著者
山本 工
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.564-565, 2016-11-20 (Released:2017-05-01)
参考文献数
2

私たちは食事をして,健康を維持しているが,料理をする道具として一番身近に[包丁]がある。包丁の切れ刃の部分は金属部分であるが,この刀身部がどのような材質からできているのか,またこの材質が近年どのように変遷し進化してきたかを述べたい。包丁などの刃物の作製技術は,単なる金属加工と思われる節もあるが,その技術の真髄は,金属冶金工学や材料科学など複数の学問が融合した技術に裏付けされていることがわかる。
著者
木原 博 岡本 郁男 大森 明 中野 博文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.4, pp.713-718, 1973-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

はんだ付けにおける金属ステアレートなどの金属塩のフラックス作用を,金属の種類を変えて,金属塩とSn-Pb共晶はんだ間の反応がはんだの銅板上におけるぬれに対していかに作用しているかを研究した。その結果,金属塩のフラック作用機構はつぎのとおりであることが明らかにされた。まず,金属塩はSn-Pb溶融共晶はんだ中のスズと反応し,金属およびスズ塩を与える。その生成した金属ははんだ中へ溶解し,その結果はんだが母板上をぬれていくものと思われる。そして金属塩と溶融Sn-Pb共晶はんだとの反応は,金属の酸化還元電位および金属ステアレートの生成標準自由エネルギーに支配されるのではないかと思われる。
著者
小倉 興太郎 右田 たい子 山田 徹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1989, no.5, pp.817-821, 1989
被引用文献数
2

メタンは化学的に不活性な化学種であるが, CH<SUB>4</SUB>-NH<SUB>3</SUB>-H<SUB>2</SUB>O系の光化学反応によって付加価値の高い化合物に転化することができた。主生成物は, メチルアミン, エチレンジアミン, メタノール, エタン, 水素である。これらの化合物の生成において, もっとも重要な化学種は ・CH<SUB>3</SUB>であるが, このラジカルは水の光分解 (185nm) によって発生する ・OH のメタンからの水素引抜反応により生成する。また, NH<SUB>3</SUB>は 185nmの光を吸収して・NH<SUB>2</SUB>と・Hに分解する。CH<SUB>3</SUB>NH<SUB>2</SUB>, CH<SUB>3</SUB>OH, C<SUB>2</SUB>H<SUB>6</SUB>, H<SUB>2</SUB> の生成は, ・NH<SUB>2</SUB>,・CH<SUB>3</SUB>,・OHラジカル,・H原子の相互カップリングによるものである。ESR-スピンドラッピング法によれば, CH<SUB>4</SUB>-NH<SUB>3</SUB>-H<SUB>2</SUB>O系の光化学反応において, ・CH<SUB>2</SUB>NH<SUB>2</SUB>の存在を確認することができたので, エチレンジアミンは・CH<SUB>2</SUB>NH<SUB>2</SUB> の二量化によるものと結論した。
著者
新井 洸三 中村 国昭 小松 剛 中川 鶴太郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.1438-1442, 1968-09-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
5

高重合度ポリスチレン(分子量約400~600万)のメチルエチルケトン,ベンゼン,トルエンの各2%溶液を毛細管中で急速に流過させ,1×104から50×104sec-1までの種々の速度勾配の下における溶液中の高分子鎖の切断について調べた。その結果, 同一の溶媒を用いた系では速度勾配が大きいほど主鎖の切断を激しく受け, 試料ポリスチレンの分子量が減少することがわかった。さらに切断に対して良溶媒よりは貧溶媒, 高粘性溶媒よりは低粘性溶媒のほうがより大きな影響を及ぼす傾向があ ることも見い出した。また,種類の異なる溶媒を用いた実験では,切断に対する溶媒能の効果と溶媒の粘性率の効果とが確実に分離され得ないという欠点があるので,前者の影響を独立して調べる目的で組成比率を変えたベンゼンーメタノール混合溶媒系で同様な実験を行った。この結果から良溶媒より貧溶媒のほうが切断に関してより大きな影響を及ぼすという前記の結論を裏づけることができた。
著者
槌間 聡
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.418-421, 2011-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

