著者
本田 逸夫
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

丸山眞男の青年期=反動化の時代の経験、つまり彼の収監等の受難と同時代の「自由主義」的知識人の「実践的無力」は、日本の国家と思想の言わば病根を示すものだった。すなわち、「国体」は疑問の提出自体を許さない「直接的」「即自的」「統一」であると共に無際限に「精神の内面」へ侵入する権力であり、知識人の思想も表面の(外来)イデオロギー体系と深層の呪術的な(無)意識との乖離から、異端排撃への同調・屈服とその自己正当化に陥りがちだった。これらの問題性の克服の志向こそ、丸山の思想・学問の形成と展開を主導していた。そしてそこで特に重要な役割を演じたのが、--自由主義の批判者でありながらも、「大転向」の時代に良心に基き「時潮と凄絶に対決」すると同時に他者への寛容をも示した--師、南原繁との持続的な(思想的)対話であった。丸山は、(「古層」論等に至る所の)「存在拘束性」の徹底した追究を通じて日本思想の深層の問題を剔抉し、あわせて(おそらく南原を含む)日清戦後世代の知識人の国家観や天皇観の脱神話化につとめた。更に晩年の彼は、「伝統」や「正統」の研究が示す通り、超(むしろ長)歴史的な価値(=個性的人格・良心等)の「客観的」存在を唱える南原の思想に近づいていった。自由主義論に即していえば、その作業は、相対主義にも不寛容にも陥らぬ自由主義を支える(そして、主体形成の前提を成す「思想的な座標軸」でもある)所の「絶対的価値」ないし「見えない権威」--その歴史的な探求と重なっていたのである。
著者
佐藤 寿倫
出版者
九州工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

近年値予測を用いたデータ依存の投機的実行が注目されているが,値予測のためのハードウェア量が問題となっている.本研究では,値予測機構のハードウエア量を削減することを検討した.具体的には,頻繁な値の局所性に着目し.予測値を0と1だけに限定している.SPECべンチマークではレジスタに書き込まれる値の平均で20%以上が0と1で占められているので,予測値を制限しても有意義なパフォーマンスが得られる.シミュレーションの結果,提案した予測器は2倍以上のハードウエア規模を必要とする従来の最終値型予測器よりも,性能が高いことが確認された.
著者
久保 喜延 木村 吉郎 加藤 九州男
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

社会インフラとしての橋梁等の構造物は、耐用年数が長いため、耐久性に富んだ構造物とするには、フェアリング等の耐風安定化部材を使用せず、耐久性の高い構造物とすることが必要である。橋梁断面に発生する風による振動は、流れの剥離によって生じる。剥離を剥離で制御する方法が、剥離干渉法という研究代表者が開発した方法である。これを用いれば、耐風性の良好な橋梁断面を開発できるという成果を得た。
著者
金元 敏明
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

タンデム風車ロータの特徴的な回転挙動に則して騒音を把握した. 相反回転時 : 騒音の卓越周波数はブレード通過周波数およびその高調波とは一致せず, 前後段風車ロータの干渉騒音が支配的となる. 後段風車ロータ停止時 : 前段風車ロータのブレード通過周波数の高調波で卓越周波数が確認され, 後段の大規模剥離による騒音が顕著となる. 同方向回転時 : 相対周速比が増加すると干渉騒音レベルが高くなり, 広帯域周波数の騒音レベルも上昇する.
著者
金元 敏明
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

