著者
高橋 優太 今泉 洋 狩野 直樹 斎藤 正明 加藤 徳雄 石井 吉之 斎藤 圭一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.375-383, 2008 (Released:2008-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
7 5

2003年12月から2006年11月にかけて,日本海に面した立地である新潟市にて降水中に含まれるトリチウムと各種陽イオン濃度の測定を行った。これにより本研究では,これらの関連性を明らかにすることで,気団移動の解析への有効性について検討した。サンプルとなる月間降水は擬似浸透水型の採水装置を用いて集められた。この結果,以下のことが明らかとなった。(1)降水中のトリチウム濃度とカルシウムイオン濃度との間に相関性がある。(2)季節によって,降水起源気団の持つトリチウム濃度が異なる。(3)この傾向は大陸性気団において顕著に現れる。(4)降水中のトリチウム濃度は大陸性気団の降水と海洋性気団の降水との混合比によって決まると推定できる。
著者
二宮 和彦 新倉 潤 佐藤 朗 寺田 健太郎 齋藤 岳志 松崎 禎一郎 友野 大 川島 祥孝 篠原 厚 久保 謙哉 齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.13-17, 2020-01-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1

大阪大学核物理研究センター(RCNP)ミューオン実験施設(MuSIC)から得られる,大強度の連続ミューオンビームを用いて,近年注目されている負ミューオンを用いた元素分析法の適用可能性を検討した。銅板で包まれた天保小判(19世紀,日本)について銅板を傷つけることなく,ミューオン特性X線の測定によって小判の金の含有率が53質量パーセントであることをわずか14分間の測定で同定した。本論文では,MuSICにおけるミューオン特性X線測定による元素分析の現状を概観する。
著者
田中 宏幸
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.305-317, 2016-07-15 (Released:2016-07-15)
参考文献数
28

宇宙線に起因する高エネルギーのミュオンは透過力が非常に強いため,地球内部の観測に応用することができる。これまでに,火山や断層,洞窟などを対象に,地球浅部構造の観測が行われてきた。中でも火山を対象にした観測では,マグマの形状や位置を視覚化することにより,噴火推移の予測に使える可能性があることがわかってきた。本報文では,ミュオンによる地球内部観測の原理と手法,そして最近の成果についてレビューする。
著者
守田 美雪 庄司 美樹 本田 昂 阪上 正信
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.282-285, 1987-06-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

The environmental radioactivity caused by the reactor accident at Chernobyl'was investigated from May 7 to May 31 of 1986 in Toyama. Measurement of radioactivities in airborne particles, rain water, drinking water, milk, and mugwort are carried out by gamma-ray spectrometry (pure Ge detector; ORTEC GMX-23195) . Ten different nuclides (103Ru, 106R, 131I, 132Te-I, 134Cs, 136Cs, 137Cs, 140Ba-La) are identified from samples of airborne particles. In the air samples, a maximum radioactivity concentration of each nuclide is observed on 13th May 1986. The time of the reactor shut-down and the flux of thermal neutron at the reactor were calculated from 131I/132I and 137Cs/134Cs ratio.The exposure dose in Toyama by this accident is given as follows: internal exposure; [thyroid] adult-59 μSv, child-140 μSv, baby-130 μSv, [total body] adult-0.2 μSv, child, baby-0.4μSv, external exposure; 7 μSv, effective dose equivalent; adult-9μSv, child-12 μSv, baby-11 μSv.
著者
五十嵐 康人 関 李紀 池田 長生
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.55-59, 1984-02-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

日本人のウランの一般的な濃度とその臓器別分布をフィッショントラック法によって調べた。分析に供した臓器は肺, 肝臓, 腎臓, 脾臓, 筋肉である。分析した臓器の中で最も高いウラン濃度を示したのは肺であり, その値は1.86ppb-wetであった。各臓器の分析結果は英国および米国人に対する文献値と一致するものであった。
著者
山本 忠利 津久井 公平 大塚 徳勝
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.407-412, 1982-08-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
5

85Kr使用装置から漏れ出た放射性Krの回収と精製を目的として, 気密容器による閉じ込め方式をとり, その中に漏洩する放射性Krを回収, 精製できる装置を試作し, その特性試験を行った。85Kr使用装置を収納する気密容器内の放射性Kr濃度は0.3ppmまで低下し, そのときの回収率は99.976%に達した。さらに回収した放射性Krを精製することによって, その純度は99.9908%に達した。すなわち, 気密容器内に漏洩した放射性Krをほとんど100%近くまで回収可能であり, かつ回収した放射性Kr中のHeを100ppm以下まで除去することができる。
著者
関澤 春仁 佐藤 真理 相原 隆志 村上 敏文 八戸 真弓 濱松 潮香
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.129-135, 2016-03-15 (Released:2016-03-15)
参考文献数
18
被引用文献数
5

