著者
小林 伸行 濱川 文彦 松尾 雄三 高野 正博
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1201-1207, 2009-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16

初診時の問診や質問紙が治療中の自傷行為の予測に有用かを検討した.対象と方法:2000〜2005年に初診した1,665名を対象とした.(男性605名,女性1,060名,年齢36.4±18.6歳).カルテ記載から精神科・心療内科受診歴(受診歴),希死念慮,自傷行為の既往(自傷既往),受診直前の自傷行為(直前自傷),治療経過中の自傷行為(治療中自傷)などを調べた.初診時にGHQ28を行った.結果:全対象の22.6%に受診歴,24.7%に希死念慮,5.1%に自傷既往,1.5%に直前自傷を認めた.初診以降も治療を継続した1,132名中,治療中自傷は4.3%にみられ,非自傷者より低年齢で,受診歴,希死念慮,自傷既往が多く,GHQ28の重症抑うつ尺度が高く,診断別では摂食障害,うつ病に多かった.多変量解析では年齢,希死念慮,自傷既往が治療中自傷予測に有意な変数だが,自傷者の正分類率は4%だった.結語:初診時の希死念慮と自傷行為の既往が治療中自傷の予測に最も有用だが,十分ではない.
著者
駒田 陽子 井上 雄一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.785-791, 2007-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
31

多くの疫学研究により,睡眠障害が非常に頻度の高い疾患であることが明らかにされている.近年,睡眠障害の診断にあたって,睡眠の量や質だけでなく日中の生活機能障害が重視されており,その社会生活への悪影響を数量化した研究が散見される.本稿では,睡眠障害の中で頻度の高い不眠症および日常生活で経験することの多い睡眠不足が社会生活に及ぼす影響について概説した.不眠は,耐糖能障害や免疫機能低下など,系統的に身体機能に影響を及ぼすことがわかっている.また精神生理機能への影響も大きく,慢性不眠症者では一般人に比べて産業事故リスクが7倍と報告されている.不眠によって集中力・記憶・日常の仕事をやり遂げる能力・他人との関わりを楽しむ能力が低下し,QOL (quality of life)水準は悪化する.さらに,不眠はうつ病の前駆症状として考えられてきたが,近年うつ病発症リスクの有意な要因としても重要視されている.睡眠不足症候群は先進諸国ではかなり多く,無視できない睡眠障害の一つである.睡眠不足症候群での眠気水準は他の一般的な過眠性疾患と同水準であるが,運転事故既往者では眠気重症度が有意に高い.睡眠不足は,身体的,精神生理的機能に影響を及ぼし,睡眠の充足感が低いほど抑うつ得点が高くなることが示されている.睡眠障害に対しては,十分な治療を行うことにより症状が改善し,社会生活への悪影響も抑制される.国民のQOLを向上し健康な社会生活を送るために,睡眠障害の早期発見・早期治療と睡眠健康に関する啓発活動が今後必要である.
著者
榎戸 芙佐子 窪田 孝 中川 東夫 渡邉 健一郎 亀廣 摩弥 大原 聖子 地引 逸亀 野田 実希
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.897-905, 2006-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
27

神経衰弱,慢性疲労症候群(CFS),うつ病の三者が疑われる3例の診断と治療・経過を紹介し,問題点を指摘し,今後の研究に対する提案を行った.症例1は疲労を主訴にインターネットの情報からCFSを疑って受診してきたがCFS疑診例であり,症状からICD-10の神経衰弱と診断し治療したが軽快に止まった.症例2もCFSを自己診断していたが,客観的所見に乏しく身体表現性障害と考えて治療していたとこう,妄想が明らかになり妄想性障害に診断を変更した.症例3は抑うつエピソード以前から身体徴候があり,リンパ節腫脹,関節痛,咽頭炎の症状からCFSと診断し,治療の結果ほぼ完治した.CFSと神経衰弱は社会的背景・症状が似ており,両者は文化的変異形と考えられる.れが国における神経衰弱の乱用ともいえる現状を考えると,CFSを積極的に診断し治療していくことが患者・家族の福利につながり,疲労の脳機能の解明にも貢献すると考えた.
著者
山口 日名子 地嵜 和子 木村 未夏
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.537-544, 2005-07-01 (Released:2017-08-01)

