著者
河野 俊夫 中野 聰志
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.8, pp.472-475, 2011-08-15 (Released:2011-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Many transparent calcite crystals exhibit striking fluorescence together with own birefringence. On the basis of these two characteristics (fluorescence and birefringence), suitable calcite crystals can be utilized to visualize the splitting of both monochromatic and polarized light emitted from a laser pointer, as the light passes through a crystal. This new device should serve as a learning tool in introductory microscopy courses or whenever learning the principles of polarizing microscopy.
著者
及川 輝樹 和田 肇
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.528-535, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
37
被引用文献数
4 3

飛騨山脈の東縁に面した主に礫層で構成される居谷里層の堆積時期は, 層序関係と古地磁気極性から1.65~0.78 Maの間のいずれかとされている. この地層の礫層は, 大部分が茶色の溶結凝灰岩礫 (70%) で構成され, その他, 花崗岩礫 (15%), 緑~黒緑色の溶結凝灰岩・火山岩礫 (5%) も含まれる. これらの礫は, 記載岩石岩学的特徴からすべて飛騨山脈起源である. 花崗岩礫には高率に暗色包有岩を含む特徴的な細粒花崗岩礫があり, 記載岩石学特徴からその花崗岩礫は飛騨山脈北部に露出する黒部川花崗岩からもたらされたと考えられる. 黒部川花崗岩は, 1.5~1.0 Ma (ジルコンFT, 黒雲母 K-Ar年代) の年代値が得られており, これは居谷里層の堆積時期とほぼ一致する. したがって, 居谷里層中から黒部川花崗岩礫が発見されたことは, 1.5~1.0 Ma以降に黒部川花崗岩が分布する飛騨山脈北部の隆起は急激だった事を示している.
著者
藤原 治 鈴木 紀毅 林 広樹 入月 俊明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.Supplement, pp.S96-S119, 2013-08-15 (Released:2014-03-21)
参考文献数
135
被引用文献数
9

本巡検では,東北日本の太平洋側新第三系の標準地域としての宮城県仙台市から名取市にかけて分布する新第三系を見学する.見学の要点は,シーケンス層序と奥羽山脈発達史などの研究成果を念頭においた観察にある.最下位の茂庭層では,同時期の地層では例の少ない岩礁性動物群化石を見る.時間が許せば,茂庭層-旗立層境界に見られる海緑石層を見学し,東北日本で同時期に海緑石層が形成されていた一端を紹介する.名取川下流の露頭が本巡検の主要な見学地で,これまでの巡検で詳細には紹介されたことがない,旗立層と綱木層の不整合と堆積サイクルを見学する.この見学地は,フィッション・トラック年代の測定用試料を採集した露頭でもあるため,旗立層・綱木層の見学地としては模式地に匹敵する重要地点である.青葉山丘陵の見学地点では,綱木層と梨野層の境界を見学する.梨野層は白沢カルデラの東縁を構成する地層とされるが,綱木層との層序関係については不整合か整合か決着していない.最後に,仙台層群を観察する.下位の名取層群とは対照的に水平層となっていることが分かるほか,竜の口層から向山層への層相変化を見ることができる.
著者
松岡 篤 山北 聡綜 榊原 正幸 久田 健一郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.XXI-XXII, 1998 (Released:2010-12-14)
被引用文献数
1

秩父累帯の主要部は, ジュラ紀の付加体からなる. 付加体に含まれるチャートや石灰岩などの海洋性物質について, その堆積年代や含まれる化石の古生物地理学上の特徴を明らかにすることにより,秩父累帯の形成モデルに制約を与えることができる. また, 地質構造の特徴は, 付加体形成から現在にいたるまでのプロセスを反映している, 秩父累帯を構成する主要なユニットについて, 露頭のようすや山塊の表情を紹介する. 斗賀野ユニットと三宝山ユニットは南部秩父帯に, 柏木ユニット, 住居附ユニットおよび沢谷ユニットは北部秩父帯にそれぞれ属する.
著者
小竹 信宏 近藤 康生 藤井 隆志 芝崎 晴也
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.733-745, 2004 (Released:2005-03-18)
参考文献数
64
被引用文献数
3 5

