出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.898-903, 2011-09-28 (Released:2011-10-26)
参考文献数
35
著者
川本 進也 陳 莉薇 祝田 靖 古川 智洋
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.429-433, 2007-05-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例 : 82歳, 女性. 現病歴 : 1998年に当院で血液透析を導入され他院にて通院透析中であった. 2006年4月17日より右眼瞼に発疹, 疼痛が出現し近医皮膚科で帯状疱疹と診断. 透析患者であるためアシクロビル軟膏で対処されるも疼痛我慢できず21日再診. 透析担当医と相談の上バラシクロビル1,000mg毎透析終了時で処方され内服. 翌日午前より歩行障害, 呂律障害, せん妄を認め当院救急外来受診. 血圧168/62mmHg, 体重30kg, 意識障害, せん妄を認めた. 頭部CT・MRI, 髄液検査, SPECT, 脳波などで脳血管障害, ヘルペス脳炎などを鑑別, 除外した上で, アシクロビル脳症と診断. 直ちにバラシクロビルを中止し血液透析を施行. 計4回の透析で症状は完全に消失し退院した. 結語 : バラシクロビルは透析患者推奨投与量においても小柄な高齢患者では神経症状を呈しうる. 体格, 年齢も考慮した上での薬物投与が必要と考えられた. 日本人透析患者への推奨投与量はこれまでの添付文書記載量よりさらに減量した量 (250mg/日) が妥当と考えられた.
著者
小根森 元 川西 昌弘
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.15-20, 2020 (Released:2020-01-28)
参考文献数
14

2018年12月の日本透析医学会統計調査委員会の報告によると, 新規透析導入患者数は2015年以降増加傾向となったと報告された. 導入患者の増加には, 人口高齢化の影響が大きい. そこで透析原疾患の経年的推移と高齢者 (80歳以上) の導入時原疾患の特徴を明らかにするため, 過去7年間の日本透析医学会の統計調査 (CD-ROM版) のデータを用い, 年齢3区分別に原疾患別導入患者数の検討を行った. その結果, 20歳から80歳未満の原疾患割合と罹病率 (透析導入率) は, 糖尿病性腎症, 慢性糸球体腎炎で減少, 腎硬化症, 不明は増加し, その他は横ばいであった. そして, 導入患者の増加は80歳以上の患者数の増加によるものであった. この患者数の増加は高齢者人口の増加が主因であり, 80歳以上の罹病率を増加させている原疾患も関与していると考えられた. 今後は, 高齢者への対策が, 罹病率 (透析導入率) を減らすためにさらに重要になると思われる.
著者
西谷 陽志 坂井 瑠実 申 曽洙 森上 辰哉 清水 康 稲田 紘
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.287-295, 2010-03-28 (Released:2010-04-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1 6

透析患者に対し,治療を円滑に行うために必要なシャントの日常管理のうちでも,特に狭窄の診断は極めて重要である.シャント音の聴診はシャント狭窄を簡便に診断する方法として日常的に用いられている.臨床経験上,狭窄の進行に伴って高調なシャント音が聴診されることが知られているが,この診断には客観的な基準がなく,聴診者の主観に頼っているのが現状である.そこでわれわれはこの診断基準の確立に向けた基礎的研究として,シャント音を周波数解析し,狭窄度と周波数スペクトルの関係について解明することを試みた.方法としては,まず患者のシャント(動静脈吻合)の吻合部より中枢部に向けて3~6箇所の部位で複数のシャント音を記録し,短時間フーリエ変換により周波数スペクトルを算出した.次にシャント狭窄度とシャント音の周波数スペクトルとの関係をスペクトルの平均値の有意差により解析した.その結果,吻合部(シャント狭窄部より上流域)および狭窄部上では,狭窄の進行に伴い高周波数帯域のスペクトルの割合が有意に大きいことが確認された.一方,中央部(狭窄部より下流域)では基本的に狭窄度と周波数帯域との間に有意差は確認できなかったが,狭窄部直後の部位については中間周波数帯域のスペクトルを中心に有意に大きくなることが確認された.流体力学理論上,特に吻合部,狭窄部,また,狭窄部直後の中央部では狭窄の進行に伴って乱流が発生し,その影響で高周波数帯域のスペクトルが上昇するものと考えられる.以上の結果から,シャント音による客観的な狭窄度診断のアルゴリズムが確立できることが期待された.
著者
重松 武史 牧尾 健司 中村 拓生 佐野 博之 上村 健登 西庵 良彦 宮本 孝
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.593-598, 2019 (Released:2019-10-30)
参考文献数
17

