著者
橋本 一哉 美馬 裕之 川上 大裕 植田 浩司 下薗 崇宏 山崎 和夫
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.512-518, 2015-11-01 (Released:2015-11-06)
参考文献数
4

【目的】肺動脈カテーテルを用いた持続的心拍出量(continuous cardiac output, CCO)モニタリングは心臓血管外科術後管理に有用である。また,深部静脈血栓予防に間欠的空気圧迫法(intermittent pneumatic compression, IPC)もよく用いられている。今回IPC中に持続的心係数(continuous cardiac index, CCI)が律動的な振動(以下,CCIオシレーション)を起こす症例を経験した。今回の研究の目的は①IPCによりCCIオシレーションが起こること,②IPC機器の機種によりCCIオシレーションの程度が異なることを証明することである。【方法】①一時的にIPCを停止した16症例において,CCIオシレーションをIPC作動時と非作動時で比較した。②IPC機器を変更した前後の36症例において,それぞれの機器を用いた群間でCCIオシレーションを比較した。【結果】①16症例すべてにおいてIPC作動中はCCIオシレーションは見られ,中断により消失した。②CCIオシレーションはIPCの機種変更により有意に変化した。【結論】CCIオシレーションはIPCにより引き起こされ,機種により程度が異なる可能性がある。
著者
田村 暢一朗 椎野 泰和 鈴木 幸一郎
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.33-37, 2015-01-01 (Released:2015-01-19)
参考文献数
7
被引用文献数
2

今回われわれはウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症の2症例を経験したので報告する。【症例1】71歳,女性。朝方自宅で倒れているところを発見された。頭部CTおよびMRI,脳波,髄液検査などで異常所見なく,ウレアーゼ産生菌による尿路感染を疑った。気管挿管,尿道バルーンを挿入,ampicillin/sulbactamの投与を行った。尿培養ではCorynebacterium urealyticumが検出され,ウレアーゼ陽性であった。【症例2】67歳,女性。意識障害を主訴に救急搬送された。ウレアーゼ産生菌による尿路感染を疑い,尿道バルーンを挿入,cefozopranの投与を行った。尿培養ではKlebsiella oxytocaが検出され,ウレアーゼ陽性であった。2症例とも尿閉であった。尿閉患者における高アンモニア血症の原因を鑑別する上で,ウレアーゼ産生菌による尿路感染は考慮されるべきである。
著者
一二三 亨 渡邉 善寛 吉岡 早戸 長谷川 栄寿 原口 義座 加藤 宏 小井土 雄一 本間 正人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.321-325, 2010-07-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
13

症例は39歳の男性。塗装作業中にタイル洗浄用クリーナー(フッ化水素酸1.3%,フッ化アンモニウム10%を含有)を誤飲し,当院へ救急搬送された。胃管より牛乳を投与した後,ICUに入室した。フッ化水素中毒による低Ca血症に対しては,グルコン酸カルシウムを静脈投与した。また来院4時間後頃より血清K濃度が急激に上昇したため,continuous hemodialysis(CHD)を施行した。来院7時間後にtorsades de pointes(TdP)が生じたが,硫酸マグネシウム2 gを投与したところ,洞調律に回復した。TdPが生じた時の血清Mg濃度は0.8 mg·dl−1と著明な低値であり,これがTdPの原因の1つと考えられた。これは,透析液中のMg濃度が1.2 mg·dl−1と,慢性腎不全患者を対象として低値に設定されているために,フッ化水素中毒による低Mg血症に加えて,CHDによりさらに低Mg血症が悪化した可能性が考えられた。
著者
平井 昂宏 貝沼 関志 林 智子 長谷川 和子 青山 正 水野 祥子 鈴木 章悟 西脇 公俊
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.647-650, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

