著者
北村 充
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

グアニジノジアゾニウム塩はグアニジンの電子供与性により強力に共鳴安定化されていると考えられる化合物であり,ジアゾニウム塩とアジドの両者に由来する特徴的な反応性を示すと期待される。そこで,本研究ではグアニジノジアゾニウム塩の合成と,これを用いる反応開発に取り組んだ。その結果,グアニジノジアゾニウム塩の調製法を開発することに成功し,また,グアニジノジアゾニウム塩がジアゾ化剤やアジド化剤として利用出来ることを明らかにした。
著者
中村 貞吾
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

棋譜中の着手に対して,着点の盤上の絶対位置,直前の相手方の着手からの相対位置,着点の周囲の配石状況の3つの観点からの特徴を用いて符号化して棋譜テキストを作成し, n-gramに基づく確率的言語モデルを構築した.このモデルは,最善手の予測だけでなく,次善手の候補着手数の削減や観戦記で解説対象となる着手の判別にも有効であることがわかった.また,人間の棋風を形成する要因を分析し,各棋風間で有意差のある特徴要素を見つけた.
著者
宮野 英次
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

多くの重要な離散最適化問題は計算量の意味で困難(NP困難)となる.すなわち,最適解を求めるための多項式時間で動作するアルゴリズムが存在しない.また,ある状況では,問題を解く前に,完全な入力が与えられない場合もある.例えば,入力が徐々に与えられるような要求列となっている場合である.将来の要求に関する情報が欠損している場合にもアルゴリズムは効率よく動作する必要がある.前者をオフライン計算モデル,後者をオンライン計算モデルと呼ぶ.本研究では,それら2つの計算モデルにおける困難な離散最適化問題に対して,最適解に対する出力解の精度が理論的に保証されたアルゴリズムを設計した.
著者
堀江 知義 二保 知也 石原 大輔
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マイクロ片持はり構造の機械的な振動時に生じる,電界,変形,流れの連成振動挙動を明らかにするために,静電気力-構造-流体連成解析コードを開発し,連成効果に及ぼす支配因子の影響を検討し,モデルの妥当性を検証した。さらに,マイクロ片持はり構造を作成し,真空中における駆動実験から非線形連成効果特性を確認した。大気中における振動実験と電界-構造-流体3連成解析により,流体との連成効果によってプルイン特性が変化することを示した。
著者
立野 勝巳
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では, 動物の感覚受容機構に発想を得たセンサシステムを提案した. 本センサシステムは, 電気受容細胞が雑音を活用して神経活動を同期させる現象を利用して, 入力信号の強度と違いを出力パルスの発火頻度と同期の程度に符号化する神経回路である.神経回路の構造は, マウス味蕾を参考にした. 基礎データとして, マウスの味蕾細胞モデルを作成したり, グラスキャットフィッシュの電気刺激に対する行動を調べたりした. 行動実験では, 電気刺激に対するグラスキャットフィッシュの忌避行動を明らかにした.
著者
柴田 智広 為井 智也 岡田 洋平 和田 佳郎 小町 守
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

Assist-As-Needed原理に基づいた強化学習エージェントが個人適応的にヒトの運動学習を支援することにより,その運動学習を促進可能であることを科学的に示した.また姿勢異常を呈する疾患を持つ症例のための姿勢評価,フィードバックトレーニングシステムを開発し,めまい平衡系疾患およびパーキンソン病を対象に姿勢リハビリテーションに関する医工連携を進め,後者については,在宅における姿勢リハビリテーションの実施可能性および即時効果を確認した.
著者
石丸 学 佐藤 和久 内藤 宗幸
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

放射性元素は崩壊の際に多量の放射線を発生し、周囲の材料に原子レベルの欠陥を与える。このため、原子力産業に使用される材料は、照射環境下に曝されても構造変化やそれに伴う材料劣化が起こらないことが求められている。本研究では、イオンビーム技術および先端的電子顕微鏡技術を用いて、ナノ構造化を施した材料の照射挙動を調べた。その結果、多量の面欠陥を導入した炭化ケイ素において、耐照射性が向上することを見出した。
著者
カチョーンルンルアン パナート 木村 景一 BABU Suryadevara V. 鈴木 恵友
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ポリシング加工現象を解析するため,被ポリシング面(被加工領域)にエバネッセント光(近接場光)を発生させ,被加工領域に侵入するナノ微粒子の挙動観察を行なった.独自に開発したポリシング機に搭載できるポリシング現象可視化装置により,ポリシングの現象を再現し,SiO2基板で粒径15~100nm(4H-SiC基板では粒径50nmのシリカ)の粒子の挙動を動的に毎秒100フレームで観察することに成功した.
著者
赤星 保浩
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

