著者
吉村 恂 石森 富太郎 波多江 一八郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1156-1159, 1961-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11

福岡県内の花コウ岩地帯の一部である糸島半島(福岡市長垂を含む)の海岸線に部分的に集積している主として磁鉄鉱を含んだ黒砂の中からモナズ石およびジルコンをかなり普遍的に見いだし,その化学分析の結果および放射能の測定などによって検討した結果,それぞれ (Ce,La) PO4, ZrSiO4 という理想式に近いものであることを明らかにしたみさらにこれらの鉱物について予備的にその生成年代の推定を試み,モナズ石について 3.8 億年,ジルコンについて 4.3~11.6 億年という値が得られた。
著者
竹内 敬人 伊藤 眞人 伊藤 眞人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.554-558, 2002
参考文献数
10

この短いインタビューは, 国際純正および応用化学連合(IUPAC)の化学教育委員会(CCE)が刊行している電子雑誌Chemical Education International (URL=http : //www.iupac.org/publications/cei/)に毎号掲載されている竹内敬人博士によるノーベル化学賞受賞者へのインタビューの一つとして行われたものである。CEIに掲載されるインタビューは, 主としてこれから進路を決めようという高校生, 大学初年級の学生を対象と考えている。CEIの読者の多くは高校教員あるいは大学初年度の講義を担当する大学教員であると予想されるので, このインタビューは, それらの教員を通じて, 高校生や大学初年級の学生に浸透していくことが期待される。この企画の趣旨に賛同され, ご多忙の中をインタビューに応じて下さった白川英樹博士に心から感謝する。
著者
高山 千代蔵
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.98-101, 2006-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

戦後60年以上経った現在,我々日本人は豊かな食生活を享受している。これは,各種の化学肥料や農薬などの農業技術に負うところが大きい。多くの優れた農業技術が,コメを始めバラエティに富んだ野菜や果物など各種の農作物の安定生産に貢献してきている。ところで,我が国の食料自給率は低く,その多くを輸入に頼っている。また,世界的に見れば8億人を超える人々が食料不足に直面している。今後,持続可能な農業を行い,食糧を安定供給することが世界の重要な課題である。本稿では,農業の生産性を向上させる上で必須の資材である化学肥料及び農薬について,これまでの進歩を解説し,合わせて将来技術を展望する。
著者
祢宜田 久男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.429-433, 1990-08-20 (Released:2017-07-13)

中国・四国地方は瀬戸内海を隔てて相対し, 互いに密接な関係で結ばれている。その沿岸部では古くから塩の生産が行われ, 山間部では鉄や銅の製錬が行われてきた。江戸時代になると, コメのほかに綿, 藍(あい), 砂糖などの生産が盛んになった。さらに明治時代になると, 除虫菊などの栽培が行われた。これらの産業は海外との貿易や合成品の出現によって衰退したが, ソーダ工業, 金属製錬, 紡績, 合成化学などの発展を促進した。また, 各地に優れた人物が現れ, 外来文化を吸収, 同化して, 我が国の学問水準の向上に貢献した。
著者
高橋 信行 香月 収
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.4, pp.486-493, 1981-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
37
被引用文献数
4

水処理の観点に立ってオゾンの水溶液中での特性を把握するため,溶解度,自己分解反応および物質移動におよ峰す温度およびpHの影響を温度286.5~298.OK,PH3.1~9.0の問で検討した。送入オゾン濃度と平衡オゾン濃度の問には比例関係が成立し,その比例定数(見かけの分配係数)は温度およびpHが高くなるにつれて減少した。自己分解反応を1.0次から2.0次の間で検討したところ,1.0次反応と仮定した場合にもっとも良好に実験データを説明することができ,その分解速度定数は温度およびpHが高くなるにつれで増大し,中性からアル力リ性にかけてその傾向はとくに顕著であった。総括物質移動係数は温度およびpHのほかに送気量によっても影響を受け,気泡相互の干渉により送気量が増加するほど減少し,拡散係数の増加により温度が高くなるほど増加し,またpHが低くなるにつれ増加した。真の分配係数およびHenry定数はオゾンの自己分解を考慮に入れ見かけの分配係数から計算することができ,これらの値は従来示されてきた値と良好な一致を示すことがわかった。
著者
野村 貴美 氏平 祐輔 小嶋 隆司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1982, no.1, pp.87-92, 1982
被引用文献数
7

