著者
中村 亨 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.934-938, 2017 (Released:2017-09-01)
参考文献数
2

2015年12月より実施されたストレスチェック制度の中で臨床心理士や産業カウンセラーなどの心理職の担う役割は限定的であるものの, 実務を行うにあたって, ストレスチェックにおいて高ストレスと判定された労働者に対する医師による面接指導に先立つ情報聴取を目的とした面接を, 心理職が行うことが考えられる. このため, 心理職は, 医師面接の位置づけを含むストレスチェック制度やストレスチェックの際に用いられる検査について学ぶとともに, 個人情報の保護を考慮した面接の進め方を身につける必要がある.本ワークショップではストレスチェック制度と標準項目となっている職業性ストレス簡易調査票について概説するとともに, 医師による面接指導前の情報聴取を目的とした面接のポイントを整理した.
著者
勝倉 りえこ 伊藤 義徳 児玉 和宏 安藤 治
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.139-147, 2008-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2

目的: 外来患者に対して,簡便で手軽なマインドフルネスに基づくストレスリダクションプログラムの効果を検討することを目的とした.方法: 外来患者8名を対象に,1カ月間,自宅での瞑想訓練の実施と,毎回の練習前後の気分状態と,ベースラインから3カ月後フォローアップまでの6段階における特性指標(心身の健康度,認知的スキル,認知スタイル,スピリチュァルな精神的態度)の測定を行った.結果と考察: 瞑想訓練による気分への即時的改善効果は認められなかった.特性指標の変化として,心配に関するネガティブな信念といったメタ認知的信念の改善が認められた.また,これらの効果の媒介要因である破局的思考を緩和させる認知的スキルの向上と,自動的処理思考が減少した.さらに訓練を十分に行えた患者のほうが,認知的スキルの獲得が促進された.本プログラムが医療現場における日常臨床を補完する可能性が示唆された.
著者
田中 英高 寺島 繁典 竹中 義人 永井 章 Borres Magnus
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.293-300, 2002-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

近年,未成年者の凶悪犯罪が注目を集めているが,その一方で子どもの自殺の増加も大きな社会問題となっている.われわれは日本とスウェーデンの公立小中学校において,心身医学的健康調査を実施した結果,日本の子どもは精神的身体的により脆弱で,疲弊していると結論づけた.その調査の中で,死にたいと思っている子どもはスウェーデンより日本で多いことを報告した.本研究では,自殺願望の心理社会的背景について前回の調査結果をさらに解析した.大阪府下公立小学校4年生〜中学校3年生(男子375名,女子367名)を対象に,新しく作成した質問紙法による健康調査を実施した.質問項目は,身体愁訴10項目,精神愁訴12項目,その他心理社会的因子30項目から成る.「わたしは,よく死にたいと思う」の質問項目に対し,「はい」「ときどき」「いいえ」の3件法で回答を得た.また「わたしは,カッとしやすい」の質問項目に対しても同様に行った.日本の小学生,中学生の「はい」の回答率はそれぞれ3.3%,6.9%,「ときどき」は12.5%,14.9%であった.一方,スウェーデンでの「はい」の回答率はおのおの1.9%,2.8%と日本に比べて有意に低かった.stepwise回帰分析からみた「わたしは,よく死にたいと思う」に関連する心理社会的因子の第1位は,日本では「自分のことで両親がよくけんかをする」であった.一方,スウェーデンでは「自分に満足していない」であり,日本と異なった結果であった.文部科学省の調査によると,日本の子どもの自殺の原因を家庭不和が第1と推定しており,今回の一般小中学生を対象とした調査結果と一致した.親が子どもを一入の人間として,いかに育んでいかねばならないのか,日本人は改めて考え直す必要があろう.
著者
和田 聡子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.627-633, 2001-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

2型糖尿病のように生涯にわたり治療を必要とし, 患者の生き方に深く関与している疾患に対しては, 患者の深層心理まで視野に入れた患者の全存在を対象にした治療法が必要であると考え, 患者の語りを共感をもって聴いていく臨床心理学の手法を取り入れた糖尿病治療を試みた.患者の語りを聴いていくにつれ, 患者と治療者との間の信頼関係が深まり, それとともに患者は糖尿病や治療に対するネガティブな感情を率直に話せるようになった.患者の心の内面が語られ出してから外傷の多発などが起こったが, 一方では血糖コントロールの安定化が認められ, 内面での落ち着きが示唆された.
著者
阿部 輝夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.247-257, 1998-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
48
著者
岡 孝和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.631-636, 2008-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
15