宇宙ごみの増加割合を低減させる目的で、2007年度にフランスよりISOに超高速衝突試験法(新たな宇宙ごみが生じにくい材料を選定するための試験方法)に関する規格案(11227)提案された。しかしながら、日本ではこのような試験を想定しておらず十分な試験体制が取れていなかったが、本研究活動を通じてその試験体制を整えた。さらに日本側から数多く修正案を提案した。本規格案は現在FDIS段階まできており、今後、ISO本部と最終確認作業を行うところまできている。
著者
安井 湘三 鈴木 宏昭 下薗 真一
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々が開発したCSDF構造刈り込みの手法は、脳機能の本質に迫るとされる冗長削減原理の一形態と考える。本基盤研究では、この手法を洗練・改良した上で以下のような応用を行い、当初の目標は概ね達成されたものと考える。(A)アナロジー類推プロセッサアナロジーは認知科学、心理学、科学史、AIなどで研究されてきた。アナロジー類推を行う我々のニューロプロセッサは比較的シンプルで、そこでは抽象化内部モデルおよび具体⇔抽象の結合がCSDFの働きで自律生成されるという独自のものである。内部モデルへの引き込み等が起こることで、複合アナロジーや追加アナロジーの学習パラダイムにおいても有効であることが確認された。(B)独立成分分析(ICA)ICAもしくはBSSとは、混合された複数未知信号を分離抽出するという新IT技術である。我々の方法は、情報理論に基づいた従来法とは根本的に異なる。センサー信号を入力するオートエンコーダに恒等写像学習を行わせ、同時に、デコーダ部にCSDFを施す。すると、CSDFに抗して生き残った隠れ素子が源信号を再生する。また、デコーダ行列は混合行列を再生するので、デコーダ部は外部世界(源信号-センサ)の内部モデルとなる。従来法と比べて適応性・ロバスト性に富むことが特長で、音声や画像の実データを使った実験においてもある程度の成功を収めた。
著者
野田 尚昭 陳 克恭 田島 清司
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ヒトの歯の形状が複雑であることを考慮して, 介在物角部に生じる特異応力場の強さを有限要素法で精度良く解析する方法を検討し, ヒトの歯に生じたくさび状欠損修復後の咬合による影響を考察した.
著者
村田 忠男 伊原 睦子
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本語の連濁に関する村田(1984)をスタート地点とし、21年後に伊原・村田(2006)で再立ち上げを行った研究は、さらに、発展を続け、Ihara, Tamaoka and Murata(2008)及びTamaoka, Ihara, Murata and Lim(to appear)その他と進化かつ深化した研究論文となった
著者
佐藤 しのぶ
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

癌マーカーとして期待されている蛋白質テロメラーゼは、DNAテロメラーゼ逆転写酵素, hTERT遺伝子)の異常メチル化と相関があると言われている。しかし既存のテロメラーゼ検出方法では高感度な検出ができず、相関関係が観察できなかった。そこで、本研究では電気化学的テロメラーゼ活性検出法と電気化学的遺伝子検出法によって、臨床サンプルのテロメラーゼ活性とhTERT遺伝子のプロモータ領域の5つのCpGサイトについてメチル化度合いを調べた。
著者
桑原 伸夫
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

TV放送等の無線システムは電子機器等から放射される妨害波の影響を受けるため,各国で規制が実施されているmしかし,今後普及が進むディジタルTV に対しても同じ方法で規制を実施して良いのか明らかになっていないm本研究では,妨害波よりアナログTVとディジタルTV画像が受ける影響を評価して,ディジタルTVに対する妨害波レベルの適切な評価法を研究したm研究の結果,現在使用されている準尖頭値より平均電力やAPDで評価する方法が適していることがわかった.
著者
岸根 順一郎
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

カイラル空間群に属する磁性単結晶において「スピンの位相」を外場や電流で制御するための種々の方法を理論物理学の立場から探った.その結果,結晶の構造カイラリティがスピン位相のマクロな秩序化を引き起こし,これを外場によって制御できることを明らかにした.とくに,カイラルスピンソリトン格子と呼ばれるスピンテクスチャが伝導電子と結合することにより,単結晶においてメモリ効果,磁気抵抗効果,起電力効果の共存する物質を作ることが可能であることを明らかにした.
著者
松本 龍介
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