プロポフォール注入症候群(propofol infusion syndrome, PRIS)は,プロポフォール使用中に横紋筋融解,急性腎傷害(acute kidney injury, AKI),乳酸アシドーシス,脂質異常症などを来す症候群である。早期にPRISを疑いプロポフォール中止によって救命できた一例を経験した。症例は44歳の男性,スタンフォードA型大動脈解離に対して弓部置換術を行った。術後にプロポフォールを用いて鎮静を行っていたところ,血液生化学検査でCKが15,247 IU/lまで上昇し,AKI,乳酸アシドーシスを認めたためにPRISを強く疑った。プロポフォールの投与中止によりCKは速やかに減少し,AKI,乳酸アシドーシスも改善した。後に撮影されたCTで大腿から臀部の筋内に高吸収域を認め,横紋筋融解後の変化があった。プロポフォールの長期投与中はCK,pH,乳酸値などを定期的にモニタリングし,PRISを疑った場合は早期に他の鎮静薬への変更が必要であると考えられた。
著者
海老島 宏典 吉田 健史 内山 昭則
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.243-248, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)
参考文献数
29

人工呼吸中に自発呼吸を温存することは,背側肺領域優位の換気を促し,低い気道内圧(プラトー圧)でも呼気終末肺容量が比較的保たれ,酸素感も改善することから,最も侵襲性の低い肺リクルートメント療法であると考えられている。しかし,急性呼吸窮迫症候群の重症例など呼吸努力の特に強い症例では,肺保護換気戦略に則ってプラトー圧を制限したとしても経肺圧が増加し,人工呼吸器関連肺傷害の危険因子となり得ることが多数報告されている。また,そのような症例に対し,肺保護換気戦略に従って1回換気量を制限したとしても,pendelluft現象により肺局所の過伸展から肺損傷を引き起こす可能性がある。呼吸努力を最小限に抑えた自発呼吸の温存または,筋弛緩によるfull supportは症例ごとの呼吸状態を慎重に見極めることで,一連の管理方法となり得ると考える。
著者
江⽊ 盛時 ⼩倉 裕司 ⽮⽥部 智昭 安宅 ⼀晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 ⿊⽥ 泰弘 ⼩⾕ 穣治 志⾺ 伸朗 ⾕⼝ 巧 鶴⽥ 良介 ⼟井 研⼈ ⼟井 松幸 中⽥ 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升⽥ 好樹 松嶋 ⿇⼦ 松⽥ 直之 ⼭川 ⼀⾺ 原 嘉孝 ⼤下 慎⼀郎 ⻘⽊ 善孝 稲⽥ ⿇⾐ 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻⾕ 正明 對東 俊介 武⽥ 親宗 寺⼭ 毅郎 東平 ⽇出夫 橋本 英樹 林⽥ 敬 ⼀⼆三 亨 廣瀬 智也 福⽥ ⿓将 藤井 智⼦ 三浦 慎也 安⽥ 英⼈ 阿部 智⼀ 安藤 幸吉 飯⽥ 有輝 ⽯原 唯史 井⼿ 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲⽥ 雄 宇都宮 明美 卯野⽊ 健 遠藤 功⼆ ⼤内 玲 尾崎 将之 ⼩野 聡 桂 守弘 川⼝ 敦 川村 雄介 ⼯藤 ⼤介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下⼭ 哲 鈴⽊ 武志 関根 秀介 関野 元裕 ⾼橋 希 ⾼橋 世 ⾼橋 弘 ⽥上 隆 ⽥島 吾郎 巽 博⾂ ⾕ 昌憲 ⼟⾕ ⾶⿃ 堤 悠介 内藤 貴基 ⻑江 正晴 ⻑澤 俊郎 中村 謙介 ⻄村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 ⻑⾕川 ⼤祐 畠⼭ 淳司 原 直⼰ 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松⽯ 雄⼆朗 松⼭ 匡 峰松 佑輔 宮下 亮⼀ 宮武 祐⼠ 森安 恵実 ⼭⽥ 亨 ⼭⽥ 博之 ⼭元 良 吉⽥ 健史 吉⽥ 悠平 吉村 旬平 四本 ⻯⼀ ⽶倉 寛 和⽥ 剛志 渡邉 栄三 ⻘⽊ 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五⼗嵐 豊 井⼝ 直也 ⽯川 雅⺒ ⽯丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今⻑⾕ 尚史 井村 春樹 ⼊野⽥ 崇 上原 健司 ⽣塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕⼦ 榎本 有希 太⽥ 浩平 ⼤地 嘉史 ⼤野 孝則 ⼤邉 寛幸 岡 和幸 岡⽥ 信⻑ 岡⽥ 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥⽥ 拓史 ⼩倉 崇以 ⼩野寺 悠 ⼩⼭ 雄太 ⾙沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 ⾦⾕ 明浩 ⾦⼦ 唯 ⾦畑 圭太 狩野 謙⼀ 河野 浩幸 菊⾕ 知也 菊地 ⻫ 城⼾ 崇裕 ⽊村 翔 ⼩網 博之 ⼩橋 ⼤輔 ⿑⽊ 巌 堺 正仁 坂本 彩⾹ 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下⼾ 学 下⼭ 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉⽥ 篤紀 鈴⽊ 聡 鈴⽊ 祐⼆ 壽原 朋宏 其⽥ 健司 ⾼⽒ 修平 ⾼島 光平 ⾼橋 ⽣ ⾼橋 洋⼦ ⽵下 淳 ⽥中 裕記 丹保 亜希仁 ⾓⼭ 泰⼀朗 鉄原 健⼀ 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨⽥ 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊⽥ 幸樹年 内藤 宏道 永⽥ 功 ⻑⾨ 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成⽥ 知⼤ ⻄岡 典宏 ⻄村 朋也 ⻄⼭ 慶 野村 智久 芳賀 ⼤樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速⽔ 宏樹 原⼝ 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤⽥ 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀⼝ 真仁 牧 盾 增永 直久 松村 洋輔 真⼸ 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村⽥ 哲平 柳井 真知 ⽮野 隆郎 ⼭⽥ 浩平 ⼭⽥ 直樹 ⼭本 朋納 吉廣 尚⼤ ⽥中 裕 ⻄⽥ 修
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
pp.27S0001, (Released:2020-09-28)
被引用文献数
2

