著者
宍倉 正展 鎌滝 孝信 藤原 治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.357-370, 2016
被引用文献数
1

<p>フィリピン海プレートが沈み込む相模トラフ沿いでは,過去からプレート間地震(いわゆる関東地震)がくり返し生じてきた.歴史上に記録されている1703年元禄関東地震と1923年大正関東地震では,南関東沿岸に地殻変動を伴い,大きな津波が襲ったことが知られている.地殻変動は海岸段丘などの離水海岸地形や隆起生物遺骸として,また津波は津波堆積物として,それぞれ地形や地層に記録されている.房総半島南部沿岸では,地殻変動や津波の影響を特に大きく受け,複数のレベルに海岸段丘が発達していたり,縄文海進期の内湾堆積物中に複数枚の津波堆積物が挟まれていたりする.これらの記録を解読することで,過去7000年から8000年以上に渡る地震や津波の履歴を復元することができる.</p>
著者
山路 敦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.6, pp.275-286, 2016-06-15 (Released:2016-08-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1 3
著者
佐藤 時幸 佐藤 伸明 山崎 誠 小川 由梨子 金子 光好
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.62-73, 2012
被引用文献数
1 8

新しく定義された新第三紀/第四紀境界を,石灰質ナンノ化石層序に基づいて秋田地域の大菅生沢および男鹿半島に詳細に追跡した.その結果,ピアセンジアン階/ジェラシアン階境界は大菅生沢ルートの笹岡層下部に,ジェラシアン階/カラブリアン階境界は,男鹿半島北浦層下部に位置することを明らかにした.石灰質ナンノ化石対比基準面に基づいて,日本海側地域の金沢,新潟,秋田地域の鮮新統-更新統を対比した上で,日本海側地域の代表的貝化石群の"大桑・万願寺動物群"産出層準の問題点を述べ,"Climate Crash"と呼ばれる2.75 Maに発生した北極域の大規模な寒冷化の日本海側地域への影響について整理した.さらに,地下断面に微化石年代層序を適用させ,北由利衝上断層群の活動が3.85 Maから1.71 Ma間であること,および秋田平野部の浅海化が北由利衝上断層群の活動と2.75 Maでの汎地球的な寒冷化(Climate Crash)の影響を強く受けていることを明らかにした.
著者
宮本 毅 蟹澤 聰史 石渡 明 根本 潤
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.Supplement, pp.S27-S46, 2013-08-15 (Released:2014-03-21)
参考文献数
45
被引用文献数
1 4

仙台市街を構成する大地は,新第三紀中新世以降,たび重なる変動を経験しながら海と陸の時代を繰り返し,現在の姿となった.現在の仙台市街から最も近い火山は約20 km離れた奥羽山脈上にあるため,火山とは無縁の地と感じるかもしれないが,数多くの火山活動が発生し,大地の形成と変貌に一役買っていたと考えられる.本巡検は地学教育とアウトリーチ用の巡検として,一般の方々を対象とし,仙台の大地の成り立ちとそこに介在した火山活動について理解していただくことを目的とする.見学は,仙台市を流れる広瀬川の周辺地域に分布する後期中新世以降の地層について行う.その中でも,特に現在の仙台市を中心とした地域を襲った火山噴火による噴出物に焦点をあてる.仙台市街で観察される火山噴出物は,それぞれ噴火のタイプが異なることから,火山噴火現象の多様性についても同時に解説を行う.
著者
宮田 隆夫 安 鉉善 猪川 千晶
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.S37-S52, 2012

中央構造線(MTL)は,白亜紀中頃からアジア大陸東縁部の形成に大きく関連して活動した大規模な横ずれ断層であり,それに沿って和泉層群堆積盆地が発達した.本巡検は,和歌山市北部から大阪府岬町にかけた地域で,横ずれ成分をもつMTL断層系の破砕帯と白亜系和泉層群のタービダイト相,堆積構造(スランプ褶曲, 底痕),変形構造(背斜, 小断層, デュプレクス),コダイアマモの化石,大阪層群/和泉層群の不整合などを見学し,それらの形成及び和泉層群堆積盆地の形成について現地討論を行う.
著者
川上 源太郎 加瀬 善洋 卜部 厚志 髙清水 康博 仁科 健二
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.857-877, 2017-10-15 (Released:2018-01-25)
参考文献数
90
被引用文献数
3 6

日本海東縁の沿岸域では,津波起源とされるイベント堆積物の報告が急増している.その時間-空間分布を整理し,地域間の対比と推定される波源を提示した.19~18世紀にはいくつかの歴史津波が知られ,地点数は多くないが対応するイベント堆積物が報告されている.18世紀以前は歴史記録に乏しいが,イベント堆積物から14~9世紀の間に次の4つの津波イベントの存在が示唆される-14世紀:青森~山形北部,12世紀:北海道南西部,11世紀(西暦1092年?):佐渡/新潟~山形南部,9世紀(西暦850年?):(佐渡~)山形~青森-.これらのイベントは日本海盆の地震性タービダイトにも記録されている.より古いイベント堆積物は,奥尻島や佐渡島などの離島で認められている.現時点では堆積物の起源の認定や正確な年代決定などに多くの問題が残っており,この総説が今後の問題点の解決と日本海東縁の古津波像解明の一助となることを期待する.
著者
長谷川 健 中川 光弘 伊藤 順一 山元 孝広
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.12, pp.686-699, 2011-12-15 (Released:2012-03-26)
参考文献数
30
被引用文献数
7 6

テフラを用いて北海道東部の釧路地域に分布する第四系の編年を試みた.釧路地域の海成層(上位から,大楽毛層,釧路層)の各模式地において複数のテフラを記載・採取し,火山ガラスの主成分化学組成などの岩石学的特徴や層位関係から,阿寒・屈斜路火山地域のテフラと対比を行った(阿寒および屈斜路テフラはそれぞれ上位から,Ak1~17およびKpI~VIII).大楽毛層の上位にはKpVIが見いだされ,また大楽毛層上部と下部に挟まる2層の火山灰層は,それぞれAk5および給源不明の広域テフラ(LowK-1)に対比される.一方,釧路層中に含まれる軽石礫・溶結凝灰岩岩塊は,すべてAk13~Ak17由来である.以上の対比結果と既報のテフラ年代から,大楽毛層の堆積は,少なくとも,0.8 Maに開始し0.1 Maより前に終了したと推測できる.釧路層の堆積時期は,1.5 Ma以降,1.0 Maより前と考えられる.