著者
佐藤 英麿 長尾 吉正 野々村 浩光 古田 昭春 猿井 宏 苅谷 達也 長田 紀淳 澤田 重樹 後藤 紘司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.51-56, 2015 (Released:2015-01-28)
参考文献数
21

塩酸セベラマー (セベラマー) はリン (P) を吸着するだけでなく, 透析患者の動脈硬化の進展を抑制するという可能性が指摘されている. 今回, セベラマーを7年以上, 血中P濃度を調節するため服用している血液透析 (HD) 患者の動脈硬化に与える影響について検討した. 対象は, セベラマーを7年間服用したHD患者 (投与群) 22名と年齢, 性, 糖尿病の有無, 透析歴を適合した非投与群22名である. 定期的に, 足関節/上腕血圧比 (ankle brachial pressure index: ABI), 脈波伝播速度 (brachial-ankle pulse-wave velocity: baPWV), non-high-density-lipoprotein cholesterol (non-HDL-C) を測定し, 動脈硬化に与える影響について検討した. 投与群では, ABI, baPWVともに経年的に有意な変化は認められなかった. 非投与群では投与群に比較して, ABIは3年後より低下し, baPWVは5年後より上昇した. Non-HDL-Cは投与群では1年後より低下し, 非投与群との間に有意差が認められた. ABI, PWVの変化とnon-HDL-Cの変化との間に相関はなく, CRPはABIと負の, PWVと正の有意な相関を認めた. 以上より, セベラマーは血液透析患者の血清Pを低下させるだけではなく, 脂質代謝と炎症に関連し, 動脈硬化指標の増悪を抑制する可能性が示された.
著者
池 睦美 中村 勝 小西 健一 津畑 豊 五十嵐 宏三 齋藤 徳子 森岡 哲夫 島田 久基
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.561-570, 2021 (Released:2021-11-28)
参考文献数
19

【背景】透析患者において睡眠障害の訴えの頻度は高いものの,その実態については十分に解明されていない.【目的・方法】透析患者の睡眠評価のため,維持血液透析患者41名に自記式ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)による主観的評価とアクチグラフによる客観的評価を行った.【結果】PSQIでは,睡眠薬群では全例,睡眠薬なし群でも40%が睡眠障害ありと判定された.アクチグラフでは,入眠障害・中途覚醒の指標が不良で,総睡眠時間が短縮していた.睡眠薬なし群は,睡眠薬群より中途覚醒が多く,これは日中の覚醒困難の訴えと関連していた.【考察】健常人の報告例と比較し,主観では中途覚醒が頻回で,客観には入眠障害を示し中途覚醒も頻回であった.【結論】透析患者の睡眠は不良であり,睡眠薬の服用は中途覚醒に一部奏効しているが,入眠障害は残っている.睡眠薬なし群では入眠障害の訴えが表れにくく,日中覚醒困難を伴う中途覚醒とともに問題となる.
著者
土井 洋平 下村 明弘 猪阪 善隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.477-485, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
9

スクロオキシ水酸化鉄は強力な血清リン低下効果を示す薬剤であるが, 透析患者のリン管理において服薬アドヒアランスも重要であるとされている. 今回スクロオキシ水酸化鉄チュアブル錠から顆粒剤へ切り替えた患者を対象にアンケート調査を行い, 臨床検査所見の推移についても検討した. 対象は92例で85例 (92.3%) が3か月以上切り替え後顆粒剤を継続していた. アンケート調査からは顆粒剤のほうが飲みやすく, 指示された用法・用量通りに服用できる患者が増加することが示唆された. 臨床検査データに関しては血清リン濃度を含めた骨ミネラル代謝, 鉄代謝パラメーター, ヘモグロビンなどに臨床的に有意な変動を認めなかった. スクロオキシ水酸化鉄顆粒剤はチュアブル錠と比較して臨床検査値に大きな変化はなく, 服薬アドヒアランスを考慮すると有用である可能性がある.
著者
富樫 幸太郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.485-491, 2022 (Released:2022-08-28)
参考文献数
15