機械材料の高性能化や高度な構造健全性の要請のため,ミクロスケール構造変化に立脚した力学モデル構築の試みが盛んになされている.中でも代表的なアプローチとして,量子計算から原子間相互作用力を定義し,分子動力学法による欠陥構造のダイナミクスの理解を経て,離散転位動力学法による転位構造と力学特性の関連の解明へと繋げようとする一連の研究が挙げられる.しかしながら,離散転位動力学問題の単なる大規模化によってマクロな構造解析を実施することは非現実である.本研究ではこの問題点を突破するために均質化理論に基づく解析手法の開発を行なった.初年度は,連続体解析における代表体積要素内に周期境界条件を仮定した離散転位動力学問題を格納することで,連続体によるマクロ問題と離散転位動力学法によるミクロ問題を結合したマルチスケール解析手法の定式化を行なった後,それを用いて弾性体粒子を分散させた1滑り系の金属基複合材料の塑性変形挙動の解析を行った.本年度は,それに引き続き,転位が介在物内に侵入できるように,理論及び解析プログラムを拡張した後,転位源の活性化及び,介在物への転位のパイルアップと侵入挙動と,応力-ひずみ曲線との関係を異なる寸法の介在物に対して明らかにした.さらに,2滑り系に拡張し,多結晶体の塑性変形挙動と粒径及び転位構造との関わりに関する解析を行った.そして,転位が粒界を横断するメカニズムを離散転位動力学法に導入することで,降伏応力と加工硬化係数に対する粒径効果が適切に導入されることを明らかにした.
著者
中垣 通彦 松本 龍介 堀江 知義
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究では、高自由度の挙動が可能な人工筋肉を実現させるため、微小アクチュエータを駆動要素とする知的複合材料の創成を目的とする。知的複合材料を構成する機能性材料として形状記憶合金、ピエゾ素子、イオン交換樹脂、液晶などが挙げられるが、後二者は出力が小さい。一方、前二者は比較的高出力を引き出す事が可能であり、実際に駆動素子として利用されている。ここでは駆動力の大きい形状記憶合金およびピエゾ材料を駆動材料として利用する。一般の駆動素子では、駆動の自由度は1自由度であり、それらを組み合わせたとしても数自由度に留まる。本研究では人工筋肉体に高自由度性を持たせるため、駆動素子を繊維化し、その体積分率と配向性を任意に分布させた柔軟複合材料として考えた。現在では機能材料素子そのままの発生ひずみは0.3%程度に留まり、生体筋肉などの100%近いひずみを発生させるには到底及ばない。本課題のもう一つの重要な要素としてひずみ増幅方法を考案する事が必須である。そこで本研究者らの構想である駆動素子を用いたユニモルフ/バイモルフばねを用いた。数値計算モデルによれば、ピエゾひずみの数十倍のばねひずみを発生させる事が可能となる。これにより自由度が高く大ひずみを発生する人工筋肉の構築が可能となった。本研究で最適な人工筋肉の設計が可能となる解析計算システムを開発した。これにより人工筋肉の創成のための労力、時間と予算を大幅に削除し、最適な材料仕様を決定する事が出来る。ソフトウェア本体には、知的複合材料のモデルを構築するために、微小なバイモルフ/ユニモルフばね素子を任意の体積分率と配向をもって分散させる事を可能とする、SCC-LRM粒子分散構成則モデルを用いた。本システムを用いて、より生体のシステムに近く血栓の発生の可能性が低い脈動収縮型の人工駆動動脈め基本動作の挙動を計算力学的に実施して示した。本研究の結果と関連する研究成果を国内外の学会において発表した。
著者
有吉 哲也 有馬 裕 馬場 昭好
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

現在、多種多様なカラー撮影方法が研究・実用化されている。カラー情報をより容易に、同時に偽色やモアレを生じさせること無く簡単な画素構造にて得ることが求められている。本研究では、シリコン基板の側面に光を照射してカラー撮影を行う「側面照射型カラー撮像素子」の原理に基づき新しいカラー撮影の検討を行い、その基礎を確立して実現可能性を示した。
著者
永井 秀利
出版者
九州工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本年度は,前年度の研究成果を引き継いで,それを発展させるべく研究を進めた.前年度の研究では,他研究に見られる大頬骨筋よりも笑筋を用いる方が有効であることを示したが,本年度の更なる検討により,日常的な軽いあるいは微弱な口唇動作におしいては口角下制筋の方がさらに有効であることを確認した.これにより下顎部のみの比較的狭い領域への電極装着のみで十分である可能性が高まり,実用上の装着負荷をより小さくすることへの見込みも得られた.本年度に提案した口裂周辺の計測位置から得られた波形に基づいて,母音の認識実験も行った.筋電信号は微弱であるため,筋電波形には非常に多くのノイズが含まれる.これをどのように低減するかが大きな問題となるが,本研究ではウェーブレット解析に基づく縮退と大域制限とを併用する手法を提案した.また,特徴パラメータ抽出の際に計測毎の差異を吸収するための正規化の方法についても提案した.認識にはフィードフォワード型のニューラルネットワークを利用し,およそ64%の認識率を得ることができた.さらに,子音認識を目的とした筋の選定とそこから得られる筋電波形の特徴分析を行った.本年度の研究では,顎舌骨筋,胸骨舌骨筋,輪状甲状筋を対象筋として選定した.得られた波形を調査した結果,実際の発声に先行した筋活動の有無による特徴差が観測された他,[k],[s]などの口腔の前方で調音する子音については顎舌骨筋の活動が,[h],[m]などの口腔奥に共鳴空間を作る子音については胸骨舌骨筋の活動が特徴的に表れることが確認された.また,胸骨舌骨筋と輪状甲状筋の活動に関しては,母音発声に際しての特徴差も見られた.現時点ではまだすべての子音を識別できるとは言えないが,いくつかのグループへの識別を行うことは十分に可能と考えられる.こうした成果は,今後,もう少し整理を進めた上で研究発表を行う予定である.