著者
中村 信人 新宮 哲郎
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.38-43, 1983

本研究では, MRPにおいて重要な意志決定問題の一つであるロット・サイズ・スケジューリング問題に対して, まず残業時間制約付の問題として定式化を行い, それが残業時間制約のないロット・サイズ・スケジューリング問題と残業時間問題の二つの部分問題に分割可能であることを示す.そして両問題のトレード・オフを考えながら, 最適解よりもむしろ実用的な良好解の導出を目的とした一つのヒューリスティック・アプローチを提案する.
著者
松井 正之
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.83-87, 1988
被引用文献数
4

受注選択問題の純理論的モデルの解析については, いずれも生産能力が一定の場合に限定されている.他方, 生産能力が可変な能力切換問題は, 別個に論じられている.本研究は, 生産能力の切換えが可能な受注選択方策を持つジョブ・ショップの受注残数の制御方策について一考察を行っている.すなわち, 注文がポアソン到着に従うM<G, G>;/1(N)型生産モデルを提示し, セミ・マルコフ決定過程による定式化によって利得の最適化を行い, 能力切換えと受注選択の結合方策の2レベル構造に関する知見を示している.簡単のために, 受注選択には静的選択方策を採用し, 能力切り替えに要する時間と費用はゼロとしているが, 今後の展望としてこのモデルの拡張のみならず, 本研究と製品利益管理との関係を指摘している.
著者
古賀 裕之 谷口 忠大
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.144-156, 2014 (Released:2014-11-14)
参考文献数
19

本稿では話し合いにおいて,参加者の自由な発話タイミングを阻害することなく,均等な発話を促すことのできるコミュニケーション場のメカニズムとして発話権取引を提案する.発話権取引では参加者に等しい数の発話権が与えられ,これを自由に行使することで参加者は話し合いに参画することができ,また,発話権は自由に融通しあう事ができる.このメカニズムの特徴を実験に基づいて検討した.また,経済学的な考察を与えた上で,付加的な要素として発話振興券を導入し,その導入効果を実験に基づき評価した.発話権取引は,話し合いにおいて誰かが司会を行う負担を減らし,また,意思表示や理由に関する発言数を増やすことが分かった.
著者
浅野 誠 日野 昌樹 太田 宏
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.226-234, 1999

本論文では, 着手可能時刻と納期の制約の下での総在庫コスト最小化の単一機械スケジューリングを扱い, 分枝限定法に基づく最適アルゴリズムを提案する.ここで, 着手可能時刻は, ジョブのすべての先行作業が終了する時刻や原材料の供給可能な時期を意味し, 着手可能時刻以前に生産の開始ができない.一方, 納期は顧客によって設定されるため, 納期遅れが許されず, また, 生産終了時刻から納期まではジョブを在庫として保持しておくための費用が必要となる.本問題は, 実行可能スケジュールの作成すら容易ではなく, また, 最適スケジュールには遊休時間が挿入されうるため, ジョブの順序付けにあたり, 各ジョブの終了時刻を考慮しなければならない.提案法では, Backward-WSPTルールによるスケジュールを利用した子ノード生成方法が用いられ, さらに, 割り付けられるジョブ数の異なる子ノードが生成される.また, 提案法において, 探索の途中打切りによって得られる解が良い近似解を与えることを数値検証により示す.
著者
松田 眞一 吉野 睦 仁科 健 石井 成
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.244-250, 2018-01-15 (Released:2018-02-15)
参考文献数
8