透析患者において,原疾患が糖尿病性腎症と非糖尿病性腎症での冠動脈疾患・冠動脈石灰化の差異とその相関因子を比較検討した.糖尿病性腎症群154 名,非糖尿病性腎症群129 名の維持透析患者283 名を対象とした.冠動脈疾患の有無は冠動脈血行再建歴で,冠動脈石灰化は冠動脈CT でのAgatston らの方法による冠動脈石灰化スコアで評価した1).冠動脈疾患の有無は糖尿病性腎症群と非糖尿病性腎症群において有意に糖尿病性腎症群で多かったが(p <0.05),冠動脈石灰化スコアは有意差を認めなかった(p=0.396).冠動脈石灰化スコアに相関があったのは透析歴(相関係数0.344,p<0.05)とβ2MG(相関係数0.262,p<0.05)であった.以上より,透析患者における冠動脈石灰化スコアは糖尿病性腎症と非糖尿病性腎症での冠動脈病変の差に影響を与えていないこと,冠動脈石灰化スコアは透析歴と相関することがわかった.
著者
松本 哲哉
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.67-70, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
6

新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)は世界に流行が広がって2年が経過しているにもかかわらず,いまだに収束の見通しが立っていない.変異株が次々に出現し,一度流行が収まってもさらに感染拡大が起こり,2022年に入ってオミクロン株による世界的な流行が認められる.その一方で,私たちはCOVID‒19に対抗する手段も獲得している.すなわち,PCRなどの遺伝子検査や抗原検査もさらに活用されるようになり,新たに内服の治療薬の特例承認も得られた.また,国内ではすでに約8割のワクチン接種が完了しているが,3回目の接種が開始されている.さらにウイルス伝播の特徴が明らかとなり,エアロゾルを含めた感染対策も重視されるようになってきた.今後,現在開発が進められている新たな治療薬やワクチンの承認も期待されることから,これまでよりもCOVID‒19による被害は抑えられる方向に進むと考えられるが,今しばらくの間は警戒を緩めず対処していく必要があると思われる.
著者
岡田 知也 櫻井 進 坂井 理絵子 渡辺 カンナ 岩田 あずさ 菅野 義彦
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.629-636, 2014 (Released:2014-10-28)
参考文献数
30

維持血液透析 (HD) 患者における残腎機能の低下に影響する因子について検討した. 対象はHD患者25名. 透析導入日より60±65日後から蓄尿検査を行い, 尿量200mL/日未満になった時点で残腎機能消失とした. 2年間の月当たりの尿量変化 (ΔUV), 推定糸球体濾過量 (eGFR) の変化 (ΔeGFR) を求め, 臨床指標との関係について検討した. 重回帰分析では2年間の基本体重の変化率がΔUVと有意, ΔeGFRと有意に近い関連を認めた. Cox比例ハザードモデルにより残腎機能消失に関連する因子は, 尿蛋白量, 基本体重の変化率, 初回蓄尿時尿量だった (hazard ratio, 3.30, 0.84, 0.995, p=0.004, 0.04, 0.007). HD患者において, 残腎機能の消失に尿蛋白量, 基本体重の減少が関連していた. 残腎機能の経過と体液, 栄養状態との関係について前向きに検討する必要があると考えられた.
著者
吉川 和寛 矢坂 健 諸岡 瑞穂 伊藤 貞利 小山 純司 後藤 泰二郎 中屋 来哉 渡辺 道雄 相馬 淳
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.387-393, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
16

糖尿病性末期腎不全で血液透析 (HD) 歴10数年の50歳代男性. 10年来の甲状腺腫 (6cm大) に対し甲状腺右葉切除を行い, 濾胞腺腫と診断された. しかし術後8か月のCTと骨シンチで多発骨転移が発見されたため, 濾胞癌と最終診断した. 右大腿骨転移部の疼痛に対し外照射と髄内釘を挿入し, 第11胸椎骨転移による高度脊髄圧迫に対し外照射と後方除圧固定術を施行した. その後放射性ヨウ素 (I-131) 内用療法を検討したが, 療法後約1週間は患者とその排泄物および透析排液により放射線第三者被曝が生じるため, 患者は個室隔離され, 透析室にも入室できないことが判明した. そのため, 内用療法を行うためにはHDを中断せざるを得ず, 事前に腹膜透析 (PD) に移行して対応した. 透析患者の甲状腺分化癌に対するI-131内用療法に関する報告は, 本邦では皆無であり, HDからPDへ移行する理由の一つとして認識される必要があると考えられた.
著者
鶴屋 和彦
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.431-439, 2022 (Released:2022-07-28)
参考文献数
55