受診の動機が,子の症状を通じて親自身が病者の役割をとることにあると判断される症例を「代理症」と名づけ,その特徴と医療の対応について検討した.12例中2例の親は代理人による虚偽性障害と診断された.子の症状にはさまざまな身体症状と問題行動が含まれていた.家庭背景は9例に親による子へのmaltreatmentがあり,これらの親にもmaltreatmentされた生育歴があって世代間伝達がみられた.9例が家族機能不全に陥っていた.代理症状で小児科を受診することにより親は間接的に自身のケアを求めていた.小児科医には,代理症を認識しそれによる受診を暖かく受け止め,関係機関と連携して援助する責務がある.
著者
蓮尾 英明 神原 憲治 水野 泰行 福永 幹彦 中井 吉英
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.417-423, 2015-05-01 (Released:2017-08-01)

背景:心療内科では,慢性めまいを主訴とする症例を多く経験する.この場合,2次的に頸部筋過緊張といった身体異常を認めることが多いが,患者の多くは失体感症傾向が高く自覚に乏しい.そのようなケースへの身体的なフィードバックによる認知の変容は示唆されている.今回われわれは,慢性めまいを訴える患者に対して,催眠による筋弛緩体験によって自覚に乏しい頸部筋過緊張の存在に気づく「体験的気づき」を用いた介入の有用性を検討した.方法:対象は,罹病期間が3カ月以上のめまいを主訴とした,頸部筋過緊張を認める56例である.初診時に,対象を催眠群28例,非催眠群28例にエントリー順に交互に振り分けた.その後,全例に,「頸部筋過緊張が原因の一つ」という説明のうえに肩の漸進的筋弛緩法を指導した.おのおのの群に対して,経時的に,めまい感の程度を数値的評価スケールにて比較検討した.結果:催眠群,対照群ともに,有意なNumerical Rating Scaleの変化が認められた(p<0.001).両群とも初診〜1カ月後(p<0.001)の変化が有意であり,1カ月後〜3カ月後の変化は有意ではなかった.催眠群と対照群の比較では,催眠群のめまい感のNumerical Rating Scaleは,初診〜1カ月後にかけて有意差は得られなかったが(p=0.029),初診〜3カ月後にかけて有意に低下していた(p=0.005).考察:短期間での催眠群でのより有意な改善から,初診時の催眠による体験的気づきがめまい感の改善につながったと考えられる.この「体験的気づき」は,患者に対して,自覚した身体異常と慢性生めまいとの関連への気づきを強く促したと考えられ,失体感症へのアプローチとしての可能性が示された.
著者
都田 淳 端詰 勝敬
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.418-422, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
3

片頭痛に対する非薬物療法として, 認知行動療法 (cognitive behavioral therapy : CBT) の有用性が示されている. バイオフィードバック療法, リラクセーション法は豊富なエビデンスを有するが, 実施可能な施設が限られているという問題も抱えている. 片頭痛に特徴的な認知の歪みを把握することで, より効果的な認知行動療法を行うことができるのではないかと考え, われわれは臨床研究を行っている. 片頭痛群は健常者群と比較して, 有意に高い身体感覚増幅傾向 (somatosensory amplification) を示した. また片頭痛群において身体感覚増幅傾向は, 痛みに対する破局的思考 (pain catastrophizing) を介して頭痛による日常生活支障度に影響を及ぼしていた. 片頭痛における認知の歪みを複数の視点から把握することで, より効果的なテーラーメイドCBTを開発していける可能性があると考えている.
著者
田中 輝明 小山 司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.979-985, 2009
参考文献数
20
被引用文献数
2

単極性うつ病と双極性うつ病では治療アプローチが異なるため,「うつ病」診療においては早期診断が重要な鍵となる.抑うつ症状のみで鑑別することは困難であるが,双極性うつ病では非定型症状や躁成分の混入が診断の手掛かりとなることもある.双極性障害の診断には(軽)躁病エピソードの存在が必須であるが,患者の認識は乏しく,周囲からも注意深く(軽)躁症状の有無を聴取する必要がある.双極性障害のスクリーニングには自記式質問紙票も有用である.また,パーソナリティ障害や薬物依存などの併存も多く,複雑な病像を呈するため注意を要する.双極スペクトラムの観点から,双極性障害の家族歴や抗うつ薬による躁転などbipolarityについても確認することが望ましい.双極性障害の薬物治療としては,エピソードにかかわらず気分安定薬が第一選択であり,有効性や副作用(躁転や急速交代化)の面から,抗うつ薬の使用には慎重さが求められる.
著者
松本 聰子 熊野 宏昭 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.425-432, 1997-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
21
被引用文献数
4

