著者
豊坂 昭弘 村田 尚之 三嶋 康裕 安藤 達也 大室 儁 関 保二 金廣 裕道
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.417-423, 2009-04-01

日本で受けた男性性転換手術後に晩期合併症として超高位の直腸膣瘻を経験し局所的に閉鎖しえたので報告する.患者は33歳で,7年前に男性から女性への性転換手術を受けた.3年前から人工膣から出血,排便をみている.注腸および内視鏡検査で,直腸S状部の超高位の直腸と人工膣が大きな瘻孔を形成していた.まず人工肛門を造設し,2か月後経仙骨的経路で手術を施行し癒着に難渋したが瘻孔を閉鎖した.術後は順調に経過し,2か月後人工肛門を閉鎖した.現在術後1年3月経過し再発はなく,美容的にも満足している.術後は再発の恐れから膣は使用されていない.本例は解剖学的に通常では発生しえない直腸S状部の超高位の直腸膣瘻であり,このような超高位の直腸S状部の直腸膣瘻の報告は内外とも見られず,局所的手術で修復した報告も見られないので報告した.本例での瘻孔の原因は人工膣内へ狭窄防止用ステントの使用による圧迫壊死であった.
著者
青山 法夫 米山 克也 徳永 誠 南出 純二 小沢 幸弘 山本 裕司 今田 敏夫 赤池 信 天野 富薫 有田 英二 小泉 博義 松本 昭彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2594-2598, 1991-10-01
被引用文献数
2

消化管吻合部狭窄の治療法として,内視鏡的切開およびブジーによる拡大術の適応と限界について検討した.吻合部狭窄35例(瘢痕性26例,癌性9例)を対象とした.瘢痕性狭窄の長さによる狭窄解除率をみると,2cm未満14/15(93.3%),2cm以上3cm未満8/9(88.9%),3cm以上0/2(0%)であった.一方,癌性狭窄は0/9(0%)と効果不良であった.効果不良例13例(瘢痕性4例,癌性9例)の内,癌性3例を除く10例に他の治療を加えた.3例(瘢痕性1例,癌性2例)に手術,7例(瘢痕性3例,癌性4例)に食道ブジー挿管術を施行した.手術では,狭窄が解除出来たのは1例のみで他は試験開腹および合併症死におわった.食道ブジー挿管術は7例全例狭窄を解除でき退院可能であった.皮膚管瘢痕性狭窄1例のみ皮膚瘻孔を形成し手術を要した.食道ブジー挿管術は難治性吻合部狭窄の非観血的治療法として有用であった.
著者
福井 貴巳 横尾 直樹 吉田 隆浩 田中 千弘 東 久弥 白子 隆志 北角 泰人 岡本 清尚 加藤 達史 山口 哲哉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.68-72, 2001-01-01
被引用文献数
6

敗血症性ショックを合併した超高齢者の虚血性大腸壊死症例に対して, 結腸大量切除術を施工し救命しえたので報告する.症例は102歳の女性.主訴は嘔吐と腹痛, 来院時, すでに敗血症性ショック状態にあり, 絞扼性イレウスの術前診断のもと, 全身麻酔下に緊急開腹術を施工した.結腸肝彎曲部より下行結腸まで広範な結腸壊死を認めたため, 上行結腸からS状結腸まで広範囲結腸切除術を施工した.病理学的検索にて, 虚血性大腸壊死と判明した.脱水, ショック, 高齢, 過大侵襲手術などの危険因子のため, 術後早期は極めて不安定な循環動態, 呼吸状態を呈したが, 無事救命しえた.この好結果は, 術直後からの血液浄化療法(PMX~【○!R】)の実施や, S-Gカテーテル留置による綿密なモニタリングのもと, 十分な循環血液量の維持を主眼とした全身管理によりもたらされたものと考えられた.
著者
橋本 充右 今村 正之 嶋田 裕 戸部 隆吉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.1924-1929, 1992-07-01
被引用文献数
18

