著者
宮田 隆夫 安 鉉善 猪川 千晶
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.Supplement, pp.S37-S52, 2012-08-15 (Released:2013-02-21)
参考文献数
45
被引用文献数
2

中央構造線(MTL)は,白亜紀中頃からアジア大陸東縁部の形成に大きく関連して活動した大規模な横ずれ断層であり,それに沿って和泉層群堆積盆地が発達した.本巡検は,和歌山市北部から大阪府岬町にかけた地域で,横ずれ成分をもつMTL断層系の破砕帯と白亜系和泉層群のタービダイト相,堆積構造(スランプ褶曲, 底痕),変形構造(背斜, 小断層, デュプレクス),コダイアマモの化石,大阪層群/和泉層群の不整合などを見学し,それらの形成及び和泉層群堆積盆地の形成について現地討論を行う.
著者
稲垣 史生 諸野 祐樹 星野 辰彦 井尻 暁 肖 楠 鈴木 志野 石井 俊一 浦本 豪一郎 寺田 武志 井町 寛之 久保 雄介
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.77-92, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
71
被引用文献数
3 2

約半世紀の歴史を持つ海洋掘削科学は,プレートテクトニクスの実証や過去の劇的な地球環境変動など,教科書にその名を刻む輝かしい科学的成果をもたらしてきた.中でも,「海底下生命圏」の発見による生命生息可能域の大幅な拡大は,それまでの地球生命科学の概念(パラダイム)を覆すマイルストーン的な科学成果の一つである.これまでに,世界各地の海洋底から掘削されたコアサンプルの多面的な分析研究により,水・エネルギー供給が極めて限られた海底下環境に,固有の進化を遂げた膨大な数の未知微生物が生息していることが明らかとなっている.その生態系機能は,極めて低活性な生命活動により支えられている静的なものであるが,地質学的時間スケールで,地球規模の元素循環に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた.
著者
小林 和夫 生沼 郁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.67, no.788, pp.284-291, 1961-05-25 (Released:2008-04-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2
著者
菅沼 悠介
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.1-13, 2011-01-15 (Released:2011-05-11)
参考文献数
88
被引用文献数
4 1

近年,古地磁気強度変動記録を用いた海底堆積物の年代対比が試みられるようになってきた.この手法は,海底堆積物に対して数千年スケールの高精度年代対比や,南極やグリーンランドの氷床コアの宇宙線生成核種生成率との直接対比を可能とするなど,将来性は非常に高い.しかし,海底堆積物の残留磁化獲得プロセスには,Lock-in depth問題など未解決の課題が残されており,年代対比における不確定要素となっている.本稿では,近年進められている新たな残留磁化獲得プロセスの研究例を紹介するとともに,この年代対比手法の課題と将来展望について述べる.
著者
嵯峨山 積 越田 賢一郎 渡井 瞳
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
日本地質学会学術大会講演要旨 第129年学術大会(2022東京・早稲田) (ISSN:13483935)
巻号頁・発行日
pp.247, 2022 (Released:2023-04-03)

