著者
川尻 将守 渡邊 尚 井上 愛 岩谷 理恵子 平塚 明倫 保科 斉生 山本 泉 丸山 之雄 大城戸 一郎 横尾 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.31-35, 2021 (Released:2021-01-28)
参考文献数
14

新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019: COVID‒19)が世界中で拡大し,感染による急性腎障害(acute kidney injury: AKI)の発生に伴い透析を必要とする患者が増加している.血液浄化装置を介した感染拡大を防ぐ必要があるが,装置の汚染状況が不明確なため,現在は約10日間装置をウイルスから隔離した状態で静置した後,他の患者へ使用する運用を行っている.今回,COVID‒19患者の血液透析に使用した直後の血液浄化装置に新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2: SARS‒CoV‒2)が存在するか調査し,今後の装置の運用に役立てることを目的とした.血液浄化装置の9か所で採取した検体において逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcription polymerase chain reaction: RT‒PCR)検査はすべて陰性であった.COVID‒19患者に使用後の装置待機期間短縮は慎重に検討すべきであり,検体の採取箇所や環境等の条件を変更した追加調査が必要と考える.
著者
楢村 友隆 佐藤 和弘 堀内 賢一 吉田 周理 井出 孝夫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.85-90, 2009-01-28
参考文献数
17
被引用文献数
1

透析液の製造工程管理において,細菌の汚染状態を把握し対策を講じることが,透析患者への悪影響を防ぐために重要である.細菌検出の手段として,高感度に細菌の汚染状態を把握するためにはメンブレンフィルター法(以下,MF法)を用いて検査することが必要である.今回われわれは,MF法製品である日本ポール社製37mmクオリティモニターおよびマイクロファンネルを,R2A/TGE寒天および液体培地使用下にて用いた.標準菌2菌種(<I>Pseudomonas fluorescence, Methylobacterium extorquens</I>)と臨床現場の透析液中から単離された1菌種(Wild type)のそれぞれを透析液中に播種した試験液を用いて,各種MF法における細菌の測定精度を,細菌コロニー数の計測結果を基にして,平板塗抹法(R2A寒天培地)と比較した.その結果,今回用いたMF法製品と培養方法との組み合わせの全てが,基準となるR2A寒天培地上のコロニー数(<I>Pseudomonas fluorescence</I>(59.3cfu/枚),<I>Methylobacterium extorquens</I>(62.5cfu/枚),Wild type(38.6cfu/枚))に対して,細菌回収率に必要な70%以上を上回っており,良好な回収率を得ることが可能であった.今回評価したMF法製品は,各工程の細菌管理に有効なツールとして十分に活用できるものと考えられた.

1 0 0 0 OA 4. 栄養

著者
長澤 康行 長井 美穂
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.763-767, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
6
著者
櫻井 洋 藤田 広峰 水谷 孝明 相川 潔 澤田 典孝 藤本 克博 櫻井 恒久
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.639-647, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
23

ポリウレタン製AVGの開存成績とそれに関わる因子を後ろ向き検討した. 1次開存と2次開存の他に外科的修正術をアウトカムとした修正1次開存を定義した. 対象は2002年1月から2016年3月までの540例で, 1次開存率は1年35.7%, 2年20.0%, 5年7.5%, 修正1次開存率は1年78.8%, 2年70.4%, 5年55.7%, 2次開存率は1年92.6%, 2年86.0%, 5年74.3%であった. 次に年間平均PTA回数によりPTA未施行群215例, 低頻度群163例, 高頻度群162例に分けた. 低頻度群は高頻度群 (p=0.002) とPTA未施行群 (p=0.002) よりも2次開存率が有意に高かった. 多変量COX比例ハザードモデルで, 2次開存率のハザード比は吻合静脈径が大きいほど有意に低かった (HR=0.626, 95%CI: 0.482-0.813, p<0.001). 当院のポリウレタン製AVGの開存成績を報告したが, それはPTA回数やAVG作製の条件により異なる. 今後もより適正なAVG作製や管理方法の発展が望まれる.
著者
中原 宣子 森田 夏実 内田 雅子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.1215-1221, 2003

