著者
宮﨑 勇輔 小尾口 邦彦 福井 道彦 加藤 之紀 和田 亨 横峯 辰生 小田 裕太 大手 裕之
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.255-258, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

肺血栓塞栓症による心停止に対し,機械的胸部圧迫装置が有用であったが,外傷性肝・脾損傷を併発し,開腹手術が必要となった症例を経験した。症例は73歳女性で,呼吸困難感を主訴に救急搬送され,来院後に心停止となった。直ちに心肺蘇生を開始,機械的胸部圧迫装置AutoPulse®(旭化成ゾールメディカル)を使用した。気管挿管・アドレナリン投与を行い自己心拍再開が得られた。心停止は肺血栓塞栓症によるものと診断した。ICU入室後は,血行動態は比較的保たれていたが,約15時間後から不安定となり,貧血の進行も認めた。腹部超音波検査・CTを実施し,多発肋骨骨折に伴う外傷性肝・脾損傷による出血性ショックと診断した。開腹し,脾臓摘出術と肝裂創部凝固止血術を実施した。症例は肥満(BMI 38 kg/m2)だったこともあり,AutoPulse®のバンド位置が尾側にずれ,合併症を生じたものと推測された。機械的胸部圧迫装置の使用では特性を十分理解し,合併症に注意する必要がある。
著者
金澤 綾子 内田 貴之 相原 啓二 蒲地 正幸
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.19-23, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)
参考文献数
10

症例は77歳,女性。腰椎固定術後,入院中にショックとなりICUに入室した。入室時は心拍数50 /minの高度徐脈,血圧測定不能の状態であった。採血上,イオン化マグネシウム(iMg2+)2.34 mmol/Lの高マグネシウム(Mg)血症を認め,これがショックの原因と考えられたことから,緊急血液透析を導入した。血中Mg濃度の低下とともに徐脈は改善し,ICU入室3日目にはショックを離脱した。本症例においてはICU入室25日前より麻痺性イレウスの診断で酸化Mg製剤の内服が開始された経緯があったが,血中Mg濃度は徐々に上昇したのではなく,ICU入室当日に急激に上昇していた。この急激な濃度上昇は,イレウスに伴って腸管粘膜からのMg吸収が亢進したためと推測された。酸化Mg製剤の投与に際しては,腸管からの吸収促進の病態がある場合には慎重に行う必要がある。
著者
日本集中治療医学会危機管理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.191-201, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
4

多発する自然災害や新型コロナウイルス感染症の流行により,多数の重症患者が同時に発生する危険性が高まっている。日本集中治療医学会の危機管理委員会は,ICUの災害対応の指針とするべく「災害時の集中治療室 日頃の準備から発災後まで─ICU対応ガイダンス」を2020年に発刊した。しかし,本邦のICUでの災害準備体制や,実際の多数患者発生時の対応状況は明らかでない。今回我々は,本邦のICUでの災害に対する準備状況や,東京オリンピック・パラリンピック期間中の新型コロナウイルス感染症による多数患者発生時に全国のICU が行った対応を調査するために,アンケート調査を行った。その結果,災害準備としての,段階的なサージ・キャパシティの設定,ICU拡張や複数ICUの統合運用の計画,災害時のICU 入退室基準の設定,ICU以外の職員の応援体制の確立など,多くの項目で不十分である現状が明らかになった。さらに,多数患者発生時の,ICU拡張や統合運用,入退室基準の変更などの施行率は低く,柔軟な対応の難しさと,事前準備の重要性が改めて示唆された。
著者
宮部 浩道 後長 孝佳 安藤 雅規 波柴 尉充 都築 誠一郎 田口 瑞希 植西 憲達 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.523-526, 2015-11-01 (Released:2015-11-06)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

水中毒に起因する低Na血症は,多量の利尿を引き起こし急激な血中Na濃度上昇をきたすことがあり,osmotic demyelination syndrome(ODS)を惹起する危険性がある。我々は水中毒に伴う低Na血症の急激な補正を防ぐ目的で,大量の自由水輸液を施行した症例と酢酸デスモプレシンと3%高張食塩水を併用した症例を経験した。いずれも血中Na濃度上昇は12 mmol/l/day以下に制御可能であった。水中毒に起因する重症低Na血症の治療に際し,酢酸デスモプレシンと3%高張食塩水を使用した治療法は,有効かつ安全であると考えられた。
著者
日本集中治療医学会臨床倫理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.231-243, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