島根県浜田市の中部中新統唐鐘累層畳ヶ浦砂岩部層下部で見られた皿状およびレンズ状の貝殻密集部の形成メカニズムと形成プロセスを, 生痕学的ならびに古生物学的観点から検討した. 明瞭なポットホール状の形態が識別できないことを別にすれば, これらの貝殻密集部の形態と内部構造の特徴は共産する生痕化石Piscichnus waitemata の充填物として見られる化石密集部のそれに酷似する. Piscichnus waitemata は一部エイ類の摂食活動によって形成された構造物と考えられており, 皿状およびレンズ状の貝殻密集部もエイ類の摂食活動による生物攪拌起源である可能性が極めて高い. 皿状およびレンズ状の貝殻密集部が母岩中に孤立して産出する理由として, (1) P. waitemata の充填物と母岩の質的および粒度の差異が極めて少ないこと, (2) 後から形成されたP. waitemata による破壊や上書き, そして内在型底生動物による生物攪拌作用などによって, P. waitemata の上部の形態情報が消去されてしまったこと, などが考えられる.
著者
林 広樹 笠原 敬司 木村 尚紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.2-13, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
78
被引用文献数
15 12

関東平野の地下に分布する先新第三系の地体構造に制約を与えるため,新第三系を貫通した深層ボーリング,および反射法地震探査のデータを収集した.収集したデータはボーリング49坑井,反射法地震探査31測線である.坑井ではコアまたはカッティングス試料により岩相を観察し,地体構造区分上の帰属を足尾帯,筑波花崗岩・変成岩類,領家帯,三波川帯,秩父帯,四万十帯およびこれらを覆う中生界の堆積岩類に区分した.また,坑井におけるVSP法またはPS検層データによって基盤岩の物性を調べたところ,より年代の古い地質体ほど大きなP波速度を示すことが明らかになった.この性質を用いて,反射法地震探査による地下構造断面を地体構造の観点から解釈し,関東平野地下における地体構造区分分布図を作成した.
著者
石田 直人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.83-94, 2007 (Released:2007-10-16)
参考文献数
33
被引用文献数
3 2

九州西部,五木北部地域の黒瀬川帯に分布する整然相砕屑岩類において,上部三畳系の上位を覆う下部ジュラ系が見出された.研究地域の上部三畳系は二枚貝化石によりCarnian階とされており,坂本地域の松求麻層に対比される.三畳系の上位を覆うジュラ系は,放散虫化石に基づくとHettangian階を含む可能性が高い.本研究ではこの下部ジュラ系を平沢津谷層と命名した.平沢津谷層は下部の粗粒砂岩厚層を主とする部分と上部の黒色泥岩を主とする部分から構成される.松求麻層と平沢津谷層の境界には上部三畳系Norian階およびRhaetian階の欠如が認められ,また境界を介して上下の地層の姿勢には差がないことから,三畳系-ジュラ系境界の関係は平行不整合と判断される.
著者
前田 晴良 上田 直人 西村 智弘 田中 源吾 野村 真一 松岡 廣繁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.11, pp.741-747, 2012-11-15 (Released:2013-04-04)
参考文献数
44
被引用文献数
1 2

高知県佐川地域に分布する七良谷層の模式層序周辺の泥質砂岩中から,最上部ジュラ系を示す2種類のアンモノイド化石を発見した.そのうちAspidoceras属は,テチス海地域の最上部ジュラ系から多産し,Hybonoticeras属は同地域のキンメリッジアン−チトニアン階境界付近を示準するタクサである.これらの化石の産出により,七良谷層は最上部ジュラ系(キンメリッジアン−チトニアン階)に対比される可能性が高い.この結論は放散虫化石層序とおおむね調和的である.これまで七良谷層は,上部ジュラ系−下部白亜系鳥巣層群の層序的下位にあたる地層と考えられてきた.しかし七良谷層から産出したアンモノイドの示す時代は,鳥巣層群産アンモノイドのレンジと明らかに重複し,アンモノイド化石からは両岩相層序ユニットの時代差は識別できない.したがって,今後,七良谷層と鳥巣層群の層序関係を再検討する必要がある.
著者
関口 春子 浅野 公之 岩田 知孝
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.10, pp.715-730, 2019-10-15 (Released:2020-01-10)
参考文献数
48