胸部食道癌切除術前の胃と術後再建胃管の胃底部と前庭部の2点で24時間pHモニタリングを行った.全測定期間中pH頻度分布曲線を,1型(高酸型),2型(中間型),3型(低酸型),4型(前庭部高酸型)に分類し,各型群間で胃内酸度を術前後で比較検討した.深夜,食事中,食後の各期間pH中央値は各群間で特徴を有し,この分類法が酸分泌の解析上有用と考えられた.深夜胃底部pHは1,2型群で低値となり,1,2型群において,深夜胃底部pH中央値の平均,深夜胃底部pHが3以下となる時間の割合には術前後で有意差はなかった.術後長期経過例でも深夜胃底部は低pHを示す症例が多く,再建胃管の夜間酸分泌が保たれており消化性潰瘍発生に注意すべきと考えられた.また,術後1,2型群深夜前庭部のpHが3以下となる時間の割合と空腹時血清gastrin値の間の有意な逆相関(p<0.01)も証明された.
著者
安藤 拓也 山崎 雅彦 深尾 俊一 中野 浩一郎 呉原 裕樹 堅田 武保 舟曳 純仁 中野 貞生 池上 雅博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.1698-1702, 2003-12-01
被引用文献数
4

腸閉塞にて発症した非特異性多発性小腸潰癈疾の2例を経験したので報告する.症例1 26歳の男性.繰り返す腸閉塞にて入院.小腸造形にて回腸に粘膜集中像をともなう潰瘍,多発する輪状狭窄を認めた.小腸潰瘍による狭窄にて腸閉塞を呈したと診断し,回腸切除術と狭窄形成術を施行した.症例2 . 31歳の男性.繰り返す腸閉塞と貧血にて入院.逆行け回腸遺影にて回腸末端に不整形潰瘍と軽度の狭窄像を認めた.小腸潰癈による狭窄にて腸閉塞を呈したと診断し回腸切除術を施行した.いずれの症例も切除標本では,亜輪状傾向の潰瘍あるいは潰瘍徹夜を認め,それに伴い腸管の狭窄を呈していた.組織学的にはUl-IIの潰瘍が主体であり,狭窄部では線維化が著明であった.以上から非特異性多発性小腸潰瘍疾による腸閉塞と診断した.
著者
太田 博俊 高木 国夫 大橋 一郎 田村 聡 久野 敬二郎 梶尾 鐶 加藤 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.1399-1408, 1981-10-01
被引用文献数
10

当外科において手術された1978年10月までの1000例の単発早期胃癌に対して肉眼分類を中心に時代的変貌を加味しつつ, その臨床像を検討した. 最近は手術胃癌の3例に1例は早期癌で, 陥凹型早期癌が多く, 占居部位では隆起型は胃下部, 陥凹型は, 胃中部に多い. 年齢分布はピークは隆起型は60歳代の山型, 陥凹型は50歳代の丘型を示した. 症例数では隆起型と陥凹型は, 1対4の比率で, 深達度 m と sm ではほぼ同率であった. 早期胃癌のリンパ節転移率は 12.7%, m 癌は 21.7%. 隆起型では, 20.9% その内 m 癌は 1%, sm 癌は, 33.3%, 陥凹型では, 10% その内 m 癌は 3.9%, sm 癌は 16.7% であった. 治癒切除例の5生率は 93.8% 非治癒切除例で 56.5% であった.
著者
高台 真太郎 上西 崇弘 市川 剛 山崎 修 松山 光春 堀井 勝彦 清水 貞利 玉森 豊 東野 正幸 久保 正二
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.50-55, 2007-01-01
被引用文献数
6

肝癌切除後の孤立性リンパ節転移を摘除することで,術後2年6か月の現在,無再発生存中の症例を経験したので報告する.症例は58歳の男性で,C型慢性肝炎に伴う肝癌に対して肝切除術を2回施行されていた.経過観察中のCT像上,肝尾状葉に約4cm大の腫瘤性病変を認め,AFP, PIVKA-II値の著明な上昇がみられた.腹部血管造影像では腫瘤は中肝動脈および左胃動脈より栄養される腫瘍濃染像として描出され,肝癌の尾状葉再発と診断し開腹した.腫瘍は肝尾状葉に接するように総肝動脈の腹側に存在していたが,肝臓からは独立しており肝癌の総肝動脈幹リンパ節転移と考え摘除した.病理組織学的検査では中分化型肝癌のリンパ節転移と診断された.AFP, PIVKA-IIは術後2か月日に標準値範囲内へ低下し,以来,再発徴侯を認めていない.原発巣がコントロールされた肝癌の孤立性リンパ節転移は摘除により良好な予後が得られる可能性が示唆された.
著者
富山 光広 加藤 紘之 大野 耕一 奥芝 知郎 佐藤 正文 田辺 達三
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.2291-2300, 1992-09-01
被引用文献数
7