混合系直交配列表は実験計画でよく用いられるが,結果に応答曲面法を適用することがある.L18, L36直交配列表は2因子交互作用が他の列と均等に交絡しないことが知られているが,応答曲面法を適用する際の問題点は明らかではない.本論文では,交絡の可視化に基づくパターンの分類を行い,応答曲面法を適用する場合にどの列を用いるべきかをCNに基づいて検討する.結果として最適と思われる利用列を指摘することができた.
著者
関 庸一 亀倉 大和
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.161-172, 2012-10-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では,POS等により収集される販売履歴データから,単一商品の日々の売価を設定する方法を提案する.まず,販売数量がポアソン分布し.価格弾力性が一定であるという仮定の下で.一般化線形モデルを推定することにより.販売数量を予測する方法を提案する.これにより,ストアレべルで日々の単一商品の価格と販売数量から,モデルのパラメータとして価格弾力性と需要曲線が推定できる.ポアソン分布の仮定により,日々の少ない販売数量での価格弾力性の推定が可能となる.第2に,推定される価格弾力性,売価,仕入価格の三変量の粗利水準への関係を明らかにすることで.粗利を最大とする売価の設定法を与え,日々の粗利を極大化する方法として,定価政策と特価政策の二つがあることを示す.また,長期に販売政策を考える場合に価格弾力性を制御することができれば,短期利益を犠牲にした低価格の訴求などにより,より高い粗利を実現できるシナリオが存在することを示す.最後にドラッグストアでのPOSデータを用いた推定事例で価格弾力性を推定し,対象店舗の価格戦略を検証する.
著者
曹 徳弼 圓川 隆夫
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.321-330, 1998
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究は多期間配送スケジューリング問題において, 車両台数や時間(資源)を一定にしたもとで, その利用率を最大にすることにより在庫や欠品削減を図る資源利用率最大化問題を提案するものである.具体的には1つのデボがN個の小売店に商品を供給する場合の多期間配送計画問題を考え, 週末に需要が高くなるような周期的に変動する需要に対して, 与えられた資源の利用率を最大化するとともに, 小売店における在庫水準と欠品率を最小限に押さえるための多期間配送計画モデルを構築し, その解法を提案した.提案したモデルおよび解法の有効性を検証するために, 自動販売機の実データとFTPサイトからのテストデータを用いて現状法および従来法を比較対象に数値実験を行った.その結果, 時間の利用率は最大99.67%まで上げるとともに, 平均最大在庫, 平均在庫, および欠品率を最大17.35%, 25.7%, および14.77%それぞれ削減でき, 資源利用率最大化の効果が表れた.
著者
佐藤 公俊 中本 達也 中島 健一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.77-83, 2018-07-15 (Released:2018-08-15)
参考文献数
10

本研究では,生鮮食品のPOS(Point Of Sales:販売時点情報管理)データを用いて最適な値引き販売の開始時刻を求め,販売収益および廃棄率への効果を明らかにする.Feng and Gallego(1994) により導かれた総期待売り上げの最大化のための値引き時刻決定アルゴリズムを適用し,在庫量に依存する時間についての閾値型で与えられる値引き戦略を視覚的に示す.さらに,最適な割引価格についても数値的に検討する.その結果,現状の販売方法と比較し,約17.4%の収益改善効果が得られた.
著者
藤田 弘典 栗山 仙之助 能勢 豊一 久保 貞也
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.587-593, 2001-02-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

ネットワーク社会におけるインターネットとウェブページの普及は, 我々に新しいコミュニケーションの可能性をもたらした.このようなウェブページは, 今後個人のコミュニケーションとしてだけでなく, 企業の広告に利用される可能性が高い.そこで本研究では, Donna L.HoffmanとThomas P.Novakらの「ハイパーメディアのCMEsでのマーケティングの基礎概念の研究」をもとに良いウェブページを構成する要因を分析することによって利用者に対するウェブページによる広告の効果について論じる.さらに, ウェブページの設計・構築にあたって留意すべき次の諸点を明らかにした.ウェブページの評価方法として, 利用者のウェブページに対する興味の度合いを示す定量化モデルを提案した.興味の度合いを求めるにあたって, 利用者とウェブページの内容について, 機能要因と性能要因の2種類の要因群に分類し, 各群で考慮すべき因子を抽出する方法を示した.さらにアンケート調査による分析を通して, 提案する理論の有効性について示した.
著者
齊藤 史哲
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.39-48, 2015