ストレスが恒温動物の深部体温に及ぼす影響に関して概説した.拘束ストレスをはじめ,多くの心理的,身体的ストレスは動物の深部体温を一過性に上昇させる.このストレス性体温上昇反応は感染,炎症によって生じる発熱反応と異なり,発熱物質である炎症性サイトカインやプロスタグランディンE_2非依存性の機序によって生じる.コミュニケーションボックスにより,連日,心理的ストレスを負荷したラットでは,非ストレスラットに比べ,昼夜ともに体温が高くなる.その一方で,強い拘束ストレスを受けたラットの体温は低下する.これらの動物実験の成果をもとに,心因性発熱,慢性ストレス状況で生じる原因不明の微熱の機序について考察した.
著者
角田 浩 内海 厚 本郷 道夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.325-329, 2007-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2

Purpose : Evidences show that strong association between mood disorder such as depression and CAD prognosis. Also, physical exercise is known to improve the hostility in patients with coronary artery disease (CAD). However, little is known on the effects of physical exercise on the mood change in healthy adults with reference to gender difference. The purpose of our study is to examine how aerobic exercise affects mood states in normal subjects. Method : 62 healthy subjects (16 males, 46 females, the mean age + / -SD was 52+ / -14 with ages ranging from 20-72) were recruited by a local public relations magazine. The subjects participated in an aerobic exercise program twice a week for three months. We assessed the pre-and post-program mood with the Profile of Mood States (POMS) and classified the subjects into two groups by T-scores (the "relatively bad mood" group was defined by T score≦50 for "Vigor" and T score≧50 for other subscales). Results : The mood states seemed to improve after the aerobic program only in those with low T-score for Vigor and high T-score for other subscales of POMS. Decrease in T-score was observed in Depression-Dejection, Tension-Anxiety, Confusion and Fatigues, and Increase in T-score in Vigor were observed in female subjects. Changes in these parameters in male were also observed in a limited umber of subjects, which may not be enough to draw conclusive comments on the effect of the aerobic program for mood status in male subjects. Conclusion : Our three month-long aerobic exercise program improved the bad moods in healthy subjects. This effect might be useful for prevention against CAD.
著者
松島 英介
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.37-44, 2014-01-01 (Released:2017-08-01)

せん妄は多要因からなる異種の病態の集まりと考えられ,精神運動性行動によって過活動型,低活動型および混合型の3つの亜型に分けられる.中でも低活動型せん妄は,がん患者では多く半数にみられ,その症状としては,無関心,注意減退,発語が少なく緩徐,不活発などが挙げられる.このような低活動型せん妄は,過動型せん妄と同じく,患者や家族に与える苦悩が大きいが,症状が目立ちにくいため,臨床現場では発見されないまま見過ごされることも多い.さらに,うつ状態と間違われてしまうこともある.治療には,器質要因を改善するための管理と,向精神薬を用いた薬物療法が必要であるが,終末期のせん妄では,治療目標を完全な回復ではなく,症状のコントロールにおくことも必要になる.
著者
大津 光寛 藤田 結子 苅部 洋行 軍司 さおり 若槻 聡子 羽村 章 一條 智康
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1127-1133, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

摂食障害症例は歯科的合併症を発症し, う蝕の多発などを認めることはまれではない. そこで摂食障害患者87例を対象として, う蝕経験と, 発症要因の一端を明らかにすることを目的とした調査研究を行った. 方法は対象のう蝕経験指数 (DMFT) を平成23年歯科疾患実態調査の結果と比較し分類した, 多数群と少数群間で口腔内状況や日常習慣などについての比較を行った. 結果は多数群が有意に多く, 多数群少数群間では罹患歴, ブラッシング回数, 歯垢の残存量では有意差が認められず, 過食, 自己誘発性嘔吐や, 酸蝕の進行程度, アメやガムなどの日常摂取の有無によって有意差が認められ, これらがう蝕経験を上昇させていた. 対象のう蝕発症は基本的な予防処置の不足によるものより, 摂食障害症状に大きく関連していた. これにより摂食障害症例に対しては通常の口腔衛生指導だけではなく, 摂食障害症状を視野に入れ, 他科との綿密な連携のもと対応する必要があるといえる.
著者
富田 吉敏 菊地 裕絵 安藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.849-855, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
6

