著者
加々良 耕二 家田 成 安田 広宣 生島 宗治 五島 俊介
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.257-264, 1995-03-15 (Released:2009-11-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

トリアルキルウレアには安定形のA形晶, 準安定形のB形晶と不安定形のC形晶が存在する.準安定形のB形晶を製造するために, 本化合物のトルエン中での晶析挙動をIRを用いて調べた.晶析温度が318,333Kの場合, 過飽和度SBに対応してB形晶, (A+B) 形晶及びA形晶が析出したが, 時間経過に伴ってB形晶はA形晶に転移した.298KではSBには無関係にC形晶が析出し, A形晶に転移した.B形晶からA形晶への転移速度定数κ, 転移が始まるまでの待ち時間θAに対する晶析条件の影響を500mlの晶析槽で調べ, さらに, 2l及び200l晶析槽を用いてスケールアップの検討を行った.以上の実験結果に基づき, 200lスケールで晶析実験を行った結果, A形晶を全く含まないB形晶を製造することができた.
著者
加々良 耕二 町谷 晃司 高須賀 清明 河合 伸高
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.437-443, 1995-05-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
6 4

テトラリン体の精製における溶媒媒介転移を抑制するために, 転移に及ぼす晶析温度, 溶媒組成および撹拌速度の影響についてDSCを用いて検討を行った.転移の過程を経時的に追跡した結果, ある待ち時間を経たのちS字型の曲線を示しながら, 準安定形のA形結晶から安定結のB形結晶に転移した.転移過程を溶液濃度一定, すなわち過飽和度が一定の領域に対して成長速度式を用いて解析し, 総括転移速度定数, およびB形結晶が析出し始めるまでの待ち時間と種々な晶析条件との相関を求めた.この基礎実験結果に基づき, 500lスケールでパイロット実験を行った結果, 安定形のB形結晶を含まない準安定形のA形結晶のみを製造することができた.
著者
百永 真士 矢澤 久豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.438-443, 1988-07-10 (Released:2009-10-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

抗圧利尿剤チエニル酸のNa塩からのフリー化および結晶変換反応における反応促進と結晶粒径制御のために第2媒体の添加法を検討し, メチルイソブチルケトンが良好な添加剤であることを見いだした.また, 溶液中のチエニル酸結晶の界面エネルギーと製品粉体特性値との間に相関性のあることを明らかにした.次いで本反応晶析のスケールアップをZパラメータを適用して行い, 良好な結果を得た.
著者
吉野 寿高 百永 眞士 篠崎 勝彦 矢澤 久豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.906-913, 1997-11-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
13

精製結晶として得られた医薬品の大部分は, 添加剤を混合して錠剤を造り, 服用される.このような医薬品に対して要求される最も重要な特性は, 錠剤からの溶出速度が所定値に調節できることである.錠剤の溶出速度は結晶の内部構造, 粒径, 添加剤との親和性などによって変化する.このような薬・剤複合化技術の開発として, 活性ビタミン剤であるオクトチアミンの晶析を行い, 最適な錠剤化が可能な晶析法および条件を確立した.さらに, 本晶析法のスケールアップ因子についても検討を行った.
著者
加々良 耕二 山崎 広志 矢沢 久豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.604-609, 1994-09-15 (Released:2009-11-12)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

フォスミドマイシン精製晶析は液滴からの溶媒の物質移動を伴う結晶化過程と, 撹拌による析出結晶の機械的破砕過程を含む複雑な晶析法である.本晶析法によって得られるフォスミドマイシンの粒径および粒径分布をコントロールするため, 5lベンチスケールおよび200l一パイロットスケールで実験を行い, 粒径に関しては単位体積当たりの撹拌所要動力 (n3d5/V) およびZ因子が, また粒径分布に関しては単位時間当たりの流体の平均循環回数 (nd3/V) が装置形状・スケールに関係なく良好な相関関係を与えることを見出した.さらにこの因子を仕様の異る無菌室の200l晶析槽に適用した結果, 製剤化に適した所望の粉体特性を有するフォスミドマイシンが得られた.
著者
百永 真士 日比 文夫 矢澤 久豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.192-197, 1984-03-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