わが国では急速に高齢化社会が進展しており,慢性腎臓病(CKD)患者や透析患者の増加と高齢化が進んでいる.それに伴って,認知機能障害者が増加し,その対策が喫緊の課題となっている.CKD 患者の認知症の特徴は脳血管型認知症の頻度が高いことで,その対策には高血圧や糖尿病などの動脈硬化の古典的危険因子の管理による予防が最も重要である.その他,レニン・アンジオテンシン系阻害薬や貧血対策,運動療法,生活習慣改善などの有効性が報告されている.透析法や腎代替療法の違いも認知機能に影響する可能性があり,長時間透析,低温透析,腹膜透析,腎移植による認知機能保持効果が報告されている.認知症対策では透析中止や非導入への対策も重要で,アドバンス・ケア・プランニングの普及と保存的腎臓療法の確立が望まれる.
著者
皆川 明大 酒井 理歌 福留 慶一 久永 修一 年森 啓隆 佐藤 祐二 藤元 昭一
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.685-690, 2014 (Released:2014-11-28)
参考文献数
15

血液透析患者において適正体液量の維持は心血管合併症や生命予後改善の点で重要である. 今回われわれは, 健常者および血液透析患者に体組成分析装置を用いて透析前後に体液過剰・不足量 (OH) の測定を行い, 有用性の検証について横断的研究を行った. 219名の健常者 (平均年齢68.8±8.4歳, 男性69名) と64名の慢性維持血液透析患者 (平均年齢61.7±12.8歳, 男性37名) を対象とした. 健常者平均OHは0.7±0.8L (平均±SD) であり, 海外での健常者のOH基準値 (−1.1~1.1L) に相当した参加者は全体の76.3%であった. 血液透析患者の透析前平均OHは2.9±1.5L, 透析後平均OHは0.6±1.7Lであった. 透析前後でのOH変化量と体重変化量は有意な相関関係を認めた (r=0.61, p<0.05). 一方, 透析前あるいは透析後OHと透析前血圧・心胸郭比との間には, 有意な相関関係は認められなかった. 透析後血中ANP濃度と透析後OH値との間に正の相関関係を認めた (r=0.48, p<0.05). 透析後血中ANP濃度で3群 (高値群>60pg/mL, 中間群40~60pg/mL, 低値群<40pg/mL) に分類し, 透析後平均OHを比較したところ, 血中ANP濃度が高値になるほどOHも高値となった, p<0.05). これらの結果から血液透析患者において, 潜在的に体液過多となっている患者の存在が示唆された. 目標体重検討の際に考慮する心胸郭比や血圧との有意な相関関係は認められなかったが, 透析前後での劇的なOHの変化や血中ANP濃度との関係をみると, OHは血液透析患者の体液量の指標として有用な可能性がある. 今後OHと心機能との関連性など検証し, 有用性についてさらに具体的に検討していく必要があると思われた.
著者
石川 康暢 西尾 妙織 千葉 尚市 佐藤 亜樹子 耒海 美穂 池之上 辰義 中垣 祐 中沢 大悟 伊藤 政典 柴崎 跡也 森田 研 野々村 克也 小池 隆夫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.173-179, 2011-02-28 (Released:2011-03-31)
参考文献数
16

症例は35歳,男性.1998年にGoodpasture症候群にて血液透析を導入されたが,ブラッドアクセストラブルのため2000年より腹膜透析に変更された.2003年12月より高P血症が原因でCa・P積が90(mg/dL)2を超え,右肩に手拳大,左臀部に小児頭大の異所性石灰化を認めるようになった.2004年10月より血液透析へ移行されたが異所性石灰化は改善しなかった.2005年2月24日に母をドナーとした生体腎移植を希望し,当院を初診.石灰化部はGaシンチで集積を認め,排膿よりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出されたことから感染を伴う石灰化と診断され,腎移植は見送られた.以後血液透析の継続,抗生剤治療を行ったが,異所性石灰化は増悪し続けたため,週22時間の長時間透析が施行された.長時間透析開始後,Ca・P積は是正され,異所性石灰化は改善し,2009年1月14日に腎移植が施行された.高度に進展した異所性石灰化は治療困難であるが,その治療として長時間透析は有用であることが示唆された.巨大な異所性石灰化が長時間透析により改善し腎移植を施行できた報告はこれまでになく,貴重な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
鈴木 尚紀 竹田 優希 小西 昂弘 人見 泰正 佐藤 暢 西村 眞人
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.327-333, 2022 (Released:2022-06-04)
参考文献数
20

