著者
反町 篤行 KRANROD Chutima 床次 眞司 石川 徹夫 細田 正洋 JANIK Miroslaw 新垣 玲奈 古川 雅英
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.807-813, 2009 (Released:2009-12-29)
参考文献数
25
被引用文献数
5 7

我が国で行われた全国調査で,室内における高ラドン濃度が観測された沖縄県読谷村において室内ラドン濃度に関する調査を行った。測定は寝室,居間,屋外において行われた。一階の寝室において,観測期間中の平均ラドン濃度は約400Bq m-3であり,我が国の平均室内ラドン濃度(15.5Bq m-3)よりも非常に大きい値であった。また,明確な日内変動及び室内ラドン濃度の空間分布が観測された。
著者
山崎 秀夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.299-316, 2014-06-15 (Released:2014-06-27)
参考文献数
38
被引用文献数
2 1

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故(以下,原発事故と略記する)では,大量の放射性核種が環境に放出された。環境射能汚染からの低線量被ばくによる生体影響に関しては様々な議論が繰り返されており,その実態については明瞭に解明されていない。今回の事故では,東日本一帯の環境が広範囲に放射能汚染され,事故による直接的な影響を受けなかった地域にも,物流などによって放射性物質が拡散している。原発事故による環境放射能汚染の特徴は,①大規模な海洋汚染が,事故後3年以上経過した現在も継続している。②首都圏を含む人口稠密な都市が,高度な放射能汚染にさらされた。③大量の放射性核種が,今でも森林生態系に沈着している。このような複雑な環境放射能汚染は,過去に世界各地で起きた大規模原子力事故では経験していない。原発事故で環境科学的に問題になる主要な核種は,131I,134Cs,137Csである。また,原子炉冷却水は,炉内のデブリにも接触しているので,90Srの他に核燃料のウランやプルトニウム同位体,核分裂生成核種,中性子捕獲生成核種などが含まれる可能性が高く,汚染冷却水の環境への漏えいは,深刻な放射能汚染を引き起こす可能性がある。福島第一原発による環境放射能汚染の概要がようやく明らかになり始めた。環境放射能汚染の状況を明らかにし,汚染に対処するためには,放射性核種の環境中での移行,蓄積,拡散を正しく評価しなければならない。本稿では,現在までにわかっている,原発事故による環境放射能汚染の動態を,環境中の放射性核種の移行と蓄積の観点から概説する。
著者
大下 誠一 川越 義則 安永 円理子 高田 大輔 中西 友子 田野井 慶太朗 牧野 義雄 佐々木 治人
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.329-333, 2011 (Released:2011-08-29)
参考文献数
11
被引用文献数
9 6

福島原子力発電所から約230km離れた,東京都西東京市における研究圃場において原発事故後に栽培された野菜及び土壌の,134Csと137Csの放射能を測定した。試料は植え付け47日後のジャガイモの葉,並びに,苗の定植40日後のキャベツの外葉を用いた。両者共,134Csと137Csの総量は9Bq/kg以下となり,摂取制限に関する指標値500Bq/kgより低い値であった。土壌は約130Bq/kgであり,天然の40Kの約290Bq/kgと比較しても低い値であった。キャベツの外葉を水で洗浄する前後の放射能像をイメージングプレートにより得たが変化は見られなかった。
著者
平山 英夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.335-345, 2013 (Released:2013-06-28)
参考文献数
9
被引用文献数
12 20

本論文では,福島県等で地表に広く分布した134Cs及び137Cs環境において着用された個人線量計により測定される線量について,モンテカルロ計算コードEGS5で評価を行ったのでその結果を報告する。個人線量計は,実用量である個人線量当量Hp(10)を測定することを目的とした線量計であるが,広く地表に分布した線源による被ばくの場合は,線量計を着用している前面だけでなく若干下向きの角度を中心に様々な角度から光子が入射するため,数値的には実効線量に相当する線量を結果的に測定していることになるという結果が得られた。
著者
古川 真 高貝 慶隆
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.17-30, 2018-01-15 (Released:2018-01-15)
参考文献数
54
被引用文献数
1

90Srは,ウランから生じる代表的な核分裂生成物であり,半減期が約29年の放射性核種である。90Srは,純β線放出核種でありγ線を放出しないため,γ線放出核種と比べて計測が難しい。その迅速な計測のために多くの分析方法の開発が進められてきた。ここではそれらの技術を概説するとともに,特に,高周波誘導結合プラズマ四重極形質量分析計(ICP-QMS)の東京電力福島第一原子力発電所事故後の進展に焦点を当てて現状と展望を述べる。
著者
和達 嘉樹 宮坂 駿一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.462-464, 1964-11-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
4
被引用文献数
1

