著者
横山 彰 藤川 清史 植田 和弘
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、地球的規模のインフラストラクチャーである地球環境に焦点をあてつつ、環境に負荷を及ぼす人間の諸活動の制御はいかなる経済システムの下で可能になるのかについて考察し、経済システムの中に環境保全のルールを組み込んだ「環境保全型経済システム」を構築するための政策のあり方を明らかにすることである。平成11年度は、本研究組織全員による共同論文"Green Tax Reform : Converting Implicit Carbon Taxes to a Pure Carbon Tax"を完成させ、平成12年8月28-31日スペインのセビリアで開催された甲際財政学会で報告した。この研究では、現行の化石燃料諸税を潜在的炭素税と認識した上で、新たに推計した各化石燃料の需要の価格弾力性に基づき、その税収を変えることなく炭素含有量に応じて課税する純粋炭素税に税率を改変することによって、約1,833万トン炭素を削減できる点を提示した。さらに、税制のグリーン化及び環境・エネルギー関連税制を中心とした環境保全型経済システムの構築において国と地方政府の役割分担を検討し、地方環境税と地方環境保全対策のあり方を考察し、地方環境税の意義を明らかにした。平成13年度は、本研究の最終年度であり、環境・エネルギー関連税制を中心とした環境保全型経済システムの構築を具体化するための研究を取りまとめた。研究代表者の横山と研究分担者の植田は、本年度までの本研究成果を基礎にし、自治総合センター「地方における環境関連税制のあり方に関する研究会」と環境省中央環境審議会「地球温暖化対策税制専門委員会」などの公的な政策現場においても委員として専門的発言をしてきた。また研究分担者の藤川は、産業連関分析による産業構造変化の検討を通して、日本の経済発展と環境負荷について論文をまとめた。
著者
諏訪 紀幸
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の主な目的は、代数学の基本事項であるGalois理論では基本的な、そしてここ半世紀急激な進歩を遂げた数論幾何で最も重要な道具であるetale cohomologyの理論の出発点である、Kummer理論やArtin-Schreier理論を一般の可換環あるいはschemeの上で一般のfinite flat group schemeに対して定式化し、理論を展開することであった。特に、Serreが有限群の群環の単数群を代数群とみなして体のGalois拡大の正規底を捉えなおす議論を展開していたが、finite flat group schemeに対してその議論を定式化することができた。
著者
塩沢 健一
出版者
中央大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度の研究においては、市庁舎整備をめぐり5月20日に住民投票を実施した鳥取市に着目し、投票日の約1週間後より、郵送調査を行った。市の有権者3,000名を対象として実施した結果、1,189件の有効回答を得た。本調査の当初の目的は、「平成の大合併」により誕生した広域自治体における「民意」のあり方について、本研究課題の初年度に長野県佐久市で実施した意識調査との比較も交えながら、検討を加えることにあった。そうした観点からは、佐久市のケースと同様に、旧鳥取市と旧町村部とで、有権者の投票行動の傾向に一定の差異のあることが明らかとなった。他方、鳥取市の住民投票では当初から、2つの案から一方を選ばせる設問形式や争点提示の仕方に疑問の声が上がっていたが、住民投票で過半数の支持を得た「耐震改修案」が、その後の検証の過程で「当初案では実現不可能」と結論付けられ、市が計画していた新築移転案の対案として耐震改修案を提示した議会の説明責任が問われる状況となった。そうした経緯を踏まえて分析を試みたところ、住民投票を実現させた議会に対する有権者の「信頼」が、耐震改修案への投票と相関のあることが明らかとなった。すなわち、庁舎整備をめぐる「実質的な選択」という側面においては、鳥取市の投票結果に正統性があるとは言い難い。このように、鳥取市の事例は、住民投票における議会の「議題設定」という観点から見て、重要な教訓を残したと言える。その点において、本年度の研究の成果は、当初の計画において想定していた以上に、貴重なものとなったと言える。