前後段風車ロータと内外二重回転電機子からなる風力発電ユニットについて,好適な風車ロータ形状を提案した.また,二重巻線形誘導発電機を搭載して実風況下で実証試験を行い,低回転速度から同期回転速度まで最高効率運転が可能なことを確認するとともに,その電機的制御法を提示した.実用上問題となる騒音については,後段風車ロータが小径のため前段風車ロータ翼端渦の影響はなく,ブレード面上の境界層に基づく速度せん断層同士の干渉を抑制すればよいことが判明した.
著者
宮野 英次
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,NP困難であるグラフ最適化問題を対象に,近似アルゴリズムを設計した.本近似アルゴリズムは多項式時間で高速に動作し,最適解に対する近似精度が理論的に保証されている.また,NP 困難であるグラフ最適化問題に対して,近似下界を示した.近似下界は,NP=Pという仮定の下で,多項式時間ではより近似精度の高いアルゴリズムを設計することは理論的に不可能であるという近似の意味での限界を示している.
著者
金元 敏明 服部 裕司
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本風力発電機は,(1)低風速下では前後段風車ロータが互いに逆方向に回転し,(2)後段風車ロータの最高回転速度付近で定格運転に達し,(3)その後は雨風車ロータが同方向に回転して出力一定運転となる.これを実現させるため,二重回転電機子方式二重巻線形誘導発電機を試作して特性を把握するとともに,風洞と数値実験により,風車ロータ形状の好適化を図った.1.発電機風車ロータとの連携運転が可能なことを確認し,同期回転速度以上では入力側からも出力が取り出せることを明らかにした.2.好適な前後段風車ロータ径比前段ブレードの形状によらずD=(後段径/前段径)=1までは後段風車ロータ径の増加とともに出力は増大するが,D=0.84以下では相対回転速度が遅い領域で後段風車ロータが前段風車ロータと同方向に回転する能力があるのに対し,D=0.84以上になると前段風車ロータが後段風車ロータと同方向に回転する.本着想に沿いかつ高出力が得られる直径比はD=0.84付近となる.3.前後段風車ロータの好適な軸間距離前後段ブレード形状によって出力と回転トルクに違いはあるものの,前後段風車ロータの軸間距離が近いほど高出力が得られる.4.風車ロータ周りの流れ軸方向速度成分は風車ロータを通過する毎に遅くなるが,前後段風車ロータが同方向に回転すると後段風車ロータのハブ側で上流側に向かう流れが生じ,前段風車ロータの過回転を抑制する.5.好適ブレード形状の提案後段風車ロータに流入する流れを考慮し,前段風車ロータ径の50%内側では,前段風車ロータに流入する流れをそのまま後段風車ロータに流すため,無作用翼素の採用を提案した.6.空力騒音の把握単段風車ロータのみの場合に比べてタンデム風車ロータの等価騒音レベルは高く,相反回転時のほうが同方向回転時より高い.しかし,後段風車ロータ径が小さいと騒音が低くなることは喜ばしい.
著者
近浦 吉則 鈴木 芳文
出版者
九州工業大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

結晶の構造評価は局所的な基本構造とその構造の場所分布の2因子によって完全になされる。前者の基本的結晶構造はX線スペクトルによって解析される。一方、結晶の不完全性を含む物質の構造の場所分布は、本研究代表者らによるX線散乱トポグラフィで調べられる。そこで、両者の機能を有機的に組み合わせた局所的なスペクトロスコピーをともなうトポグラフィ(仮に、X線スペクトロスコピック散乱トポグラフィと称する)の開発が本研究の第一の目的である。また、X線回析トポグラフィの欠点の一つであった場所分解能の向上を各種のマイクロビームの開発により、シンクロトロン放射光の新時代においてサブミクロン分解能を達成する目処を立てることが第二の目的である。平成4年度にまず、高精度走査機構を含むシステムの設計を行ない、計22軸の位置制御を行なうコンピュータープログラムを完成させた。平行して、収束X線マイクロビーム自作完了。平成5年度は、上記走査装置の製作を行なうとともに、収束マイクロビームと位置敏感検出器を組み込み、珪素鋼単結晶中の方位分布トポグラフフの直接観察を試み、本法の有効性が確かめられた。平成6年度は、高エネルギー研究所シンクロトロン放射光実験施設において、スリット方式で平行白色マイクロビームをつくり、竹材中のセルロース結晶、珪素鋼および複合材料をX線散乱トポグラフ観察を行ない、2〜3μmの分解能を達成した。これは、これまでの本法の分解能を1桁向上させたことを意味する。これらの実験から、0.5μmの壁は2次元非対称反射のマイクロビームによって可能であることを結論した。さらに、システム全体の調整チェックのために、先端複合材料の構造評価を行ない、半導体検出器マルチチャンネルのシステムが所期の設計性能を持っていることを確認した。研究成果の一部は、研究期間中、6回の国際会議で発表された。
著者
荒川 等
出版者
九州工業大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