日本透析医学会に登録された2,818の透析施設から無作為に300施設を選び, 施設および看護師個人を対象に郵送式アンケート調査を行った. 今回, 看護師個人調査の結果に基づき, 考察を加えながら日本の透析医療と看護の方向性を探った.<br>透析医療に従事する看護師は, 在宅透析など患者自身が積極的に透析医療に参加し, 主体性を取り戻す方向が望ましいと考えている. これは, 最近の患者の透析医療への姿勢に対して日常的に危機感を感じていること, 医療においても商業的サービスがなされようとしていることに対する専門職としての直感的な疑問が今回の結果に表れていると思われた.<br>高齢透析患者については今後も増加が予測されるため, 通院しやすい環境を整えること, 介護保険制度の効率的な利用が望ましく, 超高齢患者の透析導入は慎重論が記された. また, 国内の医療経済事情と透析医療費増大に対する圧縮政策に関連して, 透析患者の一律負担金ゼロについては疑問を有する声が多く, 適切な医療費の負担導入が指摘された.<br>看護の方向性については看護師は治療方針や実践に積極的に参加し, 患者の自己管理や生活指導を主体的に行うべきであるとされた. しかし, 看護師は実際に多くの業務を担っており, その繁忙さから人員不足を感じている. 看護効率と安全性を高めるためにも業務分担の見直しが必要である. また, 看護師はこれらの問題に積極的に関わるための専門性を高める必要性が述べられている. 透析医療に従事する看護師は女性が91%を占めており, 社会あるいは家庭の役割も担うジェンダー問題とも切り離せない. 個々の人生の時期における経験を積みながら人間性を高め, 可能な限り自己研鑽を行い, 看護の質を高めていく努力が重要である.
著者
酒井 友哉 永井 徹 鈴木 恵梨子 土屋 麻衣子 鈴木 美帆 清野 由美子 中嶌 美佳 政金 生人
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.211-217, 2018 (Released:2018-03-28)
参考文献数
23

血液透析患者において, BMIが高いほど死亡リスクが低くなるreverse epidemiologyが広く知られているが, これには栄養障害, 炎症が交絡因子として作用している可能性がある. そこで, 日本人血液透析患者のBMIと死亡率の関連性は栄養障害および炎症の影響を受けるか検討した. 血液透析患者259人と, 栄養障害, 炎症ありと判断した92人を除外した167人を対象に, BMI別の死亡リスクを検討した. BMI 22.0~25.0kg/m2を対照とすると, 全対象者では, BMI 25.0kg/m2以上で有意な死亡リスクの低下は認められず, 栄養障害, 炎症のない対象者では, BMI 25.0kg/m2以上で有意に死亡リスクが上昇した (HR 7.85 [1.77-56.27]). われわれの検討では, 日本人血液透析患者の肥満は死亡リスクの低下を認めることはなく, 栄養障害および炎症のない場合に限り死亡の危険因子であった. 人種差だけでなく, 栄養障害および炎症がBMIと死亡率との関連の重要な交絡因子であることが示唆された.
著者
望月 隆弘 衣笠 えり子 草野 英二 大和田 滋 久野 勉 兒島 憲一郎 小林 修三 佐藤 稔 島田 憲明 中尾 一志 中澤 了一 西村 英樹 野入 英世 重松 隆 友 雅司 佐中 孜 前田 貞亮
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.853-862, 2012-09-28 (Released:2012-10-05)
参考文献数
23

【目的】ビタミンE固定化ポリスルフォン膜ダイアライザ(VPS-HA)が,血液透析患者の貧血や,貧血治療薬(ESA)の投与量に影響を与えるか否かを検討した.【方法】主要なエントリー基準は,機能分類IV型ポリスルフォン(PS)膜を3か月以上使用し,直近3か月はTSAT 20%以上で,ESA製剤の変更がなく,ヘモグロビン(Hb)値は10.0g/dL以上12.0g/dL未満を満たす患者とした.研究参加は48施設で,305症例がエントリーされた.エントリー患者を,VPS-HAに変更する群(151名)と,従来のIV型PS膜を継続する群(154名)の2群に分け(中央登録方式),研究開始時のHb値を維持(10.0≦Hb<11.0g/dLおよび11.0≦Hb<12.0g/dL)するESA投与量を主要評価項目とした.その評価指標としてエリスロポエチン抵抗性指数(erythropoietic resistance index:ERI)を用いた.【結果】研究は1年間実施された.目標Hb値10.0≦Hb<11.0g/dLの範囲では差はなかったが,目標Hb値11.0≦Hb<12.0g/dLの範囲で,VPS-HA群はIV型PS膜群に比して良好なESA反応性を示した.とくにVPS-HA群のDarbepoetin alfa(DA)投与例では,8か月以降で開始時と比較して統計的有意差をもってERIが減少していた.またIV型PS膜群のrHuEPO投与症例では,統計的に5,7,10か月で,開始時と比較してERIが増加していた.VPS-HAとIV型PS膜の群間比較では,11か月目でVPS-HA群のDA投与例でIV型PS膜群に比して,ERIが有意に減少していた.【結語】目標Hb値11.0≦Hb<12.0g/dLの範囲で,ビタミンE固定化膜は,IV型PS膜に比べてDA投与量が減少しており,ESA投与量軽減効果が期待できる(UMIN試験ID:UMIN000001285).
著者
下出 眞知子 吉永 充代 林 縝治 鈴木 はる江 雑賀 保至
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.101-107, 2015 (Released:2015-02-28)
参考文献数
23
被引用文献数
1

