著者
菊地 尚久
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.184-188, 2018-03-16 (Released:2018-04-20)
参考文献数
11

運動療法の可能性を探るため,その対象疾患拡大の変遷と主な疾患・障害に対する運動療法の効果について述べた.運動器疾患に対しては筋力強化訓練,関節可動域訓練,有酸素運動が有効である.糖尿病・肥満症に対する有酸素運動ではインスリン感受性が高まることによる効果が大きい.循環器疾患・呼吸器疾患では有酸素運動単独より,筋力強化訓練の併用において効果が大きい.精神疾患・認知症・慢性疼痛では運動療法が脳に好影響を与えることが検証されている.近年運動療法の対象が拡大したのは,運動療法が身体に与える影響のみではなく,中枢神経系に対する有益な効果が証明されたことに起因するものと思われる.
著者
平泉 裕 中島 敏明 今西 登之彦 佐藤 義昭
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.768-775, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1

加圧トレーニング法は下肢または上肢を空圧式加圧ベルトで加圧し,適度な血流制限下での運動により短期間・軽負荷で筋肥大効果を期待できる.本法はオリンピック選手やプロスポーツ選手の強化トレーニング法として実績があり,近年はリハビリテーションや医療現場でも応用されるようになった.本技術は軽い身体負荷での運動を選択する必要がある患者に対して有効と考えられ,高齢化社会にふさわしいリハビリテーション法と考えられる.
著者
岩波 裕治 内 昌之 福田 大空 黒田 悠加 杉澤 樹 海老原 覚
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1002-1008, 2019-12-18 (Released:2020-01-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1

大動脈弁閉鎖不全症(aortic stenosis:AS)は,高齢化に伴い急速に患者数が増加している.高度な侵襲を伴う大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)が従来の標準治療であったが,ハイリスクのため適応とならない症例に対し,低侵襲治療の経カテーテル的大動脈弁植込み術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)が積極的に実施されるようになった.適応に関しては,ハートチームでの検討が必要とされ,理学療法士もその一員で,術前後でのfrailty評価を含め心臓リハビリテーションの重要な役割を担う.TAVIに対しての心臓リハビリテーションに関するデータは少ないのが現状であるが,高齢frailtyな症例に対し,個々に適したプログラムの適応が重要となる.
著者
大高 恵莉 大高 洋平 森田 光生 横山 明正 近藤 隆春 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.673-681, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
20
被引用文献数
2 8

目的:動的バランス機能の評価法であるMini-Balance Evaluation Systems Test(Mini-BESTest)の日本語版を作成し,その妥当性を検証した.方法:Guilleminらのガイドラインに準じ日本語版Mini-BESTestを作成した.バランス障害群20 名(平均年齢65.4±18.7 歳)及び健常群7 名(平均年齢69±5.9 歳)に日本語版Mini-BESTest,Berg Balance Scale(BBS),国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I),Activities-specific Balance Confidence Scale(ABC Scale)を実施し,Spearmanの順位相関係数を求めた.結果:日本語版Mini-BESTestの平均施行時間は20.0 分で,BBS(r=0.82,p<0.01),FES-I(r=-0.72,p<0.01),ABC Scale(r=0.80,p<0.01)と有意な相関を認めた.分布の非対称性を示す指標である歪度(skewness)はそれぞれBBS -1.3,日本語版Mini-BESTest -0.47であった.結論:日本語版Mini-BESTestは既存のバランス評価法との併存的妥当性を示し,かつBBSのような天井効果を認めない点で優れていると考えられた.
著者
川上 紀明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.24-29, 2018-01-18 (Released:2018-02-22)
参考文献数
15

1979年より運動器の中で唯一行われてきた側弯検診は,2016年より運動器検診の中に含まれて再出発した.側弯症は3次元的な脊柱変形(脊柱のねじれ)であるが,姿勢によるものと誤解されやすい.前屈テストで5° が指標となるが,これらの学校検診での事後措置には十分な配慮が必要である.側弯の発生原因の研究では多くの報告がされているが,いまだ原因は解明されていない.その自然経過は個々の症例により大変差があり,悪化しないものから高度に悪化し,生命にも影響を与えるものまでさまざまである.運動器検診による早期発見で運動療法,装具療法,手術療法など適切な治療法が選択でき,成人になって生じる問題点を少なくすることが可能となる.
著者
西村 一志
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.300-304, 2018-04-18 (Released:2018-05-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