脳血流の指標とされる前頭葉混合血酸素飽和度(FL‒rSO2)を,透析中に測定した血圧低下症例を3例報告する.症例1は76歳男性,オンライン血液透析濾過を施行した患者であり,開始2時間後より2度の急激な血圧低下とともにFL‒rSO2の低下が認められた.症例2は65歳女性,15分毎に50 mLの補液を行う間歇補充型血液透析濾過(少量頻回補液IHDF)を施行した患者であった.透析開始時より血圧とブラッドボリューム(BV)は低値で推移したが,FL‒rSO2は安定して推移した.症例3は68歳女性,少量頻回補液IHDFを施行した患者であり,BV低下はわずかであったが,開始3時間後より血圧低下を認め,FL‒rSO2はIHDFの補液に反応して変化した.脳血流の調節メカニズムは複雑であり,血圧やBVで管理することは難しいが,透析中のFL‒rSO2モニタリングは脳循環管理の指標として有用である可能性がある.
著者
安田 日出夫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.129-133, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
19

AKIの次世代バイオマーカーのうち, L-FABPとNGALが本邦で保険収載されているが, 臨床現場での利用が限られているのが現状である. AKI治療ガイドとしてのバイオマーカーが確立していないことが最も大きな要因と思われる. 近年, AKIに対する腎代替療法 (RRT) の適切なタイミングでの開始が生命予後を改善することが示されており, RRT導入予測バイオマーカーが確立できれば, 臨床応用が進む可能性がある. 本稿では, 次世代バイオマーカーの概略を解説し, 治療ガイドとしてのバイオマーカーの可能性を検討する.
著者
山本 裕也 中村 順一 中山 祐治 日野 紘子 角城 靖子 宗 紗千子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1159-1162, 2013 (Released:2013-12-26)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

【背景・目的】スチール症候群の診断は自覚症状と他覚所見を統合して行うとされている. 重度の虚血症状は潰瘍や壊死または不可逆的な神経麻痺などを伴うため, 高い診断能力を有する客観的評価法が求められる. 下肢のperipheral arterial diseaseにおいて, 皮膚灌流圧 (SPP) の測定が有用であると報告されており, 治療方針の決定や予後の治癒能力の判断として臨床的に用いられている. 今回, 上肢におけるバスキュラーアクセス (VA) 関連スチール症候群に対して, SPPの診断能力を検討した. 【対象と方法】当院にて内シャントを有する患者106例を対象とした. VAの診察時にスチール症状の有無を問診し, Fontainの重症度分類によりStage I∼IVの4群に分類し, 症状なし群を加えて5群に分類した. SPPは第3指または最も症状の強い指にて測定した. 5群のSPPの平均値を算出した. また, 対象症例をスチール症状の有無により分類し, 累積相対度数によりカットオフ値を算出した. 【結果】対象症例の内訳は, スチール症状なし43例 (AVF : 24例, AVG : 19例), スチール症状あり63例 (AVF : 16例, AVG : 47例) であった. 各群の平均SPP値は, 症状なし群85.8±25.0mmHg (44例), Stage I群48.4±11.7mmHg (28例), Stage II群35.8±13.5mmHg (17例), Stage III群24.7±10.0mmHg (16例), Stage IV群17.3±2.4mmHg (3例) であった. 類積相対度数によるスチール症候群発生のカットオフ値は, 57.5mmHg (感度 : 87.1%, 特異度 : 95.3%, 陽性尤度比 : 18.2) であった. 【結語】SPPはスチール症候群の診断能力が高く, 同病態の客観的検査法として有用である.
著者
伊藤 恭子 高橋 愛里 斎藤 たか子 宮 政明 溜井 紀子 武藤 重明 安藤 哲郎 筒井 貴朗 小川 哲也 永野 伸郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.585-592, 2019 (Released:2019-10-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】シナカルセトをエボカルセトへ切り替え, 血清値, 併用薬剤, 上部消化管 (GI) 症状に対する影響を実臨床下で検討した. 【方法】シナカルセト処方中の血液透析患者147人を, エボカルセトの1mgに一斉に切り替え, 8か月後まで観察した. また, GI症状および服薬アドヒアランスに関するアンケートを実施した. 【結果】切り替えにより, 血清PTHの上昇が認められたが, 血清補正Caの上昇は一過性であり, 速やかに投与前値に復した. 直前のシナカルセト投与量と1か月後のPTHおよびCaの変化量との間に正相関が認められた. また, PTH変化量はCa変化量と正相関し, Caの上昇は骨由来であることが示唆された. 併用薬剤の有意な変化は認められなかったが, 消化管運動改善薬を中止できる症例が散見された. アンケートの結果, GI症状のある患者は切り替え後で減少し, 服薬遵守率は上昇した. 【結語】エボカルセトは, シナカルセトに替わる有用なカルシミメティクスである.
著者
山本 裕也 大川 博永 西川 博幸 森尾 誠人 大川 弘美 増田 尚毅 住友 敬子 赤木 有希 髙本 かおり 辻 純子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.243-247, 2022 (Released:2022-04-28)
参考文献数
11

