著者
村木 一郎 近藤 弘 篠田 健一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.22-26, 1962-01-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
17
被引用文献数
2

乾電池用電解二酸化マンガンの品質性能を迅速に評価する方法として,二酸化マンガンによる過酸化水素の分解反応に関する研究をおこなった。二酸化マンガンによる過酸化水素の分解能試験は,NH4Cl 5~10%溶液中で,試料粒度,採取量および温度などを規定しておこなえば,再現性のある満足な結果が得られる。この方法で電解二酸化マンガン,および天然二酸化マンガンなど数種の試料について,比較試験をおこない,これらの結果と電池放電性能の関係を検討した結果,各試料の運酸化水素分解能の順位は放電性能の順位と全く一致することを認めた。NH4Cl,ZnCl2,およびNH4Cl-ZnCl2などの各溶液中における二酸化マンガンによる過酸化水素の分解反応について研究した結果,NH4Clは分解反応の促進剤であり,ZnCl2はその抑制剤となることを認めた。また,これらの機構について考察をおこなった。
著者
笠井 順一 市場 政行 中原 万次郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1182-1184, 1960-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8

セメント類の凝結硬化について古くから諸説がある。著者らは新たな観点から,セメント類の水和反応に錯塩化学的な考え方が必要と考え,その一つの例としてマグネシアセメントの水和について調べて見た。すなわち軽焼マグネシアと塩化マグネシウム溶液からマグネシウムオキシクロリドの複塩を生成するまでの時間中にマグネシアは著しい過飽和現象を示すが,そのpHは理論上考えられるほどの変化を示さない。また塩化マグネシウム溶液濃度の増大はマグネシアの最大過飽和溶解度を増大するにもかかわらず,pHは逆に減少することを確かめた。この結果はマグネシアが溶解しても液相中にはOH-の増大を示さないから,マグネシアは液相中でMg2+とOH-に分れて存在している割合が少ないことを証明する。すなわち副塩生成までの過飽和現象は錯塩化学的な因子があり,一般セメント類の過飽和現象の説明の上に参考となるものと考える。
著者
川井 正弘 松本 孝芳 升田 利史郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1995, no.7, pp.540-543, 1995

6-O-カルボキシメチルキチソ(以下,CM-キチンと略す)は,金属イオンの吸着剤として注目され,吸着した金属イオンとの親和性により系のレオロジー的性質が変化する.また,CM-キチン水溶液は適当な三価の金属陽イオンによりゲル化し,このゲルは医用高分子材料として注目されている.しかしながら,ゲル化に及ぼす添加陽イオン種の影響は明らかでない.本研究では,その影響をレオロジー測定を通して研究した.レオロジー測定は10wt%CM-キチン水溶液に種々の濃度で塩化アルミニウム,塩化ガリウム(III),塩化インジウム(III)を添加した系について,円錐-円板型レオメーターを用いて測定温度25℃ で行った.ゲル化するに要する添加塩の量は,塩化イソジウム(III),塩化アルミニウム,塩化ガリウム(III)の順に増加した.これは,水溶液中におけるこれら三価金属イオンのCM-キチン分子を拘束する力が,In<SUP>3+</SUP> > Al<SUP>3+</SUP> > Ga<SUP>3+</SUP>の順に低下するためと考えられる.
著者
竹田 一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1974, no.2, pp.280-287, 1974

