著者
井手 俊太 月本 光俊 小島 周二
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.347-357, 2013 (Released:2013-06-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

ゼオライトやプルシアンブルーに代わる吸着剤として天然に存在する古代貝化石(Ancient Shellfish Fossil,以下ASF)による水中137Csの吸着/除去,動物体内吸収抑制に関する基礎的検討を行った。その結果,ASFの放射性セシウムに対する選択的吸着能が明らかとなった。今後,福島第一原発事故に伴う土壌,焼却灰,汚染水等に含まれる放射性セシウムの吸着・固定さらに,放射能汚染除去作業従事者の人体皮膚表面からの除染への利用を検討する。
著者
渡邊 立子 甲斐 健師 服部 佑哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.525-530, 2017-11-15 (Released:2017-11-15)
参考文献数
9

放射線による生物影響のメカニズムの解明には,モデルやシミュレーションを用いた研究は重要な役割を持つ。特に,メカニズムに関する仮定や生体の異なるレベルで得られた実験データの間の関係を評価するためにはシミュレーションは有効な手段である。本稿では,DNAと細胞への放射線影響のシミュレーションによる研究の概要について述べる。この中で,DNA損傷生成に関わる物理化学過程の詳細を推定する理論的アプローチと,DNA損傷と細胞応答のダイナミクスを推定する数理モデルも紹介する。
著者
平尾 良光
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.709-721, 2008 (Released:2008-11-28)
参考文献数
25

大分県大分市の16世紀末における大友氏の遺跡から発掘された鉛や青銅製品に関して,材料産地の推定という研究のために鉛同位体比法が応用された。これらの資料の中でいくつかは中国,朝鮮半島,日本などの東アジア産の材料とは大きく異なった鉛同位体比を示した。この鉛同位体比は16,17世紀の長崎県の原城遺跡,熊本県の田中城址からの資料,韓国6世紀の武寧王陵からの資料にも見いだされた。また,この特別な鉛は1~5世紀頃のカンボジア,プンスナイ遺跡からも検出された。地域が異なり,時期が違うこれら資料に関する鉛同位体比の一致は偶然かもしれない。しかし,この地域における一つの鉛鉱山産材料の流通や交流として説明できるかもしれない。一つの推論は次のようである。すなわち,東南アジアでは前400年以降に青銅やガラス製作技術が発達した。5,6世紀に製造されたガラス製品が中国の海岸線をたどり,韓国までもたらされた。その後,16,17世紀になって,ヨーロッパ人が東南アジアに寄港し,日本へ持って行くために鉛,火薬,その他の物資を調達した。
著者
山澤 弘実 五十嵐 康人
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.19-30, 2020-01-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
48
被引用文献数
1

東京電力福島第一原子力発電所事故により大気中に放出された放射性核種の事故初期の放出率の時間変化,大気中濃度の時間変化,大気拡散モデルによる再現に関する現状の理解について,最近の研究をレビューして概要を取りまとめた。事故当時の環境試料等からの大気中放射性核種濃度の復元が進みつつある。事故に由来する放射性物質の大気中の挙動についての理解を得るため,現在においても事故当時の核種組成,物理・化学的性状に関する研究が進められている。
著者
鷲尾 方一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.385-393, 2017-10-15 (Released:2017-10-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1

放射線化学反応は,反応に影響を及ぼす物理定数やパラメータが多数にわたり,さらに放射線の種類によっても反応の初期の活性種の分布等が異なるため,その完全な理解のためには非常に複雑でかつ高度な知識が必要となる。そのため,この分野の研究者以外からみると,汚い科学という汚名を着せられたりもしてきた。しかし,放射線を使った産業,医療等への応用技術が大きく広がっている現在では,放射線化学の全知識を動員した反応への理解が極めて重要な状況を迎えている。放射線化学研究に求められる要請はますます深まるものと考えられる。本稿ではできる範囲で、この複雑な放射線化学の体系を概観した。
著者
山下 真一 村上 健太 田口 光正
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.497-505, 2017-10-15 (Released:2017-10-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