昨今の歩行者と自転車の交通事故が増加している社会問題に着目すると、自動車のドライブレコーダーが実用化されたように、歩行者のための事故状況記録機すなわち「ウォークレコーダー」の実現が期待される。特に、瞬時の判断力が劣っている年少者・高齢者・障害者などのいわゆる認知弱者が装着して有用性を評価するための試作機を製作した。本研究のウォークレコーダーは、ヘルメットの上部に取り付けたカメラ、GPS、運動センサの情報をノート型パソコンに自主開発したアプリケーションを用いて記録する単純な構成によって、汎用性とフレキシブル性に優れている。また、カメラを車載カメラ、全方位カメラ、Webカメラと取り替えて次のように比較検証した。1、車載カメラ:前・後・左・右方向のカメラ4台の映像信号をハード的に1つの画像に結合することでパソコンの取り込み負担を軽減し、自転車の移動状況を十分に記録することができた。被験者が装着した際の機器の重量の負担が大きい。2、全方位カメラ:カメラが1台のため映像の取得方法をハードとソフトの両面で簡潔にできたので、試作機を年少者に装着して実験することができた。歪補正の処理を行うことで、目視と同じ遠近感で自転車の移動状況を認識することもできた。3、Webカメラ:前・後・左・右方向のカメラ4台を車椅子に装着して用途拡大を試みた。ノート型パソコン1台で撮影する場合、撮影時間間隔を要し、自転車の動きを追跡することが困難で目的を果たせなかった。実施計画にあった小型サーバ5台を用いた測定データの分散処理システムの構築には至らなかったが、カメラや信号処理の工夫により交通事故分析を行える程度の十分な情報を記録することができた。さらに、歩行者の周囲の景観と遠隔地の保護者の間でインターネット中継による映像会話を試行したところ、相互のコミュニケーションによる歩行支援モデルを提案できた。
著者
鶴田 隆治
出版者
九州工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

物理現象の素過程を解明するに有効な解析ツールである分子動力学シミュレーションを用いて,準平衡状態にある単純分子アルゴンおよび多原子分子水のナノバブルの生成と消滅機構について検討した.まず,三次元計算系に対する分子動力学シミュレーションによりナノバブルを発生させ,その界面構造を観察するとともにYoung-Laplaceの式の適応について検討をした.その結果,Young-Laplaceの式ならびに古典的核生成理論はナノバブルへの適応は妥当ではないことが分かった.次いで,ナノバブルが存在できる気液界面の力学平衡条件を探るために,周囲流体,特に液体側の界面構造に着目し,気泡の生成過程または平衡状態において,気液界面における界面構造と圧力・温度挙動を解析した.また,極座標解析を行い,ナノバブルの半径方向における気泡周りの数密度分布と力分布を求めた.さらには,強制的に外圧を加えた際のナノバブルの消滅過程を調べた.以上の解析結果より,ナノバブルの気液界面層において,分子が平衡状態よりも周期的に変化する大きな力を受け,気泡界面層の位置の遷移とともに界面層近傍の構造が気泡挙動と強く関連していることが分かった.すなわち,気泡外部の液体分子からの分子間力によって気液界面をつくるためのエネルギーが供給され,球形の気泡界面が形成・維持されていると考えられる.また,水分子においては,ナノバブルの界面は配向により負に帯電することを見出した.
著者
金藤 敬一 高嶋 授
出版者
九州工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