著者
折田 明子
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、インターネット上で発生している相互扶助において匿名性が果たす役割に着目し、匿名性を是非ではなく構造的に理解することによってメリットを活用しデメリットを低減するための設計可能性を提示するものである。先行研究調査、事例調査、ユーザへのアンケート調査の結果から、匿名性を決定する要素である「リンク可能性」およびそれを扱う「レイヤ」に対する設計可能性が示唆された。
著者
久保 文克
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

後発企業効果の可能性のある約120の市場をピックアップし、一次資料に遡って直近データを補いつつマーケットシェアのグラフを作成し直した。そして、後発企業効果が確認された63市場に関してマクロ定量分析を施し、業種別分布、市場参入の年代別分布、逆転の年代別分布、逆転に要した年数、停滞期を除くキャッチアップ年数について検討を加え、以下の事実を発見した。業種別には製薬、家電、食品が多く、制約条件の到来期に逆転が多い。停滞期を除くと10年以下のキャッチアップが多く、技術力、経営資源(技術者、販路、資金)、消費者、ブランドの4つの壁の克服が不可欠であり、内部資源活用型の後発企業には有利となる。
著者
土肥 徹次
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、MRI 画像計測のための高感度なマイクロコイルとして、円錐型マイクロコイルの試作手法を確立し、MRI 画像計測を行った。円錐型マイクロコイルとして、直径 30 mm、高さ8 mm、抵抗値 2.14 Ω、インダクタンス 1.29 μH の良好な電気特性を持つコイルを試作することができた。 試作コイルにより、オクラやうずらの卵の MRI 画像計測を行い、深さ方向に深い画像を高感度に計測できることを確認し、高分解能な MRI 画像が取得可能であることを示した。
著者
伊村 くらら
出版者
中央大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究課題では、幅広い産業において重要な貴金属ナノ粒子の回収と再分散を達成するため、pHに応答する両親媒性化合物を用いたナノ結晶回収法の開発とその有効性の検討を目的とした。まず、長鎖アミンにカルボキシル基を導入した両親媒性化合物群を合成し、水中での分子集合体構造を検討した。合成したC16CAは、pH6以上では球状ミセル、pH2からpH6ではラメラ、pH2以下ではひも状ミセルと、水溶液のpHに応じて分子集合体が三態に変化することが示された。そこで、最も一般的な貴金属ナノ結晶である金ナノ粒子をC16CAのラメラにより回収し再分散することを試みた。塩基性条件のC16CA溶液にクエン酸還元法で得られた金ナノ粒子を加えると、C16CAが配位することによって保護剤効果でナノ粒子が良好に分散することが示された。この分散溶液を弱酸性に変化すると、金ナノ粒子を取り込みながらC16CAのラメラが析出した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行うと、金ナノ粒子がラメラ析出物の中で粒子間隔を維持したまま取り込まれていることが確認できた。また、ナノ粒子を取り込んだラメラは、ろ過操作によって、溶液から完全に分離され、ナノ結晶の分離回収剤としての機能発現を果たした。さらに、溶液pHを弱酸性から塩基性に操作すると、金ナノ粒子を取り込んだC16CAラメラ析出物が再び溶解し、分離回収したナノ粒子を再分散できた。このとき、UV-visスペクトルおよびTEM観察から、金ナノ粒子の分散状態が回収前の初期のものと変化していないことが確認され、ラメラの中に取り込むことで析出状態にあっても粒子同士の凝集を抑制できることが示された。このことから、C16CAの分子集合体のpH応答特性を利用した溶液‐ラメラ析出といった転移の制御は、ナノ結晶の分離方法として極めて簡便で有効な手法といえる
著者
柳本 武美 大西 俊郎
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