電気回路を簡略化したガスクロマトグラフ用簡易型エレクトロニック ディジタル インテグレーター試作を行ない,その精度,使いやすさなどにつき検討を加えた。<BR>ガスクロマトグラフよりの信号電圧は,μA-741型演算増幅器で100倍に反転増幅されたのち,μA-709型演算増幅 器,およびユニジャンクシ ントランジスターによる電圧-周波数変換回路により,入力電圧に比例したパルス列に変換される。そのパルス列は集積回路による計数回路で計数後,ニキシー管で表示される。<BR>また,入力信号電圧の微分値が一定の水準を越えたとき,ピークが溶出したとみなす自動ピーク検出回路に連動して,直前のピーク計数値の記憶表示,および計数部の帰塁を行ない,測定が容易に行なえるよう配慮した。本積分器は,市販品のほぼ1/20の費用で製作でき,実際のガスクロマトグラフ測定では,測定者が計数値を記録しなければならない不便もあるが,かなりの高精度で測定可能であった。また,本積分器の機能を向上した中級型積分器についても一部述べた。
著者
平井 西夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.1019-1022, 1954-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
小橋 友助 宝積 寿子 渡辺美 穂子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.71-74,A5, 1963-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3

喫煙時のニコチンの熱分解機構を明らかにする目的でニコチンを空気気流申で熱分解し,加熱温度とニコチンの分解率および熱分解生成物の組成との関係を調べた。(1)ニコチンの熱分解生成物のうちピリジン塩基として3-ビニルピリジン,かシアンピリジンのほかに少量の3-エチルピリジン,3-ピコリンおよび微量の3-ピリジルメチルケトン,ピリジン,ピロールを確認した。またニコチン同族体としてミオスミンのほかに少量のノルニコチン,ニコチリン,2,2'-ジピリジルおよび微量のイソキノリンを確認した。(2)ニコチンのN-メチルピロリジン環は熱に対して不安定であり,ニコチンを空気気流申で熱分解すると300℃から350℃の間で分解を起してミオスミンになり,400℃でピロリジン環から開環して3-ビニルピリジンと3-シアンピリジンを生成し,400℃から500℃の間でピリジン環も開環し大部分はガス状の低分子炭化水素あるいは無機のガス体にまで分解するものと考えられる。
著者
武政 三男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.738-741, 2004
参考文献数
3

近年,ハーブは,健康によい薬草として注目されている。日本におけるスパイスのイメージは刺激物であり,ハーブのイメージは身体によく,香りがあり,かつ食べられる草なのである。しかしスパイスの多くは刺激がな < ,また食用とされる多くのハーブは食品の分類(加工食品)ではスパイスなのである。生活習慣病予防や高齢者社会での食生活などの見地から,スパイスに対する期待は今後ますます高まるものと予想される。スパイスを単なる調味料としてではなく,食品機能面をサイエンスでみてみると面白い効果が数多く認められる。ここではスパイスをどのように活用したらよいか,さらに新たな活用化の可能性について提案してみたい。
著者
吉田 久良 亀川 克美 有田 静児
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.3, pp.387-390, 1977
被引用文献数
14

活性炭によるニクロム酸カリウム水溶液(6価クロムの濃度110ppm)からの6価クロムの吸着について,pHの影響,活性炭に吸着されたクロムのNaOHまたはHCl水溶液による溶離などについて検討した結果,つぎの結論が得られた,(1)6価クロムはpH4~6.5で活性炭に容易に吸着される。(2)6緬ク揖ムは活性炭にHCrOぺおよびCrOのような6価クロムの形で吸着される。(3)酸性側では6緬クロムは活性炭により容易に3価クロムに還元される。(4)3価クロム(クロム(III)イオン)は活性炭にほとんど吸着されない。(5)6緬クロムを吸着した活性炭を0.1N以上のNaOH水溶液で処理すると,吸着されたク律ムの100%が溶出し,溶出したクロムのほとんどすべては6価クロムであった。(6)6価クロムを吸着した活性炭を1NHClで処理すると,吸着されたクロムの90%が溶出し,溶出したクロムのほとんどすべては3価クロムに還元されていた。
著者
向坊 隆 雨宮 武男 西宮 辰明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.497-500, 1962-04-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
4