導電性高分子ポリピロール(PPy)は、電解重合成膜時の支持電解質調整により、全く相反する二つの伸縮特性、即ち陰極膨張性及び陽極膨張性を示すフィルムを作成可能なことが明らかとなった。これは、ドーピングに寄与するイオンの極性が反転したためとして説明付けられる。これらの相反的な変形を示すフィルムを各レイヤーとして二層構造に配置することにより、両層ともに伸縮活性なバイモルフ型アクチュエータが作成可能であることを見いだした。これは、PPy自立フィルムの両面における正負両イオンがシンクロ的に脱注入することが駆動源と見なされることから、従来型の単層・単イオン駆動型バイモルフアクチュエータと識別する意味で"バイアイオニックアクチュエータ(BIA)"と称される構造体である。従来、バイモルフアクチュエータは伸縮不活性な支持層と伸縮活性な伸縮層との間での自然長変化による共有接合界面での大きな変形ストレスが駆動因子である。ここに提案するBIAは、(1)両層とも伸縮活性であり、同一ポリマーをホストとした断続的な電解重合法により二層構造を形成させるために(2)シームレスな界面を形成するといった特徴を有しており、剥離性問題が無い強靭な接合界面はまた、駆動寿命を飛躍的に増大させる可能性を有している。従って、BIAは、バイモルフ型ソフトアクチュエーターとしてより理想的な駆動機構を有する構造体であり、導電性高分子の有するフィルム変形の機能性を十分に生かした構造体として、今後高い応用性が期待される。
著者
孫 勇 宮里 達郎
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は酸素が不純物として存在している場合、3C-SiC薄膜のエピ成長に与える影響を明かにすることを目的とする。酸素は空気中でも多く存在し、薄膜原料や成長雰囲気への混入、薄膜の支持基板のシリコン結晶中の吸蔵酸素などから、酸素が不純物としてSiC薄膜の性質に与える影響を解明することが薄膜のエピ成長にとても重要な課題である。本研究では、水素プラズマスパッタリング法を用いてシリコン基板上に3C-SiC薄膜を作製し、二つの方法によって不純物酸素の影響を調べた。第一に、プラズマ成長雰囲気に微量な酸素ガスを導入し薄膜の性質に与える影響を調べる。第二に、シリコン基板中の酸素含有量を変え、基板中酸素が薄膜性質に与える影響を調べる。研究の結果、次の事実を明らかにした。まず、プラズマ成長雰囲気に微量な酸素を導入した場合、酸素は薄膜に導入され安定な構造を形成する。これにより薄膜の結晶性が悪化し抵抗率やドーパントの活性化率などに影響を与えると考えられる。同じ酸素量を導入した場合、約650℃で微小なSiO2結晶相が形成され、これが核となって異常な速度でウエスカーが成長する。結果としてSiC薄膜に多数のウエスカーが観察される。約850℃前後で薄膜がSiCの微粒子になり荷電粒子の移動度に相当な影響を与えると思われる。約950℃前後に薄膜は層状構造になり組成もずれ、Si/C比は約1:1からC-richになる。次に、通常シリコンウエハの強度を保つためにある程度の酸素が導入されている。基板中酸素の影響を調べるために、我々はシリコン基板に電流を流し電子と酸素欠陥との相互作用によって酸素の影響が拡大され、その影響が実際に観察できるようになった。650℃以上の成長温度では、この酸素の影響が無視できなくなる。つまり、酸素を多く含むシリコン基板は、SiC薄膜の支持基板として適切ではないことを判明した。成長温度が650℃を超えると、酸素欠陥からシリコン基板が蒸発しはじめ、基板空洞化が進む。基板の空洞化によりSiC薄膜の結晶性を著しく劣化させることが判った。
著者
下崎 敏唯
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