症例は75歳男性, 透析歴は17年. 2年前よりγ線滅菌PS膜によるOn-LineHDFを施行し, 安定した経過であったが, ある時期から開始直後に収縮期血圧が70mmHg台へと低下し気分不良を伴う透析困難症となった. まずPS膜の不適合を疑い, HDモードに変更し, CTA膜やEVAL膜 (いずれもγ線滅菌) と膜素材や抗凝固薬を変更したが改善には至らなかった. 治療初期に除水速度=0mL/hやECUMも試したが血圧低下を防ぐことはできなかった. BV計でBV波形を観察したところ, 治療開始直後に異常に上昇する波形が得られ, 膜の不適合が原因で血管透過性が亢進していると判断した. γ線滅菌膜ではなく高圧蒸気滅菌PS膜に変更したところ, 血圧低下や気分不良は消失し安定した治療が行えた. BV波形も異常波形ではなくなった. 今回は同一素材で滅菌法が異なる膜への変更が有効であり治療条件は滅菌法も意識することが重要である. また治療条件変更の有効性の判定に, BV計の波形観察が有用であった.
著者
福田(日原) 桂 伊與田 雅之 齋藤 友広 荒井(布田) 典子 和田 幸寛 鈴木 幸恵 木崎 順一郎 恩田 秀寿 高橋 春男 柴田 孝則
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.379-385, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
22

症例は30歳代の女性. 4日前から右眼球運動痛, 右歪視症, 右眼下方視野狭窄を認め, 近医を受診した. 同日夜間から右眼の急速な視力低下がみられ, 指数弁まで低下した. 血液検査では抗アクアポリン4 (aquaporin-4: AQP4) 抗体陽性, 眼窩造影MRIにて右視神経に高信号を認め, 視神経脊髄炎関連疾患, 中でも抗AQP4抗体陽性視神経炎と診断した. 近医にてステロイドパルス療法を2クール施行, 後療法としてプレドニゾロン40mg/日の内服を開始したが, 視力, 視野の改善は得られず, 血漿交換療法施行目的に当院転院となった. 計7回の二重膜濾過血漿交換 (double filtration plasmapheresis: DFPP) を施行し, 抗AQP4抗体は陰性化, 視力改善, 視野の拡大を認めた. DFPPはステロイド治療抵抗性の抗AQP4抗体陽性視神経炎に有用な治療法の一つであると考えられた.
著者
粟屋 牧子 加藤 修一 狩野 契 渡辺 裕輔 岡田 浩一 鋤柄 稔
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.343-348, 2019 (Released:2019-06-28)
参考文献数
18

がんだけではなく非がん疾患も含めた終末期の血液透析患者において, 呼吸困難は頻度が高く苦痛が大きい症状である. 呼吸困難の緩和のためにオピオイドが用いられることがあるが, 透析患者では代謝物の蓄積による副作用の懸念から, 使用成績についての報告が少ない. 今回われわれは, 呼吸困難を訴えたがんおよび非がん疾患終末期の血液透析患者7症例に対して, 呼吸困難の緩和を目的にオキシコドンを経口あるいは持続皮下注射で投与した. 開始時の平均投与量は注射換算で3.8mg/日, 平均最大投与量は19.7mg/日であった. Support Team Assessment Schedule日本語版における評価で, オキシコドン投与により呼吸困難の有意な改善を認めた. 呼吸抑制など有害事象の発現はなく安全に使用可能であった. 少量から漸増して投与することで, オキシコドンは血液透析患者にも比較的安全に使用することが可能であり, 呼吸困難の緩和に有効な治療選択肢の一つになり得る.
著者
藤尾 耕三 眞井 佳子 石井 真澄 桃谷 直美 藤井 正司 椎木 和子 高須 伸治
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.359-365, 2014 (Released:2014-06-28)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