バッチ操作におけるフェノキシ酢酸化合物の晶析を検討した.その結果, 製品代表粒子径Dpおよびその粒径分布関数のMax F (Dp) は下記の攪拌効果を含んだ式で相関された.Dp=4.64×10-2-8.75×10-5 NdθcMax F (Dp) =-420 Z+1.02×103ここで, θcは平均循環時間, Zは攪拌速度 N, 攪拌翼径 d, 攪拌槽径Dおよび粒子径Dpを含む無次元数である.前2式は80倍の幾何学的に非相似な晶析器のスケールアップにおいて, 粒径分布を制御するために適用できた.これより, スケールアップ因子Zは幾何学的に非相似な晶析槽のスケールアップにも適用できるものと考える.
著者
百永 眞士 大西 賢 矢澤 久豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.553-561, 1992-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

充填性や流動性の良い粉体特性を有したセファゾリンナトリウム (化学式 : C14H13NaN8O4S3) の多形β形結晶を晶析することを目的として実験条件の検討を行った.その結果, 物理的, 化学的に安定なβ形の結晶を取得するためには, 水-ソルミックス (EtOH-IPA-アセトンの混合溶媒のことで, 各々の比は85%, 5%, 10%) 混合溶媒系で晶析温度の違いによる結晶の溶解度差を利用した晶析法が有効であることを見いだした.また, セファゾリンナトリウムに構造が類似したジアミノモノカルボン酸構造を有した化合物, またはL-リジン, L-アルギニンのようなアミノ酸を微量添加することによって, 板状結晶から針状晶が凝集した球形の凝集結晶に晶癖を調整する方法が確立できた.本晶析法によって医薬品のバイアル充填, カプセル充填に好適な結晶を得ることができた.さらに, 浮遊撹絆動力比Z因子をパラメータとして用いることによって, 粒径と粒径分布制御およびスケールアップが可能なことを明らかにした.
著者
古賀 敬一 川上 良一 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.1174-1179, 1996-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

チアゾール酸には, 1.5水和物, 無水和物が確認されていたが, 今回, 新たな0.5水和物が出現したので, 各多形結晶のメタノール水溶液中における転移挙動を水分計, X線回折を用いて調べ, 多形間の相互関係を明らかにした.各多形結晶の転移はメタノール濃度に依存し, 1.5水和物の場合, 0~30Vol%では転移は起きず, 50~80Vol%では0.5水和物へ, 85~100Vol%では無水和物へ転移した.その際, 無水和物の種晶を1Wt%添加すると, 80Vol%でも無水和物へ転移した.0.5水和物の場合, 80~95Vol%では転移は起きず, 100%で無水和物へ転移した.無水和物の場合, 0~40Vol%では, 1.5水和物へ転移したが, 50~100Vol%では転移は起きず無水和物のままであった.
著者
古賀 敬一 平林 敏 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.430-436, 1995-05-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
6

チアゾール酸1.5水和物を安定的に無水和物に転移させる新しい晶析法を開発するために, 転移溶媒としてメタノールが最適であることを確認し, メタノール水溶液において種々の晶析を行った.その結果, 転移速度に及ぼすメタノール濃度, 晶析温度, 種晶添加効果および撹拌速度の影響を明らかにし, 安定的に無水和物へ転移させる晶析法を見い出した.
著者
味香 修
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学 (ISSN:03759253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.22-27, 1969-01-05 (Released:2010-10-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1
著者
三宅 義和 牟田 哲也 石塚 勝也 白石 智之 岩崎 仁 森 康維
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.929-935, 1995-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
12

水溶液中でのテトラクロロ金 (III) 酸のアセトンジカルボン酸による還元反応を紫外・可視分光光度計で測定した.金イオン濃度の減少速度は, 210nmでの吸光度の時間変化から得られ, その反応速度は金イオンとアセトンジカルボン酸濃度に比例した.その速度定数の活性化エネルギーの値が-21.2kJ/molと得られ, この過程が金コロイドの核生成過程に対応していると推論された.一方, 生成した金コロイドは530nm付近に最大吸収波長があり, その波長での吸光度の時間変化は誘導時間を有し, シグモイダル曲線で表された.誘導時間は金イオン濃度, アセトンジカルボン酸濃度及び温度の増大につれ減少した.この過程の活性化エネルギーの値は85kJ/molであり, この誘導期間中に金コロイドの成長が進行することが示唆された.
著者
MORI YASUSHIGE SHIOMI TOSHIYA KATADA NAOKI MINAMIDE HIROSHI IINOYA KOICHI
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
Journal of Chemical Engineering of Japan (ISSN:00219592)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.211-216, 1982
被引用文献数
7