熱電変換材料に求められる性質は、大きいSeebeck係数と大きい電気伝導率、小さい熱伝導率である。異常に大きいSeebeck係数と電気伝導率に比較して異常に小さい熱伝導率を持つNaCo2O4は熱電変換材料として極めて優れた特性を有しているが、この高効率性は単結晶の特定の方向でみで実現されており、作成の困難さ、コストなどあらゆる面で多結晶体での高効率化が望まれている。これまで多くの研究者によってNaCo2O4多結晶の高効率化が研究されているが、最大で単結晶の性能の50%程度で、通常10〜20%にとどまっている。本研究では種々の方法(固相反応法、プラズマ焼結法、溶融法、大気中加圧法、ホットプレス法など)で多結晶NaCo2O4の熱電特性の高効率化を試みた。熱電材料の高効率化には異種相や空洞などの欠陥の混在を皆無とし、結晶粒界の弱結合を無くすことで電気伝導度の増大が先ず重要である。本研究ではプラズマ焼結法、ホットプレス法で緻密化を試みたが、粉末の焼結と同時に反応ガスが生成し、緻密化しにくいこと、これらの方法では試料が還元雰囲気となり、原材料が反応してNaCo2O4を生成するためには酸素を必要とすることなどの理由から、緻密で高効率な焼結体の作成は困難であった。このため、酸素の供給が可能な大気中加圧法を考案し、極めて緻密な焼結体の作成に成功した。しかしながら、この焼結体の熱電特性は粉末焼結法で得られたものに比べて、10〜20%程度、性能が向上するに過ぎなかった。加熱中のNaの飛散が原因と考えられ、加熱中、Na2CO3やNaCo2O4と同じ組成を持つ粉末を周辺に添加して解決を試みた。試料の緻密化は可能となるものの性能の向上は認められない。逆に、Naの供給過剰となっている可能性がある。今後、この点の確認、Na濃度の適切な制御を行い、高性能化を試みる。一方、溶融法では種々の問題を克服して、局所的にではあるが緻密で結晶粒が特定の方向に配向した組織が得られた。更なる検討を行う予定である。
著者
秋山 壽一郎 重枝 未玲
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

任意の降雨外力から、流域・都市域の諸特性と各種治水施設の特性・機能を的確に考慮した上で、内外水が複合した浸水・排水プロセス、被害の状況、治水システムのバランスなどを評価・検討できる(1)「浸水減災シミュレータ」を開発した。また、(2)実流域・都市域での実績データに基づき、降雨流出、洪水特性、都市域における氾濫特性の再現性などを検証した上で、(4)そこでの治水対策の被害軽減効果と、仮想的な外力に対する浸水被害の評価・検討などを行い、同シミュレータの有用性・実用性を実証した。(5)併せて、環境にやさしい減災施設である樹林帯・水防林の工学的評価と樹林帯整備のあり方について検討を加え、整備計画のための検討ツールを開発した。
著者
倉田 博之 清水 和幸 清水 和幸
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

生体分子ネットワーク中に埋め込まれている生物学的基本回路の構造と機能の関係(設計原理)を体系化して,合成生物学の基盤となるデータベースを構築した。それを基にして,基本回路の複合化システムである大腸菌中央代謝経路(解糖系+TCA回路+ペントースリン酸回路)の設計原理を解析して,それを合理的に設計するための遺伝子組換え戦略を提案した。物質生産の基盤である中央代謝経路を再設計することによって,エタノール発酵系や乳酸発酵系の生産性を向上させて,環境エネルギー問題に貢献する。
著者
田上 耕司
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