動脈-門脈シャント術の併用が,肝動脈遮断によって生ずる肝不全を回避しうるか否かを実験的に検討した.雑種成犬を用い,肝への動脈性血行をすべて結紮する肝動脈遮断群(n=5)と,切離した肝動脈を門脈に直接吻合する動脈-門脈シャント群(n=5)の2群を作成し,肝血行動態,肝酸素需給動態および肝生化学的変化について検討を加えた.その結果,肝動脈遮断群では6時間後に総肝血流量は55%,肝酸素供給量は43%に減少し,門脈血管抵抗は250%にまで上昇した.これに対しシャント群では,それぞれ120%,108%,70%と肝動脈遮断下にもかかわらず術前の状態を良く維持していた.総胆汁酸濃度,GOT.GPTは,シャント群で低値を示した.また動脈血中ケトン体分画比はシャント群の方が高かった.以上の結果から動脈-門脈シャント手術は肝動脈遮断後の肝血流量と酸素供給量を維持し,肝不全予防に有用であると考えられた.
著者
新垣 雅人 児嶋 哲文 平口 悦郎 村上 貴久 松本 譲 寺本 賢一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.1577-1581, 2006-10-01
被引用文献数
4

横隔膜ヘルニアの1型であるまれな傍裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は70歳の女性で,固形物摂取時の嚥下困難と嘔吐を主訴に,当院を受診した.上部消化管内視鏡検査とバリウム検査にて,食道裂孔ヘルニアの傍食道型と術前診断した.手術は腹腔鏡下に行い,食道胃接合部および胃上部付近を剥離し,後縦隔内に入り込んでいた胃穹隆部を整復したところ,ヘルニア門は左横隔膜にあり食道裂孔との間には横隔膜脚が介在していた.横隔膜ヘルニア(傍裂孔ヘルニア)と判断し,ヘルニア門を閉鎖した後,食道胃接合部付近剥離による逆流を考慮してToupet法を施行した.術後経過は良好で,11日目に退院した.本症はまれな病態で,かつ術前診断が困難であることより術式の選択に迷うが,本例ではヘルニア門の閉鎖とToupet法を施行し良好な結果を得ることができたことから,本疾患に対し,状況に応じてToupet法などを用いることは有用と考えられる.
著者
久保 隆一 喜多岡 雅典 赤埴 吉高 待寺 則和 肥田 仁一 田中 晃 進藤 勝久 安富 正幸
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.2488-2493, 1993-10-01
被引用文献数
9

基底膜の構成成分である laminin (LN) の免疫組織化学的染色を大腸癌・胃癌に行ったところ LN 活性が癌組織の基底膜部分に認められる症例に高率に肝転移, 肝転移再発がみられることが明らかになった. また同じ基底膜成分である type IV collagen (CI V) の染色部位は LN と一致し, LN 陽性部位は基底膜であると考えられた. 1987年より LN 染色による大腸癌の肝転移再発の prospective study を行った結果, 高率に肝転移再発が予測できた. 一方, LN 陽性で基底膜を形成する癌がなぜ高率に肝転移するのかを解明するため培養細胞を用いた研究を行った. 培養細胞でも基底膜を形成する癌としない癌があったが, いずれの細胞も LN, CIV を産生していた. 以上より大腸癌・胃癌では基底膜を形成する癌としない癌があり, 基底膜形成癌 (basement membrane producing cancer; BmPC) が高率に肝転移することが明らかになった.
著者
松橋 延壽 永田 高康 立花 進 浅野 雅嘉 梶間 敏彦 土屋 十次
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.1724-1728, 2000-09-01
被引用文献数
7