わが国では高齢化が進み,ほぼ4.5人に1人が運動器疾患が原因で介護が必要となっており,回復期のリハビリテーション医療において運動器リハビリテーションは重要である.2008年から診療報酬制度で回復期リハビリテーション病棟に質の評価が導入された.年々リハビリテーション実施単位数が増加しているにもかかわらず,大腿骨頚部骨折を中心とした骨折系では,平均入院日数が延長し,自宅復帰率が低下していた.また,人工関節系ではFIM利得が少なかった.大腿骨頚部/転子部骨折,人工関節置換術患者の多くは高齢者であり,リハビリテーション治療の効果に影響する因子として,認知症,受傷前の歩行能力,術後合併症,訓練量,リハビリテーション科専門医の関与などが考えられる.
著者
木佐 俊郎 酒井 康生 三谷 俊史 小野 惠司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.709-716, 2011-11-18 (Released:2011-12-07)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

【目的】脳卒中回復期において,包括的リハビリテーション (包括的リハ) に促通反復療法を含む場合と含まない場合の治療成績を比較する.【対象・方法】対象は脳卒中回復期52 症例で,介入内容を通常の包括的リハ (通常治療群) と包括的リハに促通反復療法を取り入れた (促通反復群) とに無作為に割付け,約17 週の治療効果を前方視的に比較した.評価は運動麻痺を上田のグレードで,日常生活活動をFunctional Independence Measure (FIM)で行った.【結果】両群の年齢や罹病期間,加療期間などに有意の差はなかった.下肢や上肢,手指の麻痺改善度は統計学的有意にはいたらないが促通反復群で大きく,分離運動発現・分離例の割合は促通反復群が有意 (p<0.05) に大きかった.FIMの改善度も通常治療群に比べて下肢の促通反復群が総合項目および運動項目で有意 (p<0.05) に大きかった.手指の促通反復群ではFIMセルフケア項目でp値が0.080であった.【結論】促通反復療法を含む包括的リハは通常の治療より片麻痺とADLの改善を促進する可能性がある.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.87-116, 2011-02-18 (Released:2011-03-08)

神経因性膀胱の診断と治療の進歩…井川 靖彦 87排尿の中枢制御と脳疾患…榊原 隆次,岸 雅彦,小川恵美奈,舘野 冬樹,小川 明宏,寺山圭一郎,治田 寛之,秋葉 崇,内山 智之,山本 達也 94高齢者排尿管理におけるチーム医療…岩坪 暎二 102回復期リハビリテーション病棟における排尿障害の取り組み—排泄ケアチームを立ち上げて—…野元 佳子,久松 憲明,堀ノ内啓介,重信 恵三 108排泄自立支援体制は充足しているか—現場における介護者1 人が支援可能な時間を検証してみる—…志方 弘子,永沼真由美 112
著者
青木 孝史 中村 雅俊 鈴木 大地 大箭 周平 江玉 睦明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.18001, (Released:2018-11-06)
参考文献数
24

筋力トレーニングは,筋力低下や筋萎縮の処方として用いられる手技である.先行研究において,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングでは,神経適応により筋力が増加することが報告されている.しかし,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングが筋厚に及ぼす影響は不明である.本研究の目的は,上腕三頭筋を対象に,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングが筋力および筋厚に与える影響を明らかにすることである.対象は,12名の健常若年男性の両腕とし,無作為に皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングを行う側と低負荷筋力トレーニングのみを行う側に群分けを行った.筋力トレーニングは1RMの50%の重量を用いて,週3回8週間の介入を行った.筋力トレーニング介入前後に1RMと上腕三頭筋の筋厚を測定した.その結果,有意な交互作用は認められなかったが,皮膚冷刺激の有無に関係なく,両介入側ともに8週間の介入後に有意な1RMおよび筋厚の増加が認められた.この結果より,皮膚冷却による筋力トレーニングとの相乗効果は認められないことが明らかになった.
著者
望月 麻紀 宝田 雄大 友添 秀則 大坂 昇
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4-5, pp.283-287, 2014 (Released:2014-05-10)
参考文献数
14

Generally, conservative treatment is performed at the initial stage of Osgood-Schlatter disease (OSD) to decrease pain. When this conservative treatment is no longer effective, surgery will be performed to decrease OSD pain by removing a tibial tuberosity avulsed bone and a synovial capsule. We reported a time-series change of pain before and after the OSD surgery on a wrestling athlete. The present subject was a 20-year-old male wrestler (height 183 cm ; weight 90 kg), who received OSD surgery on the left knee. Numerical rating scale (NRS) was used to determine pain before and after the OSD surgery. NRS was measured by three positions : resting position (RP), sitting with knee extending position (SKEP), squat with knee flexing 90° position (SK 90 P) and pressure pain (PP). Immediately after the OSD surgery, NRS at the RP, SKEP, SK 90 P, and PP decreased from NRS 3 to NRS 0, NRS 5 to NRS 1, NRS 8 to NRS 6, and NRS 8 to NRS 1, respectively. Three weeks after the OSD surgery, pain at the SKEP and PP decreased to NRS 0. Eight and eleven weeks after the OSD surgery, pain at the SK 90 P decreased to NRS 2 and NRS 1, respectively. The present case study suggests that OSD surgery may progressively decrease pain. Further studies are needed to clarify the effect of OSD surgery on pain.

