著者
田中 啓祥
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.141, no.5, pp.647-653, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)
参考文献数
35
被引用文献数
3

Remarkable progress in our ability to analyze diseased tissue has revolutionized our understanding of disease. From a simplistic understanding of abnormalities in bulk tissue, there is now increasing recognition that the heterogeneous and dynamically evolving disease microenvironment plays a crucial role in disease pathogenesis and progression as well as in the determination of therapeutic response. The disease microenvironment consists of multiple cell types as well as the various factors that these cells secrete. There is now immense interest in treatment strategies that target or modify the abnormal disease microenvironment, and a deeper understanding of the mechanisms that drive the formation, maintenance, and progression of the disease microenvironment is thus necessary. The advent of 3-dimensional (3D) cell culture technology has made possible the reconstitution of the disease microenvironment to a previously unimaginable extent in vitro. As an intermediate between traditional in vitro models based on 2-dimensional (2D) cell culture and in vivo models, 3D models of disease enable the in vitro reconstitution of complex interactions within the disease microenvironment which were unamenable in 2D while simultaneously allowing the mechanistic analysis of these interactions that would be difficult to perform in vivo. This symposium review aims to highlight the promise of using 3D cell culture technology to model and analyze the disease microenvironment using pancreatic cancer as an example.
著者
斎藤 顕宜 山田 光彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.691-695, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
17

モノアミン再取込み部位をターゲットとした抗うつ薬の開発は諸外国においても既に終了しており、欧米では多重作用メカニズム型の薬剤が複数承認されている。一方、最近では、グルタミン酸神経やオピオイド受容体に作用する候補化合物が注目を集めている。なかでも、産学連携プロジェクトとして我が国で開発が進められているオピオイドδ受容体作動薬が、全く新しい作用機序をもつ画期的な抗うつ薬となるものと強く期待している。
著者
長田 裕臣
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.108-111, 2014

薬学出身でありながら他分野で活躍されている方にインタビューするコラム「薬学がくれた私の道」,今回はロックバンドACIDMANを率いるミュージシャンの大木伸夫さんのご登場です.
著者
新薬紹介委員会
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.310, 2021

本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.<br>本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される"新医薬品として承認された医薬品について"等を基に作成しています.今回は,令和3年1月22日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.<br>なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
著者
内原 脩貴
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.312_1, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
2

博士課程在学中は長井記念薬学研究奨励支援事業よりご支援いただき,心より感謝している.私が研究者,なかでもアカデミアを志し,博士課程への進学を決意したのは修士課程の頃だった.当時の私はうつ病に関する研究に従事しており,進学後は少し異なる領域に挑戦したいと考えていた.このような背景から,研究時間を十分に確保することは非常に重要であり,生活費等を稼ぐために時間を使うことを避けたいと考えていた時に出会ったのが貴事業である.幸運なことに採択いただき,慶應義塾大学薬学部の多胡めぐみ准教授(現・同大学教授)指導のもと,がんの発症機序や薬理学的研究に存分に取り組むことができた.博士課程における成果を論文としてまとめることができたのは,ひとえに貴事業のご支援の賜物だと思っている.学位取得後は,がん治療時に細胞で生じる現象を詳細に理解するための研究を行いたいと考えた.現在は,群馬大学未来先端研究機構の柴田淳史准教授のもと,細胞レベルでDNA修復機構やDNA損傷に関連する免疫応答制御についての研究に従事している.これまでの経験から私が重要だと考えることは,時間への配慮と環境変化への適応である.その点を意識しつつ,今後も細胞レベルでの疾患や治療の根源的な理解を通じて,究極の生命システムである人間にとって最適な薬の創生に貢献できるよう精進したい.
著者
上原 幸樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.60-62, 2020

近年,他の放射線治療とは異なる仕組みを利用したホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)という新たながんの放射線治療が注目されつつある.この新たな治療法は,同位体濃縮されたホウ素を用いた薬剤と加速器を用いて発生させる中性子を組み合わせることで細胞選択的な治療となり得る.弊社は、ホウ素薬剤の開発を通してBNCTの早期実用化を目指している.
著者
馬場 嘉信
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.775_1, 2015

シリコン上に,DNAの直径と同程度(2nm)の孔(ナノポア)を形成し,ナノポア中にDNAが通り抜ける間隔で電極を作成したデバイスを用いて,DNAのシークエンシングを行う技術である.ナノポア中の電極間にトンネル電流を流し,1分子の1本鎖DNAを一定速度で通過させると,DNAの各塩基の電子状態の違いにより,トンネル電流値が変化するために,その変化量を解析しDNA配列を解読できる.DNA解読速度は,1秒間に1,000塩基程度であり,1,000個のナノポアを並列化することで,1時間で30億塩基のヒト・ゲノム解析が可能になる.DNAのみならず,RNA,メチル化DNA,タンパク質もシークエンシング可能である.
著者
渡邉 真治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1150_2, 2019