摂食障害患者は健常者よりも食事制限の程度の高いことが指摘されているが, これまでその具体的内容の違いについての検討は行われていない。そこで本研究では, ダイエット行動尺度, EAT-20,BingeEating尺度を女子高校生2,019名, 女子大学生847名に施行し, 実際にどのくらい, どのような食事制限を行っているのかというダイエット行動と摂食障害傾向, さらにbingeeatingとの関連の検討を行った。その結果, ダイエット行動には構造的ダイエットと非構造的ダイエットがあり, 摂食障害傾向が高くなるにつれて, 構造的ダイエットも非構造的ダイエットも高頻度で行うようになるが, 摂食障害群では特に非構造的ダイエットの頻度の高いことが示唆された。また, bingeeatingにはダイエット行動の中でも非構造的ダイエットのみが影響していることが明らかにされた。
著者
富永 和作 越智 正博 谷川 徹也 渡辺 俊雄 藤原 靖弘 押谷 伸英 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.783-790, 2009-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

目的:脳腸相関に鑑みたfunctional dyspepsia(FD)の病態生理として,日常ストレスが関与し,その認知は自律神経系や各種メディエーターを介して,運動機能をはじめとする消化管機能に影響を及ぼし,消化器症状を誘発することが推察される.そこで,ストレス負荷が与える消化管運動機能への影響と,自律神経機能の関与,その治療効果について検討した.方法:8週齢Wistar系雄性ラットに5日間の水浸ストレス負荷を与え,体重,相対臓器重量および血中カテコラミンなど,胃排出能を測定した.FD患者にストレス負荷度を問診し,24時間心拍変動解析を行った.高周波成分(HF:0.15〜0.40Hz)は副交感神経機能を,低周波成分(LF:0.04〜0.15Hz)との比LF/HFは交感神経機能の指標とした.(1)24時間全体,(2)覚醒時,睡眠時の比較,(3)食事負荷,(4)自律神経刺激前後での変動および回復度,(5)ディスペプシア症状程度と相関性について検討した.成績:1)ストレス負荷は,体重・相対胸腺重量を有意に低下させたが,副腎重量は有意に増加した.2)血漿ACTH,コルチコステロン,アドレナリン,ノルアドレナリンは増加し,胃排出時間は短期負荷では遅延し,長期負荷では充進した.3)ストレス負荷24時間では,総グレリンおよびデスアシルグレリンの増加を認め,その後の低下と同時期にアシルグレリンの増加を認めた.4)FD群では,24時間平均での副交感神経機能の有意な低下を認め,相対的交感神経系の亢進状態を示した.5)食後30〜60分の副交感神経系ならびに食後90分以降の交感神経系の変動が,FD群では約半数に認められなかった.6)自律神経作動薬での自律神経系アンバランスと消化器症状の改善効果が認められた.結論:FD症例ではストレス負荷による自律神経系の変動と胃機能不全が存在し,外的刺激に対する修正機能の脆弱性が示唆された.自律神経調節薬の有効性が示された.
著者
小川 真里子 髙松 潔
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.455-461, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
26

心療内科医と産婦人科医の双方の対応を要する疾患は多い. また, 心身症患者が産婦人科を初診受診することも日常的にみられる. 例えば, 摂食障害の女性は, しばしば無月経を主訴に産婦人科を最初に受診する. 月経前症候群は, 月経前である黄体期にさまざまな症状をきたすが, 心理・社会的因子が背景にあることも少なくないため, 心身医学的アプローチが有効である.しかし, 実際の臨床現場で心療内科と産婦人科が密に連携し協働している場面はまだまだ多いとはいえない. 考えられる問題点としては, まず, 産婦人科医における心身医学的知識の欠如, 次に, 患者の心療内科受診へのハードル, そして, 心療内科と産婦人科が併設されている病院は少ないため, 物理的に連携することが難しい点などが挙げられる.そこで本稿では, 心身症患者への産婦人科的対応について述べ, 今後どのように協働して治療にあたっていくかを考察した.
著者
藤田 光江
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.825-831, 2010-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
22

