著者
三上 智 松田 規宏 安藤 真樹 木名瀬 栄 北野 光昭 川瀬 啓一 松元 慎一郎 山本 英明 斎藤 公明
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.589-607, 2015-09-15 (Released:2015-09-29)
参考文献数
29
被引用文献数
1

福島周辺における空間線量率や放射性核種沈着量の地域的分布及び経時変化の特徴について,様々な手法による大規模環境調査の解析結果に基づいて紹介する。また,除染モデル実証事業後の継続的な環境測定結果を基に,除染効果の継続性に関する議論を行う。さらに,土地利用状況ごとの環境半減期の解析結果,及びこれをベースにした空間線量率の将来予測の例について紹介する。
著者
河野 孝央
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.345-354, 2014-07-15 (Released:2014-07-28)
参考文献数
10
被引用文献数
4

放射線はランダムに検出され,計数は統計的に変動することが知られている。本研究ではこのことを理解するための実習法を実践して示した。実習では天然の40Kを含む3種の自然放射能線源を使用した。参加者は小,中,高校の先生方9名である。GMサーベイメーターの測定で得られた45件の1分間計数は,一見,意味なく,ばらついていたが,その頻度分布がガウス分布曲線に従うことより,統計的な変動であることが理解された。
著者
南川 雅男
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.355-366, 2017-09-15 (Released:2017-09-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

炭素・窒素安定同位体をトレーサーとする食性分析法は,人や動物の食物利用傾向を,複数の資源の分配率で表す手法として改良されてきた。同位体による研究が優れているのは利用度の復元が可能なだけではなく,生物学的現象と食料消費統計などの社会科学的現象との間を結ぶ研究の枠組みとして活用できることにある。これを示すために人間の食物利用に関する相補的な三つの研究事例を紹介し,食物利用の特性を解明する新しい研究法ついて議論する。
著者
小村 和久 柳沢 美樹男 桜井 次郎 阪上 正信
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.529-536, 1985-10-15 (Released:2010-12-13)
参考文献数
17
被引用文献数
3 11

2種のリン鉱石および市販の7種のリン酸肥料 (複合肥料も含む) についてウラン, トリウム, カリウム含有量とウラン系列, トリウム系列核種の放射平衡の状態について測定した。コラ産のリン鉱石以外の試料のウラン含有量は39-117ppmと高く, ウラン系列核種はほぼ放射平衡のものから著しく非平衡のものまで存在することが分かった。平衡の状態を, (1) 放射平衡かこれに近いもの, (2) 238U≈230Th>210Pb>226Ra, (3) 238U>230Th>210Pb>226Raのもの3つに分類して検討した。トリウム系列核種はほぼ放射平衡で含有量も一般に低く, 複合肥料以外はカリウム (K2O) 含有量は0.3%以下であった。これらの測定結果をもとにリン鉱石, リン酸肥料による放射線被曝についても検討した。
著者
小橋 浅哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.92-95, 1997-02-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1 3

The radioactivities of the naturally occurring radionuclides (226Ra, 228Ra, 228Th and 40K) and a fallout nuclide (137Cs) in newspapers issued during 1990s in Japan and information business papers were determined by gamma-ray spectrometry to obtain information on radioactivity level of papers and the sources of radionuclides contained in papers. The concentrations of the naturally occurring radionuclides in the newspapers were low, whereas the 228Ra and 228Th contents of an information business paper were as high as 30 Bq kg-1. Perhaps the thorium series nuclides contained in this information business paper was present in the kaolinite filler used in the paper. 137Cs was detected in all the newspapers, while the radionuclide was not detected in the information business papers. The 137Cs concentration in the newspaper ranged from 0.1 to 0.2 Bq kg-1. Mechanical pulp was the main constituent of the newspapers, and 137Cs in the newspapers was maybe brought with the mechanical pulp which kept a part of fallout 137Cs contained in the material wood. The data obtained in this work may be useful to estimate radioactivity released from incinerators to the environment by burning waste paper.
著者
和田 英太郎 野口 真希
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.331-342, 2017-09-15 (Released:2017-09-15)
参考文献数
36
被引用文献数
2 3

