著者
濱岡 剛
出版者
中央大学
雑誌
中央大学論集 (ISSN:03889033)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-23, 2007-03
著者
濱岡 剛
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

まず、アリストテレスが「ポリス(国家)的動物」という語をキーワードとしてポリスが「自然にしたがった」ものであることを論じている『政治学』第1巻第2章の議論を詳細に分析し、次のような点を明らかにした。家から村を経てポリスが形成される過程をアリストテレスは描いているが、その議論で繰り返し述べられている「自然によって」というのは、一貫して「人間の自然本性の実現に適う」という目的論的な意味で用いられており、人間がいわば本能のようなものによって家、村、ポリスを形成するということが語られているわけではない。『政治学』第1巻第2章の末尾では、個人がポリスの部分であることが指摘され、個人がまったくポリスに従属していることが強調されている。この点は『政治学』の他の箇所でも指摘されているように見える。しかし、それは特定の(生まれ育った)ポリスに従属し、そこから離れることが許されないというものではなく、人間の人間らしく生きているための「自足性」が確保される場として、ポリスに関わり、その政治的決定に参与する機会をもつことが必要である、ということが指摘されているあり、全体主義的な要素をそこに見いだすのは適当ではない。こうした分析を踏まえながら、『動物誌』第1巻第1章において、人間がミツバチなどと並んで「ポリス的動物」とされならがも、「群棲の動物と単独性の動物のとちらとも言える」両義的な存在であるとされていることの意味を探った。人間は他の「ポリス的動物」とは違って言葉によって価値の共有を可能とし、それによってポリスという集団を形成する。しかし他方で、言葉の習得を通じて熟慮能力をもつことができるようになり、人の集団から離れて暮らすことも可能となる存在である。
著者
大森 正之 石岡 憲昭 東端 晃
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

宇宙環境下での光合成活性の測定を目指して、宇宙実験用にJAXAにより開発された全自動型微細藻培養装置を用い、藍藻スピルリナ(Arthrospira platennsis)を実験材料として地上での準備研究を行った。スピルリナは6日間の培養により、クロロフィル量では約9倍、タンパク質量にして約9倍に増加した。光合成活性は、酸素の発生量およびH218Oから発生した酸素の同位体比の変化、また13Cの取り込み量により測定した。その結果、光合成活性が高い精度で測定できることが実証された。宇宙利用を想定したナノバブル水は、ハンドミキサーで作成できた。ナノバブル水は藍藻Anabaenaの増殖を促進した。
著者
矢島 正見
出版者
中央大学
雑誌
紀要. 社会学科 (ISSN:05296803)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.(1)-(47), 1999-09
著者
津野 柳一
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ローマ法源のなかでも最も重要な史料であるローマ法大全、なかんずく学説彙纂(Digesta)の文言を手がかりにして、今日の法学者にとってますます理解が困難なラテン法文の解釈のためのコンピュータを使用した支援システムを構築するための基礎的知見をえることが目的であった。そのために、リンツの機械可読形式のデータをさまざまに処理して、分析のためのToolを作成した。本年度は、研究代表者のもうひとつの課題である17、18世紀法学大学文献(いわゆる学位論文)研究と連繋させて、内容分析という方法を見い出した。それも、コンピュータ利用の統計を応用したデータ解析としてである。意味論的質的分析にはあえてふみこまず、形式的計量的分析に力点をおいた。この方法は判例分析や司法試験への応用が期待される。
著者
深井 有 斎藤 好雄
出版者
中央大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