頭痛は小児においても,最もよくみられる疼痛である.小児の一次性頭痛は,片頭痛と緊張型頭痛がほとんどを占めるが,成人に比べ軽く,医療機関への受診は少ない.しかし,小児にも生活の支障度が高い慢性連日性頭痛がみられ,慢性緊張型頭痛が主体を占める.これら慢性緊張型頭痛をもつ小児は,心理社会的問題を抱える場合が多く,心身医学的な対応が必要となる.頭痛ダイアリーは,頭痛のタイプの診断に役立つのみならず,家庭や学校生活での問題を知るうえで有用である.患児がストレスに気づき,自力で解決へ歩み出すことで,難治性の頭痛が軽快することが多い.学校,家庭などの環境調整をしながら,患児と親をサポートすることが大切である.
著者
端詰 勝敬 坪井 康次
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.805-810, 2010-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
23

片頭痛は,心理的ストレスがトリガーや増悪因子としての役割を果たしており,うつ病やパニック障害といった精神疾患との関連も深い.心療内科における片頭痛の診断で重要な点は身体的要素と心理的要素の両者を把握することにある.薬物療法に際しては,随伴疾患を考慮した薬物療法を中心に行うことが推奨されている.片頭痛の非薬物療法としては,認知行動療法,バイオフィードバック療法,自律訓練法,ストレスマネジメントが有効とされている.
著者
古川 洋和 松岡 紘史 樋町 美華 小林 志保 庄木 晴美 本谷 亮 齊藤 正人 安彦 善裕 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.363-372, 2009-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
33

本研究の目的は,歯科治療恐怖に対する認知行動療法(CBT)の有効性をメタ分析によって検討することであった.(1)研究デザインとして無作為化比較試験(RCT)が用いられている,(2)CBTによる介入が行われている,(3)プラセボ群,あるいは未治療統制群との治療効果の比較検討が行われている,(4)不安・恐怖に関する評価項目の平均値と標準偏差が記載されている,(5)英語で書かれている,という5つの選定基準を満たす論文を対象にメタ分析を行った結果,CBTが実施された群の治療効果は有意に大きかった(d=2.18).したがって,CBTは歯科治療恐怖の改善に有効であることが示された.本研究の結果は,歯科治療恐怖の治療において質の高いエビデンスを示すことができた点で有益である.今後は,わが国においても歯科治療恐怖に対するCBTの効果を検討する必要性が示唆された.
著者
岩村 康子 富士見 ユキオ 石川 俊男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1034-1046, 2012-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

「主体の成長モデル」作成の背景:筆者らは「病態水準」と「心身医学的療法の5段階」と「M. Mahlerの発達モデル」は,「主体の成長度」を測る異なる物差しであるという見方を提案する.筆者らは心身相関を扱う治療者が,患者の病態水準や発達段階に合った介入をしやすくするため,三者を統合した包括的な治療過程モデル「主体の成長モデル」を作成した.この包括的なパラダイムに照らして妥当な治療は,三者中一つのみに照らして妥当な治療よりも効果的であることが期待された.経過中に疼痛発作が消失した症例の分析を通してこの点を検証した,ケース・スタディ:筆者らの治療が有効だった期間の治療内容は「主体の成長モデル」に照らして妥当であると考えられ,三者中一つのみに照らして妥当な仮想の介入よりも,効果的であると考えられた.対照的に筆者らの治療が無効だった期間では「主体の成長モデル」に照らして妥当な介入が行われていなかった.
著者
小澤 夏紀 富家 直明 宮野 秀市 小山 徹平 川上 祐佳里 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.521-529, 2005-07-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

痩身記事を含む女性誌への曝露と食行動異常の関係をモデル化することを目的とし,女子学生933名を対象として調査を行った.その結果,定期的に女性誌に曝露している学生はEAT-20のカットオフポイントを超える割合が女性誌を読まない学生の7倍もあることが示された.また,彼女らは女性誌からの影響を受けやすい被影響特性が高く,痩身理想の内面化が顕著という認知的特徴をもっていた.一方,女性誌に曝露していても被影響特性が低ければ摂食障害傾向への影響は小さかった.最後に,共分散構造分析により,被影響特性,痩身理想の内面化,自己像不満,やせ願望は循環的関係を有し,食行動異常に悪影響を及ぼすことが示された.これらのことから食行動異常の予防や治療にはメディア曝露のコントロールが必要ではないかと思われた.