フッ化水素酸に侵されにくい透明材料を得ることを目的として,新しいフッ化物ガラスを研究した。フッ化物ガラスとしてはフッ化ベリリウムを主成分とするものが知られているが,吸湿性なので他のフッ化物について調べた結果,フッ化アルミニウム- フッ化ナトリウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化マグネシウム- フッ化ナトリウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化アルミニウム- フッ化マグネシウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化アルミニウム- フッ化マグネシウム- メタリン酸カリウム系のガラス化組成範囲を決定した。フッ化アルミニウム-フッ化マグネシウム-メタリン酸ナトリウム系の試作ガラスに比較的よく無水フッ化水素酸に耐えるものが得られた。その一例はフッ化アルミニウム32.5mol%,フッ化マグネシウム27mol%,メタリン酸ナトリウム40.5mol%の組成のものである。この系で組成を変えたガラスについてはフッ素対酸素の原子比の大なるほど,フッ化水素酸に対する耐食性が大であり,この比が1付近でこの影響の著しいことを見出した。またフッ化水素酸中の水含有量がこの系のガラスの腐食に大きい影響を与えることが見出された。前記組成のガラスは無水フッ化水素酸による腐食は非常に少ないが,90%あるいは80%のフッ化水素酸では腐食速度は約10倍になる。ケイ酸塩ガラスではフッ化水素酸濃度の高いほど腐食速度は大きく,無水フッ化水素酸には激しく侵される。
著者
藤井 知 杉江 他曾宏 村長 潔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.5, pp.867-873, 1974-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

硫酸鉄(II)と硫酸クロム(III)混合水溶液に水酸化カリウム溶液を加えて生成した水酸化鉄(II)を空気酸化して析出する四酸化三鉄を乾燥後,真空(10-5Torr)およびH2-H20混合ガス(H20/H2=2)の雰囲気下,200~500℃で加熱処理を行ない,粒子径,表面積および細孔構造(分布,細孔径,全細孔容積)の変化について,X線回折,電子顕微鏡ガス吸着により検討した。その結果,つぎのことが認められた。まず,四酸化三鉄沈殿を生成するさいは,クロム(III)を増加すると四酸化三鉄粒子の成長を抑制し,表面積をいちじるしく増大させた。沈殿物の加熱処理によって,1)四酸化三鉄の粒成長は400℃以上の温度でわずかに起こった。2)加熱にともなって含水量,表面積,細孔構造に変化が起こった。表面積は300℃までの温度で加熱脱水により増加するが,それ以上に加熱するとシンタリソグにより減少した。3)粒子径,表面積,細孔構造の変化は加熱雰囲気にも影響された。
著者
小松 寿美雄 野村 俊明 伊藤 利恵
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.171-174, 1969-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

N,N-ジエチルジチオカルバミン酸銀とイオウイオンとの交換反応の結果,遊離するN,N-ジエチルジチオカルバミン酸イオンに銅(II)を加えてN,N-ジエチルジチオカルバミン酸銅を生成させ,これの四塩化炭素抽出溶液の吸光度を測定してイオウイオンの間接定量を行なった。PH7.5~8.21こ調製したアンモニア水一20%クエン酸アンモニウム系緩衝溶液1.O mlを分液漏斗にとり,N,N一ジエチルジチオヵルバミン酸銀20mgおよびイオウイオン試料溶液を加えて水で30 mlにする。これを約10分ふりまぜたのち,5×10-4mol/1硫酸銅溶液10mlおよび四塩化炭素14mlを加えて約10分ふりまぜて分離した四塩化炭素溶液の吸光度を波長435mμ で測定する。イオウイオン3.3~30μg/IOml(溶媒)の濃度範囲でeerの法則が成立する。見かけのモル吸光係数は1.1×104である。ヨウ素,シアン,チオ硫酸などの陰イオンおよび金(III),白金(IV),パラジウム(II)などの共存は妨害する。
著者
岡本 佳男 毛利 晴彦 中村 雅昭 畑田 耕一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.3, pp.435-440, 1987-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4 7