高校化学の教科書では,サリチル酸を芳香族カルボン酸とフェノールの性質を共に持つ化合物として取り上げ,サリチル酸メチルとアセチルサリチル酸の二つの誘導体への反応とそれらの性質などについて学ぶ。どちらも非常に身近な医薬品であり教科書で扱われる有機化合物の中でも匂いやその作用がイメージしやすい有機化合物の代表的なものであろう。ここでは,それらの反応をもう少し詳しく考える。
著者
川井 正弘 松本 孝芳 升田 利史郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.10, pp.1184-1187, 1993-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

アルギン酸は,β-1,4結合したD-マンヌロン酸とα-1,4結合したL-グルロン酸から構成される酸性高分子多糖である。アルギン酸ナトリウム水溶液は,適当な二価金属イオンを添加するとゲル化することが知られている。しかしながら,ゲル化に及ぼす添加イオン種の影響は明らかでない。本研究では,その影響をレオロジー測定を通して研究した。レオロジー測定は10wt%アルギン酸ナトリウム水溶液に種々の濃度で塩化カルシウム,塩化ストロンチウムを添加した系について,円錐-円板型レオメーターを用いて測定温度25℃で行った。ゲル化するに要する添加塩量は,塩化ストロンチウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウムの順で増加した。これは,アルギン酸に対する二価金属イオンの親和性が,Sr2+>Ca2+>Mg2+ の順で低下するためと考えられる
著者
松浦 紀之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.242-245, 2017-05-20 (Released:2017-11-01)
参考文献数
10

高等学校では,有機化合物と人間生活とのかかわりとして染料について学習する。アイの葉から得られるインジゴやベニバナの花から得られるカルタミンなどの天然染料は,「草木染め」として馴染み深い。高等学校の教科書にはアニリンブラックやアゾ染料などの合成染料が取り扱われているが,染料が繊維に染着される仕組みに関する詳細な記述はない。本稿では,高等学校での有機化合物と色に関する扱いや,著者が指導した繊維の染色にかかわる生徒研究(課題研究)について紹介する。
著者
森川 清 野崎 文男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.654-659, 1961-04-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
11

ニッケル- シリカ触媒上, 200 ~ 500 ℃ でトルエンの水素化反応性を検討した。その結果, トルエンと水素の混合物を触媒上に通ずると反応温度いかんにより種々の反応が起ることがわかった。250℃ から350℃ の温度域では核水素化反応は負の温度係数をもち,350℃ 付近にトルエンの比較的安定な温度域があった。またメタンの生成量にはピークがあった。これらの事実は核水素化反応の平衡論的制限によるものである。400℃ 以上になると水素化脱メチルが起りベンゼンとメタンが生成し,480℃ 以上になると核の水素化分解により多量のメタンが生成する。またメチル基をもたないベンゼンの反応性をトルエンのそれと比較したところ,両者のベンゼン核の分解する温度は異なり,前者の方が低温で分解する。換言すればメチル基がベンゼン核の分解を抑制していることを見出した。またトルエンの水素化脱メチル反応に対する触媒活性の経時変化と触媒還元温度との関係を吟味した結果,高温にて還元処理すると触媒活性の時間的変動が僅少となることを知った。
著者
米田 力
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.178-179, 2014-04-20 (Released:2017-06-16)