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG2016)の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG2020)の目的は,J-SSCG2016と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG2016ではSSCG2016にない新しい領域(ICU-acquiredweakness(ICU-AW)とPost-Intensive Care Syndrome(PICS),体温管理など)を取り上げたが,J-SSCG2020では新たに注目すべき4領域(Patient-and Family-Centered Care,Sepsis Treatment System,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な117の臨床課題(クリニカルクエスチョン:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQには,日本国内で特に注目されているCQも含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員24名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班を2016年版に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,117CQに対する回答として,79個のGRADEによる推奨,5個のGPS(Good Practice Statement),18個のエキスパートコンセンサス,27個のBQ(Background Question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG2020は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
卯野木 健 芹田 晃道 四本 竜一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.179-188, 2008-04-01 (Released:2008-11-01)
参考文献数
38

人工呼吸患者管理において鎮静深度のコントロールは非常に重要であり,そのためのツールは信頼性,妥当性に富み,使用が容易でなければならない。現在,主観的な鎮静スケールが多く使用され,Ramsay Scale,Sedation-Agitation Scale(SAS),Motor Activity Assessment Scale(MAAS),Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)が,成人患者に対して用いられる代表的なスケールである。本解説ではそれら4つのスケールに関し,文献を用いて総合的に検討した。Ramsay Scaleは古く,現在でも広く使用されているが,妥当性の検討は限られており不穏のスケーリングができないため,現在のICU管理には適さない。SAS,MAAS,RASSは不穏のスケーリングが可能であり,いずれも信頼性,妥当性の評価が行われているが,SAS,MAASにおけるそれらの評価は限られたものである。RASSは最も多くの側面から信頼性,妥当性の評価が検討されており,現時点では最も有用なスケールであると言える。
著者
上田 剛士
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.113-116, 2015-03-01 (Released:2015-03-10)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