維持透析患者のたんぱく摂取基準量は1.0~1.2g/kg/日 (2007年度基準) であるが, たんぱく摂取量が増えると血清リンが上昇する問題が生じる. 本研究は外来通院透析患者77例の標準化蛋白異化率nPCRの1年間平均をたんぱく摂取量とし, 0.6~0.8未満 (L群), 0.8~1.0未満 (M群), 1.0以上 (H群) の3群で血液データ, 栄養状態, 精神的負担度を比較し, 透析患者のたんぱく摂取量を心身健康科学の視点から検討した. 結果, 血清アルブミン, BMI, エネルギー摂取量および精神的負担度の不安尺度と健康生成志向尺度は3群間に差はなかった. 血清リン, カリウム, 尿素窒素はnPCRの低い群ほど有意に低く, KDQOL-SFでは社会生活機能, 心の健康, 腎疾患の日常生活への影響, 腎疾患による負担においてL群で有意に良好であった. nPCR 1.0未満は, 栄養状態を損なわず, かつ精神的負担が少なく, 血清リンを抑えられるたんぱく摂取量と考えられた.
著者
志熊 聡美 花房 規男 髙橋 郁太 吉嶺 朝陽 土谷 健
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.453-459, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
27

【目的】経皮的血管拡張術 (PTA) の間隔を延ばすことで, 患者のQOL向上, 最終的には医療費の削減につなげられる可能性を考慮し, PTA後, 再PTAに至るまでの期間に影響する要因を検討した. 【方法】2017年1月1日~2019年12月31日にPTA施行歴 (初回PTAを除く) のある142名 (女性43名, 男性99名) を対象に, ① PTAで使用するバルーンの種類や径などのPTA因子, ② 原疾患や透析間体重増加量や血圧, 検査値などの患者因子, ③ 透析条件, 内服薬・注射薬の治療因子が, それぞれPTA施行間隔に影響するかを, 性別ごとの層別解析も含めて検討した. 【結果】PTA時の拡張圧が高いほどPTA間隔が有意に短かった (ハザード比1.05 (95%信頼区間1.01-1.10), p=0.012). また, ワルファリン内服群でPTA間隔が有意に短かった (ハザード比2.25 (1.27-3.97), p=0.005). 一方, 性別はPTA間隔との間に有意な関連はみられなかった. 【結語】PTA間隔に影響する独立因子として, 拡張圧とワルファリンが抽出された. もともとの血管の状況と関連している可能性が示唆されるが, PTA時には血管を愛護的に扱うよう心掛けたい. 一方で, 患者自身の努力でPTA間隔を改善しうる要因は検出されなかった.
著者
羽賀 里御 浦辺 俊一郎 深澤 桃子 加藤 亜輝良 松沢 翔平 加藤 基子 檜山 英己 栗井 阿佐美 南雲 三重子 尾崎 美津子 古森 くみ子 清水 美智江 水品 伊津美 山本 茉梨恵 白鳥 恵 巽 亮子 倉田 康久 兵藤 透
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.465-470, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
13

当院はCOVID-19感染者の多い神奈川県にある無床外来維持血液透析クリニックである. 透析患者は学会指針のマスク着用, 手洗い等の標準予防策を遵守し通院している. 今回, 血液透析患者1例がCOVID-19に罹患していることが判明した. この普段からの標準予防策に加えて, 発生から2週間, 感染者が出た透析時間帯の患者は時間帯を固定, 同一メンバーとし, 不要不急の検査, 受診, 手術は延期し, 感染防御対策を行うこと (集団的隔離透析) を補完的に加えることで, 二次感染が防止できたと考えられる事例を経験した. 特にマスク, 手洗い等の普段からの学会指針の基本を遵守することが二次感染防止に非常に有効と考えられた.
著者
大崎 雄介 樺山 繁 山本 多恵 宮崎 真理子 中山 昌明
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.429-438, 2020 (Released:2020-08-28)
参考文献数
32

【背景・目的】2018年の厚生労働省・腎疾患対策の主目標に透析患者を含む慢性腎臓病患者のquality of life (QOL) 向上が掲げられたが, 具体的なQOL内容やその評価法は示されていない. そこで, 本邦の研究実態を確認するために, 透析患者QOLに係る研究内容について文献的調査を行った. 【方法】医中誌にて血液透析, QOL, 生活の質のキーワードで過去10年間の検索を行った. 該当489件のうちQOL研究77論文の内容を確認した. 【結果】QOL研究対象は包括的 (53件) と症状特異的 (疲労感, 掻痒感, 睡眠障害, 消化器症状, 心理等) なものが含まれ, 評価尺度は前者で8種類, 後者で42種類の尺度が単独あるいは複合で使用されていた. 【結論】本邦の透析患者QOL研究対象は広く, また研究目的に沿ってさまざまな評価尺度が使用されていた. 今後, 研究間の結果比較のために使用尺度の標準化が必要と考えられる.
著者
山村 雄太 古市 賢吾 和田 隆志
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.123-128, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