国際的にも理科の学力向上の必要性が示され,日本でもいわゆる理科離れに対応した授業の展開が中学校の理科でも必要になってきているが,一方で,教育困難校といわれるような学校では,理科に興味を向けさせることすら容易ではない。そこで,理科通信(以下Science Times)と名づけた補助教材を活用した授業を展開し,その際,教科書に載っていない項目であっても積極的に取り上げた。さらに,生徒の興味・関心の向上について調査を行い,理科の学習において,科学的事象に強い興味・関心を持った生徒や,意欲的に学習に取り組む生徒の増加が見られた。筆者が行っているこのような試みについて紹介する。
著者
蒔田 桂 畔柳 和士 安藤 文雄 纐纈 銃吾
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.2001, no.10, pp.573-579, 2001
被引用文献数
3

簡便でかつアジドやリンのジハロ誘導体を用いることなく安全にイミノホスホランを合成する目的で,アルキルアミノホスホニウム塩の電解還元を行った.等モルの電気量を通電することにより一電子還元が起こり,<i>&alpha;</i>位の水素ラジカルが引き抜かれ,リンイリドおよびイミノホスホランが生成することを見いだした.この系にアルデヒドを共存させて得られる反応生成物を単離,同定した.アルキル置換基が電子供給基であるMe基ではイミノホスホランが定量的に得られた.一方,電子求引基を有するアルキル置換基の場合は,定量的にイリドのみを与えた.ベンジル基を有するホスホニウムイオンではWittig反応とAza-Wittig反応の両経路が進行し,相当する混合物を与えた.<br>
著者
小林 良生
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.240-242, 1988

和紙と墨は1000年以上の風雪に耐えた記録材料である。実用性からみれば, 近年では冠婚葬祭など特別の行事にしか使用しなくなったが, 芸術のジャンルでは書に活かされている。紙を構成しているセルロースは陸上の植物を鉄筋コンクリートに例えれば鉄筋に相当し, リグニンはコンクリートに当たる。セルロースの中でも最も強靱な靱皮(じんび)繊維を美しく配列して作った紙が和紙である。"どこの国を振り返ってみたとて, こんな味わいの紙には会えない"とは柳宗悦の言葉であるが, この和紙以上の紙は活発な研究開発が行われている新素材を駆使してもできていない。一方, 墨の主要成分である炭素もまた最先端を行く新素材の一つである。白と黒のコントラストのきいたこの二つの記録材料が, なぜ今なおみずみずしい新しさを持ち続けているのか本稿で考えてみよう。
著者
飯田 武揚 飯田 武夫 野崎 弘 鋤柄 光則
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1976, no.5, pp.837-844, 1976
被引用文献数
3

アイソタクチックポリプロピレンを常圧下,380℃で熱分解し,室温で液状の炭化水素の熱分解生成物を得た。この分解油のガスクロマトグラムには微量な成分を含めて40本以上のピークが現われる。それらの中で分解油重量に対して3wt%以上の成分である8本のピークを選び,それらを精密分留装置で分取した.これらの成分の構造決定は主として<SUP>13</SUP>C NMRスペクトル順量スペクトルによった。その結果ペンタン,2-メチル-1-ペンテン(プロピレンの二量体オレフィン),4-メチルヘプタン(三量体パラフィン),2,4-ジメチノレ-1-ヘプテン(三量体ナレフィン),4,6-ジメチルノナン(四量体パラフィン),2,4,6-トリメチル-1-ノネン(四量体オレフィン),4,6,8-トリメチルウンデカン(五量体パラフィン),2,4,6,8-テトラメチル-1-ウンデセン(五量体オレフィン)の八つの成分の構造を決定することができた.四量体パラフィンから五量体オレフィンにかけて<SUP>13</SUP>CNMRスペクトルにはダイアドとトライアドの立体規則性によるシグナルの多重性が現われる。これらのシグナルのタクチシティーを含めての帰属と成分の構造決定から,熱分縦成物の72wt%は分枝モノオレフィンであり,21wt%は分枝パラフィンであること,さらにポリプ・ピレンのアイソタクチックな構造が熱分鰍こよって変化し,ヘテロタクチックな構造をもつ熱分解生成物ができていることがわかった。