本年度は、当初の研究計画に基づいて平成二年度より引き続き、酸化物超伝導体に捕獲されたフラクソイド動特性の研究および高圧合成の可能性について研究を推進した。前者に対しては、特に粒間と粒内電流密度の評価法の確立およびビスマス系(2212相)単結晶の不可逆磁化の磁場及び温度依存性の研究を行った。一方、高圧合成については、銀添加されたイットリウム系にたいして高温(RT〜1000℃)高圧(1〜5GPa)下の処理効果の研究を行った。フラクソイド動特性の研究は、これまで研究成果を逐次JJAP、物理学会、応用物理学会等で報告してきたが、今年度は焼結体の粒間電流と粒内電流を分離する事に成功したので、その成果をM2SーHTSCで報告した。これは従来の方法に加えて、本年度購入したクライオスタット中でホ-ル素子を用いた局所磁化の測定を行うことによって分離を確実に行えるようになったものである。その結果、焼結体の電流密度の磁場及び温度依存性をより明確にする事が出来た。さらに、ビスマス系(2212相)単結晶について高温超伝導体におけるフラクソイド動特性の特徴のひとつである、不可逆磁化の温度依存性及び磁場依存性を限られた磁場温度領域ではあるが明らかにすることができ、本研究で開発した局所磁化及び局所残留磁化の測定法が有効であることを示すことが出来た。これらの成果については、上述のプロシ-ディングズ(Physica C)に一部が報告され、現在論文準備中である。一方、高圧合成は、種々の物質にたいして試みられているが、最近になってようやく興味ある結果が得られつつある。すなわち、高圧高温処理を施した銀添加イットリウム系試料についてインダクタンス測定などを行った結果、超伝導の体積分率が広い温度範囲にわたって、温度減少とともに直線的に増加することを見いだした。これは、粒界講造(及び粒径分布)やピンニング機構への銀添加効果によるものと考えられる。しかしながら、本研究の本来の目的である1)イットリウム系における粒間電流の増加や、2)ビスマス(2212相)へのピンニング中心の導入という観点からは、未だにめざましい成果は得られておらず今後の課題となっている。
著者
渡辺 岳夫
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

代表的なマイクロ・プロフィットセンター・システムであるアメーバ経営システムの会計情報上の特性ならびに運営方法上の特性が,当該システム導入企業の従業員の自己効力感,チーム効力感,および自律的動機づけにポジティブな影響を及ぼし,それらの心理的構成概念を通じて,チーム内・チーム間のインタラクションを生起させしめ,最終的にチームのパフォーマンスを促進していることを明らかにした。
著者
服部 龍二
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は、占領期における幣原喜重郎の内外政上の役割を研究した。まず、戦後政治全般における幣原の動向については、首相期を中心としながら、天皇制の擁護や日本国憲法の制定過程について論じた。その主要な成果としては、拙稿「幣原喜重郎と戦後政治」(『人文研紀要』、第55号、2005年10月、1-37頁)において刊行してある。次に、最晩年の衆議院議長時代については、ダレスの訪日に端を発する超党派外交を分析してある。これについては、アメリカのナショナル・アーカイヴスにおける史料調査を踏まえて、拙稿Shidehara Kijuro and the Supra-Party Diplomacy,1950(『中央大学政策文化総合研究所年報』、第8号、2005年6月、171-187頁)として公にした。1920年代の外相期については、主に政策と人脈の形成と展開という視点から研究を行った。その成果については、拙稿「幣原喜重郎の政策と人脈」を『中央大学論集』第27号に投稿してあり、今年中には刊行予定である。そのほか、幣原の外交思想を伝えるものとして、拙稿「幣原喜重郎講演『外交管見』」を執筆した。これについては、『総合政策研究』第13号に投稿してあり、やはり今年中には刊行予定である。これらの集大成として、拙著『幣原喜重郎と20世紀の日本--外交と民主主義』(有斐閣)を今年中に刊行する。なお、一般向けに書き下ろしたものとしては、拙稿「ワシントン会議--海軍軍備制限条約、九国条約への調印」および「幣原喜重郎外相と南京事件--対中政策をめぐる論争」があり、いずれも鳥海靖編『日本近代史の転機』上巻(吉川弘文館、2006年刊行予定)に収録される。
著者
三浦 信孝 CHI LEE Pei-Wha SUNENDAR Dadang NGUYEN XUAN Tu Huyen
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