日本海に面する石狩平野は,石狩低地と長沼低地に細分され,そこには多くの人々が生活している.一方,同平野には縄文時代以前からの遺跡が多数存在し,縄文人の生活の場でもあった. 遺跡群の分布は約11,000年前までの旧石器時代から縄文時代草創期,約11,000~7,000年前の縄文早期,約7,000~5,000年前の縄文前期,約5,000~4,000年前の縄文中期,約4,000~3,000年前の縄文後期,約3,000~2,400年前の縄文晩期,約2,400~1,300年前の続縄文文化期,約1,300~800年前の擦文文化期に区分される. 約1万年以降の海面変化は,約7,000年前を高頂期とする縄文海進と,その後の海退へて現海面高に至っている(遠藤,2015など).赤松(1972)によれば石狩平野の縄文海進高頂期の海面高は標高約3 mとされ,日本海側から内陸に流入した海水は,石狩川や夕張川,千歳川などの淡水に希釈され,広大な汽水湖(古石狩湖)が形成されたと考えられる.その規模は東西約40 km,南北約30 kmで,現在の海岸線から約38 km離れた長沼町南長沼まで同湖が広がっていたことが珪藻分析により明らかされている(嵯峨山ほか,2013;嵯峨山,2022).現海岸線と平行に発達する紅葉山砂丘の下位には砂礫層が分布し(小山内ほか,1956),同層は高頂期における古石狩湖と外洋を隔てる砂堤であったとされている(松下,1979). 旧石器時代の海面は標高約−40 m以下であり,海岸線は現在より遠く沖合側に位置していたと考えられる.次に,縄文早期では海面は急速に上昇し,同期の終わりである約7,000年前は高頂期に相当し,上に述べた大規模な汽水湖が形成されていった.その後の縄文前期や縄文中期では海面は徐々に低下し,最終的に現海面高に至っている. 海面変化と遺跡群の分布を,特に日本海に面する臨海域に注目して検討すると,縄文早期の遺跡群は比較的内陸に位置し,現海岸線付近には存在しない.次の縄文前期になると,2つの遺跡が紅葉山砂丘上に認められる.海退期に当たるこの時期には,紅葉山砂丘が砂堤上に形成されており,これらのことに時代的矛盾はない.縄文中期になると,遺跡は更に現海岸線近くに存在し,更に海岸線が海側に後退したことを示している.縄文後期では,遺跡の位置は縄文中期とほぼ同じで,縄文晩期ではより海岸線付近にいくつかの遺跡が認められる. この様に,臨海域の遺跡群の分布は海面変化と矛盾なく説明できる.なお,内陸の長沼低地における古石狩湖の形成や広がりと遺跡群の分布については,特にボーリングによる解析結果が少なく,十分な検討には至っていない.今後の課題である.<文献>赤松守雄,1972,石狩川河口付近の自然貝殻層.地質学雑誌,78,275-276. 遠藤邦彦,2015,日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層-.冨山房インターナショナル,415 p. 松下勝秀,1979,石狩海岸平野における埋没地形と上部更新統~完新統について.第四紀研究,18,69-78. 小山内 熙・杉本良也・北川芳男,1956,5万分の1地質図幅「札幌」及び同説明書.北海道立地下資源調査所,64 p. 嵯峨山 積,2022,石狩低地帯の成り立ち:地形と地質.北海道自然保護協会,北海道の自然,60,3-10. 嵯峨山 積・藤原与志樹・井島行夫・岡村 聡・山田悟郎・外崎徳二,2013,北海道石狩平野の沖積層層序と特徴的な2層準の対比.北海道地質研究所報告,85,1-11.
著者
村宮 悠介 氏原 温 大路 樹生 吉田 英一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.7, pp.355-363, 2020-07-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

愛知県知多半島の南部には,前期中新世の深海底に堆積した師崎層群が広く分布している.師崎層群は,古くから地質構造および化石群集に関する調査・研究が行われてきた.とくに,師崎層群から産出する深海性の化石群集は,極めて保存状態が良いことで知られており,師崎層群は過去の深海性生物群集を垣間見ることができる重要な地層である.これらの化石群集については,現在も研究が進行中である.また近年には,師崎層群から大小の球状炭酸塩コンクリーションの産出と記載が報告され,深海堆積物中での急速な球状炭酸塩コンクリーションの形成に関する新たな知見が得られつつある.本巡検では,師崎層群から産出する球状炭酸塩コンクリーションおよび化石群集について,形成プロセスや産状などを紹介する.
著者
村宮 悠介 吉田 英一 山本 鋼志 南 雅代
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.11, pp.939-952, 2017-11-15 (Released:2018-02-23)
参考文献数
28
被引用文献数
4 4

球状炭酸塩コンクリーションは,世界各地の様々な地質時代の海成層から普遍的に産するが,その形成過程はいまだ完全には理解されていない.本研究では,愛知県知多半島の先端部に分布する中新統師崎層群下部豊浜累層中にみられる長径約1.5mの巨大ドロマイト質コンクリーションについて,その形成過程を明らかにすることを目的に,堆積学的および地球化学的な種々の観察・分析を行った.その結果,埋没深度数百mに達するまでのごく初期続成過程においてメートルサイズの巨大なコンクリーションが形成することが示された.その形成時間は数十年と見積もられ,これまで考えられていた巨大炭酸塩コンクリーションの形成速度よりもはるかに速いものである.
著者
西脇 仁 奥平 敬元
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.6, pp.249-265, 2007 (Released:2008-02-01)
参考文献数
62
被引用文献数
7 8