超音波検査にて術前診断可能であった閉鎖孔ヘルニアの5例を経験した.症例は女性4例, 男性1例.右側3例, 左側2例.全例痩せ型で, 平均年齢は83.8歳と高齢であった.主訴は5例とも腹痛, 嘔気でイレウス症状を呈していた.また, Howship-Romberg徴候は術前3例に確認した.閉鎖孔ヘルニアを術前疑い全例に超音波検査を施行し, 小腸の閉鎖孔への嵌入を確認した.症状発生から手術までの期間は, 1日から最長24日で平均10.6日であった.嵌入形態は3例がRichter型であり, 嵌入部位は回盲部から50〜100cmの小腸であった.術式は3例が小腸人工肛門(二連銃式), 1例が15cmの腸切除, 1例が整復解除のみであった.ヘルニア門の処理は単純縫合閉鎖が3例, mesh plugによる補強が2例であった.なお, 人工肛門は後日閉鎖し全例生存中である.
著者
福島 亘 八木 雅夫 坂本 浩也 伊井 徹 清水 康一 米村 豊 泉 良平 三輪 晃一 宮崎 逸夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.2185-2188, 1993-08-01
被引用文献数
7

症例は64歳の男性で, 昭和56年8月に胸部中下部食道癌 (A_0 N_0 M_0 Pl_0, Stage I) にて右開胸開腹胸腹部食道全摘術および胸骨後経路頸部食道形成胃管吻合術を受けた. 切除標本の病理組織診断は低分化型扁平上皮癌, 深達度 ep, n(-) であった. 術後10年目に嘔気と嘔吐を認めたため内視鏡検査を施行したところ, 門歯列より 26cm の再建胃管内に径 2.0cm の山田 III 型ポリープを認めた. 生検結果は中分化型腺癌であった. 超音波内視鏡検査で深達度 m と診断されたため, 内視鏡的ポリペクトミーを施行した. 切除ポリープは病理組織学的に乳頭状腺癌, 深達度 m で断端における癌の浸潤も認めなかったため治癒切除と診断された. 食道早期癌術後の再建胃管に発生した早期胃癌の本邦報告例は, これまでに自験例を含め3例のみときわめてまれであったが, 再建胃管癌46例の本邦報告例の検討からは, 早期発見のため術後の再建胃管の定期的な検索が必要であると思われた.
著者
小高 通夫 竜 崇正 碓井 貞仁 渡辺 義二 山本 義一 小出 義雄 山本 宏 有我 隆光 長島 通 佐藤 博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.1698-1702, 1984-09-01
被引用文献数
12

肝門部胆管癌はその解剖学的位置および胆管癌の浸潤性増殖の特微から最も治療困難な疾患の1つである.われわれは以前よりたとえ非治癒切除におわっても可及的に切除するという態度で,この領域の癌に対処してきた.切除例を中心に中下部胆管癌と比較検討して肝門部胆管癌の治療上の問題点について述べてみたい.
著者
宗岡 克樹 白井 良夫 高木 健太郎 小山 高宣
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.495-499, 2001-05-01
被引用文献数
18

急性上腸間膜動脈閉塞症の2症例に対し, ウロキナーゼを上腸間膜動脈(SMA)に動注する血栓溶解療法を施行した. 症例1は59歳の男性で, SMA本幹に完全閉塞を認め, ウロキナーゼ60万IUの動注により血栓は消失した. 発症からSMA再疎通までは3.5時間であった. 腸切除を要さず, 1か月で軽快退院した. 症例2は68歳の男性で, SMAの完全閉塞を認め, ウロキナーゼ60万IU動注により血栓は消失した. 発症からSMA再疎通までは6.5時間であった. 腹部所見は軽減したが, 再疎通後3時間目から再度憎悪したため緊急手術を行った. 空腸, 回腸280cmが壊死しており, 腸管切除再建を行ったが, 術後4か月目に多臓器不全で死亡した. 自験例および従来の報告例の検討からは, 本療法を発症後早期(SMA本幹閉塞では5時間以内, SMA遠位部の閉塞では12時間以内)に行えば腸管壊死を回避できる可能性がある.