著者
吉田 俊治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2490-2496, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
7

サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を呈する原因不明の多臓器疾患である.皮膚の遅延型過敏反応が抑制され,病変部位でのCD4/CD8比が増加する.血清ACE活性やガリウムの取り込みの増加などもみられる.関節炎で最も高頻度に見られる急性型は大関節に好発し軟部組織の腫脹がみられるが,骨変化はない.多くは自然治癒するが,潜行性発病例,特に多臓器に肺外病変のある例は慢性に進行し,副腎皮質ホルモンの治療は症状を改善させる.
著者
永山 寛 片山 泰朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.8, pp.2212-2218, 2012 (Released:2013-08-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

神経疾患と関連する肝胆膵・消化管疾患として,ここでは肝性脳症に関連した2疾患,Wilson病,IgG4関連神経疾患を取り上げた.前三者は古くから認識されている疾患であるが様々な面で進歩もみられるので,病態や分類,臨床的特徴,治療を最近の知見を含めて改めて把握したい.IgG4関連神経疾患はこれから症例の蓄積や知見の整理が期待されるが,病理学的概念も合わせてその特徴を知っておくべき疾患である.
著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.2053-2058, 2003-10-10
参考文献数
12
被引用文献数
2

近代医学は生物科学的側面を過剰に重視するあまり,患者の心理社会的側面を含む全人的な配慮をおろそかにしてきた.このような近代医学の偏りを補償するムーブメントの一つとして, Narrative Based Medicine (NBM:物語りに基づく医療)が提唱され,注日を集めている. NBMは,ポストモダンなパラダイムである社会構成主義をその理論的背景とし,人類学,社会学,心理学などの関連領域との学際的な連携をその特徴とする.一般医療におけるNBMの特徴は, 1)個々の患者の病いの体験と人生についての物語りの尊重, 2)語り手としての患者の主体性の尊重, 3)医療における多元性の尊重, 4)非因果論的観点の重視, 5)治療としての対話の重視,などにまとめられる.また, NBMとEvidence Based Medicine (EBM)とは,互いに補償しあう,患者中心の医療実践のための車の両輪的方法論であると言える.
著者
島倉 淳泰 高田 正信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.335-343, 2013 (Released:2014-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

動脈硬化症の診断に用いられる血管機能検査には心臓足首血管指数(CAVI),脈波伝播速度(PWV),足関節上腕血圧比(ABI)がある.CAVIとPWVは血管の硬さを表す指標であるが,PWVは測定時の血圧の影響を受け,CAVIは血圧の影響を殆ど受けない.CAVI,PWVともに高血圧,糖尿病,脂質異常症,メタボリックシンドロームなどの生活習慣病,虚血性心疾患,慢性腎臓病,脳血管障害の患者で上昇している.ABIは末梢動脈疾患の検出に有用であり,また異常例では心血管系リスクが高くなる.

1 0 0 0 OA AIDSと肺病変

著者
後藤 元
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1834-1840, 1994-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
16

呼吸器疾患はAIDSの最も重要な合併症であり, HIV感染者の65%において, AIDS初発症状は,呼吸器症状であり, AIDSの80%において,経過中なんらかの呼吸器疾患が出現する.これらは日和見感染症および腫瘍性病変から成るが,その頻度,重症度からカリニ肺炎が最も大きな問題となっている.カリニ肺炎に関する研究は,最近10年間に大きく進展し,基礎,臨床のいずれの分野においても,その内容はほぼ一変した観がある.本稿ではこうした状況を,カリニの分類学上の位置づけ,病態生理,伝播経路,診断,治療,および予防の各面から解説した.
著者
松永 卓也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.1676-1681, 2013-07-10 (Released:2014-07-10)
参考文献数
4
被引用文献数
1

腫瘍細胞が全身に播種している悪性腫瘍性疾患のうちで,抗癌薬治療により治癒する可能性がある数少ないものの1つに白血病がある.白血病を治癒に導くためには,迅速に確定診断して適切な治療を行う必要がある.臨床症状と血算などの血液検査により白血病を疑い,確定診断は骨髄穿刺・生検試料を用いた形態学的所見,細胞化学染色所見,染色体・遺伝子所見および表面抗原所見によりなされる.
著者
舘田 一博 木村 聡一郎 山口 惠三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.11, pp.2677-2681, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

細菌の産生するホルモン様物質を介した情報伝達機構,クオラムセンシング(Quorum-sensing)が微生物学・感染症学・化学療法学の分野で注目されている.これはビブリオ属細菌における菌数依存的な蛍光物質産生という現象から見つかってきたシステムであるが,その後,多くの病原細菌が本機構を用いてバイオフィルム形成など様々な病原因子発現をコントロールしていることが明らかとなっている.
著者
多田 隼人 川尻 剛照 山岸 正和
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.711-717, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
10