41歳女性がパロキセチン5,740 mgを服用後,発熱,散瞳,腱反射亢進,眼球クローヌス,ミオクローヌスを呈しセロトニン症候群と診断した。翌日torsades de pointes(TdP)が出現したが,硫酸マグネシウム投与で消失した。血中KやMg値の補正にもかかわらずQTc時間延長の改善は乏しく,最終服用後7日目に測定したパロキセチン血中濃度は異常高値を示した。ベンゾジアゼピンとシプロヘプタジンによる対症療法でセロトニン症候群は軽快し,またQTc時間は正常化した。本例はパロキセチンの大量服用以外に明らかな誘因なくTdPを来した初めての報告である。パロキセチンはselective serotonin reuptake inhibitor(SSRI)の中でも安全性は高いとされるが,高用量を服用すると代謝酵素CYP2D6の働きを阻害することで血中濃度が非線形的に上昇した結果TdPを起こしたと推測した。
著者
坂木 孝輔 内野 滋彦 宮城 久仁子
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.241-248, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1

医療の著しい進歩によりICUを生存退室する患者は増加しつつあるが,一方でその多くに精神機能障害がみられ問題となっている。近年,その罹患要因としてICU滞在中の患者の記憶が関連していることが明らかになってきた。患者の記憶は,事実の記憶,感情的記憶,妄想的記憶に分類され,特に妄想的記憶はICU生存者の26〜73%にみられ,忘れられ難く,不安やうつ,posttraumatic stress disorder(PTSD)などの精神機能障害やQOLの低下,復職率の低下への関連が示唆されている。記憶に対する援助として,ICU滞在中の記憶を適切に構築すること,記憶の再構築を援助し妄想的記憶を残さないことが重要であると考えられているが,さらなる研究が求められている。不快な記憶は長期に患者を苦しめることを理解し,ICUを退室した後も患者が体験を語れる機会を提供し,フォローアップをしていく必要がある。
著者
水野 香織 成瀬 智 小林 充 御室 総一郎 小幡 由佳子 土井 松幸 佐藤 重仁
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.253-256, 2015-07-01 (Released:2015-07-10)
参考文献数
10

急性大動脈解離の保存的治療に鎮痛,降圧,安静のための基本薬剤としてデクスメデトミジン(dexmedetomidine, DEX)を使用した。【対象】2010年1月から2012年2月に,当院ICUにて保存的治療を実施した急性大動脈解離の14症例。【方法】鎮痛鎮静,降圧,脈拍調節のための併用薬剤,気管挿管の有無を後ろ向きに検討した。【結果】DEXは0.07~0.79μg/kg/hrで投与し,投与期間は132±56時間であった。併用薬剤は,塩酸ニカルジピン0.008~0.14 mg/kg/hr(14症例)の他,塩酸ランジオロール(5症例),フェンタニル(9症例),ニトログリセリン(3症例)であった。夜間睡眠確保のためにハロペリドールを6症例,リスペリドンを2症例で併用した。全症例を気管挿管なしに治療できた。【結語】急性大動脈解離の保存的治療の基本薬剤としてDEXは有用であった。
著者
横内 光子
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.555-561, 2007-10-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
23
被引用文献数
2 3

心理測定尺度とは, 心理現象を測定する方法の1種であり, いわば, 目に見えない心理現象を把握するための「心の物差し」である。心理測定尺度では, いくつかの質問に対する回答を得点化することによって, 心理現象の個人差を把握することが可能となる。尺度の開発では, 心理現象を理論的構成概念として明確に定義し, それを反映する質問項目を設定するために一定の手続きが必要となる。心理現象は, 直接見ることができないだけに, その尺度が正確かつ適切に目的とする心理現象を測定できるか否かが特に重要となる。この尺度の精度や適切性の指標となるのは「信頼性」と「妥当性」である。本稿では, 臨床・研究で心理測定尺度を有効に活用するために必要な基本的知識について, 尺度の作成過程と信頼性・妥当性を中心に概説する。