大学受験は重要なライフイベントだが受験ストレスにより不調を訴える受験生は多い. 筆者は4年間で当科を受診した大学受験生を10例経験した. 現役高校生が9例で, そのうち7例が女性であった. 半数が頭痛を訴え, 8例が検査上で不安を認めた.治療前, 受験終了で症状は軽快すること, 受験ストレスで症状を生じた自身の特徴を把握することが将来的に重要であることを筆者は説明. その後, 受容・傾聴の姿勢で, つらい事柄を吐露させるベンチレーションをコーピングとした対応をとり, ほとんどが受験終了とともに軽快した. 受験ストレスによって心身へ影響がでる機序こそが心身相関であり, その理解を促す心身医学的治療は, 現状を受け止め, 症状の悪化を防止し, 目標を達成する一助を果たしている. 本報告は心身が消耗した予備校生たちを “受験生症候群” とした報告のように, 大学受験で心身が不調となり心療内科を受診した受験生の特徴と治療経過をまとめたものである.
著者
大谷 晃司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.709-714, 2011-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
5

まず,運動器の慢性疼痛を訴えている患者に対して,器質的疾患の関与と精神医学的問題の関与を整形外科で見極める.後者のスクリーニングには,BS-POPを使用している.患者の承諾が得られ,心身医療科とのリエゾン診療が始まった患者に対して,リエゾンカンファレンスを開催して,コメディカルを含めた医療チームの情報を共有し,一貫した治療方針で治療が行われている.最近のリエゾン診療症例32例の治療成績は,有効15例,不変12例,無効5例であった.本検討の32例中22例が県外から受診した,もともと治療に難渋している患者であることを考慮すると,それなりの治療効果があったものと思われる.
著者
山口 直美 小林 純 太刀川 弘和 佐藤 晋爾 堀 正士 鈴木 利人 白石 博康
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.25-32, 2000-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
30

摂食障害患者を自殺企図の有無で2群に分類し, 2群間でParental Bonding Instrument(PBI)で測定された両親の養育態度や臨床症状などについて比較検討した.PBIの結果において, 自殺企図群では両親のoverotection(過保護)得点が有意に高かつた.また自殺企図群では虐待体験を伴う症例が有意に多かつた.一方, 発症年齢, 調査時年齢, 摂食障害の重症度, 過食, 嘔吐, 下剤乱用, 物質乱用, 抑うつ状態の有無などについては2群間に有意差を認めなかつた.摂食障害患者において自殺企図の危険因子として, PBIの高いover protection得点で示されるような, 親の支配的で過保護な養育態度や虐待体験などが重要と考えられた.
著者
荒井 弘和 所 昭宏 平井 啓 野長 さおり 小林 博美 井上 亜由美 上砂 陽子 田中 孝浩
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.667-673, 2010-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

本研究では,肺結核患者のマスク着用行動に対する変容ステージを検討し,マスク着用に関する恩恵と負担,阻害要因と促進要因,社会的要因,身体症状,および心理的適応状態が,変容ステージによって異なるか比較を行った.対象者は,入院中の肺結核患者および肺結核疑い患者であった.研究デザインは横断的調査であった.本研究の48名の対象者のうち,ステージの分布は,準備期22名および実行期26名であった.48名の平均年齢は53.09±16.70歳(19〜78歳)であった.分析の結果,マスク着用の負担,マスク着用の阻害要因,身体症状において,2つのステージ間に違いがみられる項目が存在した.入院日数およびマスク着用の促進要因においては,ステージ間で有意に異なる傾向が認められた.特に,マスク着用の阻害要因については,複数の項目において,ステージ間に差が認められた.今後は,看護師を中心とした医療スタッフが,促進要因を増強するだけでなく,阻害要因が存在していてもマスクを着用するよう意識づけるべきである.さらに,着け忘れを防止するような介入を行うことが好ましいと考えられる.
著者
輿古田 孝夫 石津 宏 高江洲 なつ子 赤嶺 依子 垣花 シゲ 佐和田 重信 兪 峰 森山 浩司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.681-687, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