The effects of a corona precharger on the performance of a fabric filter were studied experimentally in the air with controlled humidity. Test dusts, fine calcium carbonate and fly ash, were precharged and then introduced to a test fabric. The test fabrics were felt, spun staple and filament woven fabrics.<br> When charged dust is collected on a test fabric at low filtration velocity and low relative humidity, a rugged surface often appears on the charged dust layer, and pressure loss across the loaded test fabric is reduced. This electrostatic effect on pressure loss occurs not only for felt fabric but also for spun staple woven fabric, but does not appear for polyester (Tetron) and glass filament woven fabrics, because of pin-hole formation.<br> On the other hand, the collection efficiency of a fabric filter can always be improved by using a corona precharger. The collection efficiency increases with the charge-to-mass ratio of dust. Even if pin-holes are formed during the filtration, the collection efficiency can be improved using a corona precharger, without substituting a higher-performance fabric.
著者
姫野 修司 小松 隆宏 藤田 昌一 富田 俊弘 鈴木 憲次 中山 邦雄 吉田 修一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.122-129, 2007-03-20
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

本研究では,二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)/メタン(CH<sub>4</sub>)分離膜として最近開発されたDDR型ゼオライト膜を用いて様々な単成分ガスの透過やCO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>混合ガスの透過を測定し,各気体の透過機構や分離機構の解明を行い,他の分離膜との性能比較を行った.<br>まず,He, H<sub>2</sub>, CO<sub>2</sub>, O<sub>2</sub>, N<sub>2</sub>, CH<sub>4</sub>の単成分ガスの透過流束を測定し,CO<sub>2</sub>は主に吸着に起因し,CH<sub>4</sub>はDDRゼオライト細孔による分子ふるいに起因する透過機構であることを明らかにした.また,加圧透過試験およびスウィープ試験による298 Kでの単成分ガスのCO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>理想分離係数は供給圧力0.2 MPa,透過圧力0.1 MPaのとき最大でそれぞれ336, 170となった.<br>次に,スウィープ試験で測定したCO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>混合ガス(50 : 50)と単成分ガスの透過流束および分離係数を比較した結果,すべての圧力範囲においてCO<sub>2</sub>の透過流束は混合ガスより単成分ガスの方が高く,CH<sub>4</sub>の透過流束は混合ガスと単成分ガスとで変化はなかった.さらに,混合ガスを用いた加圧透過試験では供給圧力0.6 MPaで分離係数が極大値を示し,そのときの値は106であり,スウィープ試験では供給圧力が大気圧のとき分離係数が最大値200を示し,圧力の増加に伴い分離係数は減少した.<br>本膜を近年報告されている他のCO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>分離膜と性能比較した結果,CO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>分離性能およびCO<sub>2</sub>透過性能ともに高いゼオライト膜であることを明らかにした.
著者
岩井 芳夫 小橋 幸八 恵谷 英之 本田 康司 荒井 康彦
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.1247-1251, 1990-11-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
4 6

生物培養培地に対する酸素の溶解度の基礎的知見を得るため, 純水, 塩化ナトリウム水溶液, 硫酸アンモニウム水溶液およびスクロース水溶液に対する酸素の溶解度を25℃において飽和法により測定した.また, これらの塩の混合水溶液および塩・糖の混合水溶液に対する酸素の溶解度の測定を行った.次に, それらの水溶液に対する酸素の溶解度をSechenovの式で相関することを試みた.アンモニウムイオンおよびスクロースに対する修正されたSehumpeらのパラメーターを用いたところ, 塩もしくは糖を含む水溶液に対する酸素の溶解度の相関結果は良好となった.さらに, Danckwertsの関係を用いて, これらの塩・糖の混合水溶液系に拡張したところ, 単一塩および糖の塩析パラメーターにより, 良好な相関結果が得られた.
著者
森貞 真太郎 村西 健嗣 新戸 浩幸 東谷 公
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.295-300, 2005
被引用文献数
1 1

平均力ポテンシャルに基づく陰溶媒モデルを用いた分子動力学シミュレーションにより,0.1 Mおよび0.001 MのNaCl水溶液中における帯電コロイド粒子間の相互作用力を算出した.また,Poisson&ndash;Boltzmann方程式に基づく粒子間力の理論計算を適切な近似を用いて行った.その結果,粒子間力のシミュレーション結果は理論計算結果と一致し,我々の陰溶媒モデルを用いたシミュレーションは電解質水溶液中における粒子間力を適切に表現できることが示された.さらに,理論的には取り扱いが困難な,コロイド粒子の接近に伴う電気二重層の重なりの様子を可視化することにも成功した.