サプライチェーン上で生じる様々な問題の原因の一つとしてブルウィップ効果が挙げられる.ブルウィップ効果とは,サプライチェーンにおける需要変動が上流に上るにつれて増大するという現象の総称である.サプライチェーンを構成する全企業で最終需要の情報を共有することで,この現象を抑制できることが知られている.しかし,全企業で最終需要に関する情報を共有することや,複数の商品や複数の取引相手に対するその情報を適切に扱うことは困難であり,全体で情報を共有するモデルの適用は現実的ではない.そこで,本研究では各企業が直接の取引相手とのコミュニケーションを通じて知識を共有することにより,ブルウィップ効果を抑制する方法を提案する.本提案では上流側の企業は一段階前で協業する取引相手に関する在庫や発注量のデータ(情報)を共有し,そのデータと発注量との関連性に関するモデル(知識)を構築することで,取引相手との知識共有を実現する.これにより,各段階での需要量と発注量のズレを縮小させることができるため,ブルウィップ効果の抑制が期待できる.提案法の有効性を検証するために,計算機実験を通じて評価を行った.
著者
森 雅俊 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.26-35, 2003-04-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本論文は, 新製品を市場に投入する切り替えに関して価格と投入タイミングを戦略的に決定することに焦点を当てている.すべての製品には, 導入期, 成長期, 成熟期, 衰退期といった製品ライフサイクルがあるので, この中で現行製品から新製品への切替えがあり, 旧製品の生産中止と新製品の販売開始を最適に決定していく必要がある.この製品の切替えをスムーズに行なう為には, 新旧製品の価格に関する役割が大きい.我々は, この研究においてパーソナルコンピュータなどの比較的短期間の製品ライフサイクルを対象に利益の最大化を目指した最適な切替え問題に対しヒューリスティックな最適化モデルを開発した.
著者
〓 志宏 伊藤 崇博 大野 勝久
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.220-227, 2002-08-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
18

3次元箱詰め問題(three-dimensional container packing problem)は, 様々なサイズの荷物をコンテナ(トラック)に詰め込み, コンテナ(トラック)の空間利用率を最大化する組合せ最適化問題である.現実問題においては, 空間利用率以外に積み荷安定性とX-Y軸の回転も考慮しなければならない.本論文では, この現実問題を対象に, 独自の手法に基づいたメタヒューリスティックスを提案する.数値実験により, 本解法をベンチマーク問題に適用し, 公表されている最良解との比較により提案手法の有効性を示している.
著者
フランク ビョーン エルバス トッリコ ボリス 圓川 隆夫
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.201-209, 2013-01-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
17

グローバルな競争が加速される中,ホフステードによる国の文化次元とそのスコアによる消費者態度への影響の研究が多くある.日本人の文化的特徴として不確実性回避が高く,それがCS(顧客満足度)等の品質評価について厳しい態度に結びついていることが知られている.しかしながら,それは国の平均値としての傾向であり,消費者個人の文化性向としての不確実性回避の影響については必ずしも明確な結論は得られていない.そこで,本研究では,10の製品・サービスを対象とした消費者のCSおよびその先行要因指標(知覚品質,知覚価値,企業イメージ)と不確実性回避の文化性向を測定することによって,不確実性回避の消費者態度の影響メカニズムの解明を目指すものである.その結果,不確実性回避は直接CSに影響を与えるよりも知覚品質等の先行要因指標を通して間接的に負の影響を与える,さらにその傾向はサービスよりも製品で顕著であることを示した.このような結果は,個人の文化性向が市場セグメント変数として有効であるとの新たな知見を与えるものである.
著者
三川 健太 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.335-347, 2016 (Released:2016-02-16)
参考文献数
24

