上地区で0.3%であり, 八丈島住民のうち1.5%にスギ花粉症を疑わせる例が見出された。有症状例に行ったスクラッチテストで9.2%の例がスギ抗原陽性であり, IgE RAST score 2以上の例は12.1%であった。平成4年2月11日から3月31日までの最高スギ花粉飛散数は坂下地区で3月6日に74個/cm^2であり, 坂下地区では同日の127個/cm^2であった。東京から290kmも離れた大海の孤島である八丈島においても, わずかではあるがスギ花粉症の存在が認められた。
著者
角谷 千恵子 荻野 敏 池田 浩己 榎本 雅夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.554-565, 2006-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
32

【目的】第2世代抗ヒスタミン薬7剤について,スギ花粉症に対する初期療法の有効性ならびにcost qualityの比較を行った.【方法】2003年のスギ花粉飛散期に大阪・和歌山地区の耳鼻咽喉科外来において初期療法に関するアンケート調査を行った.【結果】単剤療法を受けていた症例は,アゼラスチン15例,セチリジン15例,エバスチン36例,エピナスチン16例,フェキソフェナジン16例,ロラタジン群60例,オキサトミド群17例であった.無治療群510例を対照群とし,比較を行ったところ,全般症状改善度,くしゃみ,鼻汁および眼の痒みの程度に8群間で有意差が認められた.一方,7薬剤間に有意な有効性の差は認められなかった.各薬剤について「有効例1例を得るために必要な薬剤費」を算出したところ,cost qualityに優れる上位3剤は,アゼラスチン,ロラタジン,フェキソフェナジンであった.【結語】第2世代抗ヒスタミン薬7剤の有効性に明らかな差はなく,そのcost qualityには薬価が大きく関連していた.
著者
大島 美紀 粟屋 幸一 藤井 隆之 小泊 好幸 桑原 正雄
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.412-419, 2000
参考文献数
16
被引用文献数
2

Chlamydia pneumoniae感染の急性気管支炎や気管支喘息の発症, 増悪における関与を検討した.対象は1週間以上咳, 痰が持続した当科外来患者131例(急性気管支炎患者(AB)60例, 気管支喘息患者(BA)71例)とコントロールとしての健常人(NP)20例とした.血清を用いてChlamydia抗体価をELISA法にて測定し, 喀痰細菌検査を行った.抗体保有例はAB88.4%, BA73.3%, NP60%でABが有意に高率であった.IgA抗体価はABが, NPおよびBAと比較して有意に高値であった.急性感染例はAB20%, BA15.5%, NP10%で有意差は認めなかったC.pneumoniae急性感染症例のうち急性気管支炎例では58%, 気管支喘息例では36%がS.pneumoniaeとの混合感染であった.以上より, C.pneumoniaeは急性気管支炎の発症に関与している可能性が示唆された.また急性気管支炎と気管支喘息のC.pneumoniae急性感染症例のなかで高率に細菌(特にS.pneumoniae)との混合感染を認め, 症状の増悪に関与していると考えられた.
著者
安冨 素子 岡崎 新太郎 河北 亜紀子 林 仁幸子 村井 宏生 眞弓 光文 和田 泰三 大嶋 勇成
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.827-832, 2013-07-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12

症例は4カ月女児.生後1カ月より湿疹が出現し,近医で小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)・十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう),NSAIDs外用剤による治療を受けていたが,皮疹の増悪,下痢,体重減少を認め当科に入院した.入院時血清Na126mEq/L, K7.3mEq/L, Alb3.0mg/dl, IgG15.3mg/dl.便中EDN,血清IL-18値が著明高値で,上記漢方薬のDLSTは陽性であった.漢方薬中止後に下痢は消失,ステロイド外用剤で皮疹は改善.母の食事制限なしに母乳で体重増加も回復し,検査所見も正常化した.外用剤の不適切な使用による皮膚症状の増悪に,漢方薬による修飾も加わり,電解質異常,低蛋白血症を来したものと考えられた.アトピー性皮膚炎の治療において,漢方薬は補助的治療薬と位置付けられるが,乳児への適応は慎重にされるべきである.
著者
二村 昌樹 伊藤 浩明 尾辻 健太 平山 美香 林 啓一 大矢 幸弘 益子 育代
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1610-1618, 2009-12-31 (Released:2017-02-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【背景】小児アトピー性皮膚炎に対する治療教育を目的として,我々は1泊2日教育入院プログラム「スキンケアスクール」を実施している.これは6歳未満で中等症以上を対象にし,正しい洗い方と軟膏塗布の実習指導および講義で構成している.【方法】本プログラムの効果を評価する目的で,参加した56組の養育者に対して参加前,直後,1ヵ月,6ヵ月後にアンケート調査を実施した.【結果】プログラム参加により,医師の指導歴があっても参加前の軟膏量や塗布の方法は不十分であったと認識した.皮疹の状態の改善とともにかゆみや睡眠障害といった症状も1ヵ月後には改善したと養育者は回答しており,その改善度は6ヵ月後まで維持された.一方,ステロイド使用量は参加前と比較して1ヵ月後には減少し,6ヵ月後にはさらに減少したと評価された.【結語】本プログラムは,養育者のスキンケアに対する理解と実践を達成する上で有効であった.皮膚洗浄と十分な軟膏使用を柱とする正しいスキンケアは,湿疹の改善効果をもたらし,結果的にステロイド減量も可能にする事が示唆された.