放射性物質を扱う室内の仕上げに使用される塗装面は, 放射性物質によって汚染されにくく, しかも除染しやすいものが望まれる。国産で市販されている塗料の中の27種類について, その塗装面のラジオアイソトープによる汚染性と除染性の試験を60CoCl2汚染および核分裂生成物汚染についておこなった。同時に, 床材料5種類についても同じように試験をおこなった。その結果, 本実験に関しては, 壁には塩化ビニル系樹脂塗料が, 床には不飽和ポリエステル系樹脂塗料がよいという結果が得られた。
著者
津田 修一 吉田 忠義 安藤 真樹 松田 規宏 三上 智 谷垣 実 奥村 良 高宮 幸一 佐藤 信浩 関 暁之 武宮 博 斎藤 公明
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.275-289, 2015-04-15 (Released:2015-04-28)
参考文献数
38
被引用文献数
4

環境中における空間線量率測定に関する実用面で役に立つ情報を提供する。この中で,精度の高い測定に必要とされる基本的要件について実データを例示しながら説明するとともに,信頼のおける環境測定に広く使用されている手法の特徴や測定例について紹介する。また,これまでに公的機関を中心に測定された空間線量率やこれに関連したデータを閲覧できるインターネットサイトに関する情報を提供する。
著者
麓 弘道
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.641-693, 2017-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
121
被引用文献数
2

放射性廃棄物を処分する場合に,自然環境中に存在する自然放射性核種との関係をどのように考えればよいか,その観点から諸外国における放射性廃棄物の取り扱いをまとめた。また,1980年代にDe Minimisとして世界が概念を共有していた,取るに足らない放射能に対する考え方,及び,それを世界が合意した免除,クリアランスといった概念の構築についてまとめた。さらに,放射性廃棄物の処分や免除,クリアランスについて,各国がどのように制度化したのか,そして,この制度化に当たり,ウラン核種を代表とする自然放射性核種がどのように関係しているか確認する。
著者
上杉 正樹 佐藤 兼章 宮野 敬治 樋口 英雄
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.131-134, 1982-03-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

鉛地金は放射性同位体の210Pbを含む場合があり, 遮蔽体を製作する前に, その放射能濃度を測定し, 素材を選択する必要がある。本研究では, 210Pbの定量方法として, 娘核種210BiをDDTC (sodium diethyl dithio carbamate) を用いて, 溶媒抽出分離し, そのβ線を測定する方法を検討した。また, この方法により, 市販の鉛地金14種と古い鉛3種について, 210Pbを定量した。市販地金の210Pb濃度は0.063~11Bq/g (1.7~300pCi/g) , 古い鉛は0.01Bq/g (0.3pCi/g) 以下であった。これらの結果より本法は鉛の素材選択に有用と思われた。本分析方法の定量下限は0.003Bq/g (0.1pCi/g) , 分析所要時間は5.5時間であった。
著者
真鍋 勇一郎 衣川 哲弘 和田 隆宏 田中 聡 角山 雄一 中島 裕夫 土岐 博 坂東 昌子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.243-252, 2020-07-15 (Released:2020-07-15)
参考文献数
30

放射線の生体影響は様々なデータが蓄積している。しかしながらそれらの定量的,体系的な理解が不足している。我々は数理モデルによる理解を進めて来た。現在までの研究の進展と今後を展望したい。また,分野横断研究の必要性についても述べたい。
著者
礒村 公郎 樋口 正信 柴田 尚 塚田 祥文 岩島 清 杉山 英男
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.157-163, 1993-03-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

日本国内の数か所で採取した蘚苔類中の134Cs, 137Cs, 7Be および40Kを測定した結果, 55試料すべてから137Cs, 7Beおよび40Kが検出され, 134Csは33試料から検出された。蘚苔類中の134Cs/137Cs放射能濃度比は平均0.057±0.026でチェルノブイリ事故時の134Cs/137Cs放出比から算出した採取時の存在比 (0.10) に比べて小さく, 核実験等のチェルノブイリ事故以外の137Csを含んでいることが示唆された。蘚苔類中の134Cs, 137Cs濃度は採取地点の標高と正の相関が認められた。成長年次が明瞭で各年ごとに成長した植物体を容易に分離できるイワダレゴケを試料として, 成長年別にイワダレゴケ中の放射性セシウムを測定した結果, 137Csは古い葉ほど濃度が高く, 134Csは1986, 1987, 1988年にのみ検出され, 過去数年にわたる放射性セシウムの蓄積傾向を把握することが可能であることが示唆された。
著者
辻村 憲雄
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.253-261, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
22

1958年7月,海上保安庁の測量船「拓洋」は,赤道海域に向かう途中で,米国がビキニ環礁で実施した水爆実験によって発生した核実験フォールアウトに遭遇した。当時船上で採取した雨水から観測された全β放射能と甲板に設置したNaI(Tl)シンチレーション検出器の計数率及び全β放射能と線量率の関係についての計算結果を基に,その単位面積当たりの全β放射能を2.0 TBq km−2,乗員の外部被ばくによる実効線量を100 µSvに満たないと推定した。