家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)に代表される遺伝性疾患の研究や,近年の次世代シークエンサーの発展などに伴うゲノムワイド解析による高頻度遺伝子変異と脂質・冠動脈疾患との関連解析により,LDL(low density lipoprotein)コレステロールと冠動脈疾患との因果関係はさらにゆるぎないものとして示されてきた.一方で,HDL(high density lipoprotein)コレステロールと冠動脈疾患との因果関係には疑問符がつけられるに至った.このようなゲノム情報は脂質管理のみならず,新たな創薬にも貢献しつつある.
著者
鎌谷 直之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日内会誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2367-2373, 2016

<p>ゲノム検査が急速に医療に入ってきた.一部は高額であり,保険の対象外であるが,重要なゲノム検査もある.ゲノムの分野は微生物,遺伝病,多因子病,がんなど多方面にわたっており,統一的な理解は容易ではない.筆者はゲノムに関する分野を生命,種,集団,家族,個体,細胞の六層の階層構造に整理し(六層構造),ゲノム検査はそれぞれの層で要素をゲノム配列により区別する手法である,という統一的定義により理解することを勧める.</p>
著者
斎田 恭子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.222-227, 1992-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー, dysglobulinemiaに伴うニューロパシーおよび血管炎に伴うニューロパシーに対して副腎皮質ステロイド治療を行う.他にサルコイドーシスにも使用する.経験的に使用されている量,期間,及びその副作用について述べた.使用期間が長期にわたることが多いので,投与開始前に神経生検をふくめた正確な診断,副作用の予防を講じた投与計画を必要とする.
著者
黒田 淳哉 北園 孝成
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.289-296, 2013 (Released:2014-02-10)
参考文献数
20

脳卒中,特に非心原性脳梗塞は,脳・頸動脈の動脈硬化進展の結果引き起こされる疾患として重要である.脳卒中の最大の危険因子は高血圧であるが,近年,糖代謝異常,脂質異常症,メタボリックシンドロームといった代謝性疾患が増加し,危険因子としての重要性が増している.慢性腎臓病(CKD)も最近,動脈硬化促進因子として注目されている.喫煙などの生活習慣も含めて,危険因子を重複して有している場合も多く,リスクを適切に評価して個々の症例に応じた対策を積極的に行っていくべきである.

1 0 0 0 OA 1.肝切除

著者
長谷川 潔 青木 琢 山本 訓史 竹村 信行 阪本 良弘 菅原 寧彦 國土 典宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.70-77, 2014-01-10 (Released:2015-01-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

肝細胞がんに対する肝切除は局所コントロールに優れており,肝機能が許す限り,治療の第一選択である.微小転移巣も系統的切除により除去可能であり,再発率を抑制しうる.脈管浸潤を伴う進行例でも肝切除により,予後改善が期待できる.ただし,術後の肝不全は致死的で,いったん発症すると回復困難なため,肝不全に至らないような厳密な術前評価と入念な準備,術中の工夫,綿密な術後管理が必須である.
著者
近藤 英明 神林 崇 清水 徹男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.748-755, 2006-04-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

覚醒機構と摂食行動とは密接に関わっている. オレキシンは両者に関わる神経ペプチドである. 1998年桜井らにより発見され食欲を増進させることよりorexinと命名された. ほぼ同時期にde Leceaらは視床下部に特異的に産生されるペプチドとして同じペプチドを発見しhypocretinと命名した. 2000年にはオレキシン神経系の脱落がヒトのナルコレプシーで確認され, ナルコレプシーに特徴的なREM関連症状とオレキシン神経系との関わりについて明らかにされてきた. その後ナルコレプシー以外の神経疾患でも視床下部の障害によりナルコレプシー類似の症状をきたす症例が報告されるようになった. オレキシンがエネルギーバランス, ストレスと関連することより内分泌代謝, ストレス関連領域でもオレキシンに注目した研究がすすめられてきている. 本稿ではオレキシン神経系の生理的な役割とナルコレプシーの病態への関わりについて概説する.
著者
加藤 可奈子 寺山 靖夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1869-1875, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
10

高齢者におけるめまいも一般的なめまいの診断手順を踏むことに変わりはないが,加齢のためにさまざまな入力機能の低下があり,その不均衡によるめまい感を来たしやすい.高齢者のめまいでは,頻度の高い末梢性めまいの他に,脳血管障害を中心とした危険なめまいを診断していくとともに,脱水や貧血,肝,腎機能低下による全身状態悪化に伴うものも疑う必要がある.また,薬物代謝機能が低下しているために,薬剤の影響が出やすいことに注意する必要がある.