三浦が2004年7月に国際フランス語教授連合FIPFアジア太平洋委員会委員長になったのを契機に申請した研究課題である。台湾、インドネシア、ヴェトナムの同僚を研究協力者に、日本、タイ、台湾、パリ,などで開かれる国際学会で研究交流を積み重ねた。かつてフランスの植民地だったヴェトナムやインド洋のレユニオン、モーリシャス、南太平洋のニューカレドニアを旅行しフランス語の使用状況について調査した。研究成果は研究課題に直接間接にかかわる多くの論文にまとめて発表した。
著者
山田 正 PATHIRANA ASSELA ASSELA PATHIRANA
出版者
中央大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究室で所有するドップラーレーダによる10年以上に渡る観測より,関東で発生するメソスケール現象の雷雨の多くは,関東北部及び西部の山間部で発生していることがわかっている.また,関東一円で行っている気象観測より夏期の強い日射が陸面と海面に温度差を生じさせ,それを起因として発生する海から陸へ向かう海陸風が関東北部,西部の山岳部まで進入し,地形により押し上げられることにより地形性の雷雨が発生を明らかにしている.以上のことより,地形条件と大気状態が雷雨発生に大きく寄与していることがわかっている.本研究では,地形影響の定量的評価を行う基礎的段階として,ガウス分布である単峰性の仮想地形を設定し,非静力学モデルによるメソスケール場の降雨に対する地形の影響について解析を行った.本研究では,NCAR(National Center for Atmospheric Reserch)とThe Pennsylvania State Universityにより共同開発されたメソ気象モデルThe Fifth Generation Penn Stag/NCAR Mesoscale Model(MM5)を用いてシミュレーションを行った.降雨を発生させない条件の下で,山地地形の形状及び2層の密度成層を有した大気の成層度を変化させ,山地地形の風下側に発生する重力波についての解析を行った.等流状態で重力波が発生するときは,山地の風下側で渦の発生を確認し,重力波を発生するフルード数の条件について明らかにした.実大気において海陸風の風速が夜半に現象していくように,シミュレーションにおいても水平風速を徐々に減少させた結果,山地の風下側で発生した重力波が風上側へ伝播することがわかった.降雨形成について微物理過程を導入し,仮想地形の下で地形形状,大気状態,それに起因する重力波の影響が降雨量に与える影響について解析を行った.山地標高が高くなるに従い総降雨量,降雨強度のピークは増加するが,ピークの位置は山地の風上側であり,山地の幅が広くなるに従い風下側へ片寄った降雨量分布となることがわかった.弱い水平風速では広範囲に降雨をもたらし,水平風速を徐々に減少させることにより降雨量のピークは風上側へ移動していくことがわかった。山地の風上側へ伝播した重力波による上昇流が強い対流を引き起こし,雷雨発生に関係しているものだと考えられる.
著者
DETHELEFS H.J.
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

この研究のテーマはゲーテ時代におけるゴシック様式の再興である。かっては悪趣味と見なされたゴシック様式の再評価は、疾風怒濤時代の、とりわけ若きゲーテによるシュトラ-スブルク大聖堂賛美の功績である。時代の趣味のこのようにラジカルな変化と、ロマン派、特にフリードリッヒ・シュレ-ゲルに見られる芸術の宗教化に至る過程を辿りたい。研究は二部から成る。第一部では英国人の先駆者、リベラルでエクセントリックなウィッグ派貴族党員達について詳論する。彼らのゴシックへの関心は芸術の宗教化や中世賛美からはほど遠いものだった。英国におけるゴシック再興の源は絵画的な庭園芸術という新しい考えである。一見無秩序な風景庭園の中のゴシック建築は、公的な自己表現から私的領域への隠遁表明だった。ヨーロッパ大陸におけるこのような「自然的」ゴシックの最初の例は、リベラルなデッサウ君主、フランツ・フォン・デッサウによって、ワイマ-ル近郊の田舎町ヴェルリッツに建造された。ゲーテはこの場所を愛して度々訪れ、ワイマ-ル市のための造園研究を行った。もう一人のヴェルリッツ賛美者はゲオルク・フォルスターである。フォルスターは後に、未完成のケルン大聖堂を礼賛する演説を書くが、これがF・シュレ-ゲルに強い影響を与えることになる。第二部では、シュレ-ゲルが、多くの点で古典派建築理論から隔たっていないが、超越性に達しようとする建築としてのゴシックの特性を貶めることもない、彼独自の美学的カテゴリーをいかにして構築してゆくか、詳論する。