経験ベイズ法の現状を越えて、事後密度から導かれる統計量により事前分布を評価する研究を行った。これ迄に発展させてきたe-混合ベイズ予測子の性質を利用して、弱い情報しか含まない事前分布を含めて多様な事前分布の利用を企図した。情報量の大きさの程度は特定の位置に分布が集中していると表現される。そこで関数の凸性を厳密に定義して集中度の新しい半順序を厳密に定義した。更にはベイズモデルの尤度の概念が新しい視点を与えた。尤度は基本量であるので、予測密度の定義において事後密度の代わりに事前密度を用いることにより自然に尤度が定義できることを指摘した。また、証拠の統合にについても適応できることが分かってきた。
著者
渡辺 新一 池上 貞子 小林 二男
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.中国語に翻訳された日本文学の目録(1919年〜1949年:単行本編)の作成従来の漢訳日本語書籍の目録は主なものでも幾つもあるが、そのいずれも、日本語の原題名を明示せず、ただ原作者と訳者と漢訳名と訳出の時期を記したものがほとんどであった。当研究は、原題名を調査して明示することによって、日本文学のいかなる作品が漢訳されたのかを初めて具体的に提示した。以前のカード化に変わる各種のソフトの発展は目録作成という作業を簡素化させてきてはいるものの、こうした目録の作成は訳本の内容から原文の題名を確定するという膨大な手間を必要とした。そのため、こうした作業につきものとはいえ、調査の行き届かなかったものや思わぬ勘違いなどがあると思われる。またさらに、雑誌類に訳出された日本文学の作品目録も一定程度手をつけており、今後同じく原題名を調査して、今回の成果と併せて近い将来公表したいと考える。2.中国語訳に関する論文研究分担者の各自の問題意識に従って、以下の論文をまとめた。・池上貞子「翻訳の可能性と限界をめぐる一考察-川端康成著・唐月梅訳「古都」を中心に」・小林二男「中国における日本文学受容の一形態-周作人の「日本近三十年小説之発達」と相馬御風の「明治文学講話」「現代日本文学講話」をめぐって」・渡辺新一「<吾輩は猫である>はどう漢訳されているか」これらはいずれも、翻訳という作業が異文化を跨いでおこなわれる刺激にみちた行為であることを共通の前提とした当研究の偽らぬ成果の一部といえ、各自の論文の指し示す方向性と問題意識は今後さらに深めていくことが求められている。
著者
國仲 寛人
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

人口は行政の基本データであり、各自治体の人口の変動は政治経済の状況等に起因する人口移動や人口増加によって決定される。本研究では、国勢調査データ等の解析により、日本の市町村単位の人口分布の特徴的な時間変化を明らかにした。特に、都市の人口分布に普遍的に見られると言われるZipfの法則が、日本の場合市町村合併の影響で破れる事を示し、人口移動モデルによるシミュレーションでも定性的な再現ができることを示した。
著者
奥田 賢治
出版者
中央大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

植物オルガネラにおいて、RNA編集は転写産物中の特定のC塩基をUへと変換する。これまでに同定されたRNA編集の部位特異的因子はすべてpentathco-peptide repeat(PPR)蛋白質である。特定のPPR蛋白質機能の欠損はしばしば複数のサイトの欠損を生じる。多くの場合、これら編集サイトのシス配列は一次配列の保存性が低い。一つのPPR蛋白質が複数の編集サイトに共有される分子機構はまだよくわかっていない。我々は、互いに部分的に保存、または保存されていない標的配列を認識することが予測されるPPR蛋白質OTP82とCRR22に着目した。大腸菌発現系を用いて組み換えOTP82とCRR22を発現、精製した。組み換えOTP82は標的サイトの-15~0領域に特異的に結合した。組み換えCRR22はndhB7およびndhD5サイトの-20~0領域、およびrpoB3サイトの-17~0領域に特異的に結合した。遺伝学的データとあわせて、我々はOTP82とCRR22が葉緑体における複数の編集サイトの部位特異的因子として働くことを結論した。加えて、配列相同性を示さないシス配列へのCRR22の高親和性結合は、シス配列中におけるある特定のヌクレオチドのみがPPR蛋白質の高親和性結合に十分であることを示唆した。それゆえ、シス配列は一次配列上保存性が低くても一つのPPR蛋白質によって認識されることができると考察した。