NESIDは,日本における感染症サーベイランスシステムで,国(厚生労働省)が管理している一元的なオンライン中央データベースである.医療関係者の協力のもと,国(厚生労働省および国立感染症研究所)と自治体(保健所および地方衛生研究所:地衛研)との共同でインフルエンザを含む感染症サーベイランスが実施されているが,感染症による患者情報や病原体情報などが保健所や地衛研からNESIDに入力されることで,国内の感染症の発生状況の正確な把握や分析ができる.国や自治体は,国民や医療機関へNESIDに基づく情報公開・提供を迅速に行うことで,当該感染症に対する有効かつ的確な対策を図ることが可能となる.
著者
野瀬 清
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.773-780, 2002-10-01 (Released:2003-02-18)
参考文献数
54
被引用文献数
5 5

Reactive oxygen species (ROS) are generated from cells stimulated by various cytokines, hormones, and stresses, and regulate celluar functions such as gene expression and cell growth. They affect activities of many types of molecular targets, including signaling molecules and transcription factors. Early-respons genes (c-fos, egr-1 and JE) that encode transcription factors are induced by ROS, and activities of their products are modulated by ROS through redox-based mechanisms. We isolated a novel gene, hic-5, that was induced by hydrogen peroxide and encodes a focal adhesion protein. hic-5 was found to translocate to the nucleus in cells treated with ROS and regulates several cellular genes. We propose that hic-5 is a key element in the transduction of signals from the cell surface to the nucleus under oxidative stress.
著者
倉田 祥一朗
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.126, no.12, pp.1213-1218, 2006-12-01 (Released:2006-12-01)
参考文献数
37
被引用文献数
1 3

One of the fundamental questions in innate immunity is how a large battery of invading pathogens is recognized by a limited number of germ line-encoding receptors. In Drosophila, peptidoglycan recognition protein (PGRP) family members have a crucial role in recognizing invading bacterial pathogens and in inducing immune reactions. PGRP-SA, -SD, and -SC1a are involved in recognizing gram-positive bacteria and in activating the Toll pathway to produce antimicrobial peptides. PGRP-LC and -LE recognize diaminopimelic acid (DAP)-containing peptidoglycans, which are cell wall components of many gram-negative bacteria and some gram-positive bacteria, and activate the imd pathway to produce antibacterial peptides. In addition to the extracellular function of PGRP-LE to activate immune reactions in the hemolymph, PGRP-LE acts as an intracellular receptor for monomeric DAP-type peptidoglycans. Moreover, a version of PGRP-LE containing only the PGRP domain functions extracellularly as a CD14-like accessory factor, capable of enhancing PGRP-LC-mediated peptidoglycan recognition. Subsequent intracellular signaling is transduced through the RHIM-like motif found in PGRP-LC and -LE.

1 0 0 0 OA ケロリンの桶

著者
東田 道久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1265_1, 2014 (Released:2017-02-10)

ファルマシア誌では,隔号で「家庭薬物語」を掲載しているが,お楽しみいただけているであろうか.家庭薬の普及には,それを宣伝する媒体の力も欠かせないであろう.配置薬における紙風船もその一つである.ところで,日本全国の銭湯で見られる黄色い「ケロリンの桶」.その湯殿に響く桶の厚みを感じる独特の音は,単に宣伝媒体にとどまらず,もはや銭湯自体に溶け込み,日本の文化となったと言えるかもしない.この桶,映画にも出演している.その桶の独占広告主は,富山の内外薬品である.同社は1902年薬種商として創業,1925年からは製薬会社となる.薬剤師でもあった社長の笹山順蔵は,社内に対しては厳しい品質管理を求める一方で,対外的にはユニークな広告手法を展開していた.当時まだ珍しかったスポーツ会場での垂れ幕などがそれである.その営業の遺伝子は娘婿の笹山忠松に引き継がれる.1963年,当時まだ木製の桶が多かった銭湯で,衛生面と強度からそれが合成樹脂に切り替わりつつある時期に,広告代理店・睦和商事の担当者・山浦和明と笹山忠松が出会う.「湯桶に広告を出しませんか?」と持ち掛けられたのがきっかけで二人は意気投合.昼は薬を,夜は温泉街に桶を一緒に売り込んで行った.桶は当初は白色であったが,その後,現在の鮮やかな黄色へと変わり,それが好評で,当時全国に23,000件もある銭湯をはじめとして,温泉,ゴルフ場などの浴室へも瞬く間に波及していく.以来現在まで,延べ250万個以上も納入.睦和商事は残念ながら2013年3月に廃業するが,その後の販売は内外薬品自体により引き継がれ,現在も週1,000個のペースで製造され続けている.銭湯で子供が蹴飛ばしても,腰掛けにされてもビクともしないケロリンの桶は,驚異的な強さから,別名「永久桶」とも呼ばれており,日本文化不滅の象徴となりつつあるのかもしれない.現在は,くすりの富山の「ご当地グッズ」としても,関連商品も含めて空港や駅で販売されている.ただ残念なのは,その桶を担いで銭湯に出かけることが出来ないことかもしれない.
著者
新薬紹介委員会
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1153, 2018