日本集中治療医学会(以下,本会)臨床倫理委員会は,本会の正会員のうち看護師免許を有する者を対象に,集中治療領域においてDo Not Resuscitate(Do Not Attempt Resuscitation)〔以下,DNR(DNAR)〕の正しい理解と治療の開始・不開始,差し控え,中止の状況や,看護師の意識が2016年の調査結果1)と比較して,どのように変化したかを明らかにするためにアンケート調査を実施した。DNR(DNAR)の教育を受けたと回答した割合は,2016年の調査結果より有意に増加した。また,教育を受けた場所で最も多かったのは,学会主催のセミナーであった。DNR(DNAR)指示により,心停止時の心肺蘇生以外に侵襲の高い生命維持装置などの治療の終了や差し控えが行われている現状や,本来の対象以外にDNR(DNAR)が拡大解釈され誤用されている現状に変化はなかった。DNR(DNAR)の判断に,複数の医師と医師以外の医療従事者で行うと回答した割合は増加した。さらに,本調査では3学会合同「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」2)と厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」3)を読んだと回答した者のうち,使用した経験を有したのは3,4割であった。また,本会より「Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告」4)が発表されたが,未だ臨床現場において混乱が生じている。したがって,本会臨床倫理委員会は,DNR(DNAR)の正しい知識と理解を得るため,繰り返し教育の機会を設ける必要性がある。
著者
田口 豊恵
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.429-432, 2011-07-01 (Released:2012-01-15)
参考文献数
5

【目的】本研究の目的は,ICUに入室した患者の死亡月と時刻に関する法則性を明らかにすることである。【方法】本研究のデザインは回顧的研究である。対象は,京都府下にある総合病院ICU入室中に死亡した患者。5年間の入院診療録をもとに,患者の死亡年月日,死亡時刻および死に至った直接的な原因について調査した。死亡時刻に関しては,日周期変動を三角関数あてはめによる最小自乗法を用いて解析し,時間的法則性について評価した。【結果】患者の死亡月には夏季および冬季にピークがあり,一方,死亡時刻は15時前後にピークがあることが示された。【結論】患者の死亡月や死亡時刻が示すリズム性を考慮した上で,ICUのシフトワークや管理体制の強化をはかる必要がある。
著者
江木 盛時 森田 潔
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.17-25, 2012-01-01 (Released:2012-07-10)
参考文献数
30

【背景】重症患者に施行される解熱処置について,その有益性は明らかでない。【方法】解熱処置が重症患者に与える影響に関して系統的レビューを行う。【結果】解熱処置が重症患者に与える影響を検討した研究は16文献あった。これらの文献から以下の見解を得た。(1)解熱効果は大きくばらついている。(2)解熱処置開始体温は統一されていないが, 半数の文献で38.5℃としている。(3)解熱処置で体温が低下すれば,心拍数・分時換気量・酸素消費量が減少する。(4)薬物を使用した解熱処置により血圧が低下する。(5)解熱薬による生理学的パラメータの改善が,患者予後の改善をもたらすかを十分な検出力で検討した介入試験は存在しない。【結語】解熱処置により呼吸・循環・代謝負荷が軽減されるが,解熱処置の臨床的予後改善効果を示した研究は存在しない。解熱処置の有益性・有害性について結論を出すためには,異なる解熱戦略を比較した無作為化比較試験が必要である。
著者
板垣 大雅 西村 匡司
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.605-612, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
39
被引用文献数
1

患者-人工呼吸器非同調(以下,非同調)は,人工呼吸中に見られる頻度の高い事象である。人工呼吸器のガス供給パターンと,患者の呼吸パターンにずれがある場合,非同調が生じる。非同調は,ガス交換障害,肺過膨張,呼吸仕事量の増大,人工呼吸期間やICU滞在期間の延長をきたし,患者予後への影響も指摘されているが,その認識は高いとは言えない。非同調は,(1)患者の吸気努力に一致して人工呼吸器の送気が開始しない不適切なトリガー(オートトリガー,ミストリガー,二重トリガー,逆行性トリガー),(2)吸気から呼気へ転じるタイミングのずれ(送気の早期終了,送気の終了遅延),(3)人工呼吸器の送気流量と患者の吸気流量の過不足,の3つに大別される。ベッドサイドの医療者には,これら非同調の原因,グラフィックモニタ波形上の特徴,対処方法について深い理解が求められる。
著者
日本集中治療医学会感染管理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.60-67, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

重症患者や腎代替療法を取り扱うICUにおける抗菌薬適正使用は特に重要であり,抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship, AS)活動の推進が要求される。ICUにおいては,一般病棟とは別に抗菌薬使用状況調査が必要であり,AS活動の指標となるベンチマークの設定も望まれるが,日本においてそのような報告はない。そこで,多施設のICUにおける2017および2018年度の注射用抗菌薬の使用日数(days of therapy, DOT)による調査とAS活動に関するアンケート調査を実施した。参加施設は48ユニット(43施設)で,DOTs/100患者日は98.8,中央値97.5[四分位範囲(interquartile range, IQR)76.5〜114.3]であった。各抗菌薬別使用量は,カルバペネム系薬は中央値14.7(IQR 11.0〜19.5),タゾバクタム/ピペラシリン9.2(IQR 5.5〜12.5),抗methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬8.3(IQR 6.4〜13.3)であった。ASチームのICUへの介入は,ほぼ毎日が41.7%,介入タイミングは抗菌薬投与開始後が62.5%であり,改善の余地がある。本調査で得たデータは,日本のICUにおけるベンチマークとして活用できると考える。
著者
瀬尾 勝弘
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.130-131, 2014-03-01 (Released:2014-03-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1