1 0 0 0 OA 脊髄の可塑性

出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.564-578, 2012-09-18 (Released:2012-10-19)

随意運動の制御における脊髄神経回路の役割を再考する…関 和彦 564受動歩行におけるヒト脊髄反射の興奮性動態とその可塑的変化について…中島 剛,中澤 公孝 567脊髄伸張反射の可塑性をもたらす神経機構…船瀬 広三 573
著者
橋本 圭司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.370-373, 2016-05-18 (Released:2016-06-13)
参考文献数
9

『発達障害者支援法』においては,高次脳機能障害は発達障害の中に含まれているが,高次脳機能障害診断基準から発達障害は除外されている,という紛らわしい実情がある.医学的には,生まれつきの高次脳機能の問題を発達障害と呼び,後天性脳損傷による高次脳機能の問題を高次脳機能障害と呼ぶことに異論はないであろう.近年は発達障害の概念も,知的障害から独立した高次脳機能障害へシフトしている.発達障害児やその家族には「病前のイメージ」というものが存在しない一方で,高次脳機能障害児の場合,本来あるべき機能への復活や回復に固執してしまいがちになる.つまり,ハビリテーションとリハビリテーションの違いがそこには存在している.
著者
片岡 利行
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.765-769, 2016-10-18 (Released:2016-11-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

母指および指関節は手根中手関節,中手指節関節,指節間関節からなる.母指はつまみ動作や握り動作など手の機能の中で中心的な役割を果たしている.その中で,母指の手根中手関節は中手指節関節や指節間関節と比べて,関節の自由度が高く,屈曲伸展,内外転,回旋動作が可能で母指のkey jointとされている.一方,指では手根中手関節の動きは限られており,軽度の屈曲伸展運動を認めるのみであるが,中手指節関節は,屈曲伸展に加えて,内外転も許容し,関節の自由度が高く,指のkey jointとされている.本稿ではその母指ならびに指の関節の構造と機能について解説する.
著者
村岡 慶裕
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.23-26, 2017-01-18 (Released:2017-03-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

筆者は,20年ほど前に,慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターにて,手関節装具を併用し,微細な随意筋電を信号源として,電気刺激で手指伸展をアシストするIVESを開発した.その後,前記センターと,国立病院機構村山医療センターで,神経科学研究や臨床的エビデンスを積み上げながら,約1,000万円かけて改良してきた.IVES装置は,知財マネジメント,医療機器としての製品化・薬機法承認・事業化をすでに2008年に達成した,純国産リハビリテーション医療機器のパイオニアであり,現在,年間約400台販売され,保険診療の中で広く活用されている.本稿においては,純国産医療機器開発の成功事例として,IVES装置の開発経緯や歴史,今後の展望について紹介する.
著者
百崎 良 安保 雅博
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.82-86, 2017-02-18 (Released:2017-05-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1

リハビリテーション(以下,リハ)患者における栄養評価の重要性が見直されている.リハ患者において低栄養の合併は高頻度にみられ,適切なリハ処方のためにも早期の栄養スクリーニングが必要である.特に低栄養の病態把握はリハの方針決定の参考となるため,リハ科専門医にとっても重要なスキルであると考えられる.妥当性の確認されている栄養スクリーニングツールとしてはPG-SGA,MNA-SF,GNRI,CONUT,MST,MUST,NRS-2002,PNIなどが挙げられるが,それぞれ長所や短所があるため,状況によって使い分ける必要がある.リハ患者の適切な栄養状態把握は,リハ医療の質を向上させることにつながる.
著者
関屋 昇
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.668-676, 2008-10-18 (Released:2008-10-24)
参考文献数
31
被引用文献数
1

The six major determinants of gait, as proposed by Saunders et al., were reviewed. The results showed that each of the first three determinants (pelvic rotation, pelvic list, and stance phase knee flexion) have only a minor effect on decreasing the vertical displacement of the center of gravity (COG). The major determinant of COG displacement is heel rise, and the second is the inclination of the lower extremity in the stance phase. In spite of the assumption that decreasing the COG displacement decreases gait energy consumption, the energy required for walking with a flat COG trajectory increased dramatically. Therefore, the major gait determinants as defined by Saunders et al. should be corrected in terms of both the COG displacement and energetics.