本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.<br>本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される"新医薬品として承認された医薬品について"等を基に作成しています.今回は,平成30年9月21日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.<br>なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
著者
北澤 京子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.4, pp.575-578, 2019-04-01 (Released:2019-04-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

“Choosing Wisely” is a campaign activity promoting awareness of the dangers of providing medical tests, drugs, and procedures that are not supported by firm scientific evidence and that may harm patients. The American Society of Health-System Pharmacists has released a recommendation on polypharmacy. Stakeholders such as patients, health professionals, hospital executives, industry, and mass media may all contribute to treatment decision making. The patient-centric “five questions you need to ask your doctor” are a useful trigger for better dialogue between patients and health professionals and could contribute to appropriate drug prescription in which benefit always exceeds the potential for harm.
著者
元屋地 孝士
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.141, no.4, pp.511-515, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The first step in small-molecule drug discovery is the identification of hit compounds via high-throughput screening (HTS). In transporter drug discovery, most HTS assays are based on the uptake of labeled substrates, but such functional assays cannot be developed for many transporters, such as intracellular organelle transporters. These transporters remain unexplored in drug discovery despite their promise as drug targets. Affinity selection-mass spectrometry (AS-MS) is a label-free binding assay technology that has been developed as an HTS technology for analyzing interactions between targets and compounds. The use of AS-MS technology enables HTS against every type of drug target, in contrast to functional assays. AS-MS technology is usually used for soluble proteins, but we have developed this technology for application to membrane proteins as well. So far, we have used AS-MS for HTS of approximately 400000 compounds. In this review, the principles and application of AS-MS technology are introduced and an HTS campaign for solute carrier type 17A8 (SLC17A8) (vesicular glutamate transporter 3) is presented as an example.
著者
渡部 一宏
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.934-936, 2015

ある週末の金曜日18時半,聖路加国際病院薬剤部製剤室の薬剤師である私は仕事も終わり,築地の立ち飲み屋で一杯引っ掛けてから帰ろうと思いながら,製剤業務の後片付けをしていた.そのとき,1本の電話が鳴った.<br><br>渡部:はい,薬剤部製剤室担当渡部です.<br>中村医師:あっ,渡部くん.中村です.業務時間外で悪いのだけど,先ほど入院してきた新患の乳がんの方,すごい大きな皮膚潰瘍で臭いがかなりすごいよ.いつものメトロニダゾールゲル500gをこれから創って欲しいんだけど,大丈夫?<br>渡部:はい,もちろんです.これから製剤を調製して,病棟に持っていきますね.<br><br>このようなことが,幾度あっただろうか.中村医師とは,その当時聖路加国際病院ブレストセンター長で現在,昭和大学医学部乳腺外科教授(日本乳癌学会理事長)である我が国を代表とする乳腺外科スーパードクターの中村清吾先生である.聖路加国際病院は,キリスト教精神の下に全人的ケアの実現をポリシーに掲げ,かつ日野原重明名誉院長の明確なビジョンと燃えるようなパッション,そして常に青年を思わせる行動力のもと「チーム医療の実現」を目指してきた病院で,中でも中村先生がリーダーシップをとられたブレストセンターは,多職種によるチーム医療活動が院内でも特に盛んであった.<br>著者は,聖路加国際病院に入職してまもなく,乳がん診療とそのチーム医療活動に感銘と興味を持ち,また患者さんから慕われる中村先生の臨床医の姿に敬服し,当初からこのチームに薬剤師として関わらせていただいた.チームに関わり始めて私は初めて,がん性皮膚潰瘍に苦しむ乳がん患者さんを目の当たりにした.患部は,目を伏せたくなるような耐え難い症状で,また患部からの酷い臭いが外来診察室や病棟全体に広がり,その辛さは言葉では言い表せないものである(図1).「がん性皮膚潰瘍臭に苦しむ乳がん患者さんの悩みを何とかしたい」これこそが,がん性皮膚潰瘍臭のケアに立ち向かう,一人の薬剤師のリサーチクエスチョンの原点であった.
著者
木村 紘子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.224-228, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
6

創薬領域においては,オープンイノベーションの動きが活発化しており,特に大学に対しては基礎研究のみならず,ヒト臨床試験まで到達した有望な創薬シーズを生み出す役割が期待されるようになった.この流れの中で,スタンフォード大学では,研究者自らがトランスレーショナルリサーチを推進するためのトレーニングプログラム「SPARK」が開発された.本稿では,SPARKプログラムの概要,その国際的な展開状況,および東京大学における取組について一部紹介する.