血液透析患者では, 栄養障害が予後を悪化させるため, 栄養状態を評価して積極的に治療介入することが勧められている. Mini nutritional assessment short form (MNA-SF) による栄養障害スクリーニングの有用性を検討するために, 65歳以上の維持血液透析患者82人をMNA-SF, malnutrition-inflammation score (MIS), geriatric nutritional risk index (GNRI) で評価し, 2年後までの全死亡を前向きに調査した. MNA-SFのスコアはMISやGNRIと有意に相関し (ρ=−0.660, p<0.001, ρ=0.482, p<0.001), MNA-SF, MIS, GNRIにより, それぞれ55%, 59%, 35%が栄養リスク群に抽出された. 2年間で14人が死亡し, 栄養リスク群の相対危険度はそれぞれ10.7, 2.6, 4.6であり, MNA-SFとGNRIの栄養リスク群が有意 (p=0.002, p=0.004) に死亡と関連した. Receiver operating characteristic解析では, MNA-SFのスコア, MIS, GNRIのいずれも有意に死亡と関連したが, MNA-SFのarea under the curveが最大 (0.829, 95% confidence interval 0.723-0.935) であった. ロジスティック解析で, MNA-SFは食事量 (p=0.048) と神経・精神的問題 (p=0.005) が, MISは食事量 (p=0.033) と身体機能 (p=0.035) が有意に死亡と関連した. 高齢者向けに開発され, ベッドサイドで実施できるMNA-SFは, 高齢血液透析患者において, 予後と関連した栄養障害スクリーニング法であると考えられた.
著者
佐々木 修 釘宮 敏定 田所 正人 田浦 幸一 新里 健 草場 照代 松隈 玄一郎 船越 衛一 河野 茂 原田 孝司 宮崎 正信 宮原 嘉之 大園 恵幸 錦戸 雅春 松屋 福蔵 齊藤 泰 高木 正剛
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-43, 1998
被引用文献数
1

近年, 透析患者の増加に伴い, 動脈硬化性疾患の合併は大きな問題となっている. 腹部大動脈瘤 (abdominal aortic aneurysm, AAA) や閉塞性動脈硬化症 (arteriosclerosis obliterans, ASO) は, その治療として外科手術を要することがあり, 透析患者の生命予後, quality of lifeの観点からも重要な疾患である. 今回我々は, 当院における透析患者のAAA4例およびASO3例の血行再建術症例の臨床的検討を行った.<br>AAAの症例は年齢45-61歳で, 全例高血圧を伴い, 透析導入後6か月-6年であった. 2症例が腹痛ないし背部痛を訴えたが, 2症例は腹部腫瘤触知が発見の契機であった. 4例ともinfrarenal typeで, 3例にY graft, 1例にstraight graft置換を施行し, 全例とも予後は良好である.<br>3例のASOは年齢51-67歳で, 2例で高血圧を伴い, 発症は透析導入後5年4か月-19年3か月とAAAに比し長期間の症例が多かった. いずれの症例も, 下肢痛・間歇性跛行・足趾壊死などの症状, 所見を認めた. 2例は左側のiliac~popliteal arteryの閉塞で, 自己大伏在静脈によるfemoro-popliteal bypass術を施行, 他の1例は右側のcommon~external iliac arteryの閉塞で, femoro-femoral cross over bypass術を2回施行した. 術後1例は予後良好であるが, 2例はASO以外の死因で死亡した.<br>近年, 手術手技の向上および周術期の透析管理の進歩により, 透析患者に対し安全に手術が施行し得るようになってきたが, ASOの症例は, 必ずしも予後が良好でない場合もあり, 治療法選択, 手術時期に対するさらなる検討が必要と思われた.
著者
鎌野 千佐子 大沢 弘和 橋本 和政 坂田 紗弥子 山本 美生 吉田 秀光 齋藤 サビーネ 京子 木嶋 祥一郎 柏木 哲也 飯野 靖彦 片山 泰朗
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.573-580, 2009-08-28 (Released:2009-10-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