著者
天野 清
出版者
中央大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

(1)幼児の読み(READING)能力等の発達についての構造分析・縦断的実験調査:都内2幼稚園の年少クラス児34名(調査開始時年齢範囲3:4〜4:2)を対象にかな文字の読みの習得に関する調査を、4カ月間隔で6回実施し、約2年間追跡したが、その結果、以下の知見が得られた。(1)幼児のかな文字習得は、早い子は3歳後半期から、多くは4歳前半期から習得し始め、その多く(73.5%)は、年中クラス末までに基本音節文字のほとんどを読める状態になるが、その過程には顕著な個人差が認められる。(2)音節分析の発達は、かな文字の読みの習得に先行して発達し、かな文字の読みの習得を条件付けている。(3)順序性の理解の発達は、音節抽出の発達に先行した進み、音節抽出が一般化する段階で、言語的水準に達する。(4)幼児の音節分析、かな文字の読みの習得の時期、進行を大きく条件付けている要因は、語彙能力(語彙発達指数)である。(2)語、文の読み方の構造と発達過程についての実験的分析:語・文の読みテスト及び語の読み過程の音声と下唇の運動を測定する特殊な実験装置で、調べた結果、以下の知見が得られた。(1)幼児は、かな文字の読みの習得に応じて、語・文を読み・理解できるようになり、3歳代からかな文字を読み始めた幼児の1部は、年中クラス期末に、小学1学年担当の文章を読み・理解できる水準に達する。(2)文の読み方の発達テンポは非常に緩慢で、一部の幼児は、年中クラス期末までに、単語読みの段階に達するが多くは逐字読みの段階に留まる。(3)子どもの語の読み・理解過程は、(a)逐字的な音読、(b)つぶやき、(c)下唇のわずかな運動、(d)黙読による分析の4種の分析過程があり、それらの分析諸形式と総合過程としての単語読み及び逐字読みとが結合した形式で進行している。(4)(3)の事実から、幼児の語の読みの発達は、(1)分析過程が前面に出た逐字読み(第1次逐字読み)の段階から、(2)総合過程の色彩をもつ逐字読みが前面に出た第2次の逐字読みの段階を経て、(3)単語読みの段階に至ると仮説することができた。
著者
宮本 太郎 坪郷 實 山口 二郎 篠田 徹 山崎 幹根 空井 護 田村 哲樹 田中 拓道 井手 英策 吉田 徹 城下 賢一
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の主題は、福祉雇用レジームの変容が政治過程の転換をどう引き起こしたか、また政治過程の転換が、逆にいかに福祉雇用レジームの変容を促進したかを明らかにすることである。本研究は、国際比較の視点を交えた制度変容分析、世論調査、団体分析などをとおして、福祉雇用レジームの変容が建設業団体や労働組合の影響力の後退につながり、結果的にこうした団体の調整力に依拠してきた雇用レジームが不安定化していることを示した。同時にいくつかの地域では、NPOなどを交えた新たな集団政治が社会的包摂をすすめていく可能性を見出した。
著者
松尾 正人
出版者
中央大学
雑誌
中央史学 (ISSN:03889440)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.162-184, 2012-03
著者
伊藤 康一郎
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.118, no.9, pp.87-107, 2012-01
著者
鈴木 俊幸
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近世初期書籍目録や蔵版目録書き入れ、また購書目録等既刊の資料から抽出し、書籍価格のデータベースを作成した。また、国内の図書館・文書館を調査し、書籍価格の記事を備える資料を収集した。それに基づき、上記データベースにデータを付加し、最終的にそれを CD に収めて研究者に広く配布した。また『書籍文化史』第10~14 集を発行した。これには投稿論文とともに書籍に関する研究文献目録を収載、研究者と諸機関に配布し、研究情報の共有に資した。