医学・産業利用が近年拡大しているイオンビームは,イオン種(元素)とエネルギーの組み合わせ次第で多様な照射効果が表れる。本稿では,イオンビームの最大の特徴である高い電離密度(トラック構造)と原子衝突について概説する。水中でのトラック構造と水分解生成物の収量の相関,結晶材料中の典型的な損傷形成過程のほか,今後の展望として未解明の課題にも触れる。
著者
辻村 憲雄 吉田 忠義
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.497-508, 2007-09-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1 4

中性子線量当量 (率) 測定器の校正に使用する241Am-Be中性子線源について, 中性子放出角度分布の非等方性を計算によって評価した。ここでは, 球形の241AmO2が厚いBeに囲まれる線源モデルを仮定し, (1) AmO2表面でのα粒子のスペクトル, (2) 9Be (α, n) 反応によって発生する中性子のスペクトル, (3) 線源カプセルから漏洩する中性子のスペクトルと放出角度分布を, それぞれ順番に計算した。 (1) と (2) の計算ではα粒子の阻止能と9Be (α, n) 反応微分断面積 (JENDL/AN-2005) , (3) の計算ではモンテカルロ輸送計算コードMCNPを利用した。計算の結果, AmO2の粒径を3μmとした場合, 中性子の収率及びスペクトルがともに標準的な241Am-Be線源のものに良く一致することがわかった。また, 同じ粒径条件で算出した241Am-Be中性子線源の非等方性補正係数は, X3型線源で1.030, X4型線源で1.039となり, 文献から得られた実測値にともに良く一致した。更に, 線源カプセルの周囲に支持構造物がある場合の影響についても検討し, 中性子線量当量 (率) 測定器の校正業務において使用する非等方性補正係数を決定した。
著者
鎌田 裕
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.181-200, 2017-05-15 (Released:2017-05-15)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

核融合は,燃料がほぼ無尽蔵で安全性に優れたエネルギー源である。その研究開発は,黎明期から日本が主導する科学技術であり,JT-60装置での臨界プラズマ条件の達成をはじめ,数々の世界最高性能を樹立してきた。いまでは,要素技術開発の時代を過ぎて,システム統合の時代に入り,日米欧露中韓印の7極が協力して,核融合プラズマ燃焼と統合された核融合炉工学技術の実証を主目的とする国際熱核融合実験炉ITERの機器製作と建設(フランスのサンポール・レ・デュランス)が,2025年の運転開始を目指して進んでいる。ITERに貢献するとともに,ITERを補完して原型炉の姿を決めていくための理工学研究が,日欧協力である「幅広いアプローチ活動」を活用して進んでいる。その一環として,ITERへの貢献と原型炉のための定常高圧力プラズマ制御の実現を主目的とするJT-60SAの建設が茨城県那珂市で,核融合中性子工学研究のためのIFMIF原型加速器の建設が青森県六ヶ所村で開始された。これらの活動では,核融合エネルギー開発を担う若手研究者や技術者の育成も重要な目的のひとつである。そして,これらを踏まえ,原型炉開発の技術基盤構築を進めることを目的に,産学官のオールジャパン体制が構築され,原型炉の概念設計及び研究開発が開始された。
著者
三村 均
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.451-467, 2016-11-15 (Released:2016-11-15)
参考文献数
30
被引用文献数
2

福島第一原子力発電所事故では,炉心冷却のために数百トン/日の注水が続けられ,Csなどの放射性物質を高濃度(~106 Bq/cm3)で含む汚染水が短期間で大量に発生し,保管場所の確保も困難な状態となっている。放射能高汚染水は,主に放射性セシウムを含む海水系汚染水であり,極めて大量で高放射能の汚染水の対策は過去に例がないことである。事故の収束に向けた道筋のステップ1において,放射性セシウムを除染する水処理設備が設置され,冷却水として再利用する循環注水冷却システムが稼動している。本システムでは,Cs吸着剤としてゼオライト,CST(結晶性シリコチタネート),不溶性フェロシアン化物が使用されている。今後長期間にわたりシステムの運転を継続する必要があり,高機能性吸着剤の開発,除染の効率化,高度化が緊急の課題とされている。ここでは,CsとSrの選択的吸着剤の吸着特性及び安定固化法及び安全性評価に関わる課題について紹介する。
著者
石川 徹夫 安岡 由美 楢崎 幸範 床次 眞司 石井 忠 須田 博文 山田 裕司
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.133-140, 2004-03-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

