著者
[ウネ]村 泰樹 藤岡 秀一 今井 貴 鈴木 旦麿 三澤 健之 村井 隆三 吉田 和彦 小林 進 山崎 洋次
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.2643-2648, 1999-12-01
被引用文献数
2

今後,day surgery (DS)への移行が予測される腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)施行患者の意識調査を施行した.希望入院時期は術前日:55%,2∼3日前:43%,術当日:2%であり,また当日入院は忙しさよりも個々の価値観から派生すると考えられた.83%以上が入院期間延長による負担増額を気にせず入院していた.民間の保障制度には80%が加入し,うち86%が請求していた.術後入院期間短縮を考慮する負担増額は1万円/日程度と思われた.術後入院期間は全例で4.5±1.9日,非常に多忙,多忙,やや余裕あり,余裕ありそれぞれ3.7±0.8,4.3±1.9,4.5±1.9,5.2±2.0日で,余裕のある者で有意に長かった.しかし体験した程度でよいとする者が87%を占め,短縮希望者は8%に止まった.うち自己負担額の増域によらず積極的に早期退院を望む者は全体の3%に過ぎなかった.現行医療保険制度内では,本調査施行患者はLCのDS化にあらゆる面で肯定的とは考えられなかった.
著者
神藤 英二 望月 英隆 寺畑 信太郎 古谷 嘉隆 内田 剛史 酒井 優
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.2210-2214, 1997-11-01
被引用文献数
8

盲腸に発生した, 腺癌と偏平上皮癌の成分を含む内分泌細胞癌の症例を経験した. 肉眼的には典型的な2型腫瘍であったが, 組織学的検索から同一腫瘍内に内分泌細胞癌と腺癌の領域を認め, さらに内分泌細胞癌の内部には偏平上皮癌への分化を示す部分を多数認めた. 内分泌細胞癌の診断の過程で行った免疫染色では, neuron-specific enolase に陽性を示したものの, クロモグラニンAには陰性であったため, 電子顕微鏡検査を追加, 内分泌顆粒を認めたことで, 最終的に内分泌細胞癌の診断を得た. 臨床的には悪性度が高く, 肝転移を認めたため肝切除を含む根治度Bの手術を施したが, 残肝再発を来し, 術後9か月目に死亡した. 今回の症例は, 組織学的多様性から, 腫瘍発生母地, およびその分化の過程が注目されるので報告した.
著者
角谷 慎一 徳楽 正人 原田 猛 古川 幸夫 牛島 聡 中泉 治雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.1593-1597, 2003-11-01
参考文献数
9
被引用文献数
3

悪性線維性組織球腫は成人の四肢軟部組織に好発する非上皮性悪性腫瘍であり,腸間膜に原発することはまれである.今回,腸間膜原発の悪性腺維性組織球腫の1例を経験したので報告する.症例は71歳の女性.右下腹部腫瘤を主訴に,婦人科受診し,腹部MRI検査にて右下腹部から骨盤腔にかけて嚢胞性腫瘍を認めた.右卵巣腫瘍と診断され,開腹術を施行されたが,卵巣には異常を認めず,腫瘍は回盲部から発生したものと考えられた.当科転科後,腹部CT検査,血管造影検査が行われた.血管造影検査では腫瘍を栄養する血管は回結腸動脈から分枝していた.回盲部の非上皮性腫瘍を疑い,再開腹し回盲部切除術を施行した.病理組織標本にて回腸の腸間膜原発の粘液型MFHと診断し,現在外来にて経過観察中であるが,再発は認めていない.
著者
今里 雅之 林 恒男 田中 精一 上田 哲哉 竹田 秀一 山本 清孝 武藤 康悦 磯部 義憲 上野 恵子 山本 雅一 小林 誠一郎 羽生 富士夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.80-84, 1990-01-01
被引用文献数
5

症例は50歳男性で,主訴は心窩部痛である.胃潰瘍の診断とともに,超音波検査で肝右葉に蜂巣状内部構造を有する比較的境界鮮明な直径7cmの腫瘤を認めた.Computed tomography(CT)では腫瘤は低吸収域で造影後には菊花状で各花弁にあたる部位の辺縁が濃染される特異な像を呈した.腹部血管造影では,腫瘍血管や圧排所見はないが毛細管相で腫瘍濃染像を認めた.腫瘍マーカーは正常であった.腫瘍の穿刺吸収細胞診では,白色の濃汁の中に線維性組織が吸引されたが炎症性変化のみで悪性所見は認めないため厳重な経過観察とした.2年後,画像的に腫瘤の増大が認められ,悪性腫瘍が否定できないために拡大肝右葉切除術を施行した.病理学的にinflammatory pseudotumorと診断された.肝原発の本疾患は文献上17例の報告しかなく,経過を追い増大を認めた症例はいまだ報告されていない.ここに文献的考察を加え報告する.
著者
岡田 泰穂 村上 泰介 伊藤 浩司 片寄 友 佐藤 隆次
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.557-561, 2004-05-01
参考文献数
12
被引用文献数
14

症例は91歳の男性で,右側腹部痛・嘔吐が出現し,当院入院となった.右季肋部の圧痛を認めたが筋性防御は認めず,白血球・CRPの著しい上昇と軽度黄疸が見られた.CT検査では,胆嚢腫大と造影効果のない胆嚢壁の肥厚,頚部に低吸収の腫瘤像が確認され,胆嚢捻転症に続発した急性壊死性胆嚢炎と診断し直ちに腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.Gross I型遊走胆嚢で,胆嚢管部を軸として時計方向に360度捻転していた.術中胆道造影では総胆管の拡張と結石像を認めたが,全身状態の悪化が見られたのでc-チューブのみを留置し,総胆管結石は術後内視鏡的乳頭切開術にて摘出,第51病日目に退院した.病理組織検査では胆嚢管部の捻転に続発した堪能の急性出血性梗塞と考えられた.胆嚢捻転症の多くは開腹時に確定診断されるが,我々は術前に画像診断し,早期に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行しえた.本症は胆嚢頚部の炎症所見がほとんど見られず,腹腔鏡下胆嚢摘出術のよい適応と考えられた.