血液透析(hemodialysis;HD)で血液がダイアライザーと接触すると補体,凝固・線溶系,血小板,白血球,サイトカインなどの活性化がおこる.このため血小板や白血球はHD開始直後に低値を示し,HD終了後にほぼ前値へ回復するとされている.われわれは,当院入院中の維持HD患者でダイアライザーが原因と考えられる血小板数の低下を認めた2症例を経験した.いずれの症例も,発症時にFPX®(polysulfone membrane;PS膜)を使用していた.血小板数はHD終了ごとに減少していたためダイアライザーを変更すると,HD後に血小板が減少することはなくなり,血小板数は回復した.経過および検査結果よりdisseminated intravascular coagulation(DIC)は否定した.1症例目は抗凝固剤heparinの投与は一切なく,2症例目ではheparinを中止することなくダイアライザーの変更のみで血小板数が回復したことからheparin induced thrombocytopenia(HIT)は否定した.薬剤歴および骨髄所見から薬剤性骨髄抑制も否定的であった.患者の状態が安定したところで,インフォームドコンセント(informed consent;IC)を得て再度FPX®を使用したところ,HD後に血小板数は著明に低下した.Heparinの投与量に関してはactivation coagulating time(ACT)を用いて評価を行った.FPX®は,生体適合性が比較的高いと考えられている.しかし,2症例ともFPX®使用開始後に血小板減少を認めており,血小板数はHD後に減少する傾向がみられ,ダイアライザーの変更のみで血小板数が前値へ回復した.またFPX®を再使用した際HD後の血小板数が半減した.このため血小板数の減少にはFPX®の関与が示唆された.
著者
江口 圭 池辺 宗三人 金野 好恵 山田 祐史 金子 岩和 峰島 三千男 秋葉 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.769-774, 2007-09-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
10
被引用文献数
5 7

透析効率の飛躍的な向上の背景には, 高性能透析器やHDFフィルタなどのデバイスの開発ならびにその性能を引き出すための治療モード, 治療条件の考案をあげることができる. しかし, 個々の患者に対する適正な溶質除去を考えた場合, その対象となる患者体内環境の影響も重要な因子の一つと考えられる. 限られた透析時間の中で行われる除水操作は, しばしば血圧低下や筋痙攣をもたらし, 末梢循環不全の状態を作り出すことになる. 今回われわれは, 間歇的な補液を繰り返すことによって, 一時的に末梢循環を改善し, (1) 血液分配の是正, (2) 体液の撹拌, (3) 溶質の洗い出し効果促進による除去効率の向上を目的とした新しいHDF療法 (間歇補液HDF : intermittent infusion hemodiafiltration, I-HDF) を考案した. 通常のボトルタイプHDFは置換補充液を静脈側血液回路部から連続注入するが, I-HDFでは間歇的な補液操作 (3~4回/hr, 一回400~600mLの急速補液) を行い, 患者の循環血液量を約5%の範囲で振幅させた. 対象は維持透析患者7例にI-HDFと従来のHDFをクロスオーバーで施行し, 各溶質のクリアスペースを比較した. この際, 置換補充液は各セッションで同量とした. 結果はクリアスペースが増加する群と不変な群の2群に分れた. 皮膚表面の微小循環を評価できるレーザー血流計により, 間歇補液後の末梢循環の改善が得られた4例を再評価すると, クリアスペースにおいてI-HDFの方が高値を示し, 特にクレアチニン, 尿酸, β2-MGで有意な差が認められた. この4例はいずれも安定した維持透析患者であったが, 間歇補液の効果が認められなかった3例は, (1) 高齢者 (74歳), (2) 閉塞性動脈硬化症合併, (3) 僧帽弁閉鎖不全合併の症例であった. ゆえに種々の患者背景が間歇補液の効果に相違をもたらすものと考察した. 今後, 従来からの外部デバイスに依存した溶質除去の手法に加えて, 患者の末梢循環を視野に入れた治療法を考案する必要がある.
著者
峰島 三千男 江口 圭 宍戸 寛治 高橋 進 久保 司 川口 洋 蔀 幸三 柴垣 圭吾 須賀 喜一 長尾 尋智 高田 幹彦 田岡 正宏 佐藤 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.351-360, 2015 (Released:2015-06-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

透析中の末梢循環障害是正や急激な血圧低下防止を目的に間歇補充型血液透析濾過 (intermittent infusion hemodiafiltration : I-HDF) が考案された. 今回われわれは逆濾過透析液を用いたI-HDFの臨床効果を前希釈法On-line HDF (以下Pre-HDF) と比較するため, 前向き多施設共同臨床研究を実施した. 文書にて同意が得られた患者を同一施設内で2群に割付けし, 並行群間比較を行った. その際, ① 年齢 (±5歳), ② 基礎体重 (±5kg), ③ 糖尿病の有無をマッチングさせ, 36例 (18ペア) を対象とし臨床症状, QOL, 溶質除去などの観点から検証した. その結果, 臨床症状, QOLにおいて両群に有意差は認められなかった. 血液透析からの変更後, I-HDF群, Pre-HDF群とも治療が継続するにつれて収縮期血圧減少率の低下, 処置発生率低下傾向がみられた. また, I-HDFはPre-HDFに比べ中・大分子溶質の除去には劣るもののアルブミン漏出量の少ない溶質除去特性が確認された.
著者
高原 健 難波 倫子 高橋 篤史 畑中 雅喜 山本 毅士 竹治 正展 山内 淳
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.371-376, 2008-06-28
参考文献数
16
被引用文献数
1