急性腎障害 (acute kidney injury: AKI) は, 腎予後・生命予後のみならず, 在院日数の延長や医療費の増大から医療経済的にも重要な問題である. 2004年以降, RIFLE分類・AKIN分類・KDIGO分類とAKIの診断基準が提唱された. 統一された基準を用いた解析が可能となり, 先進国における院内発症AKIを中心に多くの報告が集積され, AKI発症前の腎機能障害・蛋白尿が, AKIの発症に関して強いリスク因子となることが明らかとなってきている. 多国間共同研究であるThe 0by25 initiativeもスタートし, 発展途上国を含めた院外発症AKIの情報も集積しており, AKIの過半数は院外発症であることも明らかとなっている. 今後はより一層, 院外発症AKIの早期認識に向けた対策に加え, AKIの重要性について, 一般人口も含めて広く啓蒙していくことが重要である.
著者
小田 寛 大野 道也 大橋 宏重 渡辺 佐知郎 横山 仁美 荒木 肇 澤田 重樹 伊藤 裕康
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.1231-1236, 2000

慢性透析患者では心血管系合併症, とくに虚血性心疾患 (IHD) の発症頻度が高い. 今回, 血液透析 (HD) 患者と持続性自己管理腹膜透析 (CAPD) 患者の凝固, 線溶系の各因子を測定し, IHDとの関連性について検討した.<br>平均年齢48.5歳の健常者20名 (男性9名, 女性11名), 平均年齢52.7歳のHD患者20名 (男性8名, 女性12名), 平均年齢47.8歳のCAPD患者30名 (男性18名, 女性12名) を対象とした. 平均透析期間は45.2か月と43.8か月で, 基礎疾患はいずれも慢性糸球体腎炎である. 凝固系因子として第XII因子活性, 第VII因子活性, フィブリノーゲン, トロンビン・アンチトロンビンIII複合体 (TAT) を, 線溶系因子としてプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1 (PAI-1), α<sub>2</sub>プラスミンインヒビター・プラスミン複合体 (PICテスト), Dダイマーを測定した. またIHDは, (1) 心筋梗塞, 狭心症の有無, (2) 無症候性心筋虚血は運動負荷, 薬物負荷後のタリウム心筋シンチグラフィーの所見から診断した. 以下の成績が得られた.<br>(1) 健常者に比較して透析患者の第VII因子活性, TAT, フィブリノーゲンは高値を示し, 凝固亢進状態にあった. またHDに比較してCAPD患者の第VII因子活性とフィブリノーゲンはさらに上昇していた. (2) 透析患者のPIC, Dダイマーは高値を示し, 線溶亢進状態にあった. なおHDとCAPD患者の間に線溶系因子に有意差は認められなかった. (3) IHDを有する透析患者の第VII因子活性, フィブリノーゲンは上昇していた. この傾向はCAPD患者でより顕著であった.<br>以上より, 透析患者の凝固・線溶系は亢進状態にあり, この傾向はCAPD患者で顕著であった. なかでも第VII因子とフィブリノーゲンはIHD発症の危険因子であることが示唆された.
著者
安藤 亮一
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.172-173, 2013-01-28 (Released:2013-03-22)
参考文献数
6
著者
常世田 智明 稲熊 祐輔 宮城 愛 辻本 育子 中嶋 貴 瀬嵜 良三 氏平 伸子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.87-92, 2017 (Released:2017-01-28)
参考文献数
17

症例は59歳の初診時に腎機能障害を認め血液透析導入. 同時期に心機能障害, 2型糖尿病も指摘. 腎生検未施行であり, 糖尿病性腎症と臨床診断していた. しかし, 「頭痛, 嘔吐, 感音難聴, るいそう, 知能低下, 母が心疾患であること, 血中乳酸値が繰り返し2mmol/L以上」などからミトコンドリア病を疑い, 65歳時に遺伝子検査を提出. tRNA-Leu (UUR) 3243A→G変異を認め, MELASが疑われた. その後, 遷延する低血糖をきたし死亡. 剖検を行ったが, 低血糖の原因となりうる形態的な病変は確認できなかった. 腎臓は廃絶状態であり, 腎不全に至った正確な病変の判定が困難であるが, ミトコンドリア病に関連した腎不全の可能性があると思われた. 心筋, 脈絡叢上皮細胞の電子顕微鏡検査にて, 異常なミトコンドリアの増多を認め, 病理学的にもミトコンドリア病の所見を示していた.
著者
田仲 紀陽 藤原 功一 古賀 伸彦
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.1273-1283, 2004-05-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
22
被引用文献数
3 1