ホスホブィライト[Zn<SUB>2</SUB>Fe(PO<SUB>4</SUB>)<SUB>2</SUB>・4H<SUB>2</SUB>O]を窒素および空気中で加熱し,脱水や熱分解で生成した化合物の状態をMossbauerスペクトロメトリー,X線回折分析,熱重量および示差熱分析から解析した。約168℃から277℃ では亜鉛一鉄混合リン酸塩の一水和物(1.S.=1.13mm/s,Q.S.=2.04mm/s),および二水職物(1.S.=1.18mm/s,Q.S.=2.57mm/s)が窒素および空気中で存在することがわかった。277℃以上でホスホフィライトはその水分子をほとんど離脱し,窒素中では無水亜鉛一鉄混合リン酸塩のγ相に変態したが,空気中では無水リン酸亜鉛[α-Zn<SUB>3</SUB>(PO<SUB>4</SUB>)<SUB>2</SUB>]と無水リン酸鉄(III)[FePO<SUB>4</SUB>]ならびに他の常磁性鉄(III)化合物に分解した。空気中でのボスホフィライトの脱水過程でほとんど鉄(II)は鉄(III)に酸化されたが,さらに試料を850℃ 以上に加熱すると空気中でも鉄(III)が鉄(II)に還元きれて無水リン酸亜鉛に取り込まれ,亜鉛一鉄混合リン酸塩のγ相が生成することがわかった。ボスホフィライトの熱分解過程が議論され,熱分解生成物の鉄の化学状態の割合と温度との関係がダイヤグラムとして示された。
著者
野村 貴美 氏平 祐輔 松島 安信 小嶋 隆司 菅原 陽一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1980, no.9, pp.1372-1380, 1980
被引用文献数
8

リムド鋼を亜鉛系リン酸塩溶液に浸漬して化成処理レ,その表面皮膜中に形成された鉄化合物の物理・化学的状態が,転換電子M&ouml;ssbauerスペクトロメトリー, X線回折法および電子顕微鏡写真によって研究された.<BR>Bonderite 3008による処理で形成した亜鉛系リソ酸塩皮膜には高スピンの鉄(II)化合物(I.S.:1.26mm/s, Q.S.:3.40 mm/s)であるホスホフィライト[Zn<sub>2</sub>Fe(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・4H<sub>2</sub>O]と非晶質の鉄(III)化合物がホープアイト[Zn<sub>3</sub>(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・4H<sub>2</sub>O]の下層に存在していた。鉄(II互)/鉄(III)の比は,浸漬時間の増大にともなって増加したが,H<sub>2</sub>O<sub>2</sub>, NaCIO<sub>3</sub>+NaNO<sub>2</sub>, NaNO<sub>2</sub>, NaNO<sub>2</sub>+NaNO<sub>3</sub>の酸化剤をリソ酸塩浴に加えると,この順に鉄(II)/鉄(III)の比が減少した。高濃度の亜鉛イオンとニッケルイオソを含んだリン酸溶液で処理した場合にはホスホフィライトの生成が抑制され,ホープアイト皮膜の下にFe<sub>3</sub>・(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>3H<sub>2</sub>Oであると考えられる鉄(III)化合物が形成された。カルシウム-亜鉛リン酸溶液(X<sub>ca</sub>=Ca/(Ca+Zn)=0.8)で処理した場合には鉄(II)化合物(I.S.:1.26 mm/s, Q.S.=2.06 mm/s)がショルツァイト[Zn<sub>2</sub>Ca(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O]層の下に存在していることがわかった。この鉄(豆)化合物の電場勾配の主軸は素地鋼表面に対して約60°に配向していた。リン酸塩処理鋼の皮膜の下にある素地鋼面の内部磁場は,浸漬時間が増大し,または皮膜が厚くなると表面に平行な配向からラソダムな配向に変わってゆくことがわかった。
著者
松浦 昌孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.418-421, 1984

「液晶」は, 1973年, 電卓用表示素子として初めて実用化され, 工業製品として誕生した。今日までわずか10年ほどの間に, 電卓, 腕時計, ゲームマシンを代表とする小型電子機器の表示素子として欠かせぬものとなってきている。本稿では, なぜ液晶がこれだけ急成長したのか, その背景と表示素子としての特長について述べよう。また, 液晶の代表的な表示素子(ツイステッド・ネマティック型液晶表示素子)を中心に, その動作原理の概要を述べよう。
著者
森井 ふじ
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1507-1509, 1961-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

海藻中の鉄,アルミニウム,マンガンを簡単な操作で精度よく定量するための基礎条件を決定することを目的として,まずそれらのオキシン錯体をクロロホルム抽出法によって分離後分光光度法によって定量する方法について検討した。まず三者の pH-抽出曲線を求めた。鉄オキシン錯体はpH>2.0 で完全に抽出されるが,アルミニウム錯体は pH<3.1 ではほとんど抽出されず(抽出率<1.0), pH=4.8~10.0 で完全に抽出される。マンガン錯体の抽出率は pH<5.5 において 1% 以下であるが, pH=10.0~11.0 でほぽ 100% になる。したがって pH=2.8 においてクロロホルム抽出を行なうことにより鉄はアルミニウム,マンガンより定量的に分離され,クリロホルム層を用いてそのまま比色定量し得る。水層中のアルミニウムの定量にはさらにオキシンを加えたのち溶液の pH を 5.0 にして抽出し,そのクロロホルム層について行なう。残った水層中のマンガンはさらにオキシンを加えたのち溶液の pH を 10.0 にして抽出し,そのク0ロホルム層について行なう。三者共存の試料溶液(鉄 10~200μg,アルミニウム 5~40μg,マンガン10~60μg)に上記の方法を適用し ±2.0% 以内の誤差で分離定量し得た。
著者
橋本 二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.920-925, 1969-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15