完全2次再結晶化させた焼結タングステン細線中のバブルを走査型電子顕微鏡により観察した。粒界上には平均で23nmの径のバブルが10^<13>m^<-2>の高密度で存在する一方で、粒内のバブルの面密度は粒界の約5%にしか過ぎなかった。また、2次再結晶粒の形態を定量化し、それらの変化が高温クリープにどのような影響を及ぼすかについて調べた。粒の形態を粒形状に関するパラメーターの1つf_1で代表させることにより定量的に表すことができた。そして、粒の最適なインターロック状態にある組織を「粒界面積の急激な増加を示さない最小のアスペクト比を有する粒の形態」と定義し、その状態f^0_1からのズレ指数ΔI(=f_1-f^0_1)によって高温クリープを特徴付けることができた。変形機構図中のベキ乗則クリープ領域は粒が最適にインターロックされている状態のΔI=0で最も狭く、それからズレるにつれて拡大した。そして、同領域の変形は粒界すべりによって強く影響を受け、ΔI>0ではΔIが増加するにつれてさらに粒界キャビテーションによる影響が加わると考えられた。これらの研究成果については平成9〜10年度研究実績報告書の研究発表欄に示す論文にて公表した通りである。このように線材中に軸方向に並んで数多く存在するバブルは2次再結晶粒形状の制御という重要な役目を果たしており、高温での強度はバブルの分散状態こよって決定される粒の形態によって最も強く影響を受けることが分かった。従って、粒内のバブルによる変形応力への直接的な寄与、つまりバブルによる非熱成分的硬化は粒形態の変化のために隠されてしまうので、現在粒形態の寄与分の分離方法に付いて検討中である。
著者
井上 創造 久住 憲嗣
出版者
九州工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では,行動センシング,つまり各種センサ機器を用いて現実世界における人間の行動を理解する技術において,1.人間の行動を高精度に判別し,有用な客観的知識を得ること,および2.要求される程度に応じて対象者の個人情報を保護すること,を両立するための基盤技術を研究する.今年度は,グローバル行動情報収集システム「ALKAN」を開発し、実際に運用して大量のデータを集めた.ALKANは,スマートフォン上のソフトウェアおよび、サーバソフトウェアからなり,参加者はスマートフォンを用いて行動を行い加速度センサ情報を蓄積し、ネットワークにつながった時点で行動情報収集サーバに送信します。サーバは、行動情報を蓄積するとともに、参加者の履歴と、被験者全体におけるランキングを作成し参加者に提示する.参加者は、スマートフォンからこれらの情報を閲覧することができ、一日の行動履歴やカロリー消費といった付加機能をサーバ側で追加することもできる。このため、参加者への様々なフィードバックを動的に追加することができ、参加の意欲も高めることができる。我々はALKANをおよそ一年間運用し、約200人から3万件を越す行動データを得ることができた。このデータを用いて行動認識など種々のデータマイニングを行った。既存の行動認識の研究は被験者が多くても数十人程度というのが多いが、人数が増えると既存の手法では精度が悪くなる現象も見られており、行動認識における新たな研究チャレンジをALKANによって開拓できつつある.ALKANシステムを応用し、振り付けやお辞儀の採点システムや、看護士の行動識別、在宅見まもり、農作業自動記録と言った応用分野への適用も始めており、「行動」をキーワードとした幅広い応用が期待できる。さらに、動画との連携機能を付加した、ALKAN2も開発しており、動画と行動情報を同時に共有する新たなWebサービスも開始する予定である。
著者
近藤 浩
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

人物の顔写真の対称度を測定するため、まず顔の軸を水平方向(行方向)に対して直角になるように回転させる。これはアフイン変換によりごく簡単に行えるが、回転を行うことにより画像サイズからしばしばはみ出して消失される部分が出るため顔の重心を画面の中央に移動させ、この重心を中心に回転を行った。これにより軸の回転に対する問題はほぼ解決できた。次にこうして回転させた画像の一次元フーリエ変換を必要な全行に対して行いその実部のみを2乗し、虚部をゼロとしたもののフーリエ逆変換を行う。この段階で画像の各行毎の水平方向一次元関関数が得られたことになる。このときフーリエ実部のみの逆変換(real part-only synthesis)の相関であるから原画と左右折り返しの画像との相互相関を自動的に計算していることになる。各行の原点での値(第1列目の値)はreal part-only synthesisから得られる2重画像(原画と折り返し画像)のその行のみでのエネルギーを表し、第2ピークが求める相互相関値となっている。従って目の部分、鼻の部分、また口の部分のみの関係した行のみを縦方向(列方向)に和をとることだけで局部対称性が求められる。さらにすべての行を足し合わせると顔全体の相関となり全体像の対称度が求まる。従って、初期値として目、口、鼻など必要な部分の行番号を入力しておけば、上記一連の処理は瞬時にして完結する。70人の学生に協力してもらい顔写真をディジタルカメラでコンピュータに取り込みこれらの処理を行った。平均処理時間は2.79秒であった。本年度科研費によりほぼ本テーマを完全遂行できたことに感謝するとともに、来年度からは影の消去及び3次元立体回転へと展開していきたい。
著者
安藤 一雄
出版者
九州工業大学
雑誌
九州工業大學研究報告 (ISSN:04530357)
巻号頁・発行日
vol.1, 1951-03