【目的】抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎におけるびまん性肺出血合併例の予後は一般的に不良である.強力な免疫抑制療法が推奨されているが,感染症による死亡が多くみられることから,免疫抑制の程度についてはなお明確な基準はない.肺出血合併ANCA関連血管炎に対し,免疫抑制薬を使用することなく,ステロイド治療に血漿交換(PE)を併用し,その有用性について検討した.【方法】過去10年間に当院で経験したMPO-ANCA型急速進行性腎炎22例中,肺出血を合併した7例(男性2例)を対象とした.全例にPEを施行し,肺出血が改善するまで継続した.全例にステロイドパルスおよび後療法としてステロイド内服治療を行った.【結果】平均年齢は72&plusmn;9歳,入院時MPO-ANCA titer 569&plusmn;581EU,血清Cr 5.7&plusmn;3.3mg/dL,観察期間は34&plusmn;22か月であった.肺出血の初期症状として全例に血痰があり,低酸素血症を伴う強い呼吸困難,急激な貧血の進行,胸部CTにてびまん性間質影を認めた.3例に人工呼吸管理を要した.血痰出現から血漿交換開始までの期間は2.9&plusmn;2.0日,平均3.5&plusmn;1.3回のPEを行った.肺出血は全例治癒し,退院時に人工呼吸や酸素吸入を要する例はなかった.入院時全例に腎機能障害を認め,腎生検を施行した2例はpauci-immune半月体形成性腎炎で,5例が透析を必要とした.そのうち3例は維持透析に移行したが,ほかの例では腎機能の改善を認めた.重篤な感染症は認めず,16か月後に誤嚥性肺炎で失った1例を除き全例生存中である.【まとめ】肺出血合併ANCA関連血管炎は予後不良とされているが,早期診断の上,PEとステロイドの併用療法により予後を改善させ得ると考えられる.
著者
宗像 昭子 鈴木 利昭 新井 浩之 横井 真由美 深澤 篤 逢坂 公一 松崎 竜児 三浦 明 渡辺 香 森薗 靖子 権 京子 金澤 久美子 宮内 郁枝 鈴木 恵子 久保 和雄 尾澤 勝良 前田 弘美 小篠 榮
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.13, pp.1525-1533, 2001-12-01
参考文献数
14
被引用文献数
1

今回我々は, 当院で維持血液透析を施行している安定した慢性腎不全患者59名を対象患者として, ベッドサイドにて簡便に使用できるアイスタット・コーポレーション社製ポータブル血液分析器i-STATを用いて, 透析前後で全血イオン化Ca (i-Ca) 濃度を測定し, 血清T-Ca濃度との関係について検討し, 以下の結果を得た.<br>1) 透析前後における血清T-Ca濃度, 全血i-Ca濃度は, それぞれ9.43±0.90→10.54±0.70mg/d<i>l</i> (p<0.05), 1.26±0.10→1.30±0.07mmol/<i>l</i> (p<0.0001) と, いづれも有意な増加を示した. 2) Caイオン化率は, 53.43±0.03→49.55±0.04% (p<0.001) へと透析後有意に低下した. この原因として, 血液pHの変化の影響が考えられ, 血液pHとCaイオン化率との間には明らかな負の関係が認められた. 3) 透析前後における, 血清T-Ca濃度と全血i-Ca濃度の関係について検討したところ, 透析前ではy=7.507x+0.015 (r=0.839; p<0.001) と強い正の相関が認められたが, 透析後においては, 全く相関が認められなかった. この点について, pHならびにAlbを含めた重回帰分析法を用いて検討したところ, T-Ca=3.369×i-Ca+5.117×pH-32.070 (r=0.436, p=0.0052) と良好な結果が得られた. 4) 透析前後の全血i-Ca濃度の測定結果から, 容易に血清T-Ca濃度を換算できるノモグラムならびに換算表を作成した.<br>以上の結果より, ポータブル血液分析器i-STATを用いた, ベッドサイド ("point-of-care") での全血i-Ca濃度の測定とノモグラムの利用は, 透析室においてみられるCa代謝異常に対して, 非常に有用であると考えられる.