沖縄県は全国でも有数の長寿県であり,伝統文化と風土に培われた地域性を有している.本研究では,こうした沖縄の地域特性をふまえ,地域高齢者のメンタルヘルスとその関連要因について検討することを目的とした.沖縄県中部に位置する具志川市平良川地区の65歳以上の地域住民120名を対象に,自尊感情と関連する要因を検討した.その結果,self-esteem得点が有意に高値を示した者は,男女ともに健康状態が良好で,暮らしにゆとりがあり,生活満足度や健康度自己評価が高かった.また,地域の伝統行事や祭事の際に役割を有するものはself-esteem得点も有意に高値を示した.沖縄県中部に位置する中城村2地区の65歳以上の地域住民162名を対象に, self-efficacy(自己効力感)に着目した調査では,男女とも健康度自己評価,老研式活動能力指標の社会的役割が有意な関連を有した.男女別にみると,男性では伝統的祭事への参加状況で,女性では経済状況で有意な関連を認めた.また,同村における80歳以上の地域住民610名を対象にCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)を用いた抑うつ傾向との関連をみると身体的自立直やself-esteem得点,主体的な日常生活や社会への関心度,社会参加の程度とCES-D得点では,有意な負の相関関係がみられた.以上の結果から,高齢者のメンタルヘルスには,心身の健康状況や社会的役割,社会的活動性といつだ多くの要因が関連していた.また沖縄の伝統的行事や祭事が高齢者のQOL(quality of life)に影響している可能性が示唆された.今後,伝統的社会風土を基盤とする地域性を考慮した高齢者の健康長寿対策の必要性が示唆された.
著者
石津 宏 豊里 竹彦 太田 光紀 森山 浩司 大城 和久 輿古田 孝夫 津田 彰 矢島 潤平 兪 峰 吉田 延
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.671-680, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
34

本研究は,固有の祭祀行事が生活の中に息づく沖縄県知念村久高島の高齢者を対象とし,主観的幸福態と健康状態を調べ,その関連要因を検討するとともに,唾液を採取し,その中に含まれるS-IgAや,脳内神経伝達物質の主要代謝産物であるMHPGを測定し,心身相関について検討することを目的とした.久高島で年間20数回も行われる神聖な祭祀行事が,高齢者の主観的幸福感,抑うつ感などのメンタルヘルスや免疫系統に与える影響についても検討した.その結果,久高島の高齢者(65〜96歳,50名)の健康度自己評価は前期高齢者,後期高齢者とも高く,健康老人が多かった.また,健康度自己評価とWHO/QOL26,LSI-K,PGCモラールスケールの3尺度間に有意な正の相関がみられた.唾液中S-IgA値は,70代,80代,90代とも高く,年齢による減弱はみられていない.S-IgAに関与する因子は重回帰分析の結果,WHO/QOL26の下位項目「手段的自立」と有意な関連がみられた.神事を経験した高齢女性では,神事(「祭り」)の後には,唾液中free MHPGが減少する傾向こあった(p<0.10).このことから,久高島高齢者は主観的な健康だけでなく,実際の免疫系統も健康であるという心身相関が示唆された.久高島の伝統的な祭祀行事は心身の安らぎを与え,高齢者のメンタルヘルスと健康に重要な関わりをもつことが示唆された.
著者
森山 浩司 石津 宏 輿古田 孝夫 豊里 竹彦 太田 光紀 大城 和久 馬 宏坤 兪 峰 佐和田 重信 柳田 信彦 名嘉 幸一 和氣 則江 吉田 延
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.661-669, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

健康長寿要因としてのメンタルヘルスの重要性を研究するために,長寿地域である沖縄県北中城村と固有の祭祀行事が生活に息づく知念村久高島において,高齢者の主観的幸福感と健康状態の関連要因について検討した.分析対象は,北中城群173名(男性75名,女性98名),久高群77名(男性24名,女性53名)の65歳以上の高齢者である.主観的幸福感(生きがい感)の指標としてPGCモラールスケール,生活満足度尺度K(LSI-K)を用い,健康度自己評価得点に及ぼす関連因子について重回帰分析を行った.健康度自己評価得点と有意な関連要因は,北中城群ではPGOモラール得点,学歴,久高群では老研式活動能力指標,女性,LSI-K得点,小遣いであった.また一方,主観的幸福感に影響を及ぼす関連因子として健康度自己評価,老研式活動能力指標などがみられたことは,心の健康状態と体の健康状態は表裏一体であることを示している.健康度自己評価にPGOモラール得点,LSI-K得点が有意に関連を示したことは,身体の健康状態の生成に主観的幸福感(生きがい感)がヘルスプロモーション要因として関与することを意味する