【背景・目的】エコーによるシャント狭窄の評価は狭窄径による評価が一般的だが,欧米では収縮期最高血流速度(PSV)による評価が用いられている.今回,シャント狭窄に対するPSVの定量評価の有用性を検討した.【方法】自己血管内シャントを有する患者179名を対象とした.長軸断面にて狭窄径およびPSV,短軸断面にて断面積を計測した.各測定項目の脱血不良に対する診断能力をROC分析にて比較し,PSVの相関分析を行った.【結果】ROC分析において,狭窄径と断面積は脱血不良に対する診断能力は高く,両者に差はなかったが,PSVの診断能力は有意に低かった.また,PSVは断面積や狭窄径との相関は弱かった.【結語】エコーによるシャント狭窄の定量評価においてPSVの有用性は見出せなかった.
著者
齋藤 友季子 向井 賢司 貴志 直哉 齋藤 真一 齋藤 純一
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.329-332, 2020 (Released:2020-06-28)
参考文献数
9

水中毒の既往がある統合失調症患者3症例に血液透析を行った. 3例は溢水と低ナトリウム血症の悪化をきたし, 透析導入から1年以内に死亡した. 導入中も多飲を認め, 透析前体重はドライウエイトの10〜30%増加し, 透析前血清Na値は128mEq/L未満となった. 体液量増加による低ナトリウム血症が, 転帰に影響を及ぼしたと考えられた. 水中毒の既往がある統合失調症患者に透析を導入する場合, 多飲に対する有効な抗精神病薬はないうえで水分制限を課す必要があり, 水分制限ができない場合は予後不良になるだろう旨の, 十分な説明と同意を得る必要があると思われた. 体液量増加と低ナトリウム血症の増悪は, 腎機能廃絶による自尿の減少が関与したと思われた. そのため, 透析導入前後に, 自尿保持を目的としたトルバプタンの介入の試みが必要だったかもしれない. また, 低ナトリウム血症に対する透析液補正も考慮する必要があったと思われた.
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.340-343, 2013 (Released:2013-04-09)
参考文献数
14
著者
人見 泰正 鈴木 尚紀 辻 義弘 高田 博弥 山田 将寛 北村 悠樹 佐藤 暢
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.167-173, 2022 (Released:2022-03-28)
参考文献数
15

【目的】シャント狭窄部に駆血を行うことで血管拡張が得られる症例とそうでない症例で,治療成績や検査基準に違いがあるかどうかを検討した.【対象】対象は,非駆血時での狭窄部血管断面積が3.14 mm2(径で2.0×2.0 mm)以下で,エコー下VAIVTを実施した96例である.【方法】対象を,駆血で狭窄部血管径が拡張する血管拡張良好群と拡張しない血管拡張不良群に分類し,両群のVAIVT前での非駆血時狭窄部断面積,FV,RI,および治療での最高拡張圧,過去3年間のVAIVT回数などを統計学的に比較した.【結果・考察】血管拡張良好群の治療効果は血管拡張不良群よりも低い可能性が高く,血管拡張良好群の非駆血時の狭窄径は見かけ上の有意狭窄である可能性が示唆された.非駆血状態で狭窄部の径計測を行い,それのみをVAIVT介入の基準とした場合,過剰な治療介入が存在する可能性がある.治療適応を考査する際には,駆血したうえで狭窄部の径計測を行う必要がある.