我が国で著しい進展のあったδ15N, δ13Cを用いた窒素・炭素安定同位体精密測定法(SI法)による食物網解析法の進捗についてまとめた。特に,食物連鎖に見出された,窒素・炭素同位体効果に関する二つの経験則に注目し,近年のアミノ酸レベルのδ15Nに関する成果を考慮に入れて,その成立の境界条件を考察した。経験則1:栄養段階(TL)が1段階上がるごとに3.4±1.1‰高くなる事が過去の研究で示されている。この経験則は動物の筋肉タンパクについて得られているが,±1.1‰の変動について本稿で考察した。経験則2:海洋と陸域の代表的な食物連鎖について,窒素・炭素同位体効果の比(Δδ15N/Δδ13C)が動物の種類に関わらず,ほぼ一定であることが示唆されている。一般的に,食物連鎖に沿ってδ15Nはδ13Cと統計的に有意な回帰直線の関係を示す。この関係の成り立ちの可能性について代謝系の共通性から考察した。
著者
中野 政尚 檜山 佳典 渡辺 均 住谷 秀一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.319-328, 2010 (Released:2010-05-28)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

排水中89Sr,90Sr分析を行うにあたって,β線エネルギーの違いを利用して,液体シンチレーションカウンタを用いた迅速分析法について検討した。本法により妨害核種(54Mn,60Co,106Ru,137Cs)を含む模擬排水試料を分析したところ,十分な分析精度と回収率が得られた。また従来法では分析に2~3週間要していたが,本法では3~4日間で分析できることから,排水中89Sr,90Sr分析として,十分に適用可能な優れた方法であることを確認した。
著者
齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.824-832, 1997-11-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1
著者
松坂 尚典 山川 洋司 佐藤 至 津田 修治 小林 晴男 西村 義一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.214-218, 1997-04-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3

妊娠17日目のマウスに137Csを1回静脈内に投与した後, 胎子および母体臓器における137Csの取込みを放射線測定およびマクロオートラジオグラフィによって調べた。投与後24時間目の胎子1匹あたりにおける取込み量は投与量の0.8%で, 1腹あたりに換算すると投与量の11%となった。さらに, 投与後24時間目における胎子各臓器の137Cs濃度は0.4-0.8%/gであったのに対して, 母体各臓器の濃度は2-6%/gであり, 母体臓器における濃度のほうが胎子臓器の濃度よりも4-6倍ほど高くなった。特に, 母体の器官のなかでも唾液腺が最も高い濃度を示し, 投与後1時間目および24時間目では, それぞれ25%/gおよび6.4%/gとなった。唾液腺は甲状腺に近接して存在しているので, 唾液腺における137Csの顕著な取込みについて注目する必要がある。マクロオートラジオグラムの所見は, 放射線測定によって得られた結果を支持するものであり, カラーで示された像は137Csの臓器分布を視覚的に捉えるのに役立つ。
著者
杉浦 広幸 酒井 創
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.211-219, 2016-05-15 (Released:2016-05-13)
参考文献数
17

2015年におけるマツカサの放射性セシウム汚染を,ゲルマニウム半導体検出器とオートラジオグラフィーで調査した。2015年採取のアカマツの灰色マツカサにおける137Cs濃度は,2013年の予想1)に反して2011年と同程度の高濃度汚染であった。アカマツの灰色マツカサの137Cs濃度は,2011年に空間線量率が高かった場所で高濃度の傾向があった。高濃度汚染マツカサ表面のオートラジオグラフィーを行うと,不規則な強いスポットが観察された。福島のアカマツの灰色マツカサは,2015年以降もしばらくは高濃度の放射性セシウムに汚染のものが含まれると思われた。
著者
金井 豊 坂巻 幸雄 笹田 政克
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.143-150, 1993-03-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