近畿中央部の初瀬深成複合岩体は,主に片麻状黒雲母花崗閃緑岩とそれと同時形成の苦鉄質岩類から構成されており,E-W方向とNW-SE方向の2つのシンフォームによって特徴づけられるベースン構造を形成している.花崗閃緑岩の片麻状構造は,主に黒雲母クロットの形態定向配列によって定義され,マグマ流~亜マグマ流によって形成されている.花崗閃緑岩中の角閃石の化学組成から,花崗閃緑岩マグマの定置深度は,およそ20 kmと見積もられる.花崗閃緑岩中には,高温の塑性変形組織が見出されている.マグマ流~亜マグマ流による変形と高温塑性変形の最大伸長方向が一致しており,これらの変形作用は花崗閃緑岩の定置に関連して,マグマの固結後に温度の低下とともに連続して生じたと推測される.E-W方向のシンフォーム構造は,領家変成帯中に広く認められるD3期鉛直褶曲構造と平行であることから,片麻状黒雲母花崗閃緑岩は,領家変成帯の鉛直褶曲時の広域応力場において定置したと考えられる.
著者
吉田 英一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.1-16, 2023-01-26 (Released:2023-01-26)
参考文献数
101
被引用文献数
1

‘コンクリーション’とは,堆積岩中に産出する塊状(主に球状をなす)岩塊のことを指し,炭酸塩,シリカや酸化鉄を主成分とするものが多い.その中でもとくに炭酸塩を主成分とするコンクリーションは,保存良好の生物の化石を内包することが多く,古くは一世紀以上も前から記載・研究がなされてきた.これまでの研究から,炭酸カルシウム球状コンクリーションの形成は,有機炭素のまとまった供給が可能となる大型の生物が出現して以降の海性堆積層中で生じる現象であり,大型の生物が出現して以降の地質時代を通しての普遍的なプロセスと言うことができる.本論では,これらの産状や成因,形成プロセスについてこれまでの研究成果をもとに述べるとともに,コンクリーション化プロセスを応用・開発した‘シーリング素材’及び,その素材を用いた実地下環境でのシーリング実証試験の現状・結果について紹介する.
著者
田辺 晋
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.55-72, 2019-01-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
79
被引用文献数
5 4

東京低地と中川低地における沖積層のシーケンス層序と古地理を詳細に解明した結果,沖積層の形成機構に関する次の3つの知見を得ることができた.(1)蛇行河川堆積物を構成するチャネル砂層は,海水準上昇速度が大きい時期にはアナストモーズ状の形態を有し垂直方向に累重するのに対して,海水準上昇速度が小さい時期にはシート状の形態を有し水平付加する.(2)一部の海進期のエスチュアリーシステムは,河川卓越型エスチュアリーとして分類されるべきであり,その湾頭部の潮下帯にはローブ状で上方細粒化する砂体が存在する.(3)潮汐の卓越した溺れ谷などの内湾では,湾内に流入する河川が存在しなくても,湾外から運搬された泥質砕屑物が側方付加することによって埋積され,上方細粒化相が形成される.特に(1)は海水準の変動率が浅海成層と同様に沖積平野の河成層の地層形成に重要な支配要因であることを示す.
著者
永広 昌之 森清 寿郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.Supplement, pp.S47-S67, 2013-08-15 (Released:2014-03-21)
参考文献数
94
被引用文献数
1 1

南部北上帯は,先シルル紀基盤岩類およびシルル系から白亜系までの浅海成,一部陸成層がまとまって分布するわが国唯一の地域である.基盤岩類や中部古生界の岩相・層序は,西縁部,北縁部,中央部-東部においてそれぞれ異なっている.中生界は南三陸の歌津-志津川地域の海岸地域によく露出しており,また,歌津-志津川地域はわが国唯一の三畳紀・ジュラ紀魚竜化石産地を含んでいる.本巡検では,南部北上帯西縁部長坂地域の先シルル紀基盤岩類(母体(もたい)変成岩類,正法寺(しょうぼうじ)閃緑岩)と上部デボン~石炭系(鳶ヶ森(とびがもり)層,唐梅館(からうめだて)層,竹沢層)の岩相・層序,および南三陸歌津層・志津川地域に分布するペルム~ジュラ系(ペルム系末(すえ)の崎(さき)層・田の浦層,三畳系稲井(いない)層群,皿貝(さらがい)層群,ジュラ系細浦層)の,魚竜化石産出層準を含む,岩相・層序を見学する.あわせてペルム系に挟在する燐酸塩・炭酸塩岩の産状を観察する.