入力データの統計的特徴を考慮した距離計量を学習するための手法としてDistance Metric Learnig(以下,計量距離学習)が提案されている.計量距離学習では,適切な制約条件のもとで,繰り返し法による最適化問題を解くことにより最適な計量行列を学習する.しかしながら,一般的な計量距離学習手法では繰り返し毎に固有値分解を行うアルゴリズムを採用していることが多く,学習データの次元数が増加した場合には計算量が大幅に増加し,現実的な時間で最適解を得ることが難しい.また,これらの手法では学習データ全体に対し唯一の計量行列の存在を仮定しているため,学習データの統計的特徴を考慮することが難しいという問題点も存在している.これらの問題点を改善するため,本研究ではカテゴリ毎に複数の計量行列の存在を仮定し,その学習方法について提案を行う.各カテゴリの計量行列導出時にはカテゴリ間の特徴の差異を考慮した定式化を行うとともに繰り返し法を用いずに最適解を得る方法についても述べる.提案手法により得られた計量行列は各カテゴリの統計的特徴を保持していると考えられるため,これらの情報を活用したデータの分類方法についても提案を行う.提案手法の有効性を,低次元密なデータセット,ならびに高次元スパースなデータセットを用いることで示す.
著者
斎藤 真 大西 範和 加藤 象二郎 宮尾 克 長江 拓子 池浦 良淳 水谷 一樹
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.10-16, 2007-04-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本研究は,作業負担の少ないノートパソコンの設計要件確立を目的に適切なディスプレイの高さについて作業姿勢と筋電図から検討したものである.ディスプレイは10.4インチ液晶,高さは床から800,900,1,000mmの3条件,作業は入力およびゲームの2条件とした.10人の被験者に対し,視距離,視線角度,頭部角度,頸部角度および右三角筋,右僧帽筋の筋電図が計測された.視距離は,ディスプレイが高くなると短くなった.視線角度は,ディスプレイ高に関係した.頭部角度は,高さと作業内容に依存した.筋活動は,頸部僧帽筋において入力作業で大きく,ディスプレイが低い場合も大きかった.以上よりディスプレイは本体と分離し,高さは1,000mmを基準として各自の身体特性に合わせて調整することを推奨する.
著者
池本 駿 鈴木 秀男
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-9, 2019-04-15 (Released:2019-05-15)
参考文献数
29

文部科学省が2014年に実施した調査によると高等教育中退者は約8万人である.しかしながら,高等教育中退後の就職,転職等のキャリアパスに関して個人レベルでの分析は焦点があてられてきていないのが現状である.本研究では,個人レベルでの調査・分析を指向して,2018年1月にWebアンケートを行い,調査時点で就業している高等教育中退者と高卒労働者の323サンプルを集めた.質問項目には初職の就業形態・現職の就業形態・2017年度の年収に加え,高校時代・高等教育時代・家庭背景等を含んでいる.条件付確率を用いたベイジアンネットワークにより高卒労働者と比較することで高等教育中途退学が就業形態や賃金に与える影響の因果関係を明らかにした.
著者
仲川 勇二 施 學昌 阿辻 茂夫 木村 作郎 仲川 希
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.17-22, 2010
参考文献数
11

本論文で,二目的多制約非線形ナップザック問題(変数分離形離散最適化問題)に対して意思決定者が希望する領域の有効解(パレート最適解,非劣解,または非優越解とも呼ばれる)を"厳密"に列挙する解法を提案する.ここで言う"厳密"とは,1)有効解であることが厳密に保証されていることと,2)隣り合う有効解の間に厳密な意味で欠けがないことの二重の意味である.1)に関しては仲川・疋田の定理を用いることで,2)に関しては2個の有効解によって形成される長方形(有効矩形)(Visee等の拡張)を含む領域内のすべての実行可能解を列挙することで有効解を欠けることなく"厳密"に列挙可能である.本解法の効率性を確かめるために二目的0-1ナップザックテスト問題を用い,実用規模の問題が実用的な時間で解けることを報告する.