光学活性なポリ(メタクリル酸トリフェニルメチル)(PTrMA)を3種の異なる方法で大孔径シリカゲルに化学結合させ,高速液体クロマトグラフィー用のキラルな充填剤を調製した。その結果,メタクリル酸トリフェニルメチルとメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルとのブロック共重合体を用いるともっとも多量のPTrMAをシリカゲルに化学結合できることが明らかになった。メタノールを溶離液に用いた場合の種々のラセミ体に対する光学分割能は,従来までのPTrMA担持型充填填剤と類似していた。また,この化学結合型充填剤ではPTrMAが溶解するテトラヒドロフランやクロロホルムといった溶離液も使用可能であった。クロロホルムを溶離液に用いて,(±)-PTrMAを(+)体と(-)体に部分的に光学分割することができた。また,ラジカル重合で得られたポリ(メタクリル酸ジフェニル-2-ピリジルメヂル)も光学分割でき,このポリマーがらせん構造を有していることがわかった。化学結合型充填剤はGPC用の充填剤としての性質も有していた。分子量数千から百万までの単分散ポリスチレンを分析すると,分子量の対数値と溶出時間との間によい直線関係が得られた。
著者
作道 栄一 吉村 敏章 神田 美夏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.202-207, 1987
被引用文献数
1

S-エチル-S-フェニル-N-トシルスルフイミド(SN[1]),S-エチル-S-2-ピリジル-N-トシルスルフイミド(SN[2])および2-(N-トシルエタンスルフィンイミドイル)ピリジン=1-オキシド(SN[3])の熱分解反応に対するプロトン性溶媒(メタノール)の影響について検討した。SN[1]の熱分解反応に対する非プロトン性溶媒(ベンゼンおよび1,4-ジオキサン(DO))とプロトシ性溶媒との速度比はベンゼン:DO:メタノール=8.5:5.5:1(100℃),となり,メタノールの反応抑制効果はかなり大きい結果を示した。またSN[1]の活性化パラメーターはメタノール中でE<SUB>a</SUB>=115.1kj/mol,およびΔS<SUP>≠</SUP>=-41.OJ・K<SUP>-1</SUP>mol<SUP>-1</SUP>であり,ΔS値はSN[3]の約1/5であったお。メタノール溶媒の同位体効果はSN[1]ではk(メタノール)/k(メタノール-d)≒0.82であり,SN[2]SN[3]では重水素の効果は認められなかった。SN[1]の置換基効果はベンゼン中ではρ=+0.792,DO中ではρ=+0.809およびメタノール中ではρ=+0.851であり,溶媒の種類によるρ値の差異はあまり認められなかった。SN[3]め熱分解に対するメタノールの反応抑制効果は小さかった。得られた結果から,スルフイミドの熱分解に対するプロトン性溶媒の影響として,基質の原系に対して水素結合を形成するが,その形成箇所によって反応が抑制または促進されると考えられた。
著者
花屋 馨
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.82-85, 1970-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4

2-シクロヘキセン-1-オール誘導体の立体化学を検討する目的で, 5-メチル-2-シクロヘキセン-1-オン, 5-フェニル-2-シクロヘキセン-1-オンの Meerwein-Ponndorf 還元およびそれぞれの cis, trans-アルコールについてOppenauer-Meerwein-Ponndorf 平衡異性化を行なった。Meerwein-Ponndorf還元では,アセトンを留去しながら反応させたときはシス体をトランス体よりも多く生成したが,アセトンを留去することなく長時間還流したときはトランス体を多く生成した。また,5-メチル-および5-フェニル-2-シクロヘキセン-1-オールのシス体あるいはシス, トランス体の混合物についてOppenauer-Meer-wdn-Ponndorf 平衡異性化を行なった結果, いずれの場合もトランス体を多く生成した。これらの結果から, 5-位に置換基を有する2-シクロヘキセン-1-オール誘導体で1-位の水酸基は擬エクァトリアルよりも擬アキシアル配座が安定系であり, これは1-位の水酸基と2-位の水素原子との相互作用つまり“allylicstrain”に起因するものと考えた。