カキのへたを経由した放射性セシウムの移行を明らかにするため,生育中のカキのへたに可溶性の137Csを含む水を添加し,収穫した果実の137Csを測定した。その結果,137Csを含む水を処理した果実の果肉中の137Cs濃度は無処理区よりも高く,また,生育前半期に果実内へ移行した137Csは,収穫期まで果実内に維持されていたことが明らかとなった。これらの結果から,生育期間中にへたに付着した可溶性の137Csは果実内に移行し蓄積することが示唆された。
著者
後藤 聖太 斎藤 恭一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.7-14, 2016-01-15 (Released:2016-01-22)
参考文献数
11

東京電力福島第一原子力発電所の1~4号機取水口前の海水エリアに,原子炉建屋などから漏出した汚染水の一部が流れ込んで16万トンの海水が汚染されている。この汚染海水の処理には,吸着材をそのまま投入・浸漬後に回収する方式が「簡便,確実,そして安全」で有効である。港湾内汚染水から放射性セシウムやストロンチウムを除去するために,組み紐に成型した吸着繊維がその海水エリアに試験投入・浸漬されている。本稿では,セシウム除去用の吸着繊維の作製法や性能について解説する。
著者
飯本 武志 掛布 智久 高橋 格 高木 利恵子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.745-752, 2015-12-15 (Released:2015-12-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

アジア・太平洋地区の中高生を対象とした,IAEAによる原子力・科学技術教育プログラムの開発(2012~2015年)のミッションが進行中である。科学技術・工学・数学(STEM)全体に魅力と興味を感じるような教育プログラムを策定し,選ばれたパイロット国(フィリピン,マレーシア,インドネシア,UAEの4か国)が自国の事情に応じて試験展開するプロジェクトである。この活動の背景と動向,我が国による支援の実績を整理するとともに,今後の展開について述べた。
著者
服部 隆充
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.399-403, 2014-08-15 (Released:2014-08-29)
参考文献数
4

液体シンチレーションカウンタ(LSC)計測実習への適用性の観点から,ベトナムウォッカは,たとえば,無色透明でエタノール濃度は高く,蒸留酒のためエタノール以外の不純物をほとんど含まない,などの優れた特徴を有する。このベトナムウォッカがLSC計測実習用の測定試料として適切であるか否かの検討を行った。化学的な前処理操作を行わない14Cの直接測定により3種類のベトナムウォッカと純粋な試薬エタノールについて,放射能濃度と比放射能を求めた。その結果,放射能濃度は試料中のエタノール濃度に比例し,ベトナムウォッカと純エタノールの比放射能は標準データである0.25Bq/g炭素と良い一致を示した。このことから,ベトナムウォッカは高い精度でLSC計測実習の測定試料として適用可能であることが結論づけられた。
著者
鑛山 宗利 鈴木 茂之 蜂谷 欽司 小野 文一郎 多田 幹郎 佐藤 公行
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.310-314, 1995-05-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1 1

Environmental ionizing radiations were surveyed in Okayama city during December of 1992, using a NaI (Tl) scintillation survey meter (TCS-161; Aloka, Japan) and a NaI (Tl) γ spectrometer (JSM-102; Aloka, Japan) ; measerments were carried out in fine days.Equivalent dose rate of environmental ionizing radiations was in the range of 0.048-0.171μSv/h, and the average was 0.082±0.019μSv/h. The dose rate was higher in hills than in fields. Therefore, it appears as if rocks have more radioactive materials than soils do.The distribution of the dose rates was analyzed from geological points of view. Mesozoic and Paleozoic layer was in the range of 0.067-0.095μSv/h, and the average was 0.080±0.008μSv/h. Rhyolitic layer was in the range of 0.076-0.105μSv/h, and the average was 0.088±0.010μSv/h. Granitic layer was in the range of 0.057-0.171μSv/h, and the average was 0.098±0.022μSv/h. Neogene Period layer was in the range of 0.057-0.114μSv/h, and the average was 0.076±0.015μSv/h. Quaternary Period layer was in the range of 0.048-0.114μSv/h, and the average was 0.076±0.013μSv/h.By γ spectrometry, 40K, 208Tl, 212Bi, 214Bi, and 228Ac were detected at Mt. Kaigara (0.171μSv/h), Tsushima (0.076μSv/h) and Fujita (0.048μSv/h), especially, 226Ra was detected at Mt. Kaigara. It seems that 40K was distributed uniformly in Okayama city area. Thas, the difference in the dose range is attributable to nuclides other than 40K.Now, we conclude that there has been no change of the dose rates of environmental radiation in Okayama city these 10 years.