著者
畑田 耕一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.41-45, 1990

合成繊維やプラスチックはいまや日常の生活とは切離して考えることのできない存在になっている。これらはすべて高分子でできている。我々の身体や動植物もそのかなりの部分が高分子である。また, 最近は, 医療, エレクトロニクス, 情報, 通信などの分野にも高分子が広く応用されるようになってきた。本稿では, このような"くらしに役立つ高分子"のいろいろな性質がどのようにして生まれるのかを, いくつかの高分子製品を例にして述べてみたい。
著者
乾 智行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.282-285, 1989
被引用文献数
1

石油は, 近代文明を支えるエネルギーや化学原料の資源として欠かせないものになっている。数十年前, 国際間の緊張から我が国への石油の供給が途絶えた。そのころ石炭から石油を合成する必死の努力が京大などで行われ, ついに, 安価な鉄を材料にしながら, 高価なコバルト系に劣らないものが完成して, 生産にも使われた。しかしその技術は, 到底, 大量消費を支えるまでには至らなかった。十数年前, 石油危機が訪れた際, 従来とは原理も手段も異なる画期的なガソリン合成触媒がアメリカから登場した。それは, 特別な微細構造をもつゼオライト系触媒で, 昔の触媒に比べると, 格段に高い性能が発揮される。ニュージーランドに生産プラントが建てられたが, 経費が高くつくのでまだ普及には至っていない。しかし, この成功は, 多くの研究者を勇気づけ, 今やこの分野では第3の技術革新へ向けて研究が進められている。
著者
松井 博 橋詰 源蔵 足立 吟也 塩川 二朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.6, pp.959-963, 1988-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

CaS:Ce 蛍光体に水蒸気を作用させたときの CaS:Ce の加水分解過程を調べた。CaS:Ce を 25℃, 40% RH の雰囲気中に置くと, CaS 結晶の表面は初期の段階ですでに SO4と SO3 が生成している。そこへ, まず水蒸気が CaS の構造中に OH の形で取り込まれ, つぎに分子状の水として入ってゆく。さらに CaS と水蒸気と接触しつづけると, あらたに Ca(OH)2 が生成し, これが空気中の二酸化炭素と反応して CaCO3 が生成する。加水分解の初期から CaS:Ce の表面にはすでに CaSO4, CaSO3 の存在が認められ, また試料に水が吸着しやすく その結果 Ca(OH)2 が生成した。生成した Ca(OH)2 は炭酸化が徐々に進行し CaCO3 も一部生成した。さらに, 25℃ の飽和水蒸気雰囲気にしたデシケーター中に放置すると, 一部, II・CaSO4 が生成するものの最終的には CaSO3・1/2H2O に変化した。これは試料を飽和水蒸気雰囲気にデシケーター中に放置した結果, 酸素が不足したため II・CaSO4 が生成しにくくなったものと思われる。
著者
熊本 伸一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.30-46, 1932 (Released:2009-12-22)
参考文献数
7
著者
神谷 信行 星野 謙一 太田 健一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.140-146, 1987-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ヘキサクロロ白金(IV)酸(塩化白金酸)の熱分解過程をTG,DTAを用いて調べ,熱分解法で作製した白金被覆チタン電極の電極性能との関連を検討した。H2PtCl6・6H20,PtCl4・5H20の結晶および水溶液はほぼ同じ温度でPtCl2,Ptへと熱分解し,それぞれの生成する温度は330,530℃ であった。これに対してブチルアルコール(n-BuOH)を溶媒として熱分解を行なうと約400℃ でPtまで還元される。H2PtCl6のn-BuOH溶液をチタン基体に塗布,熱分解する方法により,低温(300℃)でも粗度係数の大きな電極をつくることができるが,高温で焼成するほど粗度係数は小さくなった。白金とチタン基体との接合部の焼結,露出したチタン表面の封孔処理の程度は焼成温度が高いほどよく,高温処理の方が耐久性はよい。n-BuOHのほかにも種々の有機化合物を使い熱分解を調べた結果,Pt(II)に有機物が配位した状態(錯体)を経て酸化還元が進みやすくなり低温でPtoまで分解されるものと思われる。
著者
永田 利明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.320-323, 2008-07-20 (Released:2017-06-30)

学生サークル東京大学教養学部化学部では,1959年(昭和34年)以来ほぼ毎年,「実験教室」と称して北海道や東北地方の中学校で実験の実演活動を行っている。実験を目で見て,実際に自分の手で行うことを通して,中学生に化学への親しみを持ってもらうことが目的である。本稿ではこの「実験教室」の取り組みについてその歴史と近年における実施例を紹介する。
著者
藤嶋 昭 本多 健一 菊池 真一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.108-113, 1969-01-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
22
被引用文献数
123

n型半導体であるTiO2(ルチル)を電極に用いて分極挙動を測定した。光照射しない時にはカソード分極下で水素発生が起こるが,アノード分極下ではほとんど電解電流が流れず顕著な電解整流作用を示した。TiO2電極表面に光照射すると,カソード電流は変化しないがアノード電流は著しく増加する。この電流はTiO2のバンドギァプ3.0eVに相当する415mμ以下の波長の光によってのみ生じ,また電流の大きさは光強度に比例する。立ち上り電位はpH4.7では-0.5V(vs.SCE)である。この電解酸化反応は従来n型半導体で報告されている電極自身の溶解反応ではなくて,水の電解による酸素の発生であることを確かめた。このことはいわゆる平衡電位より約1V以上も卑な電位で酸素発生がおこる“光増感電解酸化”であり,光のエネルギーを半導体が吸収したためである。またI-のI2への酸化も平衡電位より卑で起こることを確かめた。機構については半導体のバンドモデルから考察した。
著者
松永 義夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.905-919, 1968-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
49
被引用文献数
16