Measurements of radon in water have been conducted by many investigators so far. While liquid scintillation counting is widely used for radon-in-water measurements in Japan, there are other available devices such as IM-fontactoscopes and atmospheric radon monitors with bubbling kits. In the present study, an intercomparison exercise was conducted for four devices using water samples with two different radon concentrations. The devices used are : a liquid scintillation counter, an IM-fontactoscope, a pulse ionization chamber with a bubbling kit and a radon monitor (which employs a silicon semiconductor detector) with a bubbling kit. As a result, there was a good agreement among the measured values for other devices than the IM-fontactoscope (differences were within±3%), The atmospheric radon monitors (with bubbling kits) could be useful for field surveys of radon-in-water, considering their portability. On the other hand, the values measured with the IM-fontactoscope deviated from other measure-ment values (47% for sample A and 22% for sample B) . The deviation might be caused by a calibration method for the IM-fontactoscope. Since the IM-fontactoscopes are used at some institutes in Japan even nowadays, it is necessary to check values measured with them for determination of radon-in-water concentrations.
著者
竹中 光大 高取 宏至 小島 康明 静間 清
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.419-427, 2008 (Released:2008-07-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1

近年,各地の地下水や湧水は環境保全や食の安全と関連して人気が高まっている。また健康へのリスクの評価や鉱泉基準(地下水中のラドン濃度が74Bq/L以上)を満たすかどうかという点で,地下水中のラドン濃度の測定は重要である。本研究ではγ線スペクトロメトリを用いて西条酒仕込み水8か所のラドン濃度を測定した。ラドン濃度は月1回の頻度で2年間にわたり測定し,季節変動の有無,井戸の違い,ラドン濃度とpH,水温,気温との相関を調べた。その結果,西条酒仕込み水のラドン濃度の平均値は160Bq/Lであり,多くの仕込み水が鉱泉基準を満たしていることがわかった。また,ラドン濃度は特定の季節に変動する現象はなかった。水温,気温,pHとラドン濃度の間に明確な相関は見られなかったが,井戸の種類では打ち抜き井戸に比べてボーリング井戸のラドン濃度が高いことがわかった。
著者
細渕 和成
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.859-877, 1997-11-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2
著者
加藤 清 森下 悟 手嶌 孝弥 刈田 陽一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.495-501, 1988-09-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
5

高温空気雰囲気中における放射性核種の挙動を調べるために, 各放射性核種の水溶液を乾燥したものを電気炉で加熱し, 加熱温度に対する核種の揮発率の測定を行った。その結果, 塩化物の54Mn, 57Co, 59Feおよび95Zrについては, 400-1200℃では揮発しなかった。また, 塩化物の65Zn, 106Ru, 124Sb, 134CsおよびNa275SeO3では, 500℃, 400℃, 800℃, 400℃および200℃あたりから揮発し始めることが確認された。
著者
二瓶 直登 杉山 暁史 伊藤 嘉昭 陰地 威史 喜多 幸司 広瀬 農 田野井 慶太朗 中西 友子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.235-242, 2017-07-15 (Released:2017-07-15)
参考文献数
22
被引用文献数
4

他の作物よりもダイズ子実中の放射性Cs濃度は高いがその理由は明らかにされていない。本論文では子実内のCs分布に着目し,133Csを用いたX線蛍光顕微鏡と,137Csを用いたオートラジオグラフィで観察するとともに,成熟期のダイズ体内のCs分布も検討した。CsはKと同様に均一に分布し,吸収したCsの約4割が子実に蓄積した。ダイズ子実は他の作物よりCsを蓄積する割合が大きく,吸収したCsを子実に多く蓄えることが,放射性Cs濃度が高くなる要因の一つと考えられた。

2 0 0 0 OA 陽子線治療

著者
稲田 哲雄
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.28-39, 1989-01-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
11