著者
大川 淳 亀頭 正樹 赤松 大樹 吉龍 資雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.1085-1089, 1993-04-01
被引用文献数
6

症例は71歳の女性, 嘔吐を主訴に入院. 入院時検査にて白血球 19,300/mm^3, 血清総ビリルビン値は 15.2mg/dl と上昇し, 胆管炎および閉塞性黄疸を認めた. 血清 CA19-9 値は 89,305U/ml と著増し, 脾胆道系の悪性疾患が疑われた. 腹部超音波と腹部 compouted tomography (CT), および percutaneous transhepatic cholangiography (PTC) 上総胆管結石を認めたが, 悪性所見は認めなかった. 胆汁内の CA19-9 は 13,800,000U/ml であった. Percutaneous transhepatic cholangiodrainage (PTCD) にて減黄後, 血清 CA19-9 値は 145U/ml まで減少し, 総胆管結石の診断にて手術を施行した. 胆嚢壁は著明に肥厚し, 胆嚢内に混合責90個と総胆管内に混合石20個を認めた. 病理組織学上, 胆嚢壁の強度の炎症所見と, 免疫組織学的に胆嚢上皮に CA19-9 を証明した. 術後 CA19-9 値の再上昇は認めない.
著者
伊藤 信義 嵯峨山 敏 嵯峨山 徹 石川 羊男 三浦 順郎 楠 徳郎 山村 武平 森垣 驍 中井 亨 辰己 葵 琴浦 義尚
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.804-810, 1976

膵頭十二指腸切除術の直接成績向上のためには, 閉塞性黄疸に対する術前処理と安全確実な膵空腸吻合を行うことであろう.前者はPTC-Dによる減黄策がほぼ確立された.著者らは後老に対する試策として, 1回目の手術では膵空腸吻合を置かず若干の工夫を凝らして膵液を体外に誘導, 後日膵断端部の安定した頃に, 改めて2期的に膵空腸吻合を行うことを考案, これを14例に施行し, 第1期, 第2期を通じて同部での合併症はなく, 安全な膵空腸吻合を行い得た.第1期手術と2期的膵空腸吻合施行との期間は平均36日間で, この期間を利用して, 残膵機能検査や, また第2期手術にそなえての切除標本の組織学的検索に寄与する利点も得られた.
著者
西藤 勝 小野山 裕彦 西村 公志 嵯峨山 健 高橋 応典 中路 太門 高尾 信太郎 橋本 可成 安積 靖友 裏川 公章
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.32-35, 2001-01-01
参考文献数
7
被引用文献数
1

外傷生胆管狭窄はまれな疾患であり, 悪性胆管閉塞との鑑別が問題となる.今回, 我々は交通事故後に発症した外傷性胆管狭窄の1例を経験したので報告する.症例は70歳の男性, 乗用車を運転中, トラックに追突し右尺骨骨折にて入院, 腹部症状はなかったが, 14日後に黄疸が出現した.超音波, CTでは腫瘍像は明らかではないが, PTCD造影では下部胆管の狭窄と肝内胆管の拡張を認めた.減黄後の胆管造影でも狭窄は改善せず胆管癌と考えられた.胆汁細胞診でも悪性が疑われ, 下部胆管癌を考え膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本の所見では, 狭窄部では胆管壁が肥厚しなだらかな狭窄を示したが腫瘍性病変はなく, 組織学的にも悪性疾患は否定された.以上より, 交通事故の腹部外傷による胆管狭窄と診断された.本例は腹部打撲の程度が軽かったことも診断を困難とした一因と考えられた.
著者
高橋 哲也 石井 健嗣 酒井 憲孝 関 学 佐藤 次良 落合 剛 岩城 孝次 小平 進
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.53-59, 1989-01-01
被引用文献数
1

胃癌13例, 大腸癌10例の手術症例を対象に術前あるいは術前・術後にレンチナン (Lentinan 以下LT) を投与し, 術前・術後の免疫能に及ぼす効果を比較検討した. 手術侵襲により術後の NK 活性, PHA 幼若化率, Leu7^+, HLA-DR^+ リンパ球が低下した. 術前 LT 投与では手術日の NK 活性, PHA 幼若化率, Leu7^+, CD8^+ リンパ球が上昇した. 術後は対照群と同様な低下を示したが, LT 投与によりその低下は相対的に軽度であった. 術前・術後 LT 投与では術後7日目の NK 活性, PHA 幼若化率, Leu7^+ リンパ球は LT 投与前のレベルを維持することができた. 術前・術後 LT 投与は有意義と考えられる.
著者
津福 達二 田中 寿明 末吉 晋 田中 優一 森 直樹 藤田 博正 白水 和雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.1661-1665, 2007-10-01
被引用文献数
2

症例は39歳の男性で,2004年1月,うつ病があり自殺企図にてウォッカを大量に飲用し,高度の胸焼け,嚥下障害を生じたため当院へ紹介となった.食道潰瘍および食道狭窄を認め,腐食性食道炎と診断した.希死念慮が強かったため精神科に入院となり,精神面の治療を行った.2月,狭窄症状が強くなったため,空腸瘻を造設し,全身状態の改善および精神状態の安定を待って,7月,非開胸食道抜去術,胸骨後食道胃吻合術を行った.経口摂取可能となり術後32日目に退院した.高濃度のアルコール(ウォッカ)飲用による腐食性食道狭窄を経験したので報告する.