有機分子錯体は,をの振動スペクトルに基づいて電子構造が非結合構造で近似されるものと,電荷移動構造で近似されるものの二つに大別されることが見いだされた。約40種のキノン錯体の比抵抗値と振動スペクトルを調べた結果・低い電気抵抗を示す錯体の大部分は,電荷移動構造で近似される電子構造をもつことが明らかとなった。それでそのような電子構造をもつと期待される新しい分子錯体を数多くつくり,その比抵抗を測定した。なかでもつぎの錯体はとくに低い比抵抗値をもつ。ジペンゾ[c,h]ノチアジン_ジク泣ルジシアン-p-ベンゾキノン(2:1),17Ωcm,5,6:11,12-ビス(ジチオ)ナフタセン-o-クロルアニル(3:1),2~4cm,フェロセンーテトラクロル-p-ジフェノキノン(1:2),24Ωcm叫さらにジアミノピレン-p-クロルアニルとこれΩに関連した錯体はひいちじるしく電気的性質を異にするいくつかの形にえられることが知れた。これらは通常103Ωcmまたはそれ以上の比抵抗値をもつが, ,つくり方によって数Ωcmを示す。低い電気抵抗を示す分子錯体は,いずれも赤外領域に電子吸収をもつことが明らかとされた。
著者
森 川豊 中 洋- 尾 崎葦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.6, pp.1023-1028, 1972-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

-重促進鉄(Fe-Al203)上における窒素ガスの同位体交換反応の速度を280~330℃で求めた。この速度は,吸着窒素の脱離速度と-致したので,-重促進鉄上に吸着した窒素は大部分解離型であると推定された。-重促進鉄上での同位体交換反応は純鉄上,二重促進鉄上でのそれにくらべてきわめて速い。また同位体交換反応に対する共存水素の効果は,二重促進鉄の場合には促進効果であったのに対し-重促進鉄では阻害効果を示した。純鉄にK20を添加したFe-K20上でこの共存水素の効果を調べたところ,明らかな促進効果を示した。これらの事実から,アンモニア合成触媒におけるAl203は,窒素の解離に対する活性をきわめて増大する効果を有するが,その活性は水素が共存すると減少する。また,促進剤K20は,水素が共存する系でN2=2NHなる過程を促進することにより,窒素の解離吸着をいちじるしく速くすると推定した。
著者
河野 克典
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.550-553, 2007
参考文献数
7
被引用文献数
1

大きなビール工場には年間何万人ものお客様が見学に訪れる。多くのお客様の期待は出来立ての「新鮮なビール」の試飲であり,製造工程見学後の試飲会場では「いつも飲んでいるビールより断然美味しい」といった声が良く聞かれる。近年の醸造技術の進歩により,ビールの品質劣化はかなり良くなってきたが,新鮮な香味が持続する,いつまでも美味しいビール造りは醸造技術者の夢である。酸素をどのように上手くコントロールするかが美味しいビール造りの鍵の1つとなっている。「鮮度」という価値向上に向けて,最近の知見やビール工場での取り組みについて説明する。
著者
瀬尾 邦昭 猪川 三郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1973, no.11, pp.2215-2215, 1973

酢酸ビニル(VAc)系ポプコン重合について研究した。以下の実験で,ポプコン重合は窒素気流中55Cで行なわれた。<BR>VAcは橋かけ剤(エチレングリコールジアクリラート(EGDA),エチレングリコールジメタクリラート(EGDMA))の量が5%以上でポプコン重合した。いろいろのポプコン重合物からつくった種を用いて,VAcのポプコン重合性を検討した。溶媒中で加熱処理したVAc-EGDA系の種を用いて,n一ブチルメタクリラート(n-BMA)のポプコン重合速度を測定した。 VAc-,プロピオン酸ビニルー,酪酸ビニルー,バレリアン酸ビニルーEGDA系,VAc-EGDMA系, VAc(n-BMA-EGDMA系の種)系,n-BMA(VAc-EGDA系の種)系ポプコン重合物を10%NaOH,水溶液-アセトン中で加水分解し,水-アセトンに不溶な部分を分離した。<BR>以上の実験結果から,つぎのことを考察した。すなわち,(1)ポプコン重合の開始は,種中に埋蔵されている微量のラジカルで起こる。(2)種中および重合中にできる橋かけがポプコン重合に重要な役割を演じている。(3)VAc系ポプコン重合では,主鎖および側鎖ヘラジカルが連鎖移動し,そこから橋かけができる。
著者
富永 健 巻出 義紘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1991, no.5, pp.351-357, 1991
被引用文献数
2

近年,人間活動から放出される物質が地球環境に重大な影響をおよぼしつつあるが,中でもフロンなど長寿命のハロカーボンは成層圏のオゾン層破壊や地球の温暖化をもたらすことが明らかとなった。大気中の極微量のフロン・ハロカーボンの平均濃度を精密に測定し,10年以上にわたってそれらの経年変化を研究した。フロン11やフロン12の濃度は毎年約4%ずつ,またフロン113の濃度は10~20%ずつ増加を続けている。世界的にフロン規捌が実施されると大気濃度の動向も変化が現れるはずである。大気球を用いたグラブサンプリソグ法およびクライオジェニックサンプリング法により成層圏の大気を採取し・フロンやハロカーボンの成層圏における濃度をしらべた結果,垂直分布はこれらの物質の成層圏の紫外光による分解の様子を反映することが明らかとなった。