将来の地震の地震動予測をより高精度にするため,既往の知見と既往の物理探査・地震観測データを融合して奈良盆地の堆積層の3次元速度構造モデルを構築した.奈良盆地は,大都市圏に比べ地下構造の探査情報が少ないが,盆地を埋積する堆積層には大阪盆地のそれと共通性があると考えられるため,大阪盆地の3次元速度構造のモデル化で培われた知見や技術を利用して奈良盆地の3次元モデルを構築した.重力異常から推定された基盤岩深度と盆地中央部のボーリングで得られた大阪層群の海成粘土等の情報を組み合わせて3次元の堆積年代構造のモデルを作り,これを経験式で地震波速度と密度に変換した.奈良盆地にはPS検層による直接的な速度構造情報は無いが,微動観測からの情報を用いることにより,地震動応答の面でもモデルの拘束や検証を行った.また,実小地震の波形モデリングと強震観測記録の比較から,地震動再現能力を確認した.
著者
平野 直人 阿部 なつ江 町田 嗣樹 山本 順司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.1-12, 2010 (Released:2010-05-29)
参考文献数
94
被引用文献数
8 6

太平洋プレートが沈み込む手前で活動するプチスポット火山は,プレート屈曲に起因し,各火山活動は単発に終わる特徴があり,様々な海域で活動している.つまりプレート屈曲場であればどこでも同様の火山が存在し得る.そのような沈み込む手前のプレート上のプチスポット火山体は,沈み込むプレート本体の海洋地殻や,海山等の古い火山体よりも選択的に陸側に付加されていることが容易に想像できる.プチスポット火山の検討により,このような地質学の新展開に加え,海洋リソスフェアの理解に関する新展開も期待される.プチスポット溶岩がもたらす捕獲岩や火道角礫岩は,これまで我々が手に入れることの出来なかった古い海洋プレートの断片として貴重な情報をもたらす.これら岩石に地質圧力計を適用し,近い将来行われる若いプレート上での21世紀モホール計画の成果と合わせ,四次元的に海洋プレートが理解されることが大いに期待される.
著者
柏木 健司 瀬之口 祥孝 阿部 勇治 吉田 勝次
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.521-526, 2012-08-15 (Released:2012-12-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

This paper describes Saru-ana Cave, located along Kurobe Gorge in the Kanetsuri area, eastern Toyama Prefecture, central Japan. Saru-ana Cave (total passage length, ca. 120 m; relative height, ca. 40 m) opens onto a steeply inclined cliff face, 75 m above the bed of the Kurobe River. The cave consists of horizontal to inclined rooms and vertical shafts. Speleothems in the cave, although not abundant, include cave corals, flowstones, soda straws, stalactites, and a stalagmite. Fossil specimens of six Japanese Macaque individuals (Macaca fuscata) were collected from the cave for paleontological investigation.
著者
榎並 正樹 平島 崇男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.661-675, 2017-09-15 (Released:2017-12-25)
参考文献数
177
被引用文献数
1

本論文は,主に1990年代以降に印刷公表された研究成果をもとに,沈み込み帯や大陸衝突帯深部で起こっているダイナミクスや物質相互作用を記録した高圧-超高圧変成岩の研究を概観している.そして,その内容は,世界の超高圧変成帯のうち特に日本の研究者が岩石学的分野の研究において重要な貢献をした地域と,三波川変成帯や蓮華帯をはじめとする日本の高圧変成地域のエクロジャイトおよびそれに関連する岩相に焦点を当てたものである.
著者
岡村 行信
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.582-591, 2010 (Released:2011-03-02)
参考文献数
67
被引用文献数
8 14

日本海東縁で発生した大地震の震源域と地質構造とを比較すると,大部分の震源域は幅15~20 kmの非対称な背斜構造に重なる.傾斜30~45°前後の逆断層が厚さ10~15 kmの上部地殻を切ると,その幅が10~20 kmになることから,日本海東縁に広く分布する同じような幅を持った背斜構造は震源断層を含む逆断層全体の上盤の変形によって形成された可能性が高い.2004年中越地震の震源域では褶曲構造を断層関連褶曲であると仮定して推定した断層形状が,震源断層とよく一致することが示されたが,同じような関係が日本海東縁の他の背斜構造にも適用できるかどうか検討する必要がある.地質構造から震源断層の位置を推定することができれば,将来発生する地震による地震動の推定精度を向上させることができ,地震災害の軽減に貢献できる.