さきにフルクトース,スクロース,ラフィノースなどフラノース環を含む糖類のアルコール-塩酸溶液を加熱すると容易に緑色ケイ光物質 (以下GFSと略す) が生成されることを報じた。このときGFSの生成に応じて溶液は褐色に着色する。生成するGFSの量および褐色の色素量は,糖の種類によっても,アルコール-塩酸溶液を用いたときのアルコールの種類によっても異なり,反応の初期においてはGFSの生成曲線と色素のそれとはよく類似している。またGFS,その他を含む糖の酸分解溶液を活性炭で処理することによって,ある程度色素を除いた液〔1〕をそれぞれ種々のpHに調整したのち,加熱してGFSの量と色素量の経時的変化を見た。アルカリ性,中性,および約pH4以上の比較的弱い酸性溶液中では,GFS量の減少にともない色素量は増加する。しかしpH2以下の比較的強い酸性溶液中ではGFS量の変化はきわめて小であるにもかかわらず,色素量は加熱時間にほぼ比例して増加している。また〔1〕の溶液から薄層クロマトグラフィーでGFSを単離し,それを蒸留水で抽出してえたGFSの水溶液〔2〕について,〔1〕のときと同じ操作を行なった。アルカリ性,中性では〔1〕と同じ結果がえられたが,比較的強い酸性溶液中では〔1〕と異なり,GFS量,色素量ともにほとんど変化がみられなかった。以上のことを総合してつぎのようなことが考えられる。すなわち,GFSの生成と溶液の着色との間には密接な関係がある。GFSも着色の一因子と考えられるが,他にも主要な因子の存在が考えられる。Maillard反応においては生成するケい光物質が色素の先駆体であって,着色の主要因子をなすと推論されているが,糖だけの酸分解の場合はGFSが着色の主要因子と考えるには疑問がある。
著者
長谷 昌紀
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1842-1845, 1965-10-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
7
被引用文献数
3

硝酸アンモニウムにオクタデシルアミン,その硝酸塩,またはその酢酸塩を0.5~0.2wt%添加し,微粉砕するとV〓II転移を起こさせることがでぎる。この転移について示差熱分析, およびX 線回折法によって研究した。この転移は中間相(V*)を経てV〓V*〓IIと2段階で起こる。転移温度はV〓V*約42℃,,V*〓II約45℃である。どちらもλ転移の特徴を示し,アンモニウムイオンについては温度上昇に伴なってorder-disorder的に静止(回転振動),束縛回転,自由回転と状態が変化していくものと考えられる。
著者
坂井 徹 大井 信一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.3, pp.421-426, 1977
被引用文献数
2

懸濁気泡塔における気-液接触反応の物質移動抵抗を評価する目的で,パラジウムーアルミナ触媒によるα-メチルスチレンの液相水素化反応を行なった。<BR>物質移動抵抗のうち,気-液間抵抗(1/kLah)は単独に評価できるが,液-固間抵抗(1/ksaa)は反応抵抗を含む総括抵抗から分離しなければならない。水素の触媒表面濃度が化学反応速度と総括速度の比によって,ま塵反応抵抗と総括抵抗の比によって,ともに水素の気-液界面濃度に関係づけられるので,1/kLabの値と,通気ガキマゼ糟を用いて反応過程律速のもとであらかじめ求めた表面反応速度の値を用いて1/ksaa,を単離して評価できる。<BR>このようにして,両抵抗を別個に評価し,それぞれ懸濁気泡塔の操作変数(通気速度および触媒濃度)との関係を定量的に示した。また総括抵抗に寄与する各抵抗の割合と操作変数とめ相関性を求あた。ざずらに,ガスホホールドアップ,気泡径,気-液界面積および物質移動係数などと操作変数との関係を検討しほぼ妥当な結果を得た。
著者
柘植 英哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.228-231, 1999-04-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
6

医薬品の添加物としての界面活性剤の利用は, その方法が確立されており, 乳化剤, 懸濁化剤, 可溶化剤, 保存剤等に使用される。界面活性剤の種類, 使用量は安全性面から法的に厳しく規制されている。少し見方を変えると薬物自身が界面活性剤に近い性質を示すことが多く, 界面物性に対する知識は医薬品研究の初期段階で重要である。また, ドラッグデリバリーシステム研究ではレシチン等のリン脂質を薬物を運ぶ容器として, さらに, 界面活性物質は吸収促進剤として研究がなされている。