筑波トンネルの掘削工事に伴う湧水中の, ウラン濃度, 234U/238U放射能比および水質について調査した。トンネル内では, 坑口からの距離や壁岩の岩質の変化に伴いウラン濃度や水質が変化した。234U/238U放射能比は, 壊変に伴う反跳効果でいずれも1よりも大きな値を示したが, 最大3.9という試料が見いだされた。これは比較的還元的環境下の試料であったがウラン濃度も高く, 岩石と長時間接触・滞留していたHCO3-濃度の高い深層地下水と判断された。
著者
今堀 彰
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.591-597, 1967-11-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
10

東大ヒューマン・カウンターによる, 全身測定, 部分測定および線スキャンニングの3者を同時に併用する測定法を用いて, 放射性物質の体内挙動を多面的に把握する方法を検討した。被検者にNa131Iを経口投与し, 投与直後, 約1時間後および24時間後に測定を行なった。線スキャンニングから求めた身長方向の体内分布曲線の解析から, 甲状腺摂取率の時間的変化および体内残留率の測定方法を検討し, あわせて, プラスチック検出器による全身測定の問題点を指摘した。放射線健康管理上, とくに内部汚染事故における被曝線量推定の手段としての, 全身測定と部分測定併用のもつ有用性について考察を加えた。
著者
原田 直樹 本島 彩香 五十嵐 和輝 野中 昌法
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.613-619, 2015-10-15 (Released:2015-10-29)
参考文献数
17

2012年に桑の葉茶から100Bq kg-1を超過する放射性セシウムが検出された。これを受け,本研究では二本松市内の桑園でクワにおける137Csの濃度分布を調査した。その結果,食用となる先端から30cmまでの上位葉において下位葉より137Cs濃度が高いこと,樹幹の表面に放射性核種が偏在していることなどが明らかとなった。また,樹幹へのカリ液肥の散布は,食用とされている上位葉(0~30cm)の137Cs濃度を有意に低下させたが,実用技術とするには不十分と判断された。
著者
平出 哲也 片山 淳 正木 信行
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.311-318, 2015-05-15 (Released:2015-05-28)
参考文献数
6

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い環境中に多くの放射性物質が放出された。食品中におけるこれら放射性物質の基準値は放射性セシウムの量で評価が行われており,この基準値は他の放射性物質の影響も評価して決められている。実際に,環境中に存在する放射性セシウムの量は半導体検出器を用いて得られるエネルギースペクトル上の全吸収ピークを評価することで行われている。しかし,この方法も含め従来の測定方法は放射性物質と検出器の距離に対して2乗に反比例する検出効率を有しており,周囲に汚染があれば,正しい評価が難しくなるため,試料と検出器は重たい鉛などでできた遮蔽容器に入れる必要がある。また,NaI(Tl)シンチレーション検出器の場合は,各ピークの分離などが容易でなく,より安全な評価ということで,全カウントで評価が行われたりしている。今回,著者らは放射性セシウムの中で,複数のγ線を放出する134Csに着目した簡便な計測法を提案する。現在,環境中に存在している人工放射性核種のうち,複数のγ線を放出するもので比較的多く存在しているものは134Csのみである。134Csに関しては,605keVと796keVのγ線の放出比が高く,これらを同時計測することで,距離の4乗に反比例する検出効率を実現できる。その結果、この手法は、周囲の汚染などに影響を受けにくくなる。また、同時計測によって発生するカウントのみで評価を行うため,スペクトル上のピーク解析など必要なく,NaI(Tl)シンチレーション検出器を用いてもピーク分離などを行う必要がない。この手法は鉛などの遮蔽体を必要としないため,環境中において非破壊でその場測定によって,放射能の評価を行うことが可能になる。
著者
稲葉 次郎
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.335-349, 2015-05-15 (Released:2015-05-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

環境に放出された放射性核種による被ばく評価にあたっては,放射性核種の動きを正しくモデル化し,適切なコンパートメント間移行パラメータを用いることが重要である。ここでは,①土壌から農作物へ,②飼料から畜産物へ,③環境水から水生生物への3種類の移行パラメータに注目し,それぞれの定義,これまでに報告されているパラメータ値とその測定法,パラメータ値に対する影響因子等について紹介する。福島原発事故により環境汚染の事態が生じたが,